彼女はきっと 投稿者: 神凪 了
それは、唐突な出来事だった。


彼と二人で街を歩く。


幸せな風景。


もう・・消えたりなんかしない、幸せ。


それが・・・



『澪ッ! 危ないっ!!!!!!!!!!!!』


『――――――――!!!!』



そんな時にも私の声は出なかったの。




運転手の不注意。


あまりにもくだらない、つまらない理由で私は全てを失ったの。


私・・上月澪は全てを失って・・・




・・・・・。




彼がいてくれたなら、きっと励ましてくれたと思うの。


でも、その彼が居ないの。



彼はきっと、私にいつまでも悲しんでいて欲しくないと思うの。


でも・・彼はいないの。



私の悲しみを癒す事のできる唯一の人は、もういないの・・・。




そして・・・・




『えいえんは・・・ここにあるんだ・・・澪・・・』


私は・・・


「澪・・・」


・・・彼のいる世界に消えたの。





たくさんの時が流れたように感じたの。




でも・・ここは永遠だから年を取ったりする事はなかったの。


喜びも、楽しみも、決して色褪せる事はないの。


全ては永遠なのだから。



私と彼は・・・上月澪と折原浩平は幸せだったの。



でも・・・・



「澪・・・お前は帰らなくちゃならないんだ・・・」


『どうしてなの』


「お前を・・待ってくれている人がいる・・・」


心当たりはなかったの。


それでも。彼がそういってくれたから。


私は・・・再び現実へと舞い戻ったの。


その誰か待っていてくれている人を信じて。




そして・・彼は・・・




「澪・・・・」


『浩平さん』




背中から抱きしめられる感触。




死んだあの人の抱擁。




その時・・私は・・知ったの。



全てを。



見えないものが見えるようになったその時から。




「今日はどこに行くの」


「そうだな・・・こんな晴れた日は公園なんかいいんじゃないか?」



私は昔からずっと喋っていたの・・・・・


生者には聞こえぬ声で。


浩平さんが見えるようになって・・・今までよりもずっと広くなった世界が見えるようになって・・・



「ずっとそばにいるからな・・澪・・」


「でもトイレの仲間で付いて来ないで欲しいの。恥ずかしいの」


「いいじゃないか・・・全てを見せ合った仲だろ?」


「まったくもう・・・なの」



彼のいる現実。



他の人には見えないのだろうけど。



私はこの現実で生きてゆく。



彼と二人で。



「澪・・・愛してるぜ・・・」























以上。
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最後の一発。
それほど優れた作品ではありませんがちょっとお気に入りです。
やたらと白いんですが。

メールをくださった坂井昌利様・・あの、気分を害されたようなら謝ります。
でも・・書かずにはいられなかったものですから・・。

メールをくださった天王寺澪様、ありがとうございますっ!
みんな幸せになる・・のは無理かもしれませんけど、なるべく明るいほうに持ってゆくつもりです。
天王寺澪様の次回作、楽しみにしてます。


これで、終わりです。