アルテミス 投稿者: 神凪 了
「一応聞いておくが・・・何のつもりだ・・?」

FARGOの人間たちが僕を取り囲む。
常人が二、三十人。
コントロール体は百人余りといったところか。

「何とか言えよ・・・おい」

常人は全員が拳銃を所持。
コントロール体はいつでも攻撃が仕掛けられる体勢に入っている。

絶体絶命だね。
普通なら。
そんなピンチの状況でも僕は笑みを絶やさない。
それが自分自身との約束だから。

どんなに辛いことがあっても。
自分の望んだ、短い人としての生だから。

「構わねえ射殺しちま・・・」

でもね。
死ぬわけにはいかないんだよ。
まだ、やらなければならないことがある。



だから・・・



ひゅごううううううぅぅぅぅぅぅぅぅぅ・・・・・・


一陣の金色の風が通り過ぎた。
何億年もの昔から存在していたはずの風は、鋭い刃になって。

「な・・・・」


どしゅっ、ずばしゅっ


断末魔の声を上げることもなく、一瞬で絶命した。
かつて人間であった物のパーツが地に転がる。


「僕は・・・決着を付けに来たんだ。」


風が、渦巻く。
鋭い刃となって僕・・・氷上シュンの体を包み込む。


「ただのコントロール体や人間に殺されるほど、甘くはないよ」





・・・・・。



第三十五話 「世界が終末の闇につつまれる前に・3」



・・・・・。





本部施設の横っ腹に大穴があいている。
氷上シュンの仕業だ。

他の出入り口もないので、そこから侵入することになるのだが・・・・


「どうも・・・そうはさせてもらえないらしいわ。」
「落ち着き払っている場合ではないと思います。」


じゃきっ


気が付いた時には既に二百人近くの敵に取り囲まれていた。
常人とコントロール体の割合は半々といったところか。


「武器を捨てろ!」


その中でも格上と思しき男が銃を突き付け、叫ぶ。
女だと思って、即座に発砲しなかったのが命取りだ。


「あなた・・・自分は自分で守れる?」
「・・・無理です」


里村茜がそう返事をした瞬間に。
闇が、動いた。


どしゅっ、ずばしゅっ
ごとり、ごとり・・・・。


敵の半数近くが上半身を失って地に伏す。


「せっかくだから派手に行くわよ・・・」


闇が。
影が。


「ば・・化け物・・・」


深山雪見を護るように。
ただ、その大きさは以前の比ではない。
少なく見積もっても八メートルはある。


「化け物だって・・・ひどいわねえ・・・・みさき?」
「くそっ・・・・もっと人数を集めろ!」

たくさんの敵。
またもや援軍。

彼女たちを取り囲んでいる数は、もはや千では足りないほどになっていた。





・・・・・。





不可視の力で摩擦を軽減し、文字どおりに、滑るように相手に近づく。
相手は、動かない。

動けなくしているのだ。

右腕が失ったのは大きなハンデだが、腕が一本残っていればいい。
それだけで人は殺せる。
左手にはアイスピック・・・・武器を。

アイスピックという武器。
この戦いは少々、趣が違うのだ。


FARGOの主戦力、コントロール体部隊。


通常の戦いならば、重傷を負わせて無力化させるだけでも相手は倒せる。
今回は・・・

不可視の力は、意識さえ残っていれば行使することができる。
攻撃を止ませるためには、それこそ確実に、息の根を止めなければならない。
全力で・・・

「おおおおぁっ!」

ズムッ、と深い衝撃。
胸骨下部に、アイスピックを突き立てる。
そこは、心臓のある人体の急所だ。

自分の意志無き「下位コントロール体」は声も出さずに絶命した。
巳間良祐・・俺はその一体が床に倒れる前に次の四体目までの敵の心臓部を貫いている。


いくらコントロール体といえども、ただの人間だ。
心臓が停止すれば、死ぬ。


「おおおおおおらぁっ!!」

不可視の力で、自分のリミッターをカット。

そして常人の数倍の動きで。


残像が残るほどに速く。



・・・・・由依ウイルスにより、不可視の力を身につけ、その上で自我を完全に破壊された哀れな人形たち。
自我が、植え付けられた別意識ごと完全に破壊され、廃人となってしまえば暴走したりすることも無い。

そこに・・・本物の真の意味で『コントロール体』の連中が加わるとどうなるか。


不可視の力の進化形。
精神に干渉するコントロール体。
『第二世代のコントロール体』


普段はどうって力はないが・・・・『自我を破壊されたものなら思いのままに操れる』

数百体の下位コントロール体に一体の指揮官型コントロール体。
これがFARGOの戦力の正体だった。

上手いやり方だ。
無理矢理コントロール体にされたもの・・・晴香のようなものたちは・・・・
特に、今回「誘拐」されて来た連中が不可視の力を手に入れれば反乱を起こす可能性は大だ。

その点、ここで生まれ育った「第二世代」ならば反乱の危険性も何も無い。
『インプリンティング』されて育ってきたからだ。
このときのために。

この連中の最大の弱点は・・・





・・・・・。





上月澪は精神を集中して、力を振るっていた。


『・・力を、使うの』


その力はどうってことのない、微弱な精神波だ。
ただ・・・自我を失った連中には効果覿面だ。


少しのほころび。


足並みを崩れさすだけならばそれだけで充分だった。
何百人もが足並みをそろえているところで突然、一体や二体でも狂った行動をとれば。



・・・不可視の力を振るう事のできるものなら分かるだろう。
上月澪の背中にある、精神エネルギーの翼が。

その翼で羽ばたく度にコントロール体は足並みを崩して、そこを良祐が刺し貫いてゆく。





・・・・・。





晴香も奮闘していた。
コントロール体以外の敵が居ないわけではない。

男。
黒服を着た男達。

それは元から居る人間や『誘拐』されてきた人間も含んでいる。
ただ、洗脳を受けたものが全てではない上に、質もまちまちである。

そして、ただの人間だ。

不可視の力で銃器による攻撃をガードしつつ、こちらも45口径で応戦する。



・・・死というのは恐怖だ。



洗脳されていない半数は蜘蛛の子を散らすように逃げ出し、洗脳された戦うものの行動を阻害する。

戦う意志のある者は容赦はしない。
的確に眉間に打ち込む。
だが、何しろ数が数だ。




(本当に・・・コントロール体だけでも何体居るのやら・・・)


さすがに、疲労の色が濃かった。


(由依・・・何を考えているの・・)





・・・・・。





だが、理由が、要る。
少なくとも。

名倉由依が裏切ったのだとしたら、その理由は何だ?


地位や名誉?・・・そんなものはFARGOには関係が無い。
研究設備? ・・・ラグナロクは間違い無く世界最新鋭のはずだ。


・・・なら・・男?


いや、由依はFARGOのことで、ひどい男性恐怖症に陥っていた。
今でもそれは完治していない。

それは・・・一緒に暮らしていたことのある自分が一番よく知っているのではないか・・・。



じゃあ、一体?



それとも、由依が裏切り者でないとして・・・。


機密に近づく事のできた人間は四人。

名倉由依。
天沢郁未。
鹿沼葉子。
・・・・私、巳間晴香。


仮に自分と由依は除外するとして、最も根深い恨みをFARGOに抱いていた郁未がそんなことを?



・・・だいたい、彼女は既に死んでいる。





じゃあ、葉子さんが?


・・もともとFARGOの最も敬謙な信徒である彼女。



でも・・・



彼女も既に死んでいる・・・




・・・・・。





その暗く深いところで。



ゆっくりと目覚めた。



自分の親しいものに反応して。



銀色に輝く彼女の口から。



「・・・アカネェェェェェェェェェェェ・・・・・・・・・!!!!」





<第三十五話 「世界が終末の闇につつまれる前に・3」 了>

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お久しぶり、神凪です。
はあ・・・・最近は後書きもめっきり寂しくなった物だのう・・・・

(SE:がちゃり・・)

みさき「・・・私がいないと、寂しい?」
・・・みさき先輩・・・帰ってきてくれたのか?
繭「みゅ〜っ・・・」
瑞佳「わたしたちもいるよ。」
澪『なの』
茜「・・・」
おお・・・あんなに酷いことをしたのに帰ってきてくれるとは・・持つべきものは友達(違う)だな・・・
(SE:かちゃり)

む? 不可解な行動。
何故にドアに南京錠をする?
みさき「わからない?」
いや・・実は心の中では理解しているのだが・・・
茜「・・・抵抗しない方が、痛い目に合わなくて済みます・・どっちみち、死ぬかもしれませんが」

(SE:ガチャ)

はっ・・・気が付いたら手錠を!?
澪『復讐なの』
繭「みゅ〜!」
ちょ、ちょっと待て・・・話せばわかる・・・
茜「もう、遅すぎます」
って、いつのまにか荒縄で縛られているのは何故だっ!?
みさき「とりあえず、どうするんだっけ?」
瑞佳「とりあえず・・・私たちがやられてきたことを一通りやるんだよ」
詩子&雪見「私たちもいろいろと思うところあるんだけど・・・」

おいっ!ちょっとまてっ!


って・・・


葉子「・・・天罰ですね」


うぎゃぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!!




・・・・神凪 了 (スタンド名 不明)

MINMES・ELPOD・不可視の力・不可視の翼などによる精神攻撃及び、複雑骨折47箇所、内臓に軽度の損傷、重度の火傷、全身に無数の裂傷により再起不能(リタイア)


・・・生きてる方が不思議だ・・・(笑




葉子「感想をくださった皆様、どうもありがとうございました・・。
では・・またお会いしましょう」