瑞佳にせかされながら、浩平は旗艦の艦橋に走った。士官学校時代からの、おなじみの光景である。

戦場はパタポ星域。小規模ながら有人惑星もあり、巨大民間企業「パタポ屋」の本拠地として名高い。

パタポ星域外周にて、両軍は対峙した。
帝国軍は、前衛にシイナ艦隊１万５千、左翼にカワナ艦隊１万４千、右翼にナナセ艦隊１万４千、後衛にサトムラ艦隊１万６千。コウヅキ艦隊１万２千を予備兵力とし、本隊として浩平自身が率いる４万７千の大艦隊が中央に布陣している。総兵力１１万８千隻。
対する反乱軍は、そのおよそ４分の１。３万５千といったところか。
「？ 妙だな……こんな勝ち目のない戦いをする奴だとは思えないんだが……？」
旗艦「Ｒｕｍｐｅｌｓｔｉｌｚｃｈｅｎ(ルンペルシュティルツヒェン)」の艦橋で浩平はつぶやいた。
まぁいい。これなら澪と茜の艦隊を動かさないでも勝てるだろう。彼女らにも、たまには後方で楽をさせてやろう……。
そう考えたとき、後衛の茜からの通信がはいった。
「浩平、大変です」
「どうした？ヤマハドーのあのワッフルでも売り切れてたのか？」
「それも大変ですけど、違います。スミイ艦隊がこちらに接近しつつあります！」
「何！？……しまった！ スミイの狙いは補給線か！」

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

８万隻の大艦隊を率い、旗艦「Ｊａｃｋ ｔｈｅ Ｌｉｐｐｅｒ(ジャック・ザ・リッパー)」の艦橋でスミイは会心の笑みを浮かべていた。
「くっくっく……オリハラ、お前達の弱点は補給線にある！」
「確かに、補給艦隊が攻撃を受けたと聴いたら、彼女らの戦意は大きく下がるだろうね」
そう賛同の意を示したのは、客員提督(ゲスト・アドミラル)ことヒカミ・シュンだった。
「カワナ提督、サトムラ提督、シイナ提督、コウヅキ提督……少なくともこの４人は大いに動揺するぞ。そこをつけばこちらの勝利は間違いないぞ！」
「そうだね……」
シュンは笑った。
「攻撃させてくれれば、だけどね……」

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

サトムラ艦隊旗艦「Ｄｏｒｎｒｏ″ｓｃｈｅｎ(ドルンロースヒェン)」の艦橋で、副司令官ユズキ・詩子が茜に尋ねた。
「茜、どうするの？」
自軍のピンチだというのに、いつもの「詩子ちゃんスマイル」は健在である。さすがに全国４１５億人の詩子ファンを虜にしてしまうだけのことはある(本当か？)。
「当然、私が守ります」
茜は決然として言った。補給艦隊には彼女のためのワッフルと鯛焼きの材料が大量に詰め込まれている艦もあるのだから(当然、ワッフルと鯛焼き作りの匠(笑)は強制的に連れて来てある)。その材料の量たるや、離陸時になかなか飛べずによろめいていた程である。
……もっとも、みさきの場合はそれが３隻分だったが。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

浩平も判断を迫られていた。
前面に展開したナカザキ艦隊・ミナミモリ艦隊を核とした反乱軍をほっぽりだして、補給線を守るか。
一戦して撃破、茜が戦線を維持できている間にスミイを倒しに行くか。
隊を分けて、片方がスミイ、もう片方が目の前の反乱軍を狙うか。
……あるいは茜を見殺しにして、目の前の反乱軍を叩き潰すか。
「……なんて迷ってられないか。くそっ！
ナガモリ！２万３千の艦隊をお前に預ける！ 俺は補給線を守りに行く」
「うんっ、わかったよっ。でも……」
「なんだ？」
「サトムラさんが気にな……
や、やっぱりなんでもないよ。頑張って来てね」
「？ ……まぁいいか。じゃあ頼むぞ」
「うんっ」
瑞佳は自分の旗艦「Ｇｅｓｔｉｅｆｅｌｔｅ Ｋａｔｅｒ(ゲスティーフェルテ・カーター)」に移乗していった。
澪にはすでに、茜の援護に向かわせてある。
みさきと繭に補給線が狙われていることを告げると、目の色を変えて通信を切り、敵を放り出して茜の援護に向かってしまった。
……特にみさきの目に殺意の炎が宿っていたように見えたのは……気のせいだろうか……？
ナナセにまで援護に向かわれては戦線が維持できないので、彼女には「空腹に耐えられないようでは乙女とは言えない」とムチャな事を言い含めておいた。……まぁ、本人も納得していたから問題ないのだろう……多分。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

そのころのミナミ。
「俺の出番は……？」
……すまん、忘れてた……。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

そのころの髭とみさお。
「ツモ！こくしむそう１３めんまち！だぶるやくまんだよ☆」
「んあああああぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜！！！」
……髭がみさおのカモにされていた。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

……てなわけでちょーしこいて２作目書いちまいました。
うーん、いーのかなー……まあとりあえずどっからも苦情来んかったし……。
……前に書いたのえらい前のことのよーな気がするけど……。

★ちょっと解説★
帝国軍(浩平の方ね)の艦の名前はグリム童話からとってます。だから、なんか変な響きなのもあります。
ちなみに、

☆Ｒｕｍｐｅｌｓｔｉｌｚｃｈｅｎ＝そのまんま「ルンペルシュティルツヒェン」。意地悪な妖精の名前です。「ひざの曲った竹馬小僧」って意味だったかな？

☆Ｄｏｒｎｒｏ″ｓｃｈｅｎ＝「いばら姫(眠り姫)」です。″はｏの上にあるとおもってください。

☆Ｇｅｓｔｉｅｆｅｌｔｅ Ｋａｔｅｒ＝これは皆さんお馴染み「長靴を履いた猫」です。余談ですが、この猫って牡だったんですねー。

……てな感じでつけてます。……日頃使いもせん辞書を引いて必死で調べましたが、所詮私はドイツ語なんて、出席とお情けで単位を貰ったよーなものなんで、間違ってるかもしれません。本気にすると恥をかきます。
……「白雪姫」なんて誰の旗艦になるかバレバレですねー。
反乱軍の方(スミイの方ね)は、あまり気にせず思いついたままつけてます。ちなみに、

★Ｊａｃｋ ｔｈｅ Ｌｉｐｐｅｒ＝「切り裂きジャック」。かの有名な殺人鬼です。

まあ、知らない人のために、参考までに。

では、私の気力と記憶が持てば、また会いましょう。 再見！