1st
・・・・・。
カシャアッ
と、カーテンの開く音が・・・
・・するはずもなく。
「おらあぁ!! 起きろこのくそ馬鹿折原ぁああああ!!!!」
どがっ、げしっ!
問答無用で顔面にパンチ、腹にキックが入れられる。
「ぐはあ・・・止めろ七瀬ぇ・・死ぬう・・」
「だったらさっさと起きろぉぉぉ!!!」
げしっ!げしっ!
「ぐはあ・・いい蹴りしてるぜ七瀬・・・」
「まだそんな冗談を言う余裕があるなんて・・ちょっと手加減しすぎたみたいね・・・いいわ、今度は究極奥義、留美ちゃんスペシャル’99を・・」
言って右足を大きく振りかぶる七瀬。
しかもその右足が金色に輝いていたりするように見えるのは気のせいだろうか?
気のせいには思えないような気がする。
「留美ちゃんスぺ・・!!」
「待った、起きた起きた起きたから止めろ!!!」
がばっ、と布団を跳ね飛ばして七瀬を静止する。
そうでもしないとこっちの命が無くなりかねない。
本気で手加減無しなんだからな。七瀬の奴。
何しろこの前『留美ちゃんスペシャル’98』とやらをくらった時には腹が痛くて三日も学校休んだんだからな。
その時はさすがに悪いと思ったのかお見舞いに果物持ってきてくれたけどさ・・
こいつ、俺が腹が痛いからっつったら全部食っちまうんだぞ!?
何考えてんだ!!
「こーんな可愛い女の子が毎朝迎えに来てあげてるんだから、少しは悪いなーとか思って早めに起きてお茶の準備くらいしといたらどうなの!?」
「そ、そんな理不尽な・・・」
「毎日毎日365日、誰のおかげで遅刻しないですんでると思ってるのよ!!」
「いや・・学校は365日毎日あるわけじゃ・・」
がすっ
「うおあちゃーーーっ!!」
「余計なこと言うんじゃない!」
すねに蹴りをくらった。
うぐぐ・・手加減の無い奴だ。
「ほら、さっさと着替える!」
ぽいぽいっと制服が投げられる。
それをさっとキャッチ。
手早く制服に着替える。
「下で待ってるからさっさと降りてきなさいよ!」
どうやら今日の学校の準備をしてないことも見抜かれているようである。
さすが十年も一緒にいると違うものだ。
がさがさと適当に・・
適当じゃ困るな。俺。
今日は・・・十二月二十二日・・か。
もうすぐ冬休みじゃねえか・・。
季節の過ぎ去ってゆくのは速いもんだ。
曜日は・・と。
俺は今日、授業がある教科の教科書とノートを鞄に詰め込んで階下に行く。
七瀬を待たせると後が恐いからな。
とんとんとん・・・
「折原、ほら、トースト!」
「ふがっ!」
階段の影で待ち伏せしていた七瀬が俺の口に、問答無用できつね色の焦げ目のついたトーストを突っ込む。
しかもご丁寧にマーマレードジャムが塗ってあったりする。ありがとう、七瀬。
でもなあ・・
「朝食ぐらいゆっくり食わせてくれよ・・・」
すると七瀬は無言で左手首を俺の目線に持ってくる。
言うまでもない。時計を見ろ、ということだ。
8:22。
・・・冗談じゃねえ・・
またマラソン強制参加かよ。
本当に七瀬が起こしに来てくれてなかったら遅刻だな。
「ありがとな・・。」
「はぁ? 何言ってんの? 折原。 さっさと行くわよ!?」
・・・・・。
たたたた・・・・
道路をひたすら走る。
隣を走る七瀬の横顔を覗き見る。
息一つ切らしてはいない。
俺ももちろん運動が苦手な方ではないが、七瀬は運動神経抜群だ。
徒競走とかをやっても陸上部の連中とかにぶっちぎりで勝ってる。
校内マラソンも常にトップだ。
しかも、成績もそこそこに優秀だったりする。
その上容姿端麗・・と、きて男どもが放っておくはずも無い。
・・といいたいところなんだが・・
性格が・・な・・。
その上子供の頃、柔道剣道空手とやっていたおかげで(こいつの親は何を考えているのか俺にもいまいち掴めない・・普通、女の子にこんな三つも格闘技をやらすか!?)腕っ節がやたら強い。
それが・・俺とこいつが出会うきっかけだったのかもしれないが・・。
・・・・・。
俺は、小さい頃にこの街に引っ越してきた。
理由は・・・いろいろあった。
親父の死、妹の・・みさおの病死、母親の失踪・・。
身寄りのいなくなった俺は、この中崎町に住む由起子おばさんのところに引き取られることになった。
幼い俺は、どうしていいのかわからなかった。
仲間はずれにされ、蔑まされ、いじめをうけていても・・
助けを求める術さえ持たなかった・・。
そんな、俺がいじめを受けている時に・・
「やめなさいよ!このばかおとこ!」
甲高い、女の子の声が聞こえた。
「なんだ、おまえいじめられてえのかよ?」
中崎・・今思い出してもむかつく野郎だ。
今もう一度会えんなら、自己流パンチでぶっ飛ばしてやりたい。
『ぶっ飛ぶなよ!』なんてな。
「泣いてんでしょ!? やめなさいよ!」
取り巻きどもの手が止まる。
子供の世界というのは絶対君主制だ。
その中で頂点の地位にあったのが中崎だ。
それに逆らう・・そんな人間は今まではいなかった。
隣のクラスの・・七瀬以外には。
同じクラスの連中だって見て見ぬふりをしていたのだから・・
「ぐたぐたうるさいのよ!やめなさいっていってんでしょ!?」
どがあっ!
今思い出してもすごい音がしたと思う。
七瀬の空手パンチが決まった。
「な、なかざきさん」
「・・いちげきで・・」
中崎は七瀬の一撃で鼻血を出してぶっ倒れていた。
子供の、並の子供の力でここまでできるものではない。
「あんたら・・かくごはいいわね・・?」
ばきぃっ!どがっ!ばしっ!ばちん!
「うああああーーーん!」
「ちくしょーせんせーにいいつけてやるからなー!」
「こまったらせんせいをたよるわけ!?ふざけんのもたいがいにしなさいよ!?」
ひときしり『制裁』をくれた七瀬は最後に俺の方にやってきて、
「ちょっと、きなさい」
腕を引いて水飲み場の方へ俺を引っ張ってゆく。
ハンカチを取り出し、それを濡らして俺の顔を拭く。
この時、俺は相当ひどい顔になっていたらしい。
「うっく・・・ひっく・・・」
「いいかげん、なきやみなさいよ・・」
「だって・・・」
七瀬ははあ・・と溜め息をついて、
「なさけないやつねえ・・・いいわ、わたしがあのばかどもからまもったげる。」
「えっ?」
「あんたが・・じぶんでじぶんをまもれるようになるまでね。」
「・・・」
呆気に取られている俺に、七瀬はそっとキスをした。
「やくそく、だから。そのしるし。」
彼女はふふっ、と笑った。記憶の中の彼女の頬は赤く染まっていただろうか・・?
俺のファーストキスは甘酸っぱい味がした・・ような気がする・・。
そして彼女とは次の年から、同じクラスになり、今に至る。
・・・・・。
全てはあの日から始まったのかもしれない。
ちなみにこの高校二年まで、その時からずっと同じクラスになっていたりする。
ここまでくると運命というものを信じないわけにはいかない。
俺は・・この年までこいつにお世話になりっぱなしだ。
だから・・
「・・感謝してるぜ・・ありがとな・・七瀬・・」
「・・? 朝からなに言ってんの?」
七瀬は走りながら、俺のぽつりと漏らした言葉に不思議そうな顔をする。
当然、といえば当然だが。
その日は、ぎりぎりセーフだった。
・・・・・。
テスト後の授業なんてだるい。
はっきりいってやってられない。
だからその日は・・・
(おい、七瀬)
(どうしたのよ・・授業中よ?)
七瀬の席は俺のちょうど前の席だ。
(今日、どこかに遊びに行こう。俺のおごりで)
その日はなんだか・・そんな気分だった。
(ホント!? らっき!)
本当に喜ぶ七瀬。
授業中だぞ?
(で、どこにいこうか?)
(うーん・・・ゲーセンでも、いこ?)
(安上がりだなあ・・もうちょっと・・・)
(フランス料理店とか?)
(馬鹿いうな。)
(あはは。わかってるわよ。)
・・何の変哲もない日常だった。
・・・・・。
日も落ちた。
「じゃあね。今日は楽しかったわ」
「おお、また明日な」
交差点で別れる。
放課後、学校帰りにゲーセンで七瀬と遊んでたらもう六時だ。
冬のこの時期だからもう真っ暗だったりする。
普通なら七瀬を家まで送っていくべきなのだが・・
何しろ七瀬だから・・
それに七瀬もそれを望んではいない・・と俺は思う。
「明日はちゃんと起きてなさいよ?」
「無茶いうなー」
そんな風に七瀬と別れ、家に帰る・・・
そして、夕食を取り、風呂に入って、テレビでも見て、時間になったら寝る・・
そんな事を考えていた。
だが・・・・
俺の・・・正確には由起子さんの家の前に、人影があった。
それも、地面に倒れて。
子供じゃない。高校生か・・それぐらいだろう。
暗くて顔まではわからない。
「な・・・」
慌てて駆け寄る。
ただ事ではないと思った。
そして、その人影の・・その女の子の顔を見て、
どくん
心臓がざわめいた。
「み・・みさお!?」
みさお・・俺の死んだ妹ではなかった。
この女の子は俺と同い年くらいにみえたからだ。
ただ・・みさおが生きていて・・俺と同い年くらいになったらこうだろうな・・という・・そんな顔だった。
服は俺の学校の、女生徒の制服を着ていた。
顔に見覚えはなかったが・・
・・それが俺と彼女の出会いだった。
<・・続く・・のか?>
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七瀬「何なのよ・・このSSは・・・・」
いや・・Kanonのデモを見ていたら思い付いてしまったので、つい・・
七瀬「あんた、アルテミス以外には『メサイアリターンズ』と『今にも・・・』の続編しかかいてなかったんじゃないの?」
いいじゃないか。反動的にこういうのが書きたくなるんだから。
七瀬「そのわりには、シリアス入ってない?」
それどころかONEの世界観まで無視だ! ははは。
七瀬「はあ・・呆れたわ。笑い事じゃないわよ・・」
じゃ、感想!一部ですけど!
>雀バル雀様
>七瀬家の夜
ええと・・ポニ子の
>『あとがきのほうが面白いって言われてるクセに!』
という発言についてですが・・
やっぱり本編より後書きのほうが長いというのが問題なのでわ(笑
神凪は面白けりゃおっけい、という思考の持ち主なので気にしてませんが。
さいわい、『あるてみす』はタクSSなので問題もありませんしね(これだけ無茶なSS書いといて何を言う神凪)
今回のサザ○さんネタ・・七瀬がワ○メですか?
みょーにあってるような、そうでもないような(笑
七瀬「ところで・・ポニ子さんって・・もしかして髪形をポニーテールに変えた私なんじゃ・・」
・・・聞こえないな。あ、メールありがとうございました!
リレーSS、余裕を見て(何が)HPにお邪魔した時にでも・・・なるべく早くに行きますんで・・
>PELSONA様
>SA・YO・NA・RA
むむむ、司君ですね。
しかし彼は電話をしているということを考えると、もしかしてもう、こっちの世界に返ってきているんですかね?
それなのに茜の前に姿を現さないのは矛盾でしょうから違うとおもいますけど。
あとがきで続きに困った・・の様なことを書かれていましたが、そんな時は神凪は『リーフ図書館』に行くなりして、SSを読みまくることにしています。
もちろん、そんな暇はないかもしれませんけど・・・
他には馬鹿SSを書いてみるとか・・
まあ、新米の言うことなんで適当に聞き流しておいてください(笑
以上!
七瀬「えっ!? 少なすぎない!?」
だって・・ねむいんだもぉん・・・
七瀬「気色悪い声出さないでよっ!」
多分後二三回で終わるとおもいますので、適当に読むなり焼くなりしちゃってくださいね・・・
では・・・