今にも・・ 投稿者: 神凪 了
『今にも落ちてゆきそうな月の上で』





月。

虚空に浮かぶ月。

それは遥かな昔から未知の場所だった。
手を伸ばせば届きそうな気もするのに、たどり着くことはもちろん、あれがなんであるのか知る事すらできなかった。

その傍観者である月に我々が辿り着いたのはそう昔のことでは無い。

月は、死の大地であった。



しかし人間というのは目ざといもので、その月にさえ、人が住めるように改造してしまったのだ。
植民地『月』の誕生である。

西暦も2500年に入ろうかという頃であった。



しかし・・・



西暦3002年。




・・・・・。




カシャアッ!

いつものようにカーテンの開く音がして眩しい太陽の・・・

光が・・ってあれ?
眩しくないぞ?

今日は曇りか?
面白くないな。

「コーヘイっ、起きてよぉ! 時間になっちゃうよ!?」
「うーん・・・あと三杯だけ寝かせてくれえ・・・・」
「だから単位がおかしいっていつも言ってるよ!」
「今日は何年何月何曜日だぁ・・?」
「02年4月26日日曜日だよ!」
「・・何だ・・学校は休みじゃないか・・・ぐー・・・」
「何寝ぼけてるんだよ! 早く起きて行かないとウォーミングアップもできなくなっちゃうよ!?」

・・?
ウォーミングアップ・・・。
何故そんな事を学校に行くのにしなくては行けないのだ。
馬鹿も休み休みいえ。

「寝ぼけるなよ長森ぃ・・・」

ごがんっ!

「うぎゃあ!」

殴られた。
しかもフライパンで。
何をする・・と抗議しようとしたが

「ナガモリって誰のこと言ってるんだよ!まだ寝ぼけてるの!?」

部屋の中を見渡してから気がついた。
金属的な天井、床。
エプロンを着けてフライパンを片手にしている瑞佳。いや、ミズカ。
見慣れない部屋・・あ、そうか。
先日引っ越してきたばかりだからな。

「ん・・ああ、わりい。寝ぼけてたぞ。」

目の前にいる女性。
ミズカ オリハラ。
まあ・・ぶっちゃけた話、血のつながりはない。
もちろん、結婚なんてしてないぞ。俺はまだ十九歳だ。そんな歳じゃない。
市民権を取得するのに名字・・ファミリーネームが必要だというんで即興で『オリハラ』というのを考えただけだ。
俺達は『アジア系』と呼ばれるタイプの人種らしいからな。
その名字をミズカも使っただけだ。
うん、それだけだ。
決してやましい下心なんか無いぞ。
昔っから十何年も一緒にいる奴にそんな感情が芽生えるわけあるか。

「早く顔洗って着替えてきなよ。ごはんできてるから。」
「ん・・わかった。」

眠い目をこすりながら洗面所まで歩いていく。
蛇口を捻ると廃液が出てきた。

(またか・・・)

こんなもので顔を洗おう物なら一発であの世行き。
お役所は何をしているんだ。
こんなもののために高い・・本当に高い金払ってるんじゃないぞ。全く。

「ミズカ〜、また水道、事故ってるぞ〜」
「え・・? う〜ん・・・しょうがないなあ・・。じゃあご飯だけでも早く食べちゃってよ。」

食卓(金属製)の上にならべられているのはまあ、いつものヤマザキ製合成パンのトーストである。
あとは牛乳。言わずと知れた合成物だ。
ミズカは昔から牛乳が好きなので食卓に必ず並ぶ。

これを一枚掴んで口にいれ、牛乳を口に含んで咀嚼しながらいつもの服に着替える。
体にぴったりフィットする黒のボディースーツだ。ソフトは電磁バリアをインストールしてある。

「今日の飯って、これだけなのか?」
「何言ってるんだよ? これから体動かすんだから当然だよ。」

ミズカはにっこり笑って、

「その代わり今日の夕飯は奮発してステーキだから。」
「おお、マツザカ製の天然物か!?」
「・・・何百万円すると思ってるんだよ・・・。そんなのとても買えないもん。」

この時代、天然のものは異様に高いからな。大根一本数十万だ。
うう・・一度でいいから本物の白い飯を食ってみたいぞ。
俺は机の上の・・あれ?

「あれ? クローは?」
「スミイ君が調整してくれてるよ。調子がおかしいって言ってたじゃない。」

ピンポーン

なかなかにレトロな音が響く。来客を告げるチャイムの音だ。

「噂をすれば何とやら・・だな。」

ミズカはエプロンを脱いで玄関に走る。

「一応、確認しとけよ?」

強盗なんてこともあるから。

「うん! ・・・スミイ君だよ。」

ガー、とドアの開く音がする。

「おはよう、ミズカさん。これ、頼まれてた奴。」
「ありがとう、スミイ君。」

別にもう出るつもりだったので俺も玄関に歩いていく。
そこには見知った奴・・スミイがいた。

「おっす。」

片手を上げて挨拶をする。

「おっす、コーヘイ。今日も稼がせてくれよ?」

スミイはギャンブルと酒に目が無い男である。よくそんなんで一千万も溜まったものだ。

「まかしとけ。俺に賭けときゃ損はさせないぜ。じゃ、行こうぜ?」
「うんっ!」

ミズカが頷いた。



・・・・・。



Moonbase-L2401area NAKAZAKI


中央道路を三人で歩く。
車? もちろんそんなものはない。
何処かのお大尽が電気自動車に乗って通って行く事もあるが、この大通りは基本的に歩行者天国だ。

この通りに限った事ではないが。

「今日は暗いな・・・」

空を・・・雲の映像が映された天井を見ながらそう呟く。
そのせいで町中薄暗い。晴れている方が気分がいいじゃないか。
何で曇りにしてやがるんだ。
WCSを扱ってる連中の考えはよくわからん。

「最近、発電所の調子がおかしいらしくてな。一ヶ月くらいはこんな曇りの天気が続くらしいぞ。」
「はあ・・おもしろくないな。なんか黒衣服を着た連中が横行してやがるし。」

黒い服を着た連中・・FARGO宗団の奴等だ。
なんか月がどうたらとかそういう宗教らしいがスラム出身の俺達には何の関係も無い話なのは間違いない。

「赤月祭が近いからじゃねえの?」
「そういやもうすぐ五月か・・・」
「それはそうと、瑞佳さん、今日のコーへイの相手って誰?」

スミイがミズカに声をかける。
対戦相手の情報聞いたって戦うのはお前じゃないだろう。全く。

「えーっと・・確か・・」
「Cクラスの『カミナギ』。KATANAっていう古式の武器を使う人みたいだね。」
「・・瞬殺のカミナギ? 相手が悪かったなあ。コーへイ。今日は死ぬわ、お前。」
「イアイヌキっていう千年以上前の技を使うらしいよ? 対戦成績は23戦中、18勝5敗。」
「KATANAって言うとあの・・こう・・長い棒に刃が付いたような武器?」
「うん。メガセラミック製だけどね。」

鉄でもバターのように切り裂く超硬度の金属である。
怖いことこの上ない。
もっとも、鉄なんてレトロな金属が使われている武具は見たことがないが。


そうこう話しているうちにスタジアムに着いた。



・・・・・。



ムーンコロシアム。
捻りも糞も無い名前だが、ここがこの月の上での一番の娯楽施設であるのは間違い無い。

「おはようさん、コーヘイ。今日も応援してるぜ」
「サンキュ。」

関係者出入り口から俺達は入る。
もちろん警備員のおっちゃんとは顔パスだ。

中に入ったら真っ直ぐ受け付けのところまで行く。

「・・コーヘイさん・・とマネージャーのミズカさん・・ですね?」
「ああ。」
「今日は・・三番控え室ですね。場所は・・」
「わかります」
「試合開始は十時の予定です。それまでそこで待機していてください。」

それだけ聞いて歩き出す。
もうなんべんも通っている道だからな。
途中、ある人物とすれ違った。

「ねえ・・コーへイ、あの人・・」
「ああ・・・」
「ナナセ・・・」

ボディースーツなど、一切の防具を纏わずに武器さえも右手の旧式サイコサーベルだけで敵をなぎ倒す、このコロシアムのチャンピオン。

ナナセ。

「おい、いつまでもボーっとしてないで行こうぜ?」
「あ・・うんっ」



・・・・・。



下半身と上半身を泣き別れに去れ、コロシアムの真ん中にごみとして転がった。
敗者の末路なんてのそんなものだ。

『勝者・・ツカサ!!』

アナウンスが勝者の名前を告げる・・。


おおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!


歓声。



・・・・・。



「終わった・・みたい。」
「じゃあ、いくか。」



三番ゲートに向かう。



その途中、前試合の選手とすれ違うことはなかった。なぜならその選手は死んだのだから・・・。



「コーへイ・・気を付けて・・」

闘技場に入れるのは選手−闘士のみ・・ミズカとはここでお別れだ。

「俺が負けると思うか?」
「ううん・・。」


それだけ聞いて、三番ゲートをくぐる。



わああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!



大観衆の歓声と眩しいライトが俺を出迎える。
今日も満員御礼だな・・



『そのカミナギに相対するのは最近、急上昇中の闘士、コーヘイ オリハラ!
およそ十分と立っていられた者はいないといわれる、カミナギのイアイヌキにどう立ち向かうのか!?』



わああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!



歩きながら両手のクローをしっかりとはめ直す。
メガセラミック製のハンドクローだ。



闘技場の真ん中当たりで俺の今日の敵・・・カミナギと相対する。
むさ苦しい髭に、伸びた髪。
青のボディースーツに鞘に納めたままのKATANA・・

「おい、抜かなくていいのか?」
「・・これで結構だ。俺は居合い抜きで戦うのでな。」
「・・まあ、構わないが・・。」
「小僧・・悪いが、死んでもらうぞ」
「死ぬのはあんたさ。」

『それでは両者・・・』

アナウンスが試合開始を告げようとする。

タン、タン、タン・・

俺は両拳を顎の前に持っていき、リズムを取り始める。
スミイが言うには古代のボクシングという戦闘スタイルらしい。

『レディ〜・・』

(俺は勝つぜ・・)

『ファイッ!!!』


おおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!



戦いが、始まった。



(続きません)




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はっ!?
気がついたら妙な文章が!?
浩平「・・お前が書いたんだろ?」
おお、お前は『アルテミス』では住井より影が薄いと評判の浩平。
浩平「お前が書かないんだろが!!」
だってなあ・・お前書くの難しいんだもん。
よって最後まで見せ場はないぞ。
浩平(・・こいつは・・)
さて! 次回予告っ!


『復讐・・あなたは復讐のために生きているのね・・
でも、あなたにはその力が無い。それで・・憤っているのね。
・・がっかりすることはないわ。あなたは魅入られたの。
あなたは力を手に入れることができるわ。復讐のための・・兄を取り戻すための力を・・
私? 私は【チェルビム】の・・・』



暁組・・・所詮はただのクズの集まりか・・ −巳間良祐



あなたの力になる代わりに・・私に貸してね・・ −・・・?



良祐は・・私が助け出す・・・! −巳間晴香



何を・・何をやっているの・・晴香は!? −天沢郁未



雪ちゃん、天沢さん見なかった? −川名みさき



くふふ・・・ふははは・・残念だったなあ! 巳間ぁ!! −高槻(名前不明)



『メサイアリターンズ』 VSイマジネーター(笑)


なんかもうすぐ投稿するかも!


浩平「・・うわあ・・ぱくりじゃないか、これ。」
だってなあ・・・そんな感じになっちゃったんだよ。
浩平「で、いつ投稿?」
そのうち。
書き上がったら。
そういうわけ(どういうわけだ。おい。)なんで今回も後書きは勘弁を・・・
浩平「お前なあ・・・『アルテミス』はどうしたんだよ・・。」
途中。ストックが少なくなってきたから今書いてるの。
じゃ。