アルテミス 投稿者: 神凪 了
作者のための二十七話終了時点の登場人物の状態確認

折原 浩平 永遠の世界に消滅
住井 護 生存・現在地 中崎家 核シェルター
南 明義 消息不明
長森 瑞佳 生存・現在地 FARGO本部施設
七瀬 留美 生存・現在地 中崎家 核シェルター
里村 茜 生存・現在地 中崎家 核シェルター
上月 澪 生存・現在地 中崎家 核シェルター
川名 みさき 生存・現在地 FARGO本部施設
椎名 繭 生存・現在地 FARGO本部施設
氷上 シュン 生存・現在地 中崎家 核シェルター
深山 雪見 生存・現在地 不明
柚木 詩子 生存・現在地 FARGO本部施設
小坂 由起子 生存・現在地 中崎家 核シェルター
椎名 華穂 消息不明
広瀬 真希 死亡確認
天沢 郁未 死亡確認
巳間 晴香 生存・現在地 不明
名倉 由依 消息不明
鹿沼 葉子 消息不明
天沢 未悠 生存・現在地 中崎家 核シェルター
巳間 良祐 生存・現在地 不明
高槻 消息不明
少年 生存・現在地 FARGO本部施設
里村 蒼 死亡確認



第二十八話 「集結」



・・・・・。



「巳間さん・・ですか?」

雪の中、巳間兄妹がFARGOの・・おそらくは本拠地があるであろう場所に向かう途中に・・・。

「誰・・?」

一人の少年が現れた。

「敵じゃ・・ないから。」

その少年の名は・・

「僕は氷上シュンです・・。」



・・・・・。



一面の花畑。
あまりにも広大なその場所。
色とりどりの花が咲き乱れている、そのこの世のものではない風景。

「ここが・・・」

その中に。

「そうなんですね・・郁未さん・・」

名倉由依は立っていた。

『そうよ・・これが・・』

背中から、由依を優しく抱きしめている郁未。

「・・・。」

人っ子一人、いない。
いや、いるわけが無いのだ。

『ようやく・・ここまで辿り着いたのね・・』

暖かい風が通り過ぎてゆく。

「いつか・・来た場所・・ですね・・?」

そこはもう、この世ならざる場所だった。



・・・・・。



ゆっくりと目を開ける。
見覚えの無い、天井。
少なくともラグナロクの基地とは思えない。
ましてや、この金属の天井を見る限りではあの世とも思えなかった。
体を起こす・・・

ズキイッ

「は・・うっ・・・」

電流が走ったみたいだった。
もはや痛み、と表現できないくらいの痛み。
涙が、こぼれる。

「あれ?」

声を聞いて、誰かがこっちに来る。

「大丈夫? 七瀬さん・・」

顔を上げると住井君と目があった。

「住井・・君・・?」

どうしてここに・・・という前に。

「まだ寝てなくちゃだめだよ・・」
「え?」

そう言われて、自分が倒れた時の状況を思い出す。
体を見下ろしてみると、全身包帯といった状態だった。

「生きてる・・」

腹を、貫かれた。
内臓ごと、全て。
どう考えても、致命傷だった。

・・そっとお腹に触れてみる。


ズキィィィィン


「はああぅっ!!」

馬鹿だった。

「あ・・もう・・無茶しちゃ駄目だよ。」
「ごめんね・・」

顔が火照ってる。
ちょっと、恥ずかしい。

ゆっくり、もう一度横になる。

「住井君が、助けてくれたの?」
「・・俺じゃない。氷上シュン、そいつが重傷を負った七瀬さんたちを助けたらしい・・」

助けた・・四人とも致命傷を負ったとおもったのは気のせいだったのかな・・。

「ラグナロクも、俺達志願兵も全滅したよ・・。」
「・・・折原も?」

一瞬、住井君の表情が険しくなる。
嫌な、予感がした。

「・・・わからない。でも・・死んではいないとおもう。」
「・・・そう。」



・・・・・。



日常。
何の変化もない、それでいて何かしら変化のある、日常。

幸せな、日々。


それが・・



カシャアッ


カーテンの開かれる音、目にささる陽光・・

「浩平っ! 朝だよっ!」

長森の、声。

「うーん・・後三曲ほど寝かしてくれえ・・・」
「歌なんか歌ってないよっ!」


その中に俺はいる。


たったったっ・・・

「もっと速く走れ長森! このままじゃ遅刻だ!」
「私のせいじゃないもんっ!」


遅刻しそうになって走って学校に行ったり・・


「そんな事よりいつものように机を叩き割って見せてくれ。」
「できるかっ!」
「おーいつもの七瀬に戻った。」
「くっ・・・」


七瀬とじゃれあってみたり・・


「ぐわっ・・右腕が・・澪・・」

にこにこ

「袖が伸びる・・放してくれ・・」


日常の、一ページ


「今日の夕焼けは何点くらい?」
「まだ日が出てるぞ。もう春だからな。」


そんな大切な・・


「茜、一緒に帰ろう。」
「嫌です」

「それに浩平には一緒に帰る相手がいるじゃないですか・・」


日常の中に・・


「よし長森! 今日はパタポ屋寄ってくぞっ! しかも俺のおごりだ!」
「えっ? ほんと?」


俺は今、いる。




・・・・・。



「でも、四人とも気がついてよかったよ。」
「そうね・・本当に死んだとおもったわ。」
「ええ・・」
「・・・。」

ふっと、おろおろとした様子できょろきょろとあたりを見回している上月さんの姿が目に映る。
が、先に声をかけたのは里村さんだった。

「どうかしたのですか?」

ぶんぶん

手を振り回して何かを伝えようとする上月さん。
もしかしてこれは・・手話?

「すみません・・何を言ってるのかわかりません・・」

はう〜

溜め息をついてうなだれる上月さん。

「スケッチブックが無いから、言葉が伝えられなくて困ってるんじゃないかな?」

天沢さんがそう言うと上月さんの顔がぱっと輝いてこくこくうなづいた。

「そうなの?」

これは小坂さんだ。
浩平の保護者の小坂由起子さん。

「上月さんは言葉が喋れないんです。」
「それでスケッチブックに・・でも、ここに書くものなんてないわよ?」

それを聞き、はう〜と再びうなだれる上月さん。

(スケッチブック・・結局返せなかったの・・)

そんな想いが上月澪の胸にあるとは思いもしない五人。

「ところで、傷が癒えるまではここに居るとして・・その後どうするの?」

七瀬さんが口にした疑問・・FARGOの支配する日本(といっても過言ではないだろう)で、どうするべきか・・
難問だった。

「やはり・・何とかして日本から脱出するわけにはいかないでしょうか・・。あの『ラグナロク』の皆さんの口振りからすると、日本のあの場所だけでなく、『ラグナロク』という組織は世界的なのものらしいですから、どうにかして会う事ができれば・・・・。」
「それに、流石にまだ日本国外に攻め込んだりはしていないでしょうからね・・。」
「でも、どうやって脱出する?」

天沢さんの疑問はもっともだ。
空港、港に行けば飛行機や船が、FARGOに占領されているかもしれないとはいえ、あるにはある。
ただ・・誰がそれを操縦するのだ・・・?
その心得のある人間はさすがにいない。

ちなみに小坂さんはちんぷんかんぷんなのか、上月さんは喋る事ができないので会話には参加してこない。

「・・困ったわね・・」
「FARGOを壊滅させる・・駄目。『セイレーン』みたいなのがいる限りは私たちじゃ・・・・・」
「・・私たちを襲ってきた『何か』が『セイレーン』なのでしょうか・・?」
「多分違う。鹿沼さん・・あなたのお母さんは全身に強い圧力や火傷を負っていたもの・・。対して私たちを襲ってきた奴は『切り裂いて』攻撃をしてきた・・それにあの速さじゃ鹿沼さんはあれだけ重傷を負っては逃げる事もできないとおもう・・。」
「・・?」

七瀬さんの様子がおかしい。
何か、思いつめたような表情をしている。

その時、核シェルターの外と中を隔離するドアが開いた。

全員の行動が、素早い。

俺は銃を構えて銃口をドアのほうに向ける。
天沢さんは両手をドアのほうに突き出した。おそらく『不可視の力』の準備動作だろう。
七瀬さん、上月さん、里村さんは傷が深いので動く事はできないが、小坂さんは物陰に隠れる。

「誰だ?」

間髪入れずに返事が来る。

「やあ・・ただいま」
「シュンか・・」

俺は銃をおろすが、天沢さんは見知らぬ相手なので警戒しているらしく『準備動作』のままだ。

「味方だよ」

俺がそう言うと天沢さんはこっちをちらっと見た後、両手を下ろした。

シュンが中に入ってくる・・いや、シュンだけじゃない。

「巳間・・隊長!?」
「もう隊長じゃないわ。」

それに、もう一人、こっちは初対面だ。
見知らぬ男。いやに目つきのきつい、蓮っ葉な雰囲気の男。

「誰・・?」
「・・巳間、良祐。」



<第二十八話 「集結」 了>

@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@

本日の対戦成績

第一戦 ○ ルミラ+体操着+特殊能力「吸血(+3)」の短距離走でさおりん(リーダー)ダウン
第二戦 ○ 楓+スポーツシューズ+特殊能力「鬼化」の対戦ゲームでさおりん(リーダー+五人め)ダウン
第三戦 ● マルチ+はちまき+付け焼き刃3枚の熱湯風呂でルミラ(リーダー)あえなくダウン
第四戦 ○ 柳川+特殊能力「狩猟者」+イベントカード「挑戦状」のマラソンでマルチ(五人め)ダウン


まあ、それはそれとして。
これからどんどんやばい方に話が進んだ後、反撃開始です。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

予告


はたして住井たちはFARGOを破る事ができるのか?

長森瑞佳はどうなってしまうのか、また、彼女に隠された力とは・・?

「アルテミス計画」とは一体何だったのか?

里村茜の力の真相、それに名倉由依と鹿沼葉子の生死やいかに?

川名みさきと深山雪見の間に決着はつくのか?

折原浩平ははたして再び戻ってくる事ができるのか?

以前名前だけ出てきた「由依ウィルスMIND」とは?

そして、FARGOとは一体何だったのか・・・?


全ての謎が明らかになるかどうかはともかく。
次回に続くっ!


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

(ナイター中継延長のため、「感想というか無駄話」は延期とさせていただきます。なお、来週のこの時間はアルテミス二十九話をお送りさせていただきます)