アルテミス 投稿者: 神凪 了
「今日は冷えるな・・・・」

FARGOの巡回兵。
正しく言うなら、元自衛隊員。

「こんな日の見回りってのはこたえるぜ・・・」

規定で決められた黒服。
ボディーにぴったりフィットするものだ。

「巡回なんてする必要があるのかよ・・・・」

外の巡回は元自衛隊員・・古くからFARGOにいる人間だけで行う。
信者・・・というのは適切ではないかもしれない、と、『アルテミス計画』によって連れさらわれてきた連中の脱走を防ぐのが主な目的だからだ。
時計を見る。

11:58

「もうすぐ・・・」

十二時からは施設内に入って『精練』・・・お楽しみの時間だ。
男の頭の中に、下衆な妄想が浮かぶ。


・・・彼が、格納庫のシャッターに取り付けられた小型の時限爆弾に気が付かなかったのは彼の人生の中で、最大の失敗だった。

十二時をまわって、時間を告げるサイレンの音が聞こえた。
そして、施設内に戻ろうとした彼を・・・・


グガガガガガガガガガガガッガガガガガッガガガガガッガガガガガッガガガガガッガ・・・・・・・!


激しい熱波と閃光。
この瞬間にはもう、彼の存在はなくなった。





・・・・・。





男二人。
一人が高槻。

二人で女性『信者』の肩を掴んで引きずってゆく。

男達の顔に浮かんでいる、醜い表情。
女性の頬に光る涙。

その涙は、これからの展開を予期してのもの。

救われることのない、身を引き裂かれるような悪夢。

それを思って。


・・・助けは意外なところから来る。



グガガガガガガガガガガガッガガガガガッガガガガガッガガガガガッガガガガガッガ・・・・・・・!!



「なっ・・・!?」

高槻が思わず声を上げる。

激しい振動に、爆発音。
この東京ドーム四つ分以上の広さ、そしてこの地下五階という環境を考えるとこの爆発音と振動はただならぬものだ。
・・・しかも外部から。


・・・・ある程度、予想は付いていた。


『巳間』


(あの時・・・逃がしちまったからな・・・)

妹の復讐に来てもおかしくはない。
だが・・・無駄だな。

(たとえ・・・不可視の力があろうと・・・この数千人のコントロール体が破れるのか・・?)


一人で、破れかぶれの復讐劇。
奴は所詮、喜劇の主人公だ。
最後に惨めな屍をさらして終わり。
これは俺達FARGOの喜劇なのだから。


・・高槻は晴香はもちろん、旧ラグナロクのメンバーが生き残っていることなど知らない。





・・・・・。


第三十三話 「世界が、終末の闇につつまれる前に・2」


・・・・・。


(よし)

定時どおり、各所で大規模な爆発が起こる。
何個所にも仕掛けた時限発火装置付きの爆弾が上手く機能してくれたらしい。
すぐに、緊急事態を示すサイレンの音が鳴り響き、施設の方が騒がしくなる。

(次は・・・これだよ)

使い捨て対戦車ロケットランチャーを・・・・


にわか騒がしくなってきたFARGOの正面入り口にぶっ放す。



大爆発。



百人くらいは吹っ飛んでくれただろうか?
いや、これは敵の人数を減らすためのものではない。
できるだけ大きな混乱を起こす。
施設内の人員は、それだけ減る。

(彼等の突破しやすい状況を作ること・・・)

それが自分にかせられた、第一の使命。


(もう一つは・・・)





・・・・・。





「彼等が・・・来たらしい」

アルテミスは静かに呟いた。

その場所は、普通の学校にある、体育館くらいの広さはあるだろうか?
その広大な空間の中心から、円を形どって強烈な空間歪曲が生じていた。


それは、【ゲート】と呼ばれる物だ。


召喚の儀のときの物によく似ているが、使い方が少々違う。
こちらから向こうに行くための物なのだから。


ゲートのまわりには三人の人影。
もちろん、セイレーン、ヴァルキリー、アルテミス・・・川名みさきと、椎名繭と、長森瑞佳の姿をした者たちだ。


「・・・・。」


次の瞬間には、アルテミスだけがその場にぽつんと取り残される。
みさきと椎名の姿は消えていた。


「・・・こんなことだから、奴に裏切られるのだよ・・・」


(まあ・・・もう復讐は終わったも同然なのだからな・・滅びても・・構わないか)





・・・・・。




「『由依ウィルス』!?」

良祐の口から出たその単語。
驚愕に値するものだった。

由依ウィルス。
ラグナロク、科学系統の天才、名倉由依の手により生まれた人工的なモノ。
そのウイルスを血管内に注入することで『不可視の力』を手にすることができる。

セキュリティレベル、S。

当然のことだが量産はもちろん、試作段階の代物だ。
その副作用についても詳しいところは分かっていないのだ。
試作したのは3つ・・・そのうち、一つは突然変異を起こし、由依の見解では特殊な『不可視の力』をえられるだろうとのことだった。

もう一つは・・・『紛失』

大問題になった。
だが、どうしてもそれは見つからなかった。


・・・それがどうしてFARGOに?



その時、晴香の頭に、恐ろしい考えが浮かんだ。




『今のFARGOの黒幕は名倉由依ではないのか?』




それか・・少なくとも協力者。

なんてことはない。
ラグナロクから由依ウィルスを持ち出したのも。
FARGOと結びついて、志願兵と晴香を罠にはめて殺そうとしたのも。
ラグナロク、秘密基地の所在がああも簡単にFARGOにばれたのも。

『名倉由依』の仕業だった。



そんな考えが浮かんだ。



・・晴香は慟哭した。




それが真実でないことを望む。




・・・もうすぐ、答えはわかる。




・・・・・。



「ちょっと・・・・凄いことになっていますね・・・」

その惨状を見て呟く。
逃げ出す人間たち。
火の手のあがった格納庫。
轟く爆音。

戦いの最中らしい。


そこに名倉由依は現れた。


「どうやら・・・まだ生きていたようですね・・・」


手の中のものを確認する。
そのたくさんの巴形を。
そして、その特殊な形状をしたリボルバー式の拳銃を。


「間に合えばいいんですけど・・」

それだけ呟いて、由依はFARGO本部施設へと。

走り出した。





<第三十三話 「世界が、終末の闇につつまれる前に・2」了>


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ああ・・・随分遅くなってしまった・・・。
久流守 涼「ぶらぶらしてたからだろ?」
久流守 冷「そうですね。気が乗らないといってはBM98に打ち込む毎日でしたね」
・・・・・?
涼「あん? どした?」
冷「頭でも打ってそのまま帰らぬ人になってしまったんでしょうか・・・?」

っていうか、あんたら誰?
ONEやMOON.にこんな連中出てきたっけ・・・

冷「私たちはあなたが昔書いていた小説の主人公二人組ですよ」
涼「そう、このナイフ使いの久流守 涼(くるす りょう)と、」
冷「弓使いの久流守 冷(くるす れい)ですわ」

・・・記憶に無いんだが・・・

涼「記憶に無かろうがどうでもいい。神凪!」

な、なんだ?

冷「この後書きでも川名みさきさんにあいそを尽かされたとか」
涼「まあ、三流えろぐろSSに成り果てそうだもんな」

うぐぅ・・そんな事言いに来たのか、お前ら。

涼「そういうことだ。」
冷「じゃあ、これで失礼しますね・・」

・・・・何しに来たんだ・・あいつら・・・。
あ、感想をくださった方々、ありがとうございました。
それでは、次回はなるべく早いうちに・・・


とすっ


ぐはっ・・・・

ばたり。

神凪了、死亡。
死因は投げナイフ・・らしい。

ちなみにナイフにあいしゃるりたーんと書かれていたのは秘密である。