ONE英雄伝説3〜パタポ星域の会戦〜 投稿者: 北一色
ナガモリ・ナナセ艦隊を中核とする帝国軍3万7千は、パタポ星域外周部に布陣したナカザキ・ミナミモリ艦隊を中核とする反乱軍3万5千と対峙していた。
帝国軍は、右翼にナナセ艦隊、左翼にナガモリ艦隊、対する反乱軍は右翼にナカザキ艦隊、左翼にミナミモリ艦隊を展開した。
つまり、ナナセ艦隊とミナミモリ艦隊、ナガモリ艦隊とナカザキ艦隊がそれぞれ向き合う形になる。

「反乱軍はイエロー・ゾーンを突破しつつあり……」
オペレーターの声も緊張を帯びてくる。
「レッド・ゾーンに到達!!」
旗艦「Aschenputtel(アッシェンプテル)」の艦橋で、ナナセはゆっくりと息を吸い、手を挙げる。
そして、
「撃て!」
挙げた数倍の速さで振り下ろした。
中性子ビームの光が宇宙空間の闇を切り裂き、ほぼ同時に解き放たれた反乱軍のビームと激突し、カレイドスコープ(万華鏡)のように煌いては消えていく。
ミサイルが迫り、射出されたおとりのミサイルが、大量の電波と熱と光を撒き散らしながら敵のミサイルの電子機器をだまして、何もない空間で爆破光を撒き起こす。

「突撃!」
30分弱の交戦の後、ナナセ艦隊は巧みに凸形陣をとり、ナナセの号令一下、ミナミモリ艦隊に向けて突出し始めた。
「もぅ、だめだよナナセさん。相手の方が数が多いのに〜」
旗艦の艦橋から瑞佳が通信を送ると、
「ふっ、大丈夫よ。例え10倍の数でも乙女を止めることなんかできるわけないわ。瑞佳、乙女の条件は何か知ってる?」
「え〜と……優しさ、かな?」
「違うわね……気合いよ!」
それはなんか違うよーな気がするぞ、ナナセ。
しかし。
「ふぅん……初めて聞いたよ。乙女って奥が深いんだね」
君もちょっとは疑いなさい、瑞佳。
「あ、だからそういう服を着てるんだ?」
ナナセは白くて長い上着を着て、胸にサラシを巻いていた。御丁寧に右手には木刀、本来はブラスターを入れるホルスターには銀色に光る特殊警棒が装着されていた。そして上着には「喧嘩上等」「天上天下唯我独尊」「夜露死苦」などといった書き込み……。
俗にいうレディースの格好である。
木刀はかなり使い込まれているらしく、少し黒ずんでいた。刃先にあたる部分に茶色のような赤黒いしみのよーなモノがこびりついていたが……瑞佳は気付かなかったようだ。
……そのほうが幸せかもしれない……。
「この格好の方が気合い入るのよ」
「うん。格好いいよ、ナナセさん。それじゃ、こっちも前進するね」
瑞佳の後ろで副司令官イナムラ・佐織がこっそりため息をついていた。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

そのころ、補給線を襲撃しようと画策していたスミイ艦隊は、思わぬ抵抗に手間取っていた。
サトムラ艦隊は1万6千、スミイ艦隊は8万。
圧倒的にスミイ艦隊が有利にもかかわらず、サトムラ艦隊の防御網を突破できない。

茜は、恒星の重力を利用した遠心力で、通常の数倍のスピードで戦場に到達。そのまま、今にも補給艦隊に攻撃を加えようとしていたスミイ艦隊に巧妙に痛撃を与えた後、補給艦隊とスミイ艦隊の間に割って入り機雷原をしいて前進をはばみ、、その後は一転して防御に徹した。

さすがに数が違いすぎる為、じりじりと戦力を削ぎ落されてはいたが、茜は決して戦線を崩させなかった。
補給艦隊を恒星付近のアステロイド・ベルト(小惑星帯)に隠れさせ、旗下の艦隊にも小惑星を盾にさせ、その陰から巧妙に攻撃させた。
何より凄まじいのは、補給艦隊2万にも攻撃させたことであろう。
補給艦には武器は装備されていない。しかし、補給物資を運ぶために、重力子を発する「重力アンカー」と呼ばれるアームのようなものがついている。
茜はこの重力アンカーを使って、小惑星のかけら(数十万トン)を敵艦に向かって投げつけさせたのだ。
1個のかけらは数隻の敵艦を破滅に導いた。
補給要員は戦闘集団ではないが、ひとたび茜が敗れれば、自分たちが死ぬことになる。運がよくても捕虜になる。そんなわけで、彼等は必死で戦った。

「さすがは『鉄壁サトムラ』……防御に徹したときの強さはハンパじゃないな……」
旗艦「Jack the Ripper(ジャック・ザ・リッパー)の艦橋で、スミイはうなった。
そんなスミイにシュンが囁いた。
「そろそろ『彼』の出番じゃないかな?」
「『奴』か……そうだな。……ミナミに通信! 戦闘機群で敵艦隊をほら穴から追い出してやれ!」

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

そのころの髭とみさお。
「あ、いきなりあがってる。てんほー、またやくまんだよ☆」
「んああああああぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」

……髭が完全にツキに見放されていた。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

そしてミナミ。
「よ、よーやく出番が……あ、あれ? まさかここで終わり? そ、そんなー!!」

次回はきっと君が活躍する……はずだ、ミナミ。……たぶん。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

ひゃっほう。なんか続いてしまったこの「ONE英伝』ですが、……実は「1」を書いたときには、結末をなーんにも考えてませんでした。
い、いや、今はちゃんと考えてありますよ。……連休中に、ふと20秒くらいで思いついたことですけど(ああ……単純)。
一部の人には、わりと好評みたい(といっても銀◯伝風だからだろうけど)なんで、もーちょっと続けよーかなと思ってます。
要塞戦とか出来たらいいなぁ……。

★前回のお詫び★

★スミイの旗艦「Jack the Ripper」のRをLと間違えてました。「Lipper」じゃ「唇野郎」(ワケわからん)になってしまいますね(T_T)。

☆「Rumpelstilzchen」=「がたがたの竹馬小僧」でした。前回書いたことは忘れてください(T_T)。

★ちょっと解説★

☆「Aschenputtel」=「灰かぶり」。フランス語では「シンデレラ」になります。「シンデレラに憧れる女の子」と「猫かぶり(笑)」。ナナセ以外にこの艦を旗艦にできる人はいないでしょう。

ううっ……長くなりすぎた。2つに分けるんじゃなかった……。
私のなかで1位、2位の瑞佳と茜を分けたのが致命的だった……。
では、このへんで。

P.S.
「山葉堂」の読み方ってなんでしょーね?……私は単に、「さんようどう」の読み方を考え付きもしなかったんですが……(笑)。

>WTTSさん
「百万石」って一体どんな役満ですか(?_?)
私は麻雀は点計算もできないのです。一応、ヘタなりに打てますが……。