アルテミス 投稿者: 神凪 了
第二十七話 「間奏『紅い瞳』」




・・・・・。



一日が過ぎた。


その日は四月になった・・・四月一日だ。

一年の、日本人の実質的な一年の移り変わりの日であり、あるいは記念すべき出来事が日本にあふれる日・・



なのだろう。普通なら。だが。



今、日本に『人間』・・FARGOの者でない、意志を持った人間は・・


・・今や・・数人しかいないのだ・・





・・・・・。





失敗した。

焦りすぎた。


まずい・・
俺が死ぬのはまだ・・・いい。

俺の責任だからだ・・。


だが・・俺が死んだとなれば・・・


『彼女』


柚木詩子・・。


でも・・どうしようもないだなんて・・!


新しい・・・上司。

・・・高槻。


・・・これほど抜け目の無い奴だとは思わなかった・・・狂っているのではないかというほどに・・・





・・も・・・う・・何も・・考えられない・・・くそ・・・



・・ね・・・えさん・・・・





ごきっ





里村蒼の瞳が血で紅く染まった。





・・・・・。



・・早朝、夜明け前。
FARGO最奥部、『セイレーン』の部屋。
電気を消した部屋の真ん中に一人立っているのは川名みさき。
だが・・・


「ふふふ・・ようやく一つになれるね・・」

(私は・・・私はっ!)

「もう抑制もできない・・八割がた一つになってしまったんだから・・」

(止めて・・止めてみせるよ・・!!)

「無駄だよ・・諦めて・・本当に一つになろう?」

(嫌・・そんなのは・・嫌!)

「自分でも、分かってるはずだよ・・」

(・・・!)

「もう・・人間の・・下等な人間の心とは違う・・精神構造が待ったく別のものになっている・・」

(・・・そんなことは・・!)

「深山雪見だったよね・・? あの、『魔王の影』を持つ者は・・」

(・・何を・・)

「おいしそうだね・・・」

(!!!)

「どんな声でなくんだろうね・・」

(止めて・・)

「よろこぶかな・・私に」

(止めてよっ!)

「犯されるんならね」

(・・・っ!!)

「もっと間近で顔を見たいでしょう・・?」

(・・私は!)

「せっかく・・辛い思いをして、取り戻した『光』だものね・・」

(私は・・・)

「それでも・・嫌・・?」

(・・私は・・)

「どっちにしても、今日でお別れ。今日、『あれ』が済めば・・あなたは壊れる。」

(私はっ・・そんな事・・!)

「するんだよ。私の意志で・・」

(・・・。)

「でも・・できる事ならあなたを壊したくない・・あなたは私なんだから・・」

(・・・。)

「雪ちゃんに会えなくなっちゃうよ?」

(!)

「きっと悲しむよね・・あなたがいなくなったら・・」

(雪ちゃん・・)

「だから、ね? 一つになろう?」

(・・・)

「肯定・・なんだね?」

(・・・)


・・ヴァ・・・


「ふ・・ぅ・・」
(う・・ぁ・・)


川名みさきの瞳が紅に染まった。
それと同時に、部屋の中に異様な雰囲気が満ちる。

瘴気という者もいるかもしれない。
普通の人間なら気が狂ってしまうほどに。





・・・・・。



私は何をしているのだろう。


冷たい。


純水のシャワーを浴びている。


身に纏うものは何も無い。


冷たい。


こうしていると、心が凍り付きそうで、嫌だ・・


朝起きると、この部屋に連れて行かれて水を浴びるように指示された。


・・どういう事なんだろう。


何をするつもりなんだろう。


わからない。


浩平・・助けに来てくれるよね・・?


天井を見上げても、黒。


壁も、床も黒。


どこから水が吹き出しているのかわかりもしない。


闇の中で水を浴びる・・何の意味があるんだろう・・


・・・。


・・もう何日も、誰とも話していないみたい・・・


・・繭・・こんな所で、何をしてるんだろう・・


・・やっぱり、同じように捕まっちゃてるのかな・・。


・・・・。


シャワーが止む。


体が寒い。


闇の中に光が浮かび上がる。


壁の一角が開いたらしい。


そこに、行く。


元の、私が服を脱いだ部屋。


脱衣・・場・・かな?


でも、私の服はなかった。


代わりにあったのは、黒いローブ。


真っ黒な・・それでいて教会とかの偉い人が来ていそうな豪華なローブ。


私はそれを着ようと・・


・・?


・・体が・・乾いてるよ・・?


何で・・。


・・別に・・いいか。


黒いローブを羽織る。


それを見計らったように壁が開く。


そっちに行け、という事だろうか・・。



長森瑞佳の瞳は、紅くはない。



・・・・・。



その通路は、FARGOの誰も知らない場所・・声の主の間へと続いている。


そこで長森瑞佳を待っているのは、悪夢。


身を引き裂かれるような、悪夢。


実際に心も引き裂かれる。


長森瑞佳は消滅する。


この世界から。


いや・・この世界自体、もうすぐ・・消滅するのだ・・


「ちょっと・・可哀相かな・・」


でも、冷徹に『させられる』


所詮、自分は悲しい操り人形なのだから・・


糸を手繰っているものには逆らう事すら許されないのだから・・


(巳間良祐が・・最後の希望なのか・・)


・・あまりにも小さすぎる希望だ・・


だが、それよりかは頼りになるであろう名倉友里はできなかった。


名倉由依が死んでしまったのだから必要が無いのだ。


・・もはや。


不可視の力のコントロール体はもはや一千万を越えた。


この本部施設に残っているのは数百人だとしても・・。


「郁未・・僕を許してくれ・・」


少年の瞳は、紅い。


かつてのものとは違って・・・・



・・・・・。



私は決めたんだ。
取り戻したい物は三つ。

こーへいと、みずかと、みゅー。

でも、三人は人間だ。
でも今日、そのうちの一人は変わる。

人間である事をやめて、自分たちと同じ存在になる。
私と・・セイレーンの力を使って。

ヴァルキリーの主体は暗殺、速攻。

でも、精神への干渉ができないわけでもない。
セイレーンよりは劣るだろうが。

共同作業。

ここに来てからいろいろやった。
どんなに強い力を手に入れても恐かった。

人を殺すのは。

変ったのは、あの時。

嘘のお母さんを殺した時。

あの時から。


・・今日からはみずかお姉ちゃんが一緒にいてくれる。

いろいろ、一緒にできる。



殺戮とか。








・・・行こう。









あの場所へ。



・・椎名繭の瞳が紅くなると同時に・・・



・・・・・。



「そこから出ろ・・・」


里村蒼ではない、男の声が、柚木詩子にかかる。
それを不審に思っても、拳銃を突き付けられてはさすがに抗う事はできない。



・・・・・。



・・歯車は、折原浩平と長森瑞佳がであった瞬間から狂いはじめていたのかもしれない。
・・今、見てわかるほどに何もかもが狂いだそうとしている。


・・悲劇をもって。




<第二十七話 「間奏『紅い瞳』」 了>
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少し間が開いてしまいました・・(といっても一週間ないけど)神凪です。
それにしてもジュースっていろいろ種類ありますけど、あれだけヴァリエーションあったファンタってどうなったんでしょう?
最近、グレープとオレンジしか見かけません。
神凪はフルーツパンチが好きだったんですが・・・

それでは、感想です。


>うとんた様
>遭遇

超人だね,茜もみさき先輩も(笑)
浩平、ワッフルが一ついくらか知らないが・・福沢さんも覚悟しといた方がいいと思うぞ(笑)
茜はともかくみさき先輩は・・・。
>[BGM:『MOON.』の16番トラックの曲(タイトル分からん(爆))]
たぶん、『憂い』だったとおもいますよ。

ここから下は個人的な事です。

某HPのスコアアタックにおいてうとんたさんの名前を見掛けたのですが・・・同一人物なのでしょうか?
某HPは『仮住まい』と称されるBM98中心のところです。
もしそうなら何かお返事(後書とかで)お願いします。


>おねおね動物ランド 2nd

浩平、お前って奴は男だ!
澪のためにそこまでできるとは!
でも、パレードのところに乱入するよりはそこら辺をたむろしている時に後ろから・・・

冗談はさて置いて。

あとがき、あおいとすーぱーあかりんがわりにきついこといってるよう(笑)
以前の日(略)と比(略)から次は誰だろうと楽しみにしてたら・・・
こっちのほうできましたか。


>雀バル雀様
>一窮さん その4

なんかもう、本編も『あるてみす』も何をコメントしていいのかわからない(笑)
頑爺先生とかそういう小ネタもことごとくグッド(笑)
浩平の誤解ももっともかもしれませんけど、なんだか自分が迷惑をかけているという事に微塵も気づいていないような・・・
次回、楽しみです(笑)


>天王寺澪様
>みゅっ♪

ストレート(笑)
最初のドレミの歌・・だっけ?を歌っている時、繭が何人もいてコーラスしてるのかと思った(笑)
なんだかそんな絵が浮かぶ・・・
最初は意味がわからなかったケド。


>神野 雅弓様
>〜みゅ〜 そして・・・〜

いつも思います。神野様。
次回、人物の名前をふらないでチャレンジしてみてください(笑
きっとできます(笑)
それにしても澪、繭、瑞佳って姉妹みたいだ。


>狂税炉様
>ずるいみずか

はじめましてですね。
外道SS書きの神凪 了というものです。
浩平の帰還に一年もかかったのはこういうわけなんですか。
でも・・この状態から帰還しようとするなんて何があったんだろう浩平(笑)
おもしろかったです。


>いけだもの様
>いざ、お見舞いへ (後編)

個人的には茜シスターズ(ニセ茜)の続編求む、と言うところです。
ほんと、はまった(笑)
感想、ありがとうございます。
長森の運命は・・・あと数話先で明らかになる(はず!)


>北一色様
>ONE英雄伝説4〜パタポ星域の会戦〜

>ろーん!ちんいつ、といとい、4れんこー、3あんこー、どら3
みさおよ、何か嘘ついてないか(笑)
なんかこう、おかしくてしょうがないのは神凪の気のせいだろうか(笑)?
澪がステルスってのはちょっと納得かな、なんて思いました。
本編でも気づかないうちに背後にまわったり袖に飛びついたり・・。
ねえ(笑)?


ふう・・最近調子が下がりぎみ。
『誰も知らない世界の片隅で』、フリーズしてしまいました。
理由はダークエンド、ハッピーエンド、普通の終わり方どれにしようか決めかねているからなのです。
最初はダークエンドにしようと思っていたのですが・・はあ。

次回も早いうちに投稿しますので。それでは。



追伸:メルアドかわりました。