メサイア 投稿者: 神凪 了
注・このお話は小説版・ONEを読んでいるとより楽しくお召し上がりいただけます。って言うか読め。(失礼)

・・・・・。


『飢饉』『疫病』『戦争』『死』


『黙示録の四騎士』


新しく加わる貴方はさしずめ槍です・・・。
『戦争』の騎士の持つ『核兵器』という名の槍です・・・。

ようこそ私達の仲間。
私は名倉由依。『疫病』の『黙示録の騎士』です。

新しく仲間になる貴方に。
私達が何と戦っているのかわかっていますよね?

わからない。そうですか。
じゃあ・・・お話をします。
それは私達が彼女を止めた時の・・・



『メサイア』



・・・・第三章



闇。
漆黒の闇。
雲一つない夜空。
こんな時、私はマンションの屋上とか・・・とにかく高いところに上ります。
電波が受信しやすいから、ではありません。
何とかと煙は高い所が好き・・・まあそんな感覚ですよ。

屋上の、さらに貯水タンクの上。
十七階建てのマンションのこの場所からは町が一望できます。

明かりのほとんど灯らない町。静寂の支配する空間。
風の音だけがここを支配しています。

・・午前二時。

夜の明かりの灯った町も奇麗ですけど、こんな深夜の闇に包まれた静かに眠っている町も素敵でしょう?

冬の全てを凍てつかせる、静謐な冷気の中に心を溶かします。
種族的な本能でしょうか? この虚空に自分を投げ出す感覚が私はとても好きです。

帽子を脱いで、遥か故郷のことを想います。

私のお姉ちゃん・・・ユリ。

虐殺。
神というものは人間至上主義らしいです。
私達を作ったのも自分たちのくせに。

風が屋上を駆け抜けてゆきます。
私の髪を揺らし、耳に冷気を押し当ててゆきました。

人間とは違う形の、尖がった耳。
人間よりも小柄な身体。
長い寿命。その割に弱い生命力。


・・エルフ。


明日は、どうなるでしょうか・・・。
その時まで、後五時間余り。



・・・・



夜中はあれだけ晴れ渡っていたのに五時頃からは小雨がぱらついてきました。
姉の形見の皮鎧に天界から失敬してきた聖弓・・・名前は忘れちゃいました。
いかにもファンタジー世界に出てくるエルフな格好です。

・・コンコン

午前六時をまわったところでノックの音。
シュン君以外にこの家に、こんな時間に訪ねてくる人はいません。
傘は持たずに家を出ます。

「おはよう、名倉さん。」

制服にいつもの笑顔。ただし、背には聖槍「グングニル」。
これから命のやり取りをするというのに微塵も緊張は感じられません。
これが彼です。



・・・・



「決着・・・つけられるでしょうか?」

小雨のぱらつく中、一つの傘に二人で入り目的地まで歩きます。
冬の冷気の中、なぜ雪にならないのか不思議ですね。
でも・・心配事は別のことです。

「ん・・・わからない。」

あいまいな、答え。

「絶対におぼえてはいない。ただ、あいまいな感覚を信じているだけだと思う。
それすらも奴等の手かもしれない。僕たちにそうしたように。」
「折原君にも・・・ですね。」
「うん・・・彼の妹は本当は助かっていたのさ。でも、奴等は彼の類まれな精神力が欲しかったらしい。
妹さんを・・・殺した。」
「・・・・。」

食堂で時々見かける『折原浩平』君。
彼の背負っているものは肉親の死・・・
私と同じような・・・・過去を背負っているんですね・・・

「彼に教えるわけにはいかない。今の彼は戦う術を持たない。それでは駄目だ。殺されてしまう。」
「今回の『彼女』は・・・」
「過去を断ち切れば連れて行かれることも・・・消えることも無くなるさ。」

その過去を断ち切れるかどうかが問題なんですよ。
シュン君。

「来たな、二人とも。」

護さんでした。
既にエクスカリバーを抜いています。

「『彼女』はもう来てる。二人とも準備してくれ。」

傘を畳んで道の脇に立て掛けます。

「葉子はもう先に来て人払いの結界を張ってる。」

私は左手に弓を持ち替え、右手に・・・

「我が右手に集え・・・・汝の名は闇なり・・・」

握った右手が黒く光りました。光ったという表現は適切ではないかもしれませんが。
シュン君はグングニルを両手で構えます。

「シュン君・・・無理をしないでくださいね・・・」
「名倉さんも。やばくなったら逃げても構わないから。」


「・・・いくぜ。」



・・・・



草の生い茂った空き地に、一人佇む傘を持った女性。
ピンク色の傘。私達の通う学校と同じ制服。

・・里村茜。

「里村さん・・・・一体何処に行くつもりだ?」

住井君が声をかけます。
ゆっくりとこっちに振り返る里村さん。

「・・・誰」

冷たく虚ろな瞳。
常人だったなら、背筋の凍るような。
でも、そんな事で物怖じしてはいられません。

「何処に行くつもりなのか・・まあ、望む望まないにしろ、俺達はあんたを止める。」

ぼぉっ

彼女の背後に、大きく青白い人影が浮かび上がります。

「・・連れていってくれるっていったんです・・・。」
『邪魔をするな・・・』
「司が・・・私を連れていってくれるって・・・・」
『俺と茜は行くんだ・・・邪魔をするな・・・背反者ども・・・』

その巨大な威圧感を前に。

「『プリンシパリティ』かそれ以上、だな」
「・・・許さないよ・・・」
「シュン君・・。」

シュン君の、その瞳には強い怒りの色が浮かんでいました。予想通りに。

「住井君、速攻でカタをつけよう。」
「・・わかった。お前は右から行け。俺は正面から、由依は左から射れ。」

ばっ

三人が同時に動きます。

『愚かな・・・』

『城島司』の呟きが聞こえました。
私は草の中を疾走しながら右手を弓につがえます。

「いくぜ!」

エクスカリバーを正眼に構えて正面から突っ込む護さん。
右から強襲しようと隙をうかがうシュン君。
私は右手を開いて、

「吸いなさい・・・」

しゃうぐるるるるるるるるる・・!!!!

弓は闇を吸い取り、聖弓から邪弓へと変化する。
昨日、私のからだ精一杯にためた闇。
これが私の能力・・。


「天狼剣奥義! 天狼殺!」

住井君が剣を大きく振りかぶり・・・


だっ!


地を蹴る音と・・・

「・・・はぁっ!」

シュン君もグングニルを手に飛び掛かります!


そして、私は帽子を取ります。

帽子を被っている間はお姉ちゃんの付与魔術によって抑制されているもの・・・
本来エルフという種族にも、ダークエルフという種族にもないもの・・・
エルフとダークエルフのハーフだからこそ目覚めたもの・・・

闘争心・破壊衝動・心の、黒い部分。


(しとめる!!!)


ビャウッ!ビャウッ!ビャウッ!


弓の弦を弾くたびに撃ち出される闇の刃!!
その刃は三本ともプリンシパリティ『城島司』の心臓部を・・!

里村茜が・・動いた。

「私の邪魔を・・」
『するな!!』


ゴオオオォォォォォォゥッ!!


何もないところから突如、炎が吹き上がる!!
「な・・里村茜はパイロキネシストなのか!?」
「まずい!! 住井君避けろ!!」

とっさにエクスカリバーを――


ゴオオオォォォォォォゥッ!!


「うおわっ!!」
虚空の炎に包まれる!
「うお、あちあちあち!!」
火を消そうと地面を転がりまわる住井。


「住井君!」
『他人の心配をしている場合か?』


ガキィィン!!


『城島司』は右手に持った剣でシュンの『グングニル』を、左手の楯で私の放った闇の刃を受け止めた。

「うくっ・・」
『脆弱だな・・お前らも大人しくしたがっていればよかったものを・・』

『城島司』はさらに鋭利な刃のような物が付いた翼でシュンの身体を切り裂こうと・・
シュンは、動けない。

『死ね』
「・・・!!」

退けば剣で斬られる。そのままでは翼に切り裂かれる。
絶体絶命かと思ったその時・・

「・・少々非常識ですが・・・_____!!!」

・・葉子の声。

『!?』

次の瞬間には、シュンの姿は消えていた。
驚愕の表情を浮かべる『城島司』。

「とったよ・・」

『城島司』の背後からそんな声が聞こえて・・

ざすぅぅっ!!


『城島司』のからだから一本の棒が生えていた。
『グングニル』が『城島司』を背中から貫いたのだ。

『・・!!!』
「きゃあぁぁぁぁぁ!!」

苦悶の表情を浮かべる『城島司』。悲鳴を上げる里村茜。
そして、

どさっ

里村茜はその場に崩れ落ちた。



・・・・



「どうやら『人払い』なんて悠長な事をしている場合ではないようだったので・・」

空き地の木の影から姿を現す鹿沼葉子。
彼女は『この空き地を誰も気に留めないように空間を支配』していたのだ。
そのため、誰かが危機に陥るまで出てくるのは控えていたようだが・・。

「すまない・・助かったよ。」

シュンがいつのまにかすぐそばまで来ていた。
ちなみに、『グングニル』はまだ、地面に倒れ伏した『城島司』のからだに生えたままだ。

「シュン君・・大丈夫ですか?」
「うん・・葉子さんのおかげで何とかね。それにしても葉子さん・・・・」
「はい?」

シュンが葉子の方に向き直る。
葉子は、全身汗びっしょりで肩で荒い息をついていた。
今、何をしたのかはよくわからなかったけど相当大きい『願い』をかなえたらしい。

「ずいぶん非常識なことをしたね・・体、大丈夫?」
「・・時間を止めるのはマラソンのランナーを前から押して無理矢理止めるようなもので、今やったのはマラソンのランナーを後ろから突き飛ばして加速させるような物です。
時間を吹き飛ばすのは、時間を止めるのと比べればたいした問題ではありません。
とある漫画からアイデアを拝借したんですが・・上手くいってよかったです。」

時間を吹き飛ばす・・すごいことをするものだ。
ふう・・と溜め息を吐いてようやく呼吸を落ち着ける葉子。
しかし、顔色は悪い。真っ青を通り越して土気色だ。

「大きい力を使ったものですから、しばらくは空間支配を使うのは遠慮したいところですが・・・・
それよりも・・」

葉子さんが別の方向に目を向ける。

「あなたは・・・一体何をしているんですか?」
「うお、あちあちあちあち!!」

ごろごろごろ。

その視線の先にはいまだ転げまわっている住井がいた。
ちなみにもう火は消えているが本人は気づいていないらしい。

「二人が必死で戦っている最中に一人そんなところで踊っているなんて・・・」
「あちあちあちあち!!」

ごろごろごろ。

ちなみにそれは誤解である。
しかし住井はまだ熱い気がしてしょうがないのか地面を転げまわっている。

「あなたには・・相当きついお仕置きが必要ですね・・」
「うああぁぁぁ・・・誤解だあ・・・」

ようやく転がるのをやめた住井が情けない声を上げる。
葉子は私達の方に向き直って・・

「誤解なんですか?」

静かな怒りをたたえた眼差しをこちらに向ける。

・・こわひ。

帽子を脱いで、言うなれば『戦闘』モードに入った私だが本気で恐怖した。
だから私もシュンもとっさに口走ってしまったのだ。

「え、いや、誤解じゃないよ」
「お、踊ってましたよねぇ」

と。

・・ひゅぅぅぅ・・

その空き地の気温が氷点下まで下がった。
降りしきる雨が、突然雪に変わったほどに。

「・・うふふ」
「お前らぁぁぁ!!!!!!!」

悲鳴を上げる住井。

「ま、まあ・・これで一応終わったね。」

その声をできるだけ気に留めないようにしながら私に話し掛けてくるシュン。
私は帽子を被って・・

「そ、そうですね・・」
「うふふふふ・・・・・」
「お前ら!聞こえないふりしてるんじゃねぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」

シュン君にそう返した。

「じゃあ・・そろそろ帰らないと・・」

そう言ったとき。




グゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ



・・!

私達を逃がさないとばかりに空き地が炎に包まれました。

「えっ!?」
「な、何が・・」
「うふふ・・」
「いやぁ・・誰か助けてえ・・」

思わず声を上げる私達。
ただ、気づいていないのが二人ほどいたようでしたが・・気のせいということにしておきましょう。

ゆらり・・と立ち上がる人影。
その右手には『グングニル』が握られて。


「どうして・・どうして司を殺したんですか・・」


流れる、涙。
里村さんは泣いていた。


「どうして・・邪魔をするんですか・・」


ごぉぅっ


『グングニル』が炎に包まれます。
里村さんはもはや、念力発火能力・・パイロキネシスを完全に自分の物にしていました。


「殺します・・・司を私から奪ったあなた達を・・・殺します!!」


グゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ


火の手が一層強くなります。
それは空き地を飛び出して、まわりの家々を焼き始めるほどでした。


「・・・。」


私のすぐそばには何かを決心したような表情のシュン君がいて・・・私は泣きました。
彼が私からいなくなってしまうのがわかったから・・・。



・・・・



やはり長くなってしまいましたね。
もう月が出ていますよ?
私はもう帰りますね。
・・え、この話の続きですかぁ?

・・・うーん。

・・あとは自分で考えてください。
・・私の口から言う必要もないですよね?


『永遠の力』に抗ったあなたなら・・・。


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夕方、神凪の自宅にて。

はぁ・・夕焼けが荷粒子砲のようだ・・・・
由依「・・どうしたんですか?」
いや・・こんなメールが来てさ・・
由依「E−メールですか。ええと・・」

(HP作ったよ。遊びに来てね。 ふろむ雀バル雀)

由依「・・ああ、そう言えばHPビルダー買いに行ったってポニ子さん言ってましたもんね。でも、これがどうしたんですか?」
いや・・神凪もHPを作るべきなのだろうか・・?
由依「・・? 好きにすればいいじゃないですか。」
ん・・確か・・(ガサゴソ)
由依「どうしたんですか?」
あ、これだ。
由依「HPビルダー・・持ってたんですか?」
うん。でも暇が無くて・・それに神凪のHPに来る暇な人なんているんだろうか?
由依「過去のSS置いておけば来てくれますよ。『アルテミス』投稿ペースが速いから読み逃したって言ってますよ?」
ん・・PELSONAさんだな。感想メールが来てた。PELSONAさん、ありがとうございます。
由依「あ、雀バル雀さん、PELSONAさん、メールありがとうございます。」
雀バル雀さん、わざわざありがとうございました。HP、遊びに行きます。
由依「PELSONAさん、空間支配についてですが、おっしゃるとおり無敵の強さです。」
でも、時間を数秒止めただけでぶっ倒れちゃうくらいに疲れるって言う設定ですから。
他の三人がいてこその『空間支配』です。
由依「本気になれば相当のことができるはずですが・・」
んー・・今回『キングクリムゾン』やっちゃったのは無理があるからなあ・・。
他に大技としては、
『時よ止まれ』『時よ戻れ』『圧力よ封じられよ』ですね。
とにかく人間相手ならその空間の気圧をゼロにまで下げて、一瞬で殺したりすることができるわけですから。
まあ、あんまり細かいことはまだ上手くできないし、大技になればなるほど加速的に疲労も詠唱時間も増すわけですから無理はできません。
倒れちゃいます。
由依「それと・・」
確かに住井にはもったいないな。
でも葉子が住井に惚れてる理由ってのがあって・・
由依「そこら辺は秘密なんですね?」
うん。
しかし本当に戦闘シーンの描写が下手だよなあ・・これは今後の課題だな・・。
じゃあ、そろそろ感想を・・



>ニュー偽善者R様
>ONE総里見八猫伝彷徨の章 第十二幕

・・やっぱりおもしろいなあ・・。
神凪は上手くオリジナルキャラを動かすのが苦手だからなあ・・。
由依「ああ・・そういえば没にした第八話あたりの・・」
うん、里村義樹。茜の弟の。彼が出ていればもう少し良祐の描写が多くなっていたはずなんだけど・・
由依「上手くいかなくて消しちゃったんですよね。」
うん・・だからこんな風に上手くまとめてあるのはちょっと尊敬・・かな。


>火消しの風様
>剣技修行 NO.2

図書委員、辞書を引き裂く七瀬、えら呼吸・・各所にちりばめられた小ネタがグッド!!
由依「それにしても、浩平君がかっこいいですねえ・・。」
最強の剣技らしい『モーメントフリーズブレード』を使いこなし、その上『裏』の剣技も知っている・・
浩平・・実は強かったのか。
由依「それと前回の『背後の気配』が長森さんだとは予想外でしたぁ。」
うん、意表を突かれた。
でも相当強いであろう浩平の背後を取るなんて・・もしかして一番強いのは長森か!?


>まねき猫様
>雨月物語〜菊花の約〜エピローグ

え・・ここで終わりなんですか?
ここから浩平がどうなるとかそういうのはないんですか?
由依「はい、無理言わない。」
うーん・・すごく続きそうな終わり方をしているだけに・・
それにしても感想百個全部書くんですか・・
由依「まねき猫さんが溜めた150個あまりのSSのうち・・」
10%が神凪の占めるシェアだ。やったね!
由依「・・喜ぶことなんですか?」
・・迷惑・・かな・・・。



ん・・じゃあHPづくりに挑戦してみるか。
由依「じゃあ、私も手伝いますよ。」
そう?じゃあこっちに・・
由依「はい・・・って何でベットに連れ込もうとするんですか!!」

どか、ばき。

ぐはあ・・軽い冗談じゃないかあ・・・
神凪 了、重傷。
由依「取り合えず今回はここまでで。」