髭先生の華麗な生活 投稿者: 北一色
その1
朝、学校にて。
  
  住井護はいつもの通りにイベントの計画を練っていた。
  本作戦のコードネームは、「わっしょい珍道中・山笠があるけん博多たい!」
。内容を知らせずにくじを引かせ、当たった奴を問答無用にみんなで神輿のよう
に抱えあげ、校内をねり歩く、というシロモノ。
「ひねりが足りないかな……?」
  やはり犠牲者の体に爆竹くらいは巻き付けておくべきだろうか?  
  
  そこに、いつもの様に浩平と瑞佳が教室に駆け込んでくる。
「……もう始業時間か……」  
  そうつぶやいたのと同時にチャイムが鳴り響いた。
  浩平と瑞佳は、常に始業時間ギリギリになって駆け込んで来るので、チャイム
の代わりに活用できる。
  ちなみに、里村茜にもこの法則は成り立つのだが、彼女の場合はいつ教室に入
って来たのかがわからない。
  チャイムの鳴る前にはいないのに、鳴った後には席に座っている。
  入口をずっと観察し続けても、入って来る瞬間がわからない。気が付いた時に
は着席している。
  毎度、自分の目と記憶を疑わなくてはならないのは、精神衛生上きわめて良く
ない。南明義のように、その苦しみまでも悦ぶようにはなりたくなかった。
  
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「あんた達って、いつもギリギリね……って、ぎゃああぁぁ――――っっ!!」
「みゅ――――っ!!」

  ……うむ、いつものやりとりだ。今日も平和だな……。
  ……俺も一度繭ちゃんにじゃれつかれてみたい……。
  住井が、そう心につぶやいたとき、担任である「髭」こと、渡辺茂雄教諭が教
室に入って来た。

「んあ〜……今日は出席をとるぞー」
  「今日は」というのは、日頃はとらない、ということである。
  日頃は、周りをちらりと見回したあと、「よし、全員いるな」で終わらせる髭
だった。例え欠席者がいても。
  だが、たまにこうして出席をとる事も、希にだがあった。だから、浩平も遅刻
するわけにはいかないのだ。

「んあ〜、折原浩平……」
「おう」

  名前順に呼ばれていく。
  そして、女子の番になった。

「里村茜……」
「……はい」
  
  南が恍惚としている。やっぱり、人間ああは成りたくないものだ……。

「椎名繭……」
「みゅー♪」

  繭ちゃんは今日も元気がいいな……って……。

「せ……先生!?」 
「んあ〜?  どうした〜、長森?
  まだお前の番じゃないぞー」
「そ、そうじゃなくって……。
  い、いえ、やっぱり何でもありません」

  ……なんで繭ちゃんが名簿に載ってるんだろう……?
  住井を含む全員の疑問をおいてきぼりにしたまま、出席は取られ続ける。
  そして、

「柚木詩子……」
「は〜い♪」
「ちょい待ていっっ!!?」

  ……今度思わず叫んだのは浩平だった。
  ……折原、気持ちはわかる。よ〜くわかるぞ。
  
「何?  折原君?」
「何で柚木が名簿に載ってるんだっ!?」

  浩平の魂の叫びには、詩子は答えなかった。
  かわりに、髭に対して訴えた。

「先生〜、折原君がいぢめる〜」
「んあ〜、折原、いじめはいかんぞ。
  受験を控えたこの時期に、ナーバスになるのはわかるが、クラスメートをいじ
めるのは感心せんな。
  何か悩みがあるなら、わしが相談に……」
「そーじゃないっっ!!」

  地団駄ふんで、浩平は茜に助けを求めた。

「茜っ、なんとか言ってやってくれっ!!」
「……浩平。
  ……何か問題でもありますか?」
「あ……茜まで……!!」
「……ごめんなさい。詩子は私の親友ですから……」
「茜、ありがとっ。愛してるよっ♪」

  詩子が本気とも冗談ともつかない事を言う。

「みんな……みんな大っ嫌いだ!!」
「こ……浩平ー!?」

  外に駆け出して行った浩平を追いかけようとして、従来の優等生的な部分がそ
れを許さなかったらしく、瑞佳が立ったままおろおろしている。

  長森さんは気付かなかったようだな……。
  住井は、そう胸中につぶやいた。
  折原のヤツ、うまくサボりやがった……。
  
  そんな住井の胸中も知らない、髭のつぶやきが聞こえた。
「わしの見たところ、あれは恋の悩みだな……」

  頭のどこをどう使えば、その結論が出るんだ……?
  住井の疑問をよそに、出席確認はつつがなく終了したのだった。

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  お久しです。……つっても「誰だアンタ?」って人も多そーだけど……(笑)
。随分久々に書いたので、カンが鈍ったかも。
  いちおー、「その1」にした以上、ひょっとしたら続くかも。
  本作品の目的は、「ダラダラ書く」です。前作が最後らへんは必死で書いてた
ので。
  メール下さった皆様、ありがとーございます。でも、またメールボックスが満
杯になってた……読めてないのもあるかも……(汗)。

★感想(ほんの少しだけ)★

★壱弥栖さん
>「ARUZII」
  ゴジラのノリですね。最終兵器が予測できなかった……折原長官の行く末に幸
あれ(笑)。

★から丸さん
>「未来」第二話
  南が「マトモな」人間ですね。37歳の茜……見たいような見たくないような
……。 
  ところで、「幻想猫」どーなったんだろー……私がいない間に終わってしまっ
たのか……(泣)。