アルテミス 投稿者: 神凪 了
第十四話 「ナイトメア・4」



・・・・・。



「さて・・これで終わった・・・巳間、お前にも死んでもらうぜ。」
高槻が俺の方に向き直る。
「たいして役に立たなかったなぁ・・お前。
まぁ、まさか俺も壁ぶち破ってくるとは思ってなかったからなあ・・。」
高槻の瞳の色が変わった。
瞳だけではない。
髪も・・いや、全身が銀色に輝いている。
「あの時と同じように『不可視の力』で殺してやるぜぇ・・?
手前の妹が居ねえのが残念だけどな・・・。」
(こいつ・・自分も『由依ウィルス』を・・!)
由依ウィルス。
人間のDNA構造等を書き換え、人工的にコントロール体を作り出すウィルス。
それをこいつ・・・
「・・ふん!」


みしっ


「うおぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・!!!」
頭部に強烈な圧迫感。思わずうめき声が漏れる。
目の前が暗くなる。息ができない。
鼻から、耳から、熱いものが流れ出始める。

(また・・・死ぬのか・・!?)

その時だった。

何かが身体の中で爆発するような感覚。
何かが全身に浸透するような感覚。
何かが蠢く感覚。

・・開放感。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・来た!!!!!!!!!





そして、頭部の圧迫感が無くなる。
ゆっくりと目に視力が戻ってくる。

「・・・・・!」

高槻が口をぱくぱくさせている。
俺は耳をやられたらしい。
鼓膜が破れてしまって何を言っているのかよくわからない。
どうせ『巳間・・貴様も由依ウィルスを・・!』とか言ってるんだろう。


俺が銀色に光った。


ぶち、ぶち、ぶち


俺を拘束していたロープや猿轡が千切れる。
ゆっくりと立ち上がり、そして

「殺すぜ・・・高槻」



・・・・・。



『あーあー、名倉由依さん、名倉由依さん聞こえますか?』

赤いランプが点灯し、アラームの響く中そんな声が響いた。

『えー、FARGOからの降伏勧告をお知らせするよ。』

能天気な声。
由依にはわからないが『少年』の声だ。

『ただちに全員FARGOに投降しなさい。悪いようには・・するけど、命は保証するから。
えーと、1・その基地の中に居る学生たちは全員FARGO宗団の信者になること。
2・名倉由依・鹿沼葉子は僕らに殺されること。
3・第二世代の子供達、七瀬留美、天沢未悠、里村茜、上月澪も殺されること。
4・『由依ウィルス・MIND』を僕らによこすこと。
5・あと基地も僕らに明け渡すこと。
6・えーと・・・これは言わなくてもいいか。こっちで勝手にやるし。』

「・・無茶を言ってますね・・。」
「・・・・どうします? 名倉司令・・。」

ちなみに声はまだ続いている。

『結構いい条件だと思うけど?
君たちはよくがんばったと思うよ?まあ、相手が悪かったけどね。
各国の軍は既に壊滅状態だし志願兵も全滅。巳間晴香ももう死んだ。
何処からも援軍なんて来ない。
もうあきらめた方がいいと思うな。』

「・・どうするかって? 決まってます。」
にやり、と笑みを浮かべてみせる。
すると、
「全隔壁緊急閉鎖!!」
「自動攻撃装置、オールON!!」
「動力室のドアロックを解除します!」

・・いい部下を持ちました。

「みんなは第二世代の子供達をどうにかして避難させて、志願兵の生き残りの折原君達と合流させて。 」

彼なら・・・おそらくは秘められた力を持っているであろう彼なら・・・。
きっと・・・私達の仇も取ってくれるはずです・・。
ね、郁未さん、晴香さん、葉子さん・・・。

「FARGOがある程度侵入してきた時点で自爆します。 この基地を。」

『えーと・・どうやら返事が無いみたいだし、勝手にやらせてもらうから。』

ぷつっ。
FARGOが通信を切ったらしい。

「・・・みんな・・・すみません・・私のせいで・・・。」

「そんなことありませんよ!」
「名倉さんがいたから今までやってこれたんです!」
「愛してます!由依さん!」
「抜け駆けすんな、こら!!」

はははは・・・・

こんな時でも笑みが浮かぶ。
頼もしい、仲間たちだった。
涙が・・・こぼれる。
もうちょっと早く気づいていればよかった。
そうすればどうにかなっていたのかもしれないのに。
私達四人は気負いすぎていたのかもしれない。

「向こうに行ったら・・・みんなで飲みましょう・・・きっと・・楽しいですよね・・。」

「司令、泣かないで!」
「今はやるべきことをやりましょう!」
「分かっていると思いますが動力室は地下の中心部にあります!このカードキーと・・・」

言ってオペレーターが一枚のカードを投げて渡す。

「それと自爆装置は『LASTWISH』と入力することで起動します!
途中、FARGOの人間と出くわすことも有り得るので防弾チョッキと拳銃は持っていってください!」

「わかりました。みんな・・・」

作戦司令室を見渡す。
このあらゆる技術のエキスパートたちが揃った中で。

「・・・さよなら」


作戦司令室を飛び出した。



・・・・・。



突然、赤いランプが灯り耳障りなアラーム。
それに続く不可解な放送。
意味はよくわからなかったが彼女・・・長森瑞佳にも何事かが起こっているのは分かった。

「・・なに・・何なの・・。」

部屋の外に出ようともした。
・・ロックがかかっていた。

「浩平・・・・・・」



・・・・・。



部屋の外で手早い説明を受ける。
敵が攻めてきているらしい。
・・私、里村さん、上月さん、天沢の四人はここから脱出するように言われた。
こんな時のために非常用の通路ぐらいはあるらしい。

「ここは・・私達が食い止めますから・・・」

その入り口で『ラグナロク』の人達と別れる。
瑞佳や住井君たちがどうなったのかが気にかかるが仕方が無い。
今は逃げるべきだ。



・・・・・。



「雪ちゃん・・・私は来ないでっていったよ」

みさきの第一声がそれだった。
思わず苦笑する。

「そう言うわけにはいかないもの・・みさきが苦しんでるんならね・・。
そのためならなんだってできる・・・。人だって殺した。」

「・・・。」

「全てはあなたを助けるため。迎えに来たのよ・・・みさき」

「・・・できないよ。」

「・・どうして」

「雪ちゃんを殺したくないからね。雪ちゃんには日常の中で生きて欲しかったからね。」

「・・日常なんて物はもう無くなったわ。FARGOの手で、潰された。もう、この世界の中に平和なんて存在しない。」

「・・・それでもだめだよ。もう、持たないから。」

「・・・。」

「きっと・・殺してしまうよ・・。」

「・・・。」

「だから・・帰って・・・。」

「・・殺してでも連れて行くわよ・・・」

「無理だよ。雪ちゃんじゃ私には勝てないよ・・。」

「普段はね。でも、今のあなたはいつもの半分の力も発揮できない。
コントロール体ではなく、純粋のあなたはここではいつもの半分以下の力しか発揮できない。」

「知ってるんだね?」

「・・・わかるのよ・・この異様な気配で。」

「それでも退けるよ。雪ちゃんには悪いけど。」

「やってみなさい。」



・・・・・。



走る。
おそらくはもう手後れだ。
間に合わない。
きっと由依は死ぬ。
それでも走る。
不可視の力で限界まで走る速度を早くする。

(お願いだから・・・早まるんじゃないわよ・・・。)



・・・・・。



行く手に十数人のコントロール体。
後ろにも数人。

・・囲まれた。

第二世代の子供で能力に目覚めているのは私だけだ。
この人数を相手にするのはいくらなんでも無理だ。
一応、他の三人も銃器を持ってはいるがそんなものがコントロール体相手に通用するとは思わない。

万事休す・・・か。


非常通路の中、天沢未悠は考えていた。


・・能力に目覚める可能性が一番強いのはこの・・・

七瀬留美。

絶体絶命の時に能力に目覚める。
そんな都合のいいことが起きてくれるだろうか?
確率は低い。

・・ふと、七瀬留美の表情がおかしいのに気づく。

・・驚愕。

一点を見詰めたまま瞬き一つしない。一人の女性を見つめている。
と、その女性が前に進み出た。


「あら・・ここであったが百年目・・かしら?七瀬さん?」
第二世代の子供達の前に現れた人物・・・。
里村茜と七瀬留美が息を飲む。

広瀬真希だった。


・・・・・。


復讐・・・
人間はそのために動いているのかもしれない。
例えばその人間は七瀬留美に復讐するために。



<第十四話 「ナイトメア・4」 了>
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良祐「おい、神凪。」
あれ? えーーーーーーーーーーーーーーーーーと・・・・・・・・・・・
そうだ晴香の兄!

ざく

良祐「・・巳間良祐だ。」
ふ・・・所詮脇役じゃないか。それよりもみさき先輩はどうした。
良祐「何でも思うところがあると言い残して大阪に向かったぞ。」
・・あちゃあ・・大阪、壊滅しないといいけど・・。
良祐「ところでだ。この展開だと俺はレギュラーになるのか?」
んーーーーー・・・秘密。
それよりも・・・困ったなあ・・・。
良祐「何だ馬鹿作者。SS地獄に落ちそうなのか?それならもう無理だ。あきらめろ。」
それもあるけどそうじゃない。
じつは今後の展開の・・・・

・・・

良祐「・・何ぃ!?」
そういうわけなんだ。
良祐「・・・ミスだな。」
まあ、それは後で考えるとして、感想というかだべらせてもらいます。

>吉田樹様
>授業参観日にした日

はうぐぅ・・銀河鉄道の夜知らないですぅ・・・
良祐「・・まあ、お前馬鹿だしな。」
でも・・神凪はONEのこのシーンやるたびに泣いていたぐらいのつわもので・・・
良祐「・・なにしろ最近までCPUが486/33だったからな・・。CTRL押してもぜんぜんメッセージ早くならんかったんだよな・・。」
とってもよかったですぅ・・・
後書きのSSじゃないって言うのが『創作あんまりしてない』って言う意味なら・・・』
これは十分SSですー・・・。
でもやっぱみさおっていい子ですよね・・・。
こんな兄思いの妹がほしひ・・・
良祐「ところで、今更ですが改めて感想メールありがとうございます。」
女神転生ですか・・・神凪は「ソウルハッカーズ」しかやったことないです。
別に影響は受けてないと思いますよ?
良祐「でも『メサイア』は『ブギーポップ』の影響を受けているような・・・。」
あ、馬鹿ばらすな!トップシークレットだ!


>ニュー偽善者R様
>ONE総里見八猫伝彷徨の章 第九幕

な・・七瀬かっこいい・・・。
良祐「・・お前のSSの七瀬は何なんだ? いるだけか?」
いや・・・これからカッコ良くなる予定。
でも自分規定行数300行前後でかいてるから、全員描こうと思ってるとどうしてもしわ寄せが・・・
良祐「『第七話 セイレーン』500行。」
あう・・・
良祐「何か言うことは?」
すみません。
良祐「よろしい。」
でも、本当に一読者として続きを楽しみにしてます。


>変身動物ポン太(代理:いけだもの)様
>激突!! 春の特別編 (前編)

・・茜と詩子いいなあ・・(爆)
良祐「これで『アルテミス』シナリオ変更・・と。」
貴様、何故それを!!
良祐「『アルテミス』初期設定資料。
第二世代の子供達:上月澪:能力:この・・・」
いうなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!
良祐「ふん・・・。まあいい。」
はぁはぁ・・。
読んでる間、ずっと笑ってました。
しかしNo.247?そんなに特殊事例が起こっているのか?この学校。
良祐「氷上も深山もすごいといったところだな。」
いつのまにプロフェッサーになった・・・雪見。


>WTTS様
>おまけSS(?)「中崎町」

燃やすのか・・・繭・・・。
燃やすのか・・そうか・・・。
良祐「俺としてはぜひ別のパターンでもう一度やって欲しいぞ。」
感想ありがとうございます。
しかしホントに南・・・どうしようかな?
だんだん影薄くなってきたし・・・
良祐「次回南が死ぬ予定。」
嘘言うな晴香の兄。


>雀バル雀様
>一発劇場!2

野球で壊れるほど弱い絆なのか・・浩平・・
しかし『そうきたか』ってなかんじです。
良祐「バッドエンド確定だな。」
感想ありがとうございます。
むむぅ・・やはり『セイレーン』は読まれていたか。
良祐「『ヴァルキリー』も読まれていると思うぞ。
なんたってもう、残ってるキャラが『詩子』『繭』『由起子』『華穂』『城島司』しかいない。」
ふふふ・・甘いな。
良祐「・・まあ、いいが。」
*ンパンマンの替え歌お気に入りいただけましたか? あれはうちの生徒会誌『わらしべ』に載ったものです。
良祐「生徒会誌って・・・お前高校生か!?」
誤解するな。母校の、だ。もしかしたら『わらしべ』で何処の高校かわかっちゃったかな?
良祐「ところで俺としては雀さん(略すな)が昔個人で書いたという話も読んでみたいのだが・・・」
神凪も読んでみたい気がする。
かなりのハイペースで投稿をしている雀さん(だから略すな)ならではのダークな話を読んでみたい。
茜草記は面白かったし。
良祐「しかし『うらごろし』と『アレ』は別物のようだが?」
え?
あ、ほんとだ。まあ・・どっちにしろ期待しているということにはかわりないけど。


>PELSONA様
>innocent world  【EPISODE 0】

はあ・・・・
良祐「不可視の力にはこういう解釈もあるのか・・・。」
そうすると郁未達って類まれな精神力の持ち主なのか?
良祐「それはそうと・・・以前のinnocent worldとはまったくの・・」
別物みたいだ・・。
出だしから全然違う。
続き、期待してますね。


こんなところですな。
良祐「そうか・・なら・・・」

良祐のからだが銀色に光る!!

良祐「俺の不可視の力・・食らえ!」
ちょっとま・・・

めきゃ。

神凪 了またしても死亡。
良祐「俺を脇役呼ばわりした報いだ。
では次回は・・・どうなるでしょう。一応、『アルテミス』の方は書き上がっているようですが・・・では。」