アルテミス  投稿者:神凪 了



「FARGOの本拠地に攻め込む・・・今度ばっかりは生きて帰れないかもしれないな・・・」

俺達は学校の保健室のベットの上に横たわっていた。
俺は・・・七瀬さん、いや、留美と・・

人の温もりという言葉とは随分ご無沙汰していた気がする。
折原や南は、極限状態にあった時も人間味を失う事はなかったけれども・・・


「そんなこと・・・」


・・こうしていると心が、安らぐ。
正直、俺は怖かった。

戦う、理由。

折原は長森さんを救うために。
深山先輩は川名先輩のために。
未悠さんと留美は母の仇・・・
巳間さんたちは平穏を手に入れるために。


・・里村さんは・・よくわからないが・・・母親の仇のために・・・?


あいつは・・・氷上シュンは本当に分からないが・・・




俺は、何のために戦うんだろう・・・


特別な力があるわけでもなく、


特別な動機があるわけでもなく・・・


「住井君・・・・怖いよね・・・」
「・・・。」
「私も・・・・やっぱり怖いよ・・・」
「・・・。」


本当は震えている彼女を。

・・・・そんな彼女を。


・・・好きな人のために戦うのは理由にはならないのか。


・・・好きな人を守りたいから戦うのは十分な理由になるはずだ。


たとえ戦力にならないのだとしても、いてもいなくてもそう変わらないのだとしても俺がいれば何かが変わるかもしれない。


だから・・・・


「一緒に・・・生きてかえろう・・・」


君のために。





・・・・・。





第四十四話 戦えた、理由





・・・・・。





違う世界。
俺はそこに居た。

ただ灰色だとおもっていた床や壁も。
無色透明だと思っていた大気も。
風を切る音すら。

風が渦巻くのが見える。
自分の地を踏む音。その細かい一つ一つ。
足のどの部分でどんな音を立ててるのかさえ。

全て・・・・


「おおおぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」


がきぃぃんっ!


流体金属がひしゃげる。
一呼吸を放つ間に『敵』の懐まで入り込んでいる。

自分の筋肉が軋む音が聞こえる。
骨が悲鳴を上げる。


(構っちゃいれらないっ!)


恐るべきスピード。
目にも移らないほどの『敵』の早さは。


(逃がさねえっ!)


地を蹴って逃げる前に。
最初に入れた一撃から、体勢を立て直す前に。


ぐきゃっ


「・・・!!」


足を、踏み砕く!
そのまま、足を踏み押さえて動けないように。


どがっ


腹に、強烈な一撃。
だが、足を押さえて吹き飛ぶ事すら許さない。


(・・・!)


いくら限界以上に筋肉を膨張させたところで・・・
いくら特殊な訓練を受けたところで・・・・

人の身体は人以上のものにはなれねえけどっ!


ざくっ


腹部に流体金属の刃が突き刺さる。
俺を殺すために。


(こんなものが・・・効くかっ!)


出血。だが、もはや痛みすら感じない。
俺は・・・反撃をする。


ぶちいっ


両腕をもぎ取る。
意志の力を失った流体金属はどろり、と床に流れる。


そして。

今まで以上に強烈な一撃を。



椎名繭の表情にはじめて恐怖が浮かんだ。



ごきゃっ



首の骨を折った。



そのまま拳銃を引き抜き
自動的な自分の体は
椎名 繭の
顎に銃口を押し当てて


(おい、何を・・・)


引き金を


(繭を、殺す気か!?)



最後に繭の口から漏れた呟き


口の端から血を流して。


黒い瞳。


人間の瞳。


「おかあ・・・・さ・・・・・」



(あああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!!)



「たす・・・け・・・」



ぱんっ



床一面に血の華が咲いた。



・・・・・。





「近い・・・ものすごく、近くに・・・・・・」
「天沢・・・」


信じられない事が起きていた。


「ど、どうしたの?折原君?顔色・・・」
「俺の能力・・・接続が・・・」


信じられない事が起きていた。


「七瀬の・・・接続が途絶えた・・・これって・・・」
「・・・えっ?」


信じられなかった。


「七瀬が・・・死んだ?」





・・・・・。





(・・・・?)


額に、嫌な汗がびっしりと浮いていた。

人を殺すという事は・・・果てしなく重い・・・

それが、知人ならなおさらだ。



考えるべきじゃない・・。



(そうだ・・・七瀬さん・・・留美は・・・)




それは。




・・・人の形には見えなかった。
・・・人が、こんなポーズを取れるのかとおもった。


両腕が奇妙な方向に曲がっていた。
関節が・・・二つほど増えているんじゃないだろうか?

・・・怪我をしているのはそこだけじゃない。
いや、怪我をしていないところが今の彼女にあるんだろうか・・・・




・・その


























・・・下半身が・・・完全に・・・潰されていた・・・・




赤黒いものが服の端に見えるのと、服そのものが赤く染まっているのと・・・




あるべき所になかった・・足が・・・。












それに・・・それに首の骨も間違いなく・・・



折れている・・・いや・・・『粉砕』されている・・・?












・・・死んだ?





七瀬さんが・・・留美が・・・・死んだ?
























「うっ・・・・」




































「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

















<第四十四話 「戦えた、理由」了>

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(SE:うぃんうぃん、がっちょんがっちょん)

「ヤハ、ミンナゲンキカイ?カミナギダヨ。
エイエソハアルンダヨ、シッテタカナ?」

やかましい、偽物。

(SE:がちゃん)

みさき「あっ、了ちゃんが壊したぁ〜!!」
・・・って言うか、何だよ、これ。
みさき「了ちゃんロボだよ」
・・・・。

(SE:がしゃんがしゃん)

みさき「やめてよ〜」
人の顔と声を使って変なもの作るんじゃない!!
ったく・・・
みさき「だって、暇だったんだもん・・・」
はぁ・・・みさき先輩は出番終わったからいいかもしれないけど、神凪は忙しいんだぞ・・・
変な事で時間を使わせるんじゃない、全く・・・
みさき「えいっ、レーザー!」

ぽちっ

(SE:がちょん・・・うぃんうぃんビーーーーーーーーーーーーー)

って、ぎゃーーーーーー!!

神凪了、全治三ヶ月(急所は外れた)


みさき「あれ?あたっちゃった?」