「ほら。ここがぼくの学校だよ」
あゆが目の前の大きな建物を指差す。
「わわっ。すごいんだよ」
目の前の建物は、学校と呼ぶよりは遊園地。
乱雑に積まれたブロックのような外観がすずの興味をそそる。
「この学校は好きな時に休んでいいんだ。それに給食は毎日たいやきなんだよ」
自慢げに話すあゆ。
「ねぇねぇ、その子あゆちゃんのお友達?」
「名前はなんて言うの」
二人の周りには、いつの間にか人だかりが出来ていた。
「すずはすずだよ」
「どこから来たの?」
質問攻めに合うすず。その姿はどこか楽しそうだった。
「…まったく、すずの奴どこ行ったんだ?」
一通り商店街を探してみたが、あゆとか言う羽根の娘もすずも見つからない。
「まったく、あんたがちゃんと見てないから」
「お前が邪魔したんだろ!」
七海の文句も心なしか声が小さい。
やはり、少しは気にしているのだろう。
「おーい、桑原−」
俺の姿を見つけた佐久間と月城が駈け寄る。
「こっちは全然駄目だ。佐久間の方は?」
「いや、こっちにも居ないみたいだ」
お互いの顔を見合わせ、溜息をつく。
「佐久間達はホテルに戻っててくれ。もしかしたらすずが帰ってくるかもしれない」
「分かった。すずちゃんが戻ったら連絡するよ」
缶ジュース1本分の休憩を取ると、今度は商店街から学校へ続く道を走り始めた。
「すごかったねぇ」
すずはあゆの友達にもみくちゃにされても元気そうだ。
「うん、みんなぼくの友達だよ」
二人は再び商店街へ来ていた。
「あら、あゆちゃん」
目の前の女性があゆに声をかける。
「あっ、秋子さんこんにちわ」
「こんにちわなんだよ」
その人…秋子さんはどうやらあゆの知り合いのようだ。
「こんにちわ。あゆちゃんのお友達?」
長い髪を三つ編みにしたその女性は、あゆに母親のような優しい声をかける。
「うん。すずちゃんって言うの」
秋子はすずを見て少しだけ怪訝そうな顔をしたが、すぐにもとの笑顔に戻り、
「これからジャムを作るんだけど良かったら手伝ってくれないかな」
そう言った。
「ジャムって…どんなの?」
「甘くないジャムよ」
その言葉を聞くと、あゆの顔が青ざめていくのが目に見えて分かった。
「すずにも作れるかな」
「大丈夫、作るのは簡単よ」
すずはそんなあゆの顔よりも、ジャム作りに興味を示している。
「うぐぅ、ぼくは用事があるから手伝えないの。秋子さんごめんねーっ」
あゆはすずを放り出すと、たったかたーっと逃げ出して行った。
何が彼女をそうさせたのだろう。
「すずはお手伝いするんだよ。ゆうちゃんにジャムをいっぱい作るんだよ」
変わってこちらはやる気まんまんのすず。
「あらあら。それじゃあ二人で頑張りましょうね」
二人は仲良く手を繋ぐと、住宅地へと姿を消して行った……
「ああっ、ちょっとそこの人!」
「………?」
学校らしき建物の前にいた女生徒に声をかける七海。
「髪が長くて、ワンピースを着たすずって子を見なかった?」
「……見てない」
少女は、手に何やら物騒なものを持っている。
「じゃあ、カバンに羽根みたいな飾りを付けた子は?」
「……見てない」
しかし、そんな事はおかまいなしに質問を続ける七海。
「はぁ…すずぅ。どこにいるのよぉ」
何度こんな事を繰り返しただろうか。
叫びたいのは俺も同じだ。
「……探してるのか?」
さっき話していた少女が聞き返してきた。
「ああ。商店街で行方不明になったんだ」
あくまで無表情。変わった娘だ。
「……商店街だな」
俺の話を聞いて商店街へ駆け出そうとする。
「ちょ、ちょっと待った!」
「……なんだ?」
「え、あ…いや。探すの手伝ってくれるのか?」
「そうだ」
どうも調子が合わせづらい。
「いいのか? 学校に用があったんじゃ…」
「まだ時間がある」
時間がある…とは言ってももう6時過ぎ。
そんなに遅くまで学校が開いているとは思えないが、ここは協力してもらおう。
「じゃあ頼むよ。俺は桑原祐児」
「あたしは新条七海」
「……川澄…舞」
「舞か。よろしく頼む…ってオイ!」
手を差し出す間もなく、舞は走り出していた。
「しょうがない、追うぞ! 七海!!」
「ちょ、ちょっと桑原!!」
しょうがないので七海の手を掴んで走り出した。
<続く>
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遅れてる
向こうのSSより大幅にこっちが遅れてる
これではいかんなhttp://www.biwa.ne.jp/~karuma/