アルテミス  投稿者:神凪 了





もう少しで。
FARGO本部施設に到着する。

この大部隊を引き連れて。


「・・・悪いな。」


彼・・・南明義は。





・・・・・。





第四十六話「合流」





・・・・・。





「うっ・・・・」

葉子の攻撃を防ぐために、力を防御にまわして。

・・詩子の束縛が、解ける。

「あぁぁぁぁぁぁッ!」
「・・・・。」

不可視の力で殴り掛かってくる詩子と、遠距離から援護射撃をしてくる葉子。

(どうすれば・・・)

逃げようにも、遮蔽物も何もない、この空間。
自分が入ってきたところが何処にあるのかさえ、もう分からない・・・

敵が詩子や葉子でなければ倒す事もできるが・・・


(どうすれば・・・!)





・・・・・。





「・・・やばくないか?」
「やばいよ。」


FARGO内を疾走していた俺と天沢。
その行く手を阻む連中。


・・悪魔ってやつか。


おどろおどろしい、というか、生き物なのかどうかもよくわからない外見のものから、人間そのものの奴。
そいつら・・・何人くらいだ?
まあ、少なくとも通路で挟み撃ちにされてるわけだから、

「どうする?」
「・・・・通路の端によって。半円状にバリアーフィールドを展開するから、銃器で攻撃。」
「・・了解!」

二人で一足飛びに、通路にぶち当たる。
肩に打撃。気にしてはいられない。

めりっ、と俺達が今まで立っていた部分の床がへこむ。
不可視の力だ。肉眼で確認できる。
空気が澱んでいるのが見える。

「楯ようつせぇっ!!!」

ぎぃんっ

不可視の(と言っても見えているような気もするが)バリアーフィールドが展開され、『悪魔』連中どもの攻撃を受ける。
全て、受けきる。なかなか反則的だ。冗談抜きにそう思う。

「今度はこっちの番だ!」

勢い込んでトリガーをひいた。

ガガガガガガガガガガガガガガッ!!

不可視の力で防御する奴もいるが、圧倒的な量の弾丸に、あっけなく倒れ伏していく。
天沢も攻撃の隙をついて、一匹二匹と倒してゆく。

ほどなく。


かちっ、かちっ。

「弾切れ・・・」

マジかよ。


敵も、こっちの弾切れに気づいたのか、少しずつ包囲の輪を狭めてくる。
いつのまにか、援軍も来ていたようで・・・。

「さばけそうか?」
「無理。」

あっさり言ってくれる。
大ピンチってことだろ?

「後何分くらい持つんだ?」
「・・・せいぜい20分。」
「・・・その後、どうなる?」
「楯が破られたら不可視の力に押しつぶされて死ぬよ。」
「・・・三択だ。」

1.美形でかっこいい浩平君が起死回生の素晴らしいアイディアを思い付く
2.この大ピンチに仲間が登場。助けてもらえる。
3.助からない。現実は非情である。

「さーて、どうしたものかな・・・・」

ここはやっぱり1だよな?

「天沢、この後ろの壁に穴を空けて逃げられないか?」
「いいアイディアだけど、タイミングを外したら二人とも死ぬよ。」
「構わない。このままじゃどうせ死ぬんだろ? いちかばちかにでも賭けるさ。俺は瑞佳を助け出すんだ。」
「あと、そこの壁の向こうが何もない・・・ここは地下だからね。土だったら、言うまでもなく、死ぬよ?」
「・・・・賭けるさ。」

ポケットの中に手を突っ込んでそれを握り締める。
金属の冷たい感触。ペンダント。

「1、2の3で穴を空けて、飛び込む。いいよね?」
「了解。・・・天沢、ミスるなよ。」
「1、2の・・・」
『3っ!!』


ごっ


壁が一瞬で風化するように。
崩れ落ちる。

「今!!」

土かどうかも確認せず、二人して後ろ向きに跳ぶ!!
その後に来たのは・・・・


落下。


「って・・・・うぎゃああああああああ!!!!!」
「お、折原っ、落ち着いてよっ!!」


がんっ!!


後ろ向きだったので受け身もとれずに床に叩き付けられる。
これは・・・ちょっときついかも・・・


「な・・・なんで天井から降ってくる?」
「ってて・・・その声は・・・?」

呆れ顔の巳間晴香、巳間良祐、一人驚いて目を見開いたままの上月澪。

「・・まぁ、無事で何よりだ。折原、天沢。」
「そちらこそ・・・あいたたた・・・・」

<・・・大丈夫?>
「のわっ・・・」

直接、脳髄に響く声。

「そういや、意志の疎通ができるようになったんだよな、澪」

うんっ、と元気よく頷く。

「それより・・・早くこの場を離れたほうがいいな。」
「早速、続いて空から降ってこようとしてるわねぇ・・・・」

この空間は、二〜三階層ぶち抜いて造られている空間だったらしい。
遥か上の方にぽっかりと穴が空いて、そこから異形の悪魔どもがひしめき合っている。

っていうか・・・よくあの高さから落ちて生きてたな〜。


「不可視の力で落下速度を抑えたからね。」

天沢が答える。心でも読めるのか、こいつは。
しかし・・・

「不可視の力って便利なんだな〜・・・・」
「そうでもないけどね・・・できないことだって一杯あるよ。」
「たとえば?」
「例えば・・・・死人を生き返らせたり、とかね・・・・」

天沢郁未さんのことを言ってるのか・・・
そういや、こいつの母親なんだよなぁ・・・

とてもそうには見えなかったけど・・・俺達と同い年なんじゃ無いかっていうくらいに・・・
・・・ちょっと言い過ぎかな?


「ほら、ぼさっとしてないで走る!」
「あ、すいません」

いよいよ上の方から悪魔どもが落ちて来そうだったので、5人して走り出す。
とりあえず、澪たちは無事だったのか・・・まあ、ベテランが二人も居るから大丈夫だろうとは思っていたが・・・。


シュン、住井、七瀬、茜、深山先輩・・・・無事だろうか・・・?
未だにウワサの『セイレーン』だとか『ヴァルキリー』が出てこないのが気になるが・・。
もう、倒されたりしているんだろうか・・・?





・・・・・。





鹿沼葉子と柚木詩子の攻撃を的確に捌いている。
やはり、並ではない。

流石だ・・・。


「里村さん!・・・葉子!?」


来た。
物語の登場人物達よ。


どくんっ

一瞬だけ、戻ってくる。長森瑞佳が。
が、一瞬で打ち消す。所詮廃人。折原浩平の出現に反応して、浮かび上がろうとしただけだろう。
まだ、二重人格的な状態で、完全に乗っ取ったわけではないからな・・・





・・・・・。





「何だこりゃあ・・・」

広大な空間を見て良祐が。

「葉子っ!?」

信じがたい光景。葉子さん。
それと・・・茜が戦っている・・・
しかも不可視の力に覚醒している!?
一体何が起こっているのか・・・・?

ぼそっ、と。不意に。

「・・・物語の登場人物が・・・現れたか・・・。」

少女の声。猫好きだった少女の声。とても弱かった、彼女の。
今は、刃物で突き刺すような感触がした。

二人は、瑞佳を見据える。

「長森瑞佳さん・・・氷上君の言っていた事は事実だったみたいね・・・」
「・・・にわかには信じられなかったがな・・・」
<たすけるの>
「わかってる、澪・・瑞佳・・・今、助けてやる・・・」
「折原、油断しないでよ・・・」


厳かに。瑞佳が口を開いた。

「鹿沼葉子、柚木詩子、やめろ。」

茜への攻撃を中断して。
二人が瑞佳の両脇に付く。

茜もふわっ、と浮き上がるようにこっちまで移動してくる。


「茜・・・お前?」
「浩平、みなさん・・・話は・・・後です。」
「・・・ちゃんと説明するのよ。その、あなたと、あの子・・・長森瑞佳『アルテミス』の背後にみえる紅い月とかもね・・・」
「・・・・・・」

茜は答えず、瞳を閉じた。
よく見ると肩で息をしていた。
一体、何時から戦い続けていたのだろう?


「さて・・・はじめようか・・・」



「長い御伽噺を。」





<第四十六話「合流」 了>
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ううっ・・・
みさき「どうしたの? あんまり間があいたから、切腹でもするの?」
それはしない・・が、確かに間があいたのは事実・・・。
いい加減、あらすじをつけなければ迷惑だろう、そう思ったんだ。
HDDクラッシュしたのもいい機会だしな。
みさき「あれ・・・? でも、あらすじなんて・・・」
そう・・・今までのあらすじを書くために、読み返してみた。


・・・恥ずかしくって直視できねぇぇぇぇ!!!


みさき「・・え〜と」
何しろ、書き始めたのが半年前だからなぁ・・・あの頃は若かった。
今もあんまり変わらないけど。
みさき「でも、だからってあらすじが無いと・・・」
みなまで言わないでくれ・・・わかってるんだ・・・
あらすじが無いと、こんな長い話迷惑だろうさ・・・
書いてる本人だって忘れてることもあるのに・・・
みさき「了ちゃん・・・無責任。」
それを言うなみさき先輩・・・
みさき「責任とって切腹だね」
はっ、何故!?
みさき「介錯は私がするからね」
はっ、その手にした刀はいったい!?
みさき「えいっ、今までの恨みだよ〜」
ぎゃ、ぎゃああぁぁぁぁぁぁ!!!!!


(SE:なんかスゴい音)


・・・ふっ(がくり)


神凪 了、責任を取る。

みさき「じゃあ、次回はなるべく早めに会おうね♪」