BLUE LEAF13〜脱出!!〜 投稿者: 北一色
>まだ逃走中の折原浩平
「ふふふ……折原、もう逃げられんぞ。
  おとなしく、俺のモノになるがいい……」

  ……住井の目付きがかなりヤバい。
  限りなくアヤシい笑みを浮かべたまま、ワキワキと手を握ったり、開いたりし
ながら、俺の方にジリジリと迫って来る。

「住井……お前も長森たちと一緒か……!!」
「くっくっく……これから俺の色に染めあげてやるからな……」

  普段ならば、そうそう住井にひけを取るとは思わないが、今の奴の手には、ベ
レッタM92F(オート・口径:9mm×19・16連発)が握られている。
  「リ●サル・ウェポン」で、メル・ギブソンが使っていた銃だ。
  ……素手では勝ち目など到底ない。  

「くくく……可愛がってやるぜ、折原……」
「……くっ……」

  俺が全力で逃げ出すチャンスを伺っている時――
  一発の銃弾が住井を吹き飛ばした!!

  ズガアアアアアァァァァァァァァァァァァン!!!

  これは……RPG−7対戦車ロケット弾!?
  爆風で、住井と一緒くたに吹き飛ばされながら、妙に冷静に俺は解析していた
。<ナゼ見ただけでわかるのかは聞かないで(笑)>
  
「危なかったわね、折原君」
「お……お前は前回、作者にすっかり忘れられてて、作者が家に帰った後になっ
てようやく『ヤベ。忘れてた』と思い出された広瀬か!!?」

  広瀬はにっこりと笑った。
  ……額に青筋がくっきりと浮かび上がってはいたが。

「……まあいいか。とりあえず、助かったぜ、広瀬」
「恋人を助けるのは当然よ」

  ……やっぱし(泣)。
  いい加減、俺も慣れて来た。

「さぁ、いらっしゃい。可愛がってあげるわよ、折原君……」

  は…………いかんいかん、思わずついて行きそうになってしまった。

「たっぷりと調教してあげるからね……」
 
  ぐぁ。サド入ってる……。
  しかし俺は、誰かに支配されるなど御免こうむる。
  俺は住井のベレッタをひっ掴むと、全力で逃げ出した。

「あっ!  待ちなさい!!」
「……折原のもとには行かせん!!」
「住井君!?  邪魔するならあなたを殺すわ!!」
「やってみろ!  俺達のアツイ愛と、このグレネード(手榴弾を打ち出すヤツね
)に勝てるものならな!!」

  ……復活した住井(まだ武器持っとったんかい)と広瀬の応酬と、爆音を背に
、俺はその場を駆け去った。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

>その様子を隠れて窺う川名みさき


「……浩平君、大丈夫かなぁ……」
  木陰で、浩平君が駆け出して行った音を聴きながら、私はつぶやいた。
  手にはイングラム・バリアントとかいうライトマシンガン(って、雪……じゃ
ない、プロフェッサーが言ってた)。
  私は戦闘参加しないけど、「念のためよ」ってプロフェッサーが言ってたから
、仕方なく持っている。
  
  そう、私は皆と違って正気を保ってる。

  理由は、プロフェッサーのお手伝い。
  それと浩平君の身に、本当に危険が迫った時のための切札。

『一応、全弾ゴム・スタン弾にしておいたから、死ぬ事はないわよ』ってプロフ
ェッサーは言ってたけど……。

「ごめんね、浩平君。これも無人島から脱出するためなんだよ……」

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

>まだまだ逃走中の折原浩平


「……はぁ……はぁ……」
  ここまで来れば、もう大丈夫だろう……

「……浩平……」
  ……まだかい。
「な……長森か……」
「なんで……逃げるの……?」
  ……長森の目に、涙が溢れるのが見えた。

  その涙に、俺は「お前が454カスール(リボルバー・拳銃としては、世界一
の威力を誇る(笑))なんか持ってるからに決まってるだろーが」という言葉を
引っ込めた。

「なあ……長森。一体どうしたんだ?
  一体何があったんだ?」

  明らかにおかしい。
  住井には男色のケなんかないはずだし、長森はガンマニアでもない。
  広瀬だって……サドのケなんかないはずだ。……多分。

「……何言ってるの、浩平?」

  ……長森は、自分の行動がおかしい事に気付いてない?

「あのな……」
「……浩平……」
「うおう!?」
  ……この俺の背後に、あっさりと気配もなく立つ事ができるのは……!!
「あ……茜」
「……探しました」
「茜……その手のIMIデザートイーグル(オート・口径:50AEか357マ
グナムか44マグナム・これも世界最強クラス(笑))を、どこかにやってくれ
ると嬉しいんだが」
「嫌です」
  ……やっぱし(泣)。

「折原……見つけたわよ……」
  ぐぁっ……ヤバい、七瀬まで……。
  右手にはS&W・M629(リボルバー・口径:357マグナム・6連発)が
、これまたしっかりと握られている……。
  ダーティー・●リーの銃だ。<ピッタリじゃないかな、と(笑)>
  ま……まさか……?

  おそるおそる振り向いた俺が見たのは、手に手に拳銃を持った、澪、椎名、柚
木……その上、勝負を後回しにしたらしい、住井と広瀬までいた。
  彼女らの爛々と光る目は、明らかに俺の方に向いている……。

  澪がコルト・マーク4(口径:シリーズ80・オート・8連発)、椎名がグロ
ック22(オート・口径:40S&W・16連発)、柚木がS&W・M16(口
径:357マグナム・6連発・次元大介の銃(笑))……。
  いずれも強力極まる物騒な銃だ。
  
  ……落ち着いて考えてみよう。

Q.今、ここにいないのは?
A.みさき先輩、深山先輩、沢口。

Q.何かの薬物等が引き起こした現象と仮定して、こんな事ができるのは?
A.住井、プロフェッサー雪ちゃん。

  結論が出たな……。    
「おい、みんな!!
  落ち着いて聴いてくれ!!
  今回の騒ぎを引き起こしたのは……!!」

  その俺の声に答えるかの様に―――

  戦闘が開始された。

「浩平は渡さないもん!!」
「……浩平は私のものです……!!」
「みゅーっ、負けないもぅん!!」
『これだけは譲れないの!!』
「乙女の邪魔をする気!?  容赦しないわよ!!」
「上等じゃないの、七瀬さん!!」
「折原は俺との愛に生きるんだ!!」
「面白くなって来たじゃない♪  それそれ〜♪」

  カラシニコフ分隊機関銃が火を吹き、AK−47突撃銃(5.4mm口径)が
迎撃する。スタン・グレネードが閃光と轟音を撒き散らし、レミントンM870
(散弾銃)がうなり、パンツァー・ファウストが飛び、HK−227サブマシン
ガンが軽快なメロディーを奏で、ミサイル・ランチャーが地面とハデにキスをす
れば、爆音と爆風という名の双子が産まれる……。

  ……爆風に弄ばれて宙を舞いながら、俺は他人事のように解析していた……。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

>戦闘終了後、某人物


  ……最後の爆風が、風の中にかき消えたのを見計らって、私はみさきの手を引
いて、戦場跡にやって来た。

  白衣がバタバタと、風にはためく。

「ねぇ、プロフェッサー、みんな大丈夫?」
  心配そうに聴いて来るみさきに、私はぐるぐる眼鏡の位置を直しながら答えた
。
「大丈夫だって。みんなの銃にはゴム・スタン弾しか使わせてないし、戦力のバ
ランスには気を使ったんだから」

  そう。この騒ぎの主謀者は私。

  まず、折原君とみさき以外の全員を呼び出し、この島に自生していたキノコか
ら抽出したエキスで作った、ホレ薬(の様なモノ)をガス状にして散布。
  その後で、折原君の髪の毛のDNAデータから、フェロモンを解析し、全員に
覚え込ませた。
  
  もう一つ大事な鍵は、もう一つの薬物。
  理性のバランスをやや崩し、本能(主に闘争本能)を呼び覚まさせる。
  そうしないと、特に上月さんなんか、絶対に逃げ回るだけになってしまう。
  
  そして、みんなが意識を回復する前に、1人1人の能力を考慮に入れて、程よ
いバランスを保つように、銃器を与えた。
  例えば、七瀬さんは強いから、弱めの武器を、といった具合に。
  ちなみに銃器は、住井君、七瀬さん、広瀬さんが隠し持ってたモノを使用。

  あと、折原君が寝てる間に、服に発信器と盗聴器をつけておいた。
  発信器と盗聴器が何故あるのか?
  それは当然「女の子の身だしなみ」ってものよ。
  
  これで準備は万旦。
  あとは、折原君の動きに合わせて、みんなを誘導すればいいだけ。
  折原君を見つけたみんなは、壮絶な争奪戦を展開。
  そして今、地面に立っているものは私とみさきの2人だけ。
  さすがに、親友を巻き込みたくはなかったし、目が見えない、というハンデは
やはり大きいと思う。
  みさきには絶対に言わないけどね。

「ねぇ、プロフェッサー、人の心に勝手に干渉していいの?
  例えば……好きな人の事とか忘れちゃったら……」
「あ、その辺は大丈夫よ。
  『本当の想い』はこれくらいの薬物では消えないから。
  これが原因で消える程度の想いなら、大したことはなかった、ってことよ」
「……ふぅん……」
「かえって、一時的にだけど思い込みが消えるから、自分でも気付かなかった想
いに気付くって事もあるかもよ?」
  
「でもさぁ、プロフェッサー、良くここまで思い通りに行ったよね?」
「そうね……。
  この場を借りて、実験に協力してくれた南君にお礼を言っておきましょう」  
<要するに、崖から落ちて気絶していた南で実験した(笑)> 

「でも、なんで今日やる必要があったの?
  昨日、準備始めたばっかりなのに」
「急ぐ必要があったのよ」

  そう、急がなければならない訳が2つあった。
  1つは、柚木さんに頼まれた「相談」の事。<「12」参照>
  近日中には、ケリをつけなければならなかった。

「さて、と」
「何するの?」
「ちょっと頼まれ事でね。
  折原君と瑞佳ちゃんと茜ちゃんの記憶を、1部消しておくの」
  「悩みそのもの」が失くなってしまえば、「相談」する事もなくなる。  
  私は、催眠ガスと薬物と暗示を使って、1人1人の記憶を消して行った。
  この際だから、さっきまでの戦闘の記憶も、全員から消しておきましょう。

「これで良し、と」
「ねぇ、もう1つの理由って?」
「それはね……。
  あ。

  その『理由』がこっちに来るわよ」

  そして海上に小さく、こちらに向かって来る船が見えた……。


「もう1つの理由はね、『今日こちらに船がやって来る』っていう通信を、傍受
したからよ。
  だから、ハデにドンパチやってたら、何事かと思って見に来るでしょ?」  
「へぇ〜」
「さ、急いでみんなを起こさなきゃ。
  みさき、手伝ってね」
「うん。わかってるよ」

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

>目を覚ました後、海岸にやって来た折原浩平


「いやー、まさかこんな所で、日本人の遭難者に会うとは思わなんだわい。
  ようこそ、遠洋マグロ漁船『永遠丸』へ!!」

  ……そこはかとなく、船の名がイヤな響きに感じるのは何故だろう……(
汗)。
  なんかさっきから、体がやたらと痛むし……。
  しかも俺だけでなく、ほぼ全員が、というのも妙なものだ。
  みさき先輩と深山先輩の2人だけが、何故か平気というのが気になる……。

  まあ、いいか。気にしても始まらんし……。
  それよりも、船が気になる……。

  キリキリキリ……ガコン!!

  ……まるで戦車でも降ろせそうな巨大なタラップが降りた。

「……強襲揚陸艇……(汗)?」
「……マグロ漁船だっ」
  ……住井の問いに、船長が焦ったように答える。

  その向こうでは、船の腹の部分を見ていた七瀬が、船員に質問している。
「……この痕って……弾痕……(汗)?」
「え……あ……ああ、それは……その……。
  あ、そうだ!
  クジラの歯型だよ」
「……クジラの歯……って……(汗)」

  ……ふと、みさき先輩と深山先輩が言い合っているのが聴こえた。
(……雪ちゃん……どーして軍船なの?)
(……仕方ないでしょ……七瀬さんだの広瀬さんだのが、毎日毎日爆音なんて撒
き散らすから、調査に来ることになったのよ。
  だから、私は最後に大きな戦闘を起こさせたのよ……場所を教えるために)
(……武器は大丈夫なの……?)
(大丈夫よ。絶対にわからない所に隠してきたから)
  ……なんか、えらく物騒な話してるな……。
  ……「最後の戦闘」って、なんの事だろ?

  こうして、俺達一行は無人島からの脱出を果たしたのだった。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

>船上の住井護


「……どうだった、南?」
  俺は、無線を借りに行っていた南に声をかけた。
「どこからも捜索願いは出てないみたいだ。
  どの家もみんな、旅行を楽しんでると思ってるみたいだな」

「いずれ日本にも帰るから、このまま乗って行けって、船長が」
「ふーん……」
  
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

>船上の折原浩平


「……何を見てるの?  浩平」
「ん?  ……長森か。
  いや……あの島にも世話になったな、って思ってな……」
「……そうだね……」

  ……長森が風になびく髪を、右手で押さえている。
  夕焼けが海に反射して紅く煌く。
  紅に染まった世界。
  その紅の中で、俺の横に立っている長森は……。

「……綺麗だな」
「……えっ?」
「いや……夕焼けの海が、さ……」
「……え?  あ、そ、そうだよね……」

  ……赤くなっているのだろうか?
  残念ながら、夕日の紅に溶け込んでしまってわからない。

  ……いつからだろう?
  俺の中に、この想いが芽生えたのは。

  何故気付かなかったんだろう?
  こんなにも傍にいたのに。

  そして、どうして今になって気付いたんだろうか……?

「ま……いいさ……」
「……え?」
「時間はまだたっぷりとあるんだからな」
「……うん……」

  俺達は、船の手摺りに掴まったまま、しばらくそのまま、夕焼けの海を眺めて
いた……。
  胸の内に、ほんわかと、暖かい気持ちを感じながら……。

 
                                            BLUE  LEAF〜Fin〜
  
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

>余談・その1


「折原ー」
「住井か。なんだ?」

  かくかくしかじか。

「……ってわけで、いずれ日本にも帰るから、このまま乗って行けってさ」

「……遠洋漁業の『いずれ』って、いつだ……?」

「……あ(汗)」 
  
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

>余談・その2


「私は諦めが悪いんです……」
「がんばれっ、茜♪  詩子さんは応援してるよっ♪」
  
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

>余談・その3


〜無人島にて〜

  ……中崎と南森が、ボーゼンと船を眺めていた……。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

  お・わ・りっ♪

  うー、時間がねぇ……。

  では、15日にお会いしましょう。