アルテミス 投稿者: 神凪 了
第十八話 「アルテミス 〜里村茜」



・・・・・。


−彼ら不可視の力を持った一族は何処から来たのだろうか?
宇宙?その可能性もある。
かの宇宙人方程式によれば

N×fp×ne×fe×fi×fe×fl で宇宙人がおよそどれくらいの割合でいるのか求められる。

ちなみにこの式は

N=銀河系の中の恒星の数=四〇〇〇億個
fp=惑星系を持つ恒星の割合=三分の一
ne=ある特定の惑星系の中で生物の存在しうる生態学的環境を持つ惑星の数=2(太陽系の場合)
fe=適当な環境を持つ惑星の中で実際に生物が誕生した惑星の割合=三分の一
fi×fe=知的生物が住んでいて通信技術を持つ惑星の割合=一〇〇分の一
fl=その惑星の中で技術的文明人の存在する期間の割合=一億分の一

と、なっている。

計算すると一つの銀河系に十個。
そしてその生物が不可視の力を持ち、人間と同じ形態を取ることができ・・etc
この上条件を付けるのであれば確率など0%に等しい。

私は彼らが宇宙人であるとするよりは別の説を取りたい。

『神隠し』というものをご存知だろうか?

私は『並行世界』・・パラレルワールドというものを考える。
今のこの世界にはたくさんの未来への分岐がある。
だが、それと同じように今にいたる道・・過去の分岐もそれこそ無限にあると思うのだ。
私達が今、生きている現在でさえ、無限の可能性があると思う。

そう、時間とは太いパイプのような物で、その一点一点が全て『世界』なのだ。
ほんのわずかだけ違った世界という物がある。
そう、パラレルワールドの一つだ。

その世界には彼らが住み、文明を築いているとしよう。
『召喚』と呼ばれる方法で彼らとコンタクトを取り、そして、彼らがこの世界にやってくることができれば?

・・そう、これは一つの突拍子もない仮説にすぎない。
だが、宇宙人である可能性はこの仮説が真実である可能性と同じぐらいに低いし、もし、彼らはこの地球のどこかに隠れ住んでいた一族だというのなら、この地球にどれほどの秘境という物があるというのだ?

・・私達が彼らの力を魔法だというのなら、彼らにとっては私達の使う科学こそが魔法にみえるかもしれない。
あるいは・・・−



・・・その名倉由依の私室に残された一枚の文章は、彼女自身以外の目に触れることはなかった。
だが・・あるいはそれは核心だったのかもしれない。



・・・・・。



それは唐突だった。

キス。

それ自体は変ったことではない。
今、この瞬間だって何処かで誰かが死に、また何処かで新しい命が生まれている、広い世界だ。
キスなんかこの世界の何処で交わされても不思議ではない。だが・・。

広瀬真希は呆然とした。



・・・・・。



ファースト、キス、だった。



何が起きたかさえわからなかった。
気がつくと人形のように端正な彼女の顔があっただけ。

里村、茜。

上月澪はその腕の中に抱かれていた。
真っ赤な、奇麗な瞳。


(赤い・・お月様みたいな瞳・・なの)


そんな事を呆然と考えているうちに、唇を割って口内に侵入してくる湿った物体を感じた。
それが舌だとわかって、ようやく自分が今、どういう状態なのか理解した。
顔が急激に熱くなる。


じたばた。


抵抗はするものの、がっちりと抱きしめられているのでろくな抵抗もできない。
・・そのうち・・


くちゅ・・


口内で音が立つ。
ビクン、となる。
羞恥心で、目も開けてられない。

吐息。里村茜の、吐息。
口内を這いずり回る感触。
流れ込んでくる、生暖かい唾液。

もはや体に思うように力が入らない。
この時には既に体から力を抜いてされるがままになっていた。

(私・・里村さんにこんなことされて喜んでる・・の・・?)

体の芯が熱くなってきて・・・



上月澪の意識はそこで、とんだ。



・・・・・。



いつから始まったのかはわからない。
里村茜は夢を見ていた。

上月澪とディープキス。

(私は何で・・こんなことをしているのでしょう・・。)

澪の意識が無くなったのを確認してから唇を放す。
つうっ・・と透明な糸がひいた。
口元を、拭う。

澪のからだが糸を失ったマリオネットのようにくたり・・と力を無くして倒れ込む。

『な・・何をしているの?』

外側からエコーがかかったような広瀬の声。

(・・ああ・・夢なんだ・・)

何故かそう思った。
冷静に自分を見守る。

『起きていてもらっては困るので、寝てもらっただけです』

自分の声もエコーがかかっていた。

・・?

(どういう設定の夢なんでしょう・・?)

里村茜は訝ったがまあ、誰かが答えてくれるわけでもない。

『あなたたちを殺すところを・・・見てもらっては誤解されるかもしれないでしょう?』
『あ、あなた一人で私達と戦うつもり!? 気でも触れたの!?』

『私』は寂しい笑みを浮かべた。

『それに・・そのことで里村茜自身の精神が壊れてしまうかもしれませんから・・。』

(・・?)

『く・・狂いなさい!!』

見えた。
一筋の雷光。
稲光みたいな物が広瀬から発されるのが見えた。

だが。
里村茜・・私はその雷光に貫かれたのに平然としていた。

(・・???)

よくわからない夢だ。
見ると広瀬が驚愕の表情を浮かべている。

『!?』
『効きませんから・・。大人しく殺されてください・・』
『くっ・・あなたたちっ!!』

ざっ

広瀬の合図と同時に、コントロール体たちが動いた。
そして・・目にみえるけど見えない、『力』が一斉に私に向かって放たれる。

(危ない!)

そう思ったとき、

(・・!? 何・・?)

それは、月。
赤い、赤い月。
里村茜の頭上に浮かぶ真っ赤な月。
虚空に浮かぶ月。
それが不意に現れた。

それ以外に表現しようが無かった。

私が、右手を動かした。
すると・・

『!!!!!!!』

広瀬が声無き声を上げる。
コントロール体たちは一瞬にして首を刎ねられ、そして血も吹き出さずに『消滅』した。
広瀬の顔にようやく恐怖が浮かんだ。
『私』はそれを見て愉悦の笑みを浮かべる。

『嫌・・』
『・・殺しますね』
『嫌・・誰か・・助けて・・』

・・・・ぅ

・・広瀬は、死体も残さずに消滅した。

それを見届けると床に倒れ込んだ七瀬留美と天沢未悠の方へ向かう。

『起こしてあげなければいけませんからね・・。』

額に手をかざして・・・



・・・・・。



もう駄目だ・・・。
そう思って闇の中で立ち尽くしていたところに意外な人物があらわれた。

里村茜。

「七瀬さん・・・」
「何でここに・・いえ、それよりも・・」
「逃げないでください。」
「・・私に関わらないで・・もう・・嫌・・。」
「・・七瀬さん・・あなたの右手に宿ったものは何ですか?」

言われて、右手を見る。
いつもと変わらない、私の右手だったがそこには光があった。

「これのせいで・・・」
「違います・・・」
「違わないわよ!! この余計な物のせいで私は・・・」
「・・その償いをしたいと思いませんか?」

・・償い・・。

「その力で誰かを助けることができます。広瀬さんのように狂気に取り憑かれた人を解放してあげることができます。私達を・・守ることができます・・」

「・・・。」

「お母さんの・・仇を取ることも・・。」
「!! あんなのお母さんじゃ・・」
「わかっているはずです・・・あなたは・・」

「・・・。」

「世界を救おう・・そう思いませんか?」

「・・・。」

「世界を救って、住井君と暮らしたい・・そんな風に思いませんか?」

「な・・」

「彼のためにも、もう一度目覚めてはくれませんか?」

「・・・。」

「絶望して・・諦めることはいつでもできます・・でも、戦うことは今しかできません・・」

「・・弱いのかな・・私・・」

「・・だからこれから強くなるんですよ・・」

「・・そうだね・・」



・・・・・。



「天沢さん・・・」

「・・大丈夫。私は大丈夫。わかってるから。私がいなくちゃ駄目だから。今・・戦えるのは私しかいないから・・。
大丈夫よ・・里村さん・・・」



・・・・・。



夢から覚めると、私達は非常通路の途中で仲良く寝ていました。

(・・? 何でこんなところで・・それにさっきの夢は・・)

・・? 夢・・?
夢って何でしょう?
夢なんか見たんでしょうか?

むくり・・

最初に起きてきたのは上月さんでした。
きょろきょろとまわりを見回した後・・

『あの人たちは何処に行ったの?』

あの人・・

「・・わかりません。」

だんだん記憶が戻ってきました。
私たちの前に広瀬さんたちが現れて・・突然七瀬さんと天沢さんが倒れてしまって・・・それで・・

・・それで・・どうなったんでしょう?

「・・よだれ・・垂れてますよ?」

あわあわ

慌ててハンカチを取り出して口元を拭う上月さん。
・・よくハンカチなんて持っていますね。

天沢さんと七瀬さんも起き上がってきました。

『・・あれ?』

素っ頓狂な声を上げます。二人揃って。

「なんで、こんなところで私たち寝てたの?」
「・・わかりません。気がついたら寝ていました。」
「・・あの広瀬って子は?」
「・・わかりません」
『起きたら、誰もいなかったの』

私たちは揃って首を傾げましたが・・・

「・・まあ、ここで考えていてもしょうがないよ。先に進もう?」

天沢さんがそう言ったので私たちは通路の奥へと進みます。

(・・多分・・私だ・・。)

私がやったんだ。どうにかして。
昔から時々こんなことがあったような気がする。

(司・・)

あの空き地で消えた幼なじみ。
『茜は・・・普通の人間じゃないのか?』
唐突にそんな事を聞かれたことがある。
『茜・・? 今、何やったの?』
詩子も、そんな事を言ったような気がする。

それに薄々、感づいてる。自分に何か、特殊な力があるってこと。
でも・・・

(それは・・一体何なんでしょう・・)



・・・・・。



・・・全てはもう少し。




<第十八話 「アルテミス 〜里村茜」 了>
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えと・・ま、そういうわけです。
みさき「なんかだるそうだね。」
いや・・レポート百枚明日までに仕上げなけりゃならないんで・・・。
みさき「百枚って・・・終わるの?」
ん・・半分は終わってるんだけど・・
ま、いいや。感想、GO!

>ニュー偽善者R様
>ONE総里見八猫伝彷徨の章 十五幕

ん・・今回は短いなあ・・。
みさき「伏線いっぱい張るための話らしいよ。」
見てみるとこう・・端々に怪しい表現が・・・
って、ホントはわかってません。
でもこの茜の過去からすると司、蘇りそうだなあ・・。

>変身動物ポン太様

一時復活ですか・・。
あ、四連発の中で僕が一番好きな話はトマトです。
みさき「了ちゃん、エッチだね・・(ぽっ)」
あとがきから察するに復活するときは続き物のSSですね・・?
復活を心待ちにしてますです。
あと・・”池−深山雪見編”ぜひ見たいです。


>静村 幸様
>コンビニに行こうっ!−2−

これは・・やはり想像どおりなのか・・?
みさき「練乳パン・・・」
こわすぎ(汗)


>ももも様
>ブレイカーズ

えーと・・はじめましてになるんでしょうか?
みさき「たぶんそうだよ。」
えと・・謎の男、あきらかに誰かわかるんですけど(^^;
しかもえびフライで終われる晴香・・。意外とFARGOって・・・なのかも・・。


>吉田樹様
>たい焼き鎮魂歌

あ・・南=司ですか・・
でも、南ってゲーム中ではまともなキャラだし茜を好きだという発言も一切無いのにどうしてあんないかれたキャラになってるんでしょう・・(^^;
みさき「素質かな?」
いや・・それはなんか違う・・。


>雀バル雀様
>一窮さん その3

あはは。今回も笑いました。
でももはや『一休さん』じゃないな。完璧に別物だわ。
しかも瑞佳が生き返ってるし。
澪の実況がうけた。どうやって実況してるんだよ。
ところで・・
みさき「うん、あとがきだね?」
そう。感想、ありがとうございます。それと・・・
『ばれてるーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!??』
みさき「メサイア2として再スタートしようというのはばればれだったもよう。とほほ・・・
みさき「次の敵がまだ決まってないんだよね?」
そ。候補としては・・・『晴香』『みさき』『澪』なんだけど・・・


>パル様
>恋愛の才能

読んだ後の第一声。
『ぬは。』
みさき「・・ぬは?」
いや・・なんとなく。
瑞佳がすっごい可愛い。って言うか浩平には絶対もったいないって。
神凪はこういうSS好きです。もっとやってください。


>WTTS様
>一方その頃…広瀬(第12投稿)

うーん・・広瀬がなんで七瀬にちょっかいをだすのかがわからないな・・。
むしろ好意的な印象を持っている気もするし・・。
みさき「実は広瀬さんも浩平君のことが好きで・・という話になるのかな?」
いや・・それはないと思うけど・・
この先の展開が楽しみです。


今回はここまで。じゃ。
みさき「さよなら〜」