髭先生の華麗な生活  投稿者:北一色


その2「生徒の夢はどんな夢?」

朝、自宅にて。

  その日、折原浩平は、しつこく何度も鳴り響く電話に、夢の世界から追い出さ
れた。不承不承、受話器をとる。
「はい……もしもし……あふ……」
  どうやら由紀子さんは、もう出勤したらしい。忙しい人だ。

「あ……浩平?」
  電話の相手は長森瑞佳だった。言うまでもなく、浩平の幼馴染みである。

「私、風邪ひいちゃってね、今日起こしに行けないんだよ。
  悪いけど今日は一人で、こほ、行ってね」
  わざわざ起こしてくれたらしい。
  そういえば、このところクラスで風邪が流行っていた。

「ばか、風邪なんかひくのは、気がたるんでる証拠だぞ。
  俺なんか風邪などひいたこともない」
「嘘だよ。小5と、中2のときに風邪ひいて寝込んでたもん」
  やはり、幼馴染みに生半かな嘘は通用しないらしい。
  ……しかし、学年まで覚えてるか、普通?

「ばか、あれはだな、滝に打たれて修行をだな……」
「……雨の日に、傘でチャンバラして折っちゃって、ズブ濡れになっただけじゃ
ない」
「ええい、ああ言えばこう言う奴だな……」
「それは浩平だもん」
「……………………!!」
「…………………………!!」

  喧々轟々。

「……おっと、いかん、このままじゃ遅刻する!!」
「……はぁ、はぁ……けほ……頭痛くなっちゃったよ……」
「じゃぁな!!……長森、起こしてくれてありがとな」
「……えっ(ドキ☆)」
  ……短い感謝の言葉を言い残すと、浩平は脱兎の如く駆け出した。
  
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朝、教室にて。

「……よし、間に合ったな」
  教室に駆け込んだ浩平が見たのは、ほとんどガラ空きに近い教室だった。
  ほぼ同時に、チャイムが鳴り響く。

  見知った所では、七瀬、住井、南、広瀬くらいだった。
「あ、おはよ、折原」
「ああ、おはよう、七瀬。しかしこれは、皆休みか?  10人もいないじゃない
か」
「そうみたいね。ところで瑞佳は?」
「あいつはな、昨日、猫の集会に参加したまま行方知れずだ。
  今、捜索願いが出されてる」
「……風邪ね」
「行方不明だって」
「……はいはい」
  言い合いながら、浩平は教室中を見回した。

「……茜も休みか」
  茜の席のすぐ近くに、虫の息の生徒が一人。
  南明義だった。
  茜に会いたい一心で、風邪をおして登校して来たらしい。
  ……無駄な努力だったが。
  残りHPは1ケタ台だろう……。

「ま、どーでもいいか……。
  椎名も休みか。柚木も今日は来てないようだし……」
  もっともこの2人は本来、来ている方がおかしいのだが。
  佐織、中崎、南森等も休みのようだ。

「おはよう、折原君」
  広瀬が話しかけて来た。取り巻き(?)連中がいなくて退屈らしい。
「おう、広瀬。さすがだな」
「?  ……何が?」
「いや、風邪のウィルスもお前には近寄らないんだな……」
「何よ、それー!!」   
  怒る広瀬。からかうと面白いところは七瀬そっくりだった。
  ……案外気が合うのかもしれん、と浩平が心につぶやいたとき、
「おう、折原。これはきっと『アレ』になるぞ」
  話しかけて来たのは住井だった。
「そうだな……全国の小・中・高生の夢だな……」
  そう、こればっかりは、大学生にはないのだ。
  「アレ」―――すなわち、「学級閉鎖」は。

  学級閉鎖。
  これほど甘美な言葉もそうはあるまい。
  なにせ、自分は健康なまま、授業が中止になるのだ。
  丸1日遊びほうだいである。
  しかも欠席にならない。単位を気にする必要もない。
  大学生には有り得ない。もっとも、「自主休講」という裏技があるが。

<ところで、作者は1度も学級閉鎖の恩恵に預ったことがない。
  他のクラスが次々と学級閉鎖になるのを羨みながら、周囲の生徒と露骨に「て
めぇら、とっとと休みやがれ」と、殺気に近い視線を交わし合ったものだ。>

「おい七瀬、学級閉鎖になったらどっか行って遊ぼう」
「嫌よ。なんであんたなんかと……」
「俺の熱心なファンからの報復を恐れているのか?」
「そんなのどこにいるのよっ!!」
  ……言い合ってると、このクラスの担任である渡辺茂雄教諭こと、髭が教室に
入って来た。

「んあー……」
  髭は、教室中を軽く見回した。
  40人分くらいの座席のほとんどがガラ空きである。
  座ってる生徒の思いはただ一つ。
『学級閉鎖!  学級閉鎖!  学級閉鎖!  学級閉鎖!  学級閉鎖!』
  このときほどこのクラスが一致団結したことは、かつてなかったことだった。
……10人足らずだけど。

  髭は、教室中をもう1度見回すと、言った。
「……全員出席、と」
『なんでじゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――――――――っっっ!!!』
  ……全員の魂の叫びは学校中に響き渡ったとゆー。

追記1

  ……何はともあれ、学級閉鎖にはなった。
  浩平と七瀬がぎゃいぎゃい言い合いながら、帰り道に山葉堂の近くを通った時
、茜と詩子が目撃された。
  ちなみに、この日は山葉堂に新メニューが加えられる日だった。

「……取るか取らないかもわからない出席より、新メニューの方が重要です」
  ……ごもっともです。

追記2

  放課後、警備員のおじさんが見回りのときに、この教室内で冷たくなりかかっ
た1つの死体……もとい、半死半生の男子生徒を発見したそうである。
  その生徒は、学生証によれば、南明義という名前のはずだそうな。
  ……誰か気付いてやれよ……。

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  いきおいで書いた2作目。
  目的通りダラダラ書いてます。間近に迫ったテストからの逃避かも。
  しかし、読み返してみると……なんか稚拙だな……。特に、(ドキ☆)は、思
わず「おのれは克☆●樹かい!!」と一人ツッコミを入れちまいました。

  今回は別に「ヒロイン」なんてのはないです。だからラヴラヴな展開なんての
は有り得ません……多分。
  書いてて気付いたんですが、みさき先輩と澪は、出そうにも出しようがないで
すねー。困ったもんだ。
  ポニ子ちゃんについて言及してないのは、単に扱いに自信がないのと、休みそ
ーにない頑健さ……もとい、健康さのためです。

  次回は多分、繭の出番……のハズ。  
  感想をくださった方、ありがとうございます。

★解説★

★克●亜樹……昔、週間少年サンデーで、「星くずパラダイス」とゆー、芸能界
                  を舞台にしたラブコメ描いてた人。今はヤングアニマルで「ふた
                  りエッチ」とか、マガジンZにも何か描いてる……らしい。

★感想★

★PELSONAさん
>「前を向いて歩こう」
  ……女御(笑)。
  南っていつの時代の人間だ(笑)?
  >一段と強気で
  強気で行けば行く程ドツボにはまってるよーな……(笑)。

★いちのせみやこさん
>「ダーツ(仮)」
  爆笑しました。ラストのオチがたまりません(笑)。あまり詳しくは書けない
し。

★から丸さん&からすさん(?)
>「未来」第三話「遺影」
  私は本来、暗い話は嫌いなんですが……すっごく続きが気になるのは何でなん
でしょう……?
  おそらくこれが、文章力とゆーものなんでしょうねー。

★シンさん
>「魔の帰還」
  終結……したんでしょーか……?  まだ逃げきれてなかったりして(笑)。

★犬二号さん
>「月とネコキャット団・2」
  テ……テンション高いっすねー。前作が嘘みたいだ……(笑)。
  これはかなり気に入ってます。「ニャーゴ」の時点でハマりました(笑)。


  ……さて、テスト勉強しなきゃ……。おつとめ(=テスト)は辛いなぁ……。