Holy Nightに口づけを  投稿者:北一色


  上の続き〜。

Holy  Nightに口づけを
第5話「ホーリーナイト・キス」
 
「これだけ騒いだんだ。お礼くらいしてもらうぞ。まだイヴは終わってないし」
「ちょっ……!?」
  僕の体を引き離そうと、柚木の手に力が入る。
  
「……まだ、パーティーやり直す時間くらい、あるだろ?」
「……え?」
  僕は、柚木から離れながら、続けた。
「コンビニくらい開いてるだろうから、菓子と酒でも買い込んでさ。ケーキは…
…まだ売ってるかどうかわからないけど……残り時間でパーティーやり直さない
か?
  まだ、イヴが終わるまで、時間があるだろ?
  今度は……柚木も心から楽しめるように、さ。
  それくらい、付き合ってくれてもいいだろ?」

「でも……あたしは……自分の都合で南君に迷惑かけてたんだよ……?
  これ以上は……」
「迷惑だなんて思ってないよ。今は、だけどな。
  それに、『幸せを届けに来た』んだろ?
  なら、ちゃんと幸せにしてもらわなきゃ……困る」

  ひょっとしたら、僕も……忘れてるのかもしれない。悪戯好きだけど、気のい
い奴だった……ような気がする。今でも、名前も顔も思い出せないけど……。

「それに、『自分もみんなに忘れ去られるかもしれない』って言ってたけど……
柚木がみんなに忘れられるって事はないよ、絶対」
「……どうして?」
「……そりゃ、こんなに騒がしい奴、忘れられるわけないだろ。
  ……それに…………」
「……それに?」

「……他の誰が忘れても、僕は忘れないからな。
  これだけ迷惑かけられたんだ。
  ええと、『恨み晴らさでおくべきか』ってね。
  絶対に、忘れないさ。
  絶対に…………忘れてなんかやらない」

  ……最後は恥ずかしくなって、そっぽを向いて言った。

  ……しかし、よくもまぁこんな事言えたものだな。我ながら呆れるべきか、そ
れを通り越して感心するべきか……。

  我ながら稚拙な慰め方だ。焦りを顔に出さないように注意したつもりだが、あ
まり自信がない。どもらずに言えただけでもマシ、としておくか……。

  ……くい、と服のすそがひっぱられた。
  背中にコツン、と額をくっつけられる感触。 
  そして、

「……はんてん着たまま言っても、カッコ良くないよ?」
「……もー少しほかの事言えんのか、おのれは……」

  ……言いながら、ホッとした。
  良かった、いつもの柚木だ。
 
  結局、僕は何も変わってない。
  泣いてたり、寂しそうにしてたりする奴がいると、どうにも気になって仕方が
ない。結局のところ、僕自身のためにやってる事だ。
 
「……ありがと……」

  ……振り向いて見た柚木の目に、涙は既になかった。まぁ、あの言葉というよ
り、誠意を汲んでくれた、ってところだろう。
  ……泣いてる方に気を使わせてしまったか。情けない……。

  ……あれ?
  ……柚木の顔が近付いて来る。

  違う。
  僕の顔が近付いていってる……!!
  まずい、誤解される!!  そんなつもりじゃないんだ!!
  
  柚木は驚いたらしく(当り前だが)、目を丸くし――
  ……そのまま、目を閉じた。

  ……あ……。
  惹かれ合う、瞬間の魔法。
  ……どうやら僕は、完全に魔法にかかってしまったようだ……。

  そして、僕の唇は柚木の唇に着陸を――

  ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポ――ン!!

  ……ゴンッ……
 
  ……後ろの壁に不時着……。

  ……誰だ……このタイミングで……。
  さすがに温厚な僕でも怒るぞ……!!

  ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンッ!!

  玄関のドアを激しくノック(?)する音。そして、
「我々は国連査察団である!!  今すぐ、南家の査察を要求するっ!!」
  ……住井の声だ……。

  階段の窓から見下ろすと、確かに住井に間違いなかった。それどころか、中崎
、南森をはじめとする十数人がその周りにひしめいている。しかも、明らかに全
員酔っ払っている。
  あいつら、本当に僕が女の子と過ごしてるかどうか、確かめに来たな……。

「なお、貴殿は完全に包囲されている!!
  速やかに我々国連射殺団……もとい、国連査察団の受け入れを要求する!!」
  住井の上着の内ポケットのあたりが、不自然に膨らんでいるように見えるのは
、気のせいだろうか……?(汗)
 
「……あ〜い〜つ〜ら〜は〜!!」
「どうするの?」
「どうもしない。そろそろ、近所の奥様方が通報する頃だろ」

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  その言葉に応じるかのように、
「こらー!!  そこの怪しい集団!!」
「ヤバい!!  サツだ!!」
「くっ、権力の犬めが!!」
「後方200mにポリ車!!  撒くぞ!!」
「川に入って匂いを消せ!!  ポイントA−9に集合せよ!!」
「了解!!  合言葉は!?」
「ジーク・ヨーコだ!!」
「中……もとい、ザッキー(コードネームらしい)、何をしている!?  急げ!
!」
「くっ、……モーリー(南森らしい)、僕はもうダメだ!!
  置いて行ってくれ!!」
「おう!!」
「本当に置いて行くなっ!!  薄情者っ!!」
「待たんか〜!!」
「くっ、官憲め、意外としつこいっ……!!」

  ……声はだんだん遠ざかって行った。  

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「……ふぅ……」
  思わず溜め息をつく。
  残念なような、ほっとしたような、どちらとも言えない感覚。

  まぁ、結局僕は、こんな風に格好がつけられない奴だって事か……。

「はは、全くあいつらってしょうもない奴らだよな」
  さっきまでのムードの残りを振り払うために(ここまできたら、ムードもへっ
たくれもない)、ごまかし笑いを浮かべて振り返り――

  唇に、柔らかい感触。
  視界全体に広がる、柚木の目を閉じた顔。
  体に感じる、柔らかい、小柄な肢体。

  ……へ……?
  何が起こったんだ……?
  徐々に、理解する。
  これは、もしかして、世間一般でいうところの、その……。
  理解するにつれ、思考が空白化し、頭部に血が昇っていく。
  ……あ……。

  ……実際には、ほんの一瞬だったのかもしれない。
  でも、凄まじいスピードで思考が回転し、時間が何倍にも感じられた。
  ……もっとも、見事なカラ回りだったが。

  唇が離れ――
「お礼だよ。ちょっとした、ね」
  ……柚木は、わずかに照れくさそうに、そう言った。

  ……可愛い。
  僕は衝撃に少しよろめき――
  ……ここは、階段だった。

  ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタッッッ!!

  ……ちょっと遠くなる意識の中で、人生って案外悪くないのかも、なんて馬鹿
な事を考えていた……。

(次で終わりです。…………多分ね)

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  うう、思ったより進まん……。
  まぁ、大筋的な部分は終わったんで、後はどっちかってーと、エピローグのよ
うなモノです。
  あと、大元ネタですが、さすがにONEじゃないです(^^)→狂税炉さん江
  いやまぁ、確かにONEですけど……(笑)。

  追加ヒント1:クリスマスのお話である事を、念頭においてください。
  追加ヒント2:ゲームじゃないです。

  ってわけで、ONE以外の大元ネタです。

  ……ここで書くと、最終回のネタがイッパツでバレるもんで(^^)

  ……今日はよく起動した……私は闇に帰ります……。
  感想は、また今度……。

                                  「いつか感想SSをやってみたい」北一色