BLUE LEAF2〜絶海の死闘〜
投稿者: 北一色
  水。
  液体。
  青い海。
  母の象徴。
  雄大な自然。
  大いなる水の循環。
  生物に必要不可欠なもの。

  ――つまり。
  せめて水が飲みたい……(泣)。

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「丸1日経っちゃったね、浩平」
  長森の声にも元気がない。

  このボートに乗っているのは、俺、長森、住井、広瀬、の4人。
  ちなみに、もう1つのボートには、深山先輩、茜、澪、柚木の4人。

「他のヤツはどうなったんだ……?」
「七瀬さん、川名先輩、繭ちゃん、南、中崎、南森……
  キミたちの分まで生き延びるから、安心して眠りまくってくれい……」
  ドライなことを、さらっと言う住井。
「は、ともかくとして……このままいけば俺達もヤバイんじゃないか?」
「みさき先輩が死んじまったかも知れんのに、深山先輩冷たいよな……」
「お、お腹すいたわ、もぅ……七瀬さんがいないことだけが幸いね」
「くすん……浩平〜、お腹すいたよぉ」
  俺は向こうのボートを見た。

「なんであっちのボートには、釣り道具から食器から、調味料まで揃ってるんだ
……?」

  茜が先程から面白いように魚を釣り上げ、深山先輩が手早くさばいて、ほか2
人に与えている。あげくのはてには、澪が寿司握りの妙技を披露していた。

「みさきがあれくらいのことで、死ぬわけないしね。みさきが帰ってきたら、あ
まり食べられなくなるから、今のうちに食べときなさい」
「私はもうおなかいっぱいです。みんなどうぞ」
『お寿司なら任せるの!  上月寿司の看板娘の実力を見せてあげるの
  ムラサキもガリもサビもあるからバッチリなの』
「みんな食べないの?  じゃあ私がもらってあげるね♪」
  
  いいな……向こう……。
  この状況下で魚分けてくれるとも思えんし……。
  ん……?  何か浮いてる……?

「……サメ?」
  そう、それはまさしくサメ――だったモノだった。
  鼻面が割られ、腹が陥没し、食いちぎられたような跡が残ってはいたが。
  強烈なアンモニア臭が鼻をつく。
  残念ながら、食えそうにない。

「……サメの皮って確か、歯と同じ構造してて、すっごく硬いんじゃなかったっ
け?  それに筋肉も強いから、よっぽどうまく料理しないと食べられないはずじ
ゃ……」
  長森の言葉に深山先輩がうなずいている。
  ということは、間違いないんだな。  
  つまり。
  この海にはサメをも食い殺すとんでもない怪物がいる……?
  ……ところで深山先輩は、いつの間に白衣に着替えてぐるぐる眼鏡をかけたん
だ?  あれではまるでプロフェッ……

  ズガアアアアアアァァァァァァン!!!!!

  ……ナゼ俺にだけ雷が落ちるんだ……?  空も晴れてるのに……?
  プスプス煙をあげる俺の耳に茜の冷静な声が聴こえた。

「……危険なことを考えるからです」


「このまま……死ぬのか……?」
  この美男子星人たる俺が……?
  生態系の1番下っぱになるのか……?
  このままではアオミドロがミジンコの金魚が猫で犬に噛まれて狂犬病の………
長森ってなんであんなに猫好きなんだ?やはりプレゼントには剥製を手作りで…
…。

  ……はっ、いかん。現実逃避している場合ではない!
  頭をぶんぶか振っていると、長森が大きな声をあげた。

「浩平、浩平っ!  大変!  島があるよっ!」

  ……どうやら死なずに済むかも知れん。

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  上陸し、ボートをほどけないようにしっかりと木に結びつけた。
「あ〜、よかった。とりあえず、水……。あと何か食えるといいな……。
  食い物探して食った後、少し探索してみよう。
  最悪、ここが無人島なら水と寝床を確保せにゃならんし。
  何はともあれ、メシを食おう」
  住井の言葉に、柚木が無邪気に答える。
「そうだよね。魚も飽きたし♪」
「「……………………(怒)」」
  殺気を膨らませる住井と広瀬を止める気にはなれなかった。


  ……見るからに島だな。でも一応、森らしきモノもあるし、うまくすれば生活
できるかも。
  ちょっと森を探検してみるか。
  俺は森に一歩ふみこんだ。
  目の前に何かがいた。
  大きさ約1.5mほど、垂れ下がった耳、全身毛むくじゃらの、いかにもキョ
ーアクそうな怪物が。
  ……これが……サメを食った怪物かっっ!?

「うわあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっっっ!!!?」
  
  叫びながら俺は右のストレートを放つ!
  すると怪物はそれを巧みにかわしながら、さらに近付こうとする!
  俺の放った左のミドルキックが完全に防がれる!
  強い!!!

「くっ……食われるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっっっっ!!!!!」
「誰が食うかあああああぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!!!?」
「もしかして……タマゴを産みつける気ね!?」
  ナイス・フォローだ深山先輩!!
「あんた達、人をなんだと思ってんのよっ?」
「怪物」
「ちがうううううううっっっっ!!!」
「食らえ怪物!!  ゴールデン・ボディ・ブロー!!」  
  防ごうとして、ボディーをガードする怪物。
  しかし。

  げごおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっっっっ!!!!
「イタあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!」  

  ……あ、間違えた。
  テキサス・ニー・ドロップが七瀬のこめかみにマトモに入ってしまった!!
  ……って、七瀬?
「七瀬、生きていたのか!?  奇跡だ。良かったな!」
「いいわけあるかああああぁぁぁぁっっっ、あほっっ!!!」
  さすがにごまかせないか。
  垂れ下がった耳に見えたのは、左右の髪の毛だった。
  毛むくじゃらに見えたのは、葉っぱだったらしい。
「キョーアクそうだったのは……」
「誰がキョーアクよっっ!!?」

  ……よく見ると、その後からみさき先輩、椎名、沢口、中崎、南森の姿が見え
た。

「はぅぅっっ……辿りついたのは無人島だし、誰も危機意識ってものがないし、
髪の毛は繭に引っ張られるし……あげくのはてに、やっと見つけた仲間には、テ
キサス・ニー・ドロップなんてかまされるし……」  

  ……よくテキサス・ニー・ドロップだってわかったな、七瀬。
  昔、長森にかましたときは、泣くばっかりで技のことなんかわかってくれなか
ったぞ。
「さすがは七瀬、生まれついての武闘派だな」
「誰が武闘派よっっ!!?」

  ……ん?  無人島?  さっき無人島って言ってたような……。
「やっぱり無人島なのか?  ここは?」

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  ……みさき先輩の話によると、つまりこういうことだそうだ。
  クルーザーから放り出された6人は、野性のカン――主に椎名のカンと、みさ
き先輩の食への執着による――のおもむくままに泳ぎ続け、俺達よりも速くこの
島に辿り着いたらしい。
  考えてみると、少なくとも女の子はONEヒロイン’Sの中でも、体力派ばっ
かりだ。
  そして、この島を一通り探索してまわったんだとか。

  ……ちなみにあのサメは、みさき先輩に襲いかかったところを、
「邪魔だよっ!!」
の一言のもとに鼻面を蹴り割られ、その後無事にみさき先輩の胃袋に収まったと
か。
  ……飢えたみさき先輩には、サメでも太刀打ちできないらしい……。

  ……ちなみに、このサメが漁師達に恐れられている「マリーンウルフ」の2つ
名を持つ凶悪なサメだった、なんてことは、この時点では知る由もなかった。
  この、みさき先輩と「マリーンウルフ」との戦いは後に、「絶海の死闘」と呼
ばれ、漁師達の語り草となる……。

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                                                                                   、、
  探索の結果、この島は無人島だと判明。それだけでなく、なんと、先人が使っ
ていたと思われる住居まで発見したという。
  
  俺達はその「住居」に入って行った。かなり大きな洞窟だ。
  洞窟の奥には、小川が流れているという。
  洞窟のあちこちにはちゃんと扉まであった。いたれりつくせりだ。

「たくさん部屋があるってことは何人もいたのかな?」
  住井の言葉にはみさき先輩が答えた。
「ううん、1人だけだって。
  『穴だらけだと落ち着かないから、扉を付けて体裁を整えた』んだって」
「……なんでみさき先輩がそんなこと知ってんだ?」
「カンだよ」
「………………………………………………………………………カンって……?」
「冗談だよ」

  七瀬がみさき先輩に代わって答える。
「日記とかが残ってたのよ、ここに」
「へぇ……」
「……日を追うごとに文章がヘンになってきて、最後の日付には『うに』『きけ
』としか書いてなかったけど……(汗)」
「……そりゃ怖い……(汗)」

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  こうして、俺達のサバイバルな日々が始まった。
  ……生きて帰れるのか……?

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  なんか続けてしまった2作目。
  最近「ONE英伝」がシリアスっぽくなってきてしまったのが不満なのかも。
  まぁ、TUBEの最新アルバム記念ってことにしとこう……。

  ちなみに、「テキサス・ニー・ドロップ」は、プロレスでコーナーポストから
飛び降りざまに、相手のこめかみにたたき込む膝蹴り(だったと思う)。
  キン●マンでテリー●ンが使ってたよーな……。