アルテミス 投稿者: 神凪 了
識別番号、B−422


脱走。


抹消。ロストナンバーに指定。


ただちに消去に向かう事。


可能な限りの手段を。


そのための殺人は同時に五人までを許可する。


名称は深山雪見。


年齢 19。














それが・・・およそ半年前だった。









・・・・・。



第四十話 「対峙」



・・・・・。





「私は一人しかいないんだよ・・・・雪ちゃん・・・」
「あなたはもう、みさきじゃないのね・・・」

強大なプレッシャーを感じる。
目の前に立っているのが誰なのか、わからなくなるほどに。

「みさきだよ。川名みさき。別人じゃないよ」
「もしそうなら」

みさきの言葉を途中で切って、問う。

「あなたは何をしに来たの?」
「私はね・・・」



「雪ちゃんを、迎えに来たんだよ」





・・・・・。





ゴ・・・ゴ・・ゴ・・ゴゴゴゴ・・・・・


黒い、大きな扉がゆっくりと開く。
取っ手も何もついていない扉。
もちろん、自動ドアではない。

観音開きになっているドアの重量は、およそ2トンにも及ぶ。
地球・・この世界に存在するどんな物質でも成し得ないほどの重さだ。

その扉が、開く。


かつて、その光景を見たことがある者なら・・・・
過去の天沢郁未のように見えたかもしれない。


意志の力で開く扉の前に立っている少女。


だが、その扉の向こうに見える光景は、そのときのものとは違っていた。










宇宙空間。










そう見える。
ただ、これが強大な空間歪曲によるもので、瞬く星々が全て一つ一つの世界であると、誰かが言ったら・・・
信じる人はいるだろうか?



その広大な空間の遥か果て。
そして、手が届くほどの近さに。


いた。


「一番乗りおめでとう・・・・」


アルテミスという個体。
長森瑞佳の姿をして、かつてコキュートスに存在した意志を持つ個体。


月と狩りの女神、アルテミスを名乗る個体。


「・・・・。」


里村茜は答えない。
ただ、激しい怒りを覚えていた。

その原因が何かもわからずに。





・・・・・。





「・・・何を言ってるの?」
「この世界は、支配されるんだよ・・私たちに」

おかしい。
そのことに気がついていないのだろうか?

「それで?」
「人間は戦力になるからね・・・この世界とつながっているもう一つの世界を征服するための。」

みさきは・・・FARGOも含めて『私たち』なんて言ったりは・・・しない。

「みんな不可視の力を植え付けて、それで意志無き者にしちゃうんだけど・・」
「・・・。」

・・・FARGOの構成員・・・敵はまだ全滅したわけではない。
今も遠巻きに攻撃の機会をうかがっているようだが・・・

「雪ちゃんだけは私のそばに居させてあげるよ・・・」

戦車砲がこっちを向く。
狙いを付けている。

「ずっと・・・ね。」
「・・・・。」

少し考えてから、ゆっくりと口を開く。
それと同時に。

「お断りするわ・・・」

闇を。忍ばせて

「だって、あなたはみさきじゃないものっ!!」

渾身の力を込めて・・・闇を放つ!
みさきの・・背後から!


ばしいぃぃぃぃっっっ!!


「残念だよ・・・・」
「っ!?」

完全に不意打ちだったはずだ。
気取られてはいないはずだ。

みさきは・・・生身の左腕でその攻撃を受け止めていた。
・・・実際はそう見えるだけかもしれないが・・・以前見た、『セイレーン』形態にもならずに。


ぎりぎりぎりぎりっ・・・・・!


闇が、ねじ上げられる。
痛みは感じないが・・・闇が・・・みさきから受け継いだみさきの一部が悲鳴を上げる。

「脆弱だね・・・。」
「な・・なんてパワーなの・・」

退かせる事も、一撃を食らわせる事もできない。
動かす事すら・・・

「雪ちゃんがこっちに来てくれないのは残念だけど・・・別にいいんだよ。私は。」

何かが動いた。



ど し ゅ っ っ



「死体でも、構わないし。」
「っ・・・あ・・・・・?」


みさきの右腕から伸びた闇が。
腹部を・・・


「が・・がはっ・・!?」


吐血。
目眩。
脱力感。


立っていられないほどに。



(何も・・・何も見えなかった・・・)



ずるり、と闇が引き抜かれる。
血が、流れ出す。

夥しい量の出血。
今度こそ、決定的な脱力感と目眩で。


がっ


膝から。
地面に。


倒れる。


(何も・・何もできなかった・・?)


『やっぱり・・・脆弱だね・・・。』


『生き返らせても残念だけど、邪魔になりそうだよ。』


百万光年遠くの別次元からそんな声が聞こえる。


『だから・・・こういうのはどうかな?』





そして―――――――――





<第四十話 「対峙」 了>

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郁未「ついに四十話まで行っちゃったわねー・・・・」
お、淫乱レズかとおもったら、実はマザコンまで属性に付与されてる天沢郁ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!?」
郁未「死ぬ?」(ぎりぎり)
不可視の力は・・・やめぇぇぇ・・・・
郁未「ちなみに川名さんは今日は全日本牛乳一気飲み選手権に出場してるから欠席よ」
そ、そんな選手権あるのか・・・うぎゃあああぁぁぁ!!
郁未「さあ、ねえ?(ニヤリ)早いところさっきの言動を訂正しないと、潰れるわよ?」
だ、だって、あれは全部事実うぎゃああぁぁぁぁぁ!

(SE:ぐしゃっ)

神凪了、潰される(何を?)


ちなみにその頃・・・

少年「入信希望者かい?」
みさき「・・・えっ? ・・・ここ、何処ですか?」
FARGOにいたりする。