アルテミス 投稿者: 神凪 了
第十五話 「ナイトメア・5」


・・・・・。




−私達の尺度で見るのであれば俗に『悪魔』と呼ばれるものが存在し、それらと交わることで力を手にするのは遠い昔、中世ヨーロッパにおける『サバト』にも見られることだ。
ただ、疑問としては彼らが何処から来たのか、生活習慣などについてはほとんどが明らかになってはいない。
召喚という言葉があるからには人間の中に彼らとコンタクトを取ることのできる人間がいたということだろうか?



・・『彼ら』と私達人間では、生物学的な違いから子をもうけることはできないはずだ。
だが、現実には四人の第二世代の子供がいる。
そのうち能力を確認できたのは『天沢未悠』だけだ。
扱っているのは確かに『不可視の力』なのだが特に『守』に長けているといった感がある。
やはり普通の意味での不可視の力は違うのだろうか?
また、彼女らには自我のロストは一切認められない。



おそらく『彼ら』は生まれつき、郁未や晴香らは自我のロストが進行して行く中で『彼ら』を受け入れることで『不可視の力』を制御できるようになった。
第二世代の子供達は・・・未悠の例だけを見ると何か、強烈なショックがあるといっきに能力に目覚める物のようだが・・・。
もっとも、私の見立てでは未悠も能力に完全に目覚めているわけではないようだ。
何かもっと別の・・・そんな感じがしてならない。−



・・・それは名倉由依の私室に残された一枚のワープロの文章。



・・・・・。



『C−2247』

その時から私は物になった。
FARGO宗団の所有物。
ただ、復讐の意志だけがあった。
それだけで生きていた。

それが・・・。

ここで、こんなところで果たせるとは。


『自我をロストする。』『ロスト体。』
よくわからない。だが、そうでないもの・・・例えば私はなかなか希少な例らしい。
自分の意志でFARGOに来たもの。
連れ去られてきたのとは違い、忠誠心がある・・らしい。

どうでもいい。

Class D・・・意志を持たぬ哀れな肉の人形たちが私の持ち駒。
意志を持たぬ哀れな肉の人形。私もそうか。

でも、どうでもいい。

私の人生を壊した七瀬留美さえ、殺せれば。


「あんたを・・殺すわ」



・・・・・。



「なんで・・・あなたが・・・」


わけがわからない。


広瀬真希は三年に上がった頃か・・・それくらいに学校を退学になった。
理由は知らない。
高校の先生も話そうとはしなかった。

誰もが、受験の忙しさや日々の生活の中で広瀬のことを忘れていった。

それが、半年以上経った今、何故。


「私の人生を狂わせてくれたあなたを殺すの。私を壊してのうのうと乙女気取りしてたあなたを殺すの。
ただじゃ殺さない。楽になんて死なせない。嬲り者にしてやるから。さんざん男に犯させてそのあとじわじわ殺してやる。蛙の腹を切り裂くように。クモの足を一本一本もいでゆくように。ゆっくりゆっくり殺してやる。
だってそうでしょう?この・・・」

ばっ

広瀬が肩をはだけさせる。

「この・・・醜い傷をつけてくれたあなただけがのうのうと生きているなんて誰も許しはしない。」

右肩の骨は異常な形に変形していた。
修復不可能なまでにつけられた傷。
一度粉々に砕かれた肩。
それは、今の医学では治せはしない。


・・・そうだったんだ。

広瀬が、いつも体育を見学していたわけ。
あまり、自分の席からは動こうとはしなかったわけ。
そう言えばそうだった。

でも。

「何で私なのよ・・・関係ないでしょう!?」

・・・そんなこと、してないもの。わたし。

十二月頃に転校してきていつも悪意の視線を投げかけられていたのはおぼえてる。
画びょうとか・・・そんな悪質ないたずらをされたのもおぼえてる。
でも・・私は彼女の身体に触れてさえもいない。


広瀬の顔が、冷酷な色を増した。


「・・・わからなければいいわ。どっちにしろ・・私の気は晴れる。」


だから私は一度も使ったことのない拳銃を抜いた。
この気の狂った知り合いを助けるために。




でも。




「・・七瀬さん・・・彼女の言っていることは・・全て真実です・・・。」
里村さんがそう呟いた。



・・・・・。



「折原・・合流地点まで後どれぐらいだ?」


爆発したFARGOの基地を後にした俺達は、先ほど名倉さんに指定された合流地点へと向かう所だった。
本部の方もなかなかやばいことになっているらしい。
皆を連れて逃げてくる・・・といっていた。


「あと・・・半日も歩けば着く・・・。」


合流地点はミサイルによる攻撃を受けた東京都の、秋葉原。
東京タワーとサンシャイン60の無くなった東京都は、おそらくFARGOの手も薄いだろうということだ。
まあ、ミサイルの爆心地なんて誰かが生きてるとは思えないしな。

再び、山の中を歩く。
今は俺と住井と南だけだ。

・・気が滅入る。
・・基地が襲撃を受けているらしい。瑞佳は無事なのか?

「折原、そんな深刻そうな顔するなよ。」

住井はこんな時でも明るい声で話し掛けてくる。
いや、こんな時だからこそか。

「でも・・・瑞佳が・・・」

FARGOは女性をさらっていっては陵辱し、あげく改造人間にしている。
そんな噂を聞いた。
どうしても嫌な想像をしてしまう。

「そんな最悪の想像をしたってしょうがないだろ?
最悪ってのは字の如く最も悪いことだ。最もってのは確率的には一番端っこのものなんだぜ?」

こんな時でも俺を励まそうとする。
助かるぜ、住井。お前が友人で良かった。

「・・ありがとう。」
「ん? いやいや、今言ったのは氷上って奴からの受け売りなんだけどな。
・・でも・・いい言葉だと思うぜ?」
「ん・・・? 氷上?」

・・懐かしい名前だ。

「あれ? お前も知ってるのか? 氷上シュンだ。」
「・・ああ。」

シュンか・・・。
あいつのおかげで俺は長森との絆を深めることができて・・・そしてこの世界に戻れて・・・

「・・・俺の親友だよ。」
「・・ん。そうか。」


・・あの色白の、この世の物ではない雰囲気を漂わせた親友。
確か・・・一昨年の・・俺が消える前に病気で死んだんだよな・・・。


『絆・・作れたみたいだね・・。嬉しいよ、初めて人の役に立てて。
もう・・思い残すことなんてないかな。長森さんを大切にね・・・。』


それは病院にお見舞いに行った時の、セリフ。


『でも・・・できたら僕のことをいつまでも憶えていてくれないかい?
・・僕と・・同じ眼をした折原君・・・』



憶えてるよ。忘れるわけないじゃないか。俺の親友。
お前がいなかったら瑞佳をあんなに愛しく思うことだってなかったんだから。
お前は、俺の恩人だよ。俺の命の、そして俺と瑞佳の。


太陽がゆっくりと高くなって行く。
人気のない山道を三人で歩く。





・・南は、何を考えているのか一言も喋らない。



・・・・・。



隔壁を破って侵入してくるFARGOの人間たち。
一般の学生たちが寝泊まりしている区域に侵入するまでさほど時間は要らなかった。

「『アルテミス』はいないね・・・」

不思議な目の色と髪の色を持つ少年が呟く。

「どこにいるんだろうね・・・僕らの女王は・・・。」
「・・では、いかがいたしましょう」

傍に控えているFARGOの黒服の・・・戦闘員ということにしておこう。
戦闘員が喋る。好色そうな声で。
その少年からその『許可』がおりるのを待って。

(こいつも・・下衆だね。少なくとも価値ある人間じゃない。)

別に今すぐ殺してやってもよかったのだが、今は気分がいい。
永く探し求めていた『アルテミス』ともうすぐ邂逅できるのだから。

「・・・君たち、好きにしていいよ。」

興味なさそうに言う。本当に人間同士の交わりなんかに興味はなかった。
あるとすれば・・・郁未・・・いや、それは言うまい。

その部屋を背にする。女性の悲鳴と銃声が聞こえた。
こんなくだらないことには付き合ってられない。



・・・・・。



「・・強い・・・」

いまだクリーンヒットはもらっていない。
それでも全身に細かい傷を負っている。
いかに細かい傷でも集中を妨げるには十分だ。
集中が途切れれば・・・いつかは大きいのを食らう。

「・・だから言ったんだよ・・・。」

みさきは想像以上に強かった。
この特殊な空間でもかすり傷すら付けられない。
私じゃ駄目なのか・・。

「勝てないんだよ。創造物が創造主に勝つことが無理なように。」
「・・勝てるのよ・・娘が母を殺せるように・・・!」

・・諦めない。

こんなことでみさきを諦めたりしない。
この娘が泣いてることを知ってる。
みさきが、『助けて』って言ってるのが私にはわかるから。
だから・・・!!

みさきを傷つけているのが人間そのものなら、人間を滅ぼしてでもみさきを救いたい。
みさきを傷つけているのが私自身なら、死んだって構わない。

でも、それにはあなたがいてくれなきゃ駄目。みさき。



・・闇が空間に満たされた。腕六本、翼が四枚の化け物の影。

「・・私はあなたを助けるのよ・・・」

闇がさらに深くなる。
六本の腕は剣を持ち、翼は刃になる。

だが・・・。

「・・その力じゃ私に傷一つ付けることもできないんだよ。わかってるんでしょ?」


ズ・・・ズズ・・・・


みさきの物と比べれば私の闇なんてちっぽけな物だった。
ありとゾウほど違う。
この地下通路そのものを埋め尽くすほどの闇でさえ、みさきの力の半分にも満たない。

「・・諦めない。」



・・・・・。



「・・・ここか。」



・・・・・。


これもまた、日常が消えて行く過程。



<第十五話 「ナイトメア・5」 了>
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ん、それじゃあ・・・
七瀬「十五話記念パーティー!」
澪『なの。』
違う。そんなパーティーなんぞやらん。
だいたいお前ら二人しかいないじゃないか。アシスタント兼大食らいのみさき先輩はどうした。
澪『川名先輩は話があるといわれて、部長とどこかに出かけたの。』
深山さんと?
七瀬「何か大切な相談があるとか言ってたけど。
なんか・・百合っぽいセリフが多いもんね・・あの二人。」
う・・。
澪『へんたいなの』
断じて違うぞ。
そんなこというなら変態というのがどういうものか隣の控え室で実演してやろうか?
澪『やっぱりへんたいなの』
七瀬「しかしこのままの展開だと私もろくなことになりそうにないわ・・・。広瀬さんのセリフなんてぶっ壊れてたし・・。」
澪『へたするとMOON.の由依さんや晴香さんみたいなめにあうの』
七瀬「流石にAVデビューは乙女じゃないし・・。」
いや・・そういう予定は今のところ無きにしもあらずと言うかないと言うかあるような無いようなあったらいいなーなんて・・・
澪『やめさせてもらうの』
七瀬「・・じゃ」
あ、いやいやそういう予定はないです澪様。
七瀬「・・私は?」
気分次第。あ、うそうそ。だからその手に持ったハンマーを振り下ろすのは止めて。
七瀬「・・結局ないのね?」
そのシーンを描写するほど勇気もない!
七瀬「威張って言うことじゃないわよ・・・」
澪『あんしんしたの』
まあ、いつまでもだべってないで感想・・・
七瀬「結局だべりじゃない。」
澪『なの』
ええい、うるさい。いくぞ。

>PELSONA様
>嘘ってなんなのかな

エイプリルフールネタ、基本技『澪が喋った!あんた信じるか!?』編。(雀バル雀さんごめんなさい)
七瀬「何よその基本ってのは・・・。」
いや、みんな使ってるし・・・。
澪『しつれいなの』
しかも神凪が笑ったところって最後の「・・・犬好き」だし。
七瀬「・・・あんたSS地獄に行きたい? 態度でかすぎるわよ」
・・・すみません。

>嘘は身を滅ぼす

と、思ったらこっちがメインだったみたいだ。
本当に嬉しそうな茜と詩子には笑いました。
七瀬「・・一体何処なのよ・・ウチャツラヤトツク島ってのは・・」
浩平・・・自業自得(笑)本当に嫌われてるよ。
七瀬「まあ・・ストーカーはね。」
澪『そういえばわたしを体育館でおしたおしたの』
七瀬「あの馬鹿・・・私は教室よ・・・」
・・・長森にはあんな真似してるしみさき先輩も夜の教室か・・。
繭は言わずもがな、犯罪だし。やはり自業自得だな、浩平。
(浩平の主役ポイントがまた一つ下がった。)


あ・・駄目眠い。感想はこれだけ・・・。
澪『午前四時なの』(でも投稿するのは午後三時ごろ(笑)
七瀬「無茶するわね・・。」
ん・・東鳩全員クリアーのままのノリで書いたから・・・。
澪『だから他社のゲームはだめなの』
その他が75%から上がらないんですけど・・・。くう・・あと一枚・・。
誰か教えて・・。
七瀬「はいはい、とっとと寝ようねー。これ以上いらんこという前に。」
おお・・七瀬、添い寝してくれるのか。でもどっちかって言うと神凪は澪の方が・・・。
七瀬「・・乙女フィンガー!!」

がしっ!

ぬお!?
七瀬「ヒートエンド!」

どばきゃ。ばた。

七瀬「ふう。ようやく寝付いたわ。」
澪『次回は』
七瀬「『メサイア』?」
澪『たぶんそうなの』
七瀬「じゃあ、また会いましょう!」
澪『なの』