White Death  投稿者:神凪 了




今日は卒業式だったよ。
・・晴れてた。

旅立ちにふさわしい晴天だったよ。
旅立ちに・・・・




・・・・・。





『私はここに居るよ。』


それだけだった。




・・・私は屋上に立っている。
卒業証書は家に置いてきた。服は制服を着たままだ。
そして、遺書も。


――とうとうこの時が来てしまったんだね。


子どもの頃の幻影。
幻を纏っていた昨日。


卒業。


『・・・大丈夫なの?』
『大丈夫、だよ』


――大丈夫じゃないよ。


この制服を着てここに立つことはできるかもしれない。
でも、それは幻の残滓を集めて無理矢理再現しようとすることに他ならない。
そして、そんな事はできないのだ。





『私はここに居るよ。』





――うそ。





『好きな人を、束縛したくないんだよ。』





――なら、なぜここにいたの?





『私はここに居るよ。』





誰かに見つけてほしかった。
誰にも見つけてほしくなかった。

誰かを好きになりたかった。
誰かに好きになって欲しいと思っていた。
誰も好きになってはいけないと思っていた。
誰も好きにならないで欲しいと思っていた。

誰かに抱きしめてほしかった。
誰も束縛したくなかった。


わかってほしかった。
私が抱えているものを。
この深淵を。帰ることのない無間地獄を。



見えないよ。



何も。



明日が来れば。
世界は変わる。
私は何も知らない。
だから、今日という日が終わる前に、私を終わりにしようと思う。
明日が恐くて。
踏み出してみればなんでもないことなのかもしれないのに。



――なんでだろうね。



何が大切なものを無くしたんだよ。
ここでようやく見つけて、そして無くしちゃったんだよ。
探し物は無くした場所でするよね。
でも、私は目が見えないから、きっと見つからないよね。


それは宝物なんだよ。
他の人にはただのがらくたに見えて、それどころか見えすらもしないかもしれなくて。
でも、とても大事で。



――せめて、普通だったら。



忘れたつもりでも、不意に。
人のいないところで、泣いてる。
夜起きて、ひどい衝動に襲われて、泣いてる。ベッドの中で。
ふと、授業中にだって。
ご飯を食べてるときだって。
彼とお話してるときだって――――彼って、誰?



――もうどうでもいいのかもね。



そうだね・・・。



制服のポケットの中に、袋に入ったままのカッターナイフ。
これを買ってくるのも大変だったんだよ・・・・。
人に頼むこともできないから・・・。
お母さんにも、お父さんにも、雪ちゃんにも、澪ちゃんにも、ほかの誰にもね。
言えば、きっと止められちゃうから。



慰めって、何?
陳腐な言葉が助けになるの?



ドラマって、本当に陳腐だよ。
もう、見るのも嫌になったよ。
どんなに苦悩したって、いつかは答えが見つかるもの。
見当違いの励ましの言葉に流されて。



現実はそんなことはないから。
だから、現実って嫌だよ・・・・・。





今、何時くらいなのかな・・・時計も見えないから。
今日は夕焼けかな。
夕焼けだからって晴れなんて限らないから。
晴れなんて・・・・。





ためいき。





悪いこと。
したのかな。


したとして、この報い。
重過ぎるよね。


神様って不公平だよ。





かちかちかち・・・・





まだ、手が震えるんだね・・・・。
まだ、恐いんだね・・・。
まだ、未練があるんだね・・・。



うれしいよ。




ぎりっ





「さよなら。」










































・・・・・手が、熱いよ。





『こうかいしてるの?』
「・・・誰?」
『しにがみ、だよ。』
「・・・そうなんだ・・・お迎えってやつなのかな?」
『ちがうけどね。そんなところだよ。』
「そう・・・・」
『こうかい、してる?』
「納得いかないよ・・・なんで私だけこんな目にあってるのかな、ってね・・・」
『そうなんだ。でも、それってずいぶんむかしのことだよ。』
「・・・昔?」
『けっしんできるなら、あのときにしんじゃってもかわらなかったのにね。』
「待ってみたかったんだよ・・・。死ぬのと生きてるのがおんなじ事に思えたから・・・」
『ぜんぜんちがうよ。』
「・・・違いをわかりたかったんだよ。生きてることが、死んじゃうことよりもいいことになりますようにって。」
『・・・なんで?』
「・・・・。」
『なんであきらめちゃうの?』
「・・・・。」
『もうすこしまってたら、いいことになるのかもしれないのに。』
「・・・もう、待てないよ。」
『・・・そう。』
「・・・そうだよ・・・・・。」
『・・・こうかいしてるんだよね?』
「・・・・。」
『みれんがのこったなら。』
「・・・・。」
『しかくはあるよ。』
「・・・わからないよ」
『わたしたちといっしょだから・・・』
「・・・わからないよ・・・」
『もう、おしまいだよ・・・・』
「・・・・。」
『ここが、終わりなんだから・・・・』





『えいえんはあるよ・・・ここにあるよ・・・・。』





『これがわたしののこしたこうかいだよ・・・・』





『あなたののこしたこうかいはなに・・・・?』







































・・・・・。





「・・・・!!」





「馬鹿・・・・!!!」




「どうして・・・どうしてこんな馬鹿な・・・・!!」




「なんで一言も・・・・相談もしてくれないのよ・・・・!!」




「親友・・・・なのに・・・」









『私はここに居るよ。』









「・・・・何・・? いまの・・・」









『・・・・私はここに居るよ。』









・・・・・。





あなたののこしたこうかいはそれなんだね・・・・。
そうやって、ずっと・・・・。
じゅうそくされるまで・・・。
ずっと・・・くるしみつづけるんだよ・・・・。



じゅうそくされるまで・・・しろいしにがみとしてね・・・



わたしは・・じゅうそくされたもの・・・・



ね・・・こうへい・・・・





くすくすくすくす・・・・・







































ばいばい・・・みさきおねえちゃん・・・・


















くすくすくす・・・・





以上。
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お久々の神凪(相変わらずスランプ中)です。
今回は以前にかいた「過去との決別」の過去話らしいです。
このあと、えいえんのせかいから帰還した折原浩平君が今度は、みさき先輩との絆に悩まされる話だとか。
絆があるおかげで今度は消えちゃいそうになっちゃうんだよねぇ・・・大変だな、浩平。
雪見「・・・書くの? ただでさえ、みFCのヒットマンに狙われてるのに(注:狙われてません)」
・・・嘘です。考えてあっても続きは書かないです。
でも、なんか・・・こういう話ばっかかいてるね(^^;
みさき先輩が嫌いなのかなぁ・・・?
雪見「・・・小さな男の子って、好きな女の子をいじめたりするのよね」
・・・だからなんだよ、雪ちゃん・・・?
雪見「・・・・ガキね。」
・・・・・。
雪見「・・・・。」
・・・・・。


(続かない)