ジャム(すずうたside)2 投稿者: 加龍魔
「ほら。ここがぼくの学校だよ」
 あゆが目の前の大きな建物を指差す。
「わわっ。すごいんだよ」
 目の前の建物は、学校と呼ぶよりは遊園地。
 乱雑に積まれたブロックのような外観がすずの興味をそそる。
「この学校は好きな時に休んでいいんだ。それに給食は毎日たいやきなんだよ」
 自慢げに話すあゆ。
「ねぇねぇ、その子あゆちゃんのお友達?」
「名前はなんて言うの」
 二人の周りには、いつの間にか人だかりが出来ていた。
「すずはすずだよ」
「どこから来たの?」
 質問攻めに合うすず。その姿はどこか楽しそうだった。

「…まったく、すずの奴どこ行ったんだ?」
 一通り商店街を探してみたが、あゆとか言う羽根の娘もすずも見つからない。
「まったく、あんたがちゃんと見てないから」
「お前が邪魔したんだろ!」
 七海の文句も心なしか声が小さい。
 やはり、少しは気にしているのだろう。
「おーい、桑原−」
 俺の姿を見つけた佐久間と月城が駈け寄る。
「こっちは全然駄目だ。佐久間の方は?」
「いや、こっちにも居ないみたいだ」
 お互いの顔を見合わせ、溜息をつく。
「佐久間達はホテルに戻っててくれ。もしかしたらすずが帰ってくるかもしれない」
「分かった。すずちゃんが戻ったら連絡するよ」
 缶ジュース1本分の休憩を取ると、今度は商店街から学校へ続く道を走り始めた。

「すごかったねぇ」
 すずはあゆの友達にもみくちゃにされても元気そうだ。
「うん、みんなぼくの友達だよ」
 二人は再び商店街へ来ていた。
「あら、あゆちゃん」
 目の前の女性があゆに声をかける。
「あっ、秋子さんこんにちわ」
「こんにちわなんだよ」
 その人…秋子さんはどうやらあゆの知り合いのようだ。
「こんにちわ。あゆちゃんのお友達?」
 長い髪を三つ編みにしたその女性は、あゆに母親のような優しい声をかける。
「うん。すずちゃんって言うの」
 秋子はすずを見て少しだけ怪訝そうな顔をしたが、すぐにもとの笑顔に戻り、
「これからジャムを作るんだけど良かったら手伝ってくれないかな」
 そう言った。
「ジャムって…どんなの?」
「甘くないジャムよ」
 その言葉を聞くと、あゆの顔が青ざめていくのが目に見えて分かった。
「すずにも作れるかな」
「大丈夫、作るのは簡単よ」
 すずはそんなあゆの顔よりも、ジャム作りに興味を示している。
「うぐぅ、ぼくは用事があるから手伝えないの。秋子さんごめんねーっ」
 あゆはすずを放り出すと、たったかたーっと逃げ出して行った。
 何が彼女をそうさせたのだろう。
「すずはお手伝いするんだよ。ゆうちゃんにジャムをいっぱい作るんだよ」
 変わってこちらはやる気まんまんのすず。
「あらあら。それじゃあ二人で頑張りましょうね」
 二人は仲良く手を繋ぐと、住宅地へと姿を消して行った……

「ああっ、ちょっとそこの人!」
「………?」
 学校らしき建物の前にいた女生徒に声をかける七海。
「髪が長くて、ワンピースを着たすずって子を見なかった?」
「……見てない」
 少女は、手に何やら物騒なものを持っている。
「じゃあ、カバンに羽根みたいな飾りを付けた子は?」
「……見てない」
 しかし、そんな事はおかまいなしに質問を続ける七海。
「はぁ…すずぅ。どこにいるのよぉ」
 何度こんな事を繰り返しただろうか。
 叫びたいのは俺も同じだ。
「……探してるのか?」
 さっき話していた少女が聞き返してきた。
「ああ。商店街で行方不明になったんだ」
 あくまで無表情。変わった娘だ。
「……商店街だな」
 俺の話を聞いて商店街へ駆け出そうとする。
「ちょ、ちょっと待った!」
「……なんだ?」
「え、あ…いや。探すの手伝ってくれるのか?」
「そうだ」
 どうも調子が合わせづらい。
「いいのか? 学校に用があったんじゃ…」
「まだ時間がある」
 時間がある…とは言ってももう6時過ぎ。
 そんなに遅くまで学校が開いているとは思えないが、ここは協力してもらおう。
「じゃあ頼むよ。俺は桑原祐児」
「あたしは新条七海」
「……川澄…舞」
「舞か。よろしく頼む…ってオイ!」
 手を差し出す間もなく、舞は走り出していた。
「しょうがない、追うぞ! 七海!!」
「ちょ、ちょっと桑原!!」
 しょうがないので七海の手を掴んで走り出した。

 <続く>

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遅れてる
向こうのSSより大幅にこっちが遅れてる
これではいかんな

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