ONE英雄伝説8〜パタポ星域の会戦〜 投稿者: 北一色
かつて、戦乱があった。
ONE帝国に属さない国家、FARGO神聖教国との、血で血を洗う争い。
戦況は初期においては互角、その後、FARGO神聖教国に数々の優秀な提督
が現われ、ONE帝国は滅亡の危機に追いやられていった。
神聖教国の兵士――彼らに言わせれば使徒――達は死を恐れず、彼らの信じる
「教主」のために戦い続けた。彼らの教義では教国のために戦った者は「赤い月
(天国の様なものらしい)」のもとへ行ける、ということだった。それは彼らに
とって、最大の名誉らしかった。
「使徒」達は教国のために戦った。
「邪教徒」達に容赦はいらない。戦場で、または全くの非武装の惑星で、彼ら
は「邪教徒」達を殺し、貴重品を奪い、「邪教徒」の女を犯し、赤ん坊を虐殺し
――「赤く浄化された惑星」が数多く生まれた。

こうして、ONE帝国が滅亡寸前にまで追いやられた時――帝国に、1人の若
い女性の提督が現われた。
彼女は、神聖教国との数々の戦いで武勲をあげ、提督となってからは、占領さ
れた惑星を数多く奪還し、多くの国民を救った。
そしてついには、帝国史上初の女性の元帥にまで昇りつめた。
彼女は、少なくとも提督となってからは1度たりとも敗北を知らず、劣勢だっ
た帝国軍に、常に勝利をもたらした。いつしか彼女の名は教国軍にとって恐怖の
代名詞となっていった。
特に、彼女のその華麗なまでの戦術は、「ダンス・マカブル(死の舞踏)」と
呼ばれた。戦争に美が生まれることがあるとすれば、まさに彼女の戦術こそが至
高の芸術だった。

劣勢に追い込まれた教国は最後の戦力を結集した。後世に有名な「エターナル
星域会戦」である。
帝国軍総司令官となっていた彼女は、この会戦においてもその「神速、猛攻、
鉄壁」ぶりを見せつけ――教国軍を完全壊滅させた。ここにFARGO神聖教国
は完全に滅びたのだった。

しかし、軍の最高位にまで昇りつめた彼女は、次第に周囲に疎まれ始める。そ
の高い能力と人気を危険視する者が出て来はじめたのだ。
しかし、その心配は杞憂に終わる。彼女はあっさりと軍を退いてしまったのだ
から。――いわゆる寿退社(寿退役?)だった。
それでも、彼女の伝説は終わらなかった。彼女に命と家族を救われた者は、決
して彼女のことを忘れなかった。
そして彼女はこう呼ばれ続けることになる――「戦神」、もしくは「戦女神」
と。

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「まさか『戦女神』が出て来るとは……!」
スミイの声は呻き声に近かった。
「戦女神」、シイナ・華穂(もっとも結婚前は別の姓だが)。
スミイにとっては――もちろん浩平にとっても――いってみれば大先輩にあた
る。それは尊敬というよりは、崇拝に近いものがあった。
『勝てるのか……? いや、その前に俺は戦えるのか……?』
スミイはしばらく考えにふけっていたが、やがて顔を上げたときには、いつも
の不敵な表情に戻っていた。
『いいだろう。考えてみれば、これは最高の状況かもしれん。かの『戦女神』に
俺の戦術がどこまで通じるのか試してやる』
「全艦、砲門開け! 対砲撃戦用意!」
「で、でも、相手は……」
なにか言いかけるミナミを、スミイはさえぎった。
「かまわん。いくら相手があの『戦女神』でも、初めから戦わなければ死ぬのは
俺達だ。それにいくら『戦女神』でも、今直接率いているのはたかだか6千隻、
十分勝ち目はある」

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戦場は次第に白熱していった。
「これが……『ダンス・マカブル』か!」
シイナ分艦隊は、きりもむようにスミイ艦隊右翼に襲いかかっていく。その様
子はまさに、華麗なダンスの様だった。一方、スミイ艦隊もそれをなんとか食い
込ませまいと、半包囲体勢を作りあげて迎撃する。
「戦艦『ガイ・フォークス』撃沈!」
「高速巡航艦『マリー・ボッス』大破! 戦闘続行は不可能!」
「高速戦艦『イワン4』塔乗員全滅!」
スミイは完全にシイナ分艦隊を包囲殲滅しようとしたが、前方からはカワナ艦
隊が猛烈な砲火を浴びせて来るうえに、シイナ分艦隊後方からはシイナ艦隊本隊
による激しい援護射撃が襲いかかって来る。華穂1人にそこまで戦力は裂けなか
った。
「どうする……?」
焦るスミイだったが、ある策を思いついた。
「ミナミに連絡! 急げ!」

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「ポアロ、マープル、ブラウン、メグレ、クィーン、フィル。各中隊、準備はい
いか!?」
「「「OK!!」」」
ミナミは機嫌良く笑った。
「相手はサトムラさんでもないし、全く躊躇する必要はないぞ!」
……ミナミ以外は茜相手でも全く躊躇する気はなかったが、あえてそのことに
ついて言う者はいなかった。
戦闘前に意気消沈されるのもメンドーである。
それに、兵士たちは、この司令官がけっこう好きだった。
「よし、行くぞ!!」

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「ふふふ……久しぶりね、戦場というのも……」
かつて『戦神』とうたわれたシイナ・華穂が、退役したにも関わらず、出て来
た理由は、もちろん、可愛い我が子のためだった。
「みゅ〜、おかあさん……」
「なぁに、繭?」
「てりやきバーガー……」
「……えぇ、そうね。
早く戦闘を終わらせて、ハンバーガーをいっぱい食べましょうね」
「うんっ♪」
……などと、母子が楽しい一時を過ごしているとき――ちなみに戦闘中――突如
、通信が途切れた。
「シイナ分艦隊旗艦、『フラウ・ホレ』被弾!」
「みゅっ!?」

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「くっ……一体!?」
華穂はすぐに身を起こした。体の各所が少し痛んだが、そんなことは気にして
はいられない。
「状況は!?」
戦闘の真最中に気を抜いてしまったことを悔やみながら聞くと、しばらくして
艦長から、返事が返って来た。
「本艦にも被弾しましたが、損害は軽微! 戦闘の続行には問題ありません!
この攻撃は、反乱軍小型戦闘機群による奇襲です!」
「そんな!? 一体どこに!?
レーダーの反応にはなかったんでしょう!?」
「小型戦闘機は、戦艦などの影に隠れた宇宙空母から発進した後、すぐに他の艦
の影に隠れるようにしてくっついていたんです!
他の艦の反応にまぎれて、わからないようにしていたんです!」
「……してやられた、というわけね……」
すぐにいつもの冷静さを取り戻すと、華穂はすぐに命令を下した。
「いいでしょう。とにかく、一時撤退します。被弾した艦を中央に、装甲の厚い
艦を外側にして。急いで!」
命令しながら華穂は思った。
「あのとき」――FARGO神聖教国との戦争のときに、スミイやミナミのレ
ベルの部下が1人でもいたら、と。

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「あー、びっくりしたよ……。ね、雪ちゃん」
「とりあえず華穂にはケガもない」という報告を受けたみさきは、ホッと胸を
撫でおろした。
「そうね……でもこれは、華穂さんの油断というよりも、スミイ君の奇策が勝っ
た、というべきね。
ともかく、ミナミ君相手にドッグ・ファイト(接近格闘戦)は禁物、というこ
とね」
雪見の言葉に、みさきは不満そうだった。
「……じゃ、このままずっと撃ち合ってるしかないの?」
「そうは言ってないでしょ。もうそろそろ、戦況が変わるんじゃない?」
「……本当に?」

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「よし! 見たか! 『戦女神』といっても無敵ってわけじゃない!
必ず勝てるぞ!」
……しかし、スミイは心の中で思ったこと全てを口にしたわけではなかった。
『あの引き際の良さは、さすがだな。もう少し損害を与えられると思っていたん
だが……。まぁ、撤退させただけで満足するしかないか』
そう考えていると、報告が届いた。
「ムラタ艦隊、ミドウ艦隊が撤退して来ました。かなりの損害を受けている模様

スミイは凍りついた。ある推察が脳裏を駆け巡る。
「あの馬鹿ども……! オリハラを連れて来やがった!」
その推察どおりに――ムラタ・ミドウ艦隊の後背から、多数の光点が見え始め
ていた……。
……戦況は、変わりつつあった。

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そのころの髭とみさお。
「ろん! ひぎ、なんぼくせんそう!」
「んああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜!!!?」
南南南北北北一八六一一八六五
「これ、あめりかのひとがかんがえたんだってね。
えいごだと『しびるうぉー』っていうんでしょ。
『どんな、ろーかるるーるでもあり』だっていったよね?」
……髭は役満払いさせられた。

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ふっ、終了。……だんだん、「髭とみさおの楽しい麻雀講座(お姉さん:みさ
お、オマケの人形:髭)」ってカンジになってきた気もしますが、みさき先輩流
に言うと、「他人のそら似」ってやつですね、きっと。
……てなわけでWTTSさんのアイデアをまたも使わせていただきました。多
謝(今まで使わなかったのは、単に年号がわかんなかったからです……多分、1
861ー1865のハズ)。

ところで、いつの間にやら「ONE」の一周年だそうで。うぅむ、気付かんか
った……。私の注意力はあまいな……自覚してたけど。恋人にしたくない男ナン
バー1(別にシャレじゃないですよ!)を飾ってしまいそうだ……。

★ちょっと解説★
☆「ダンス・マカブル(死の舞踏)」=なんでも、中世ヨーロッパの魔女の祭り
だとかなんとか。あまりよくは知りませんが、響きが好きなので。ほかにも、「
デリシャス・デス(「甘美なる死」の意。お菓子らしい)」ってのも考えたんで
すけどね。

★超豪華特典★
なんと、今回破壊された戦艦名の人物が歴史上のどんな人物かわかった人に、
あるいは、ミナミが小型戦闘機群につけた名前の共通点がわかった人には、スミ
イ艦隊分艦隊の提督として死ねる、という特典が!早いモン勝ち、直接メールで
送ること!〆切は私が次回作(ONE英伝9)を書き終えるまで!

……って、誰も欲しがらんか、そんな権利(笑)。
ではでは。

P.S.
>雀バル雀さんへ
私はちゃんと18歳以上ですよー。メールアドレスも大学のだし。
……もっとも、この間散髪に行ったら、「中学生?」って聞かれましたけど…
…。……童顔で悪かったな。あの野郎、俺が有色人種だと思ってサベツしてやが
るんだ(←いいがかり)。