加龍魔初のリンクSS「ジャム(すずうたside)」 投稿者: 加龍魔
「七海、そっちいたか?」
「ううん、岡田たちの方はどうかな」
 どうしてこんなことになってしまったんだろう。

 事の始まりは一週間前……
「おめでとうございまーす。特賞大当たりでーす!!」
「わわっ、ゆうちゃんすごいんだよ」
 何気に商店街の福引を引いた俺は、なんと特賞を当てたのだ。
 ところがこの特賞。あまり聞かない名前の町のホテルの宿泊券だったからさぁ大変。
 鼻の利く岡田に見事嗅ぎ付けられ、結局いつものメンバーで行く事になってしまった。

「いなぞー楽しみだね」
 うにゃー
「ってすず! 稲造連れてきたのか!!」
 見るとすずのかばんの中から稲造が首だけ出して苦しそうにしている。
「またいなぞーだけお留守番なんてかわいそうだよ」
「いいじゃない。ほらこのホテル、ペットOKって書いてあるよ」
 七海がホテルのパンフレットをちらつかせる。…確かに。
「そうだな。いつも留守番じゃ可愛そうだもんな」
 電車の中にすずの喜ぶ声が響く。まだ、その後で起こる出来事にも気付かずに……

 まずはホテルでチェックイン。
 その後稲造をあずけて街を見て回ることにする。
「ゆうちゃんゆうちゃん。おさかなさんだよ!」
 不意にすずが袖を引っ張るので見ると、商店街の一角にたいやき屋があった。
「すず、あれはたいやきって言うんだ」
「う、たいやき?」
 すずはたいやきを不思議そうに見つめている。
「桑原、あんたたいやきくらい買ってあげなさいよ」
 七海が言うのでとりあえず10個買う。
 俺と七海が2個、すずと月代が1個、佐久間が5個。
「あれ、岡田君食べないの?」
 たいやきに手を付けない岡田を月代が不思議そうに見つめる。
 その理由は俺が一番良く知っているのだが、ここでは内緒にしておこう。

 ……じーっ
「?」
 ……じーっ
 視線を感じる。
 それも、獣が獲物を狙うような視線。
「う、どうしたんだよ?」
「……桑原?」
 すずと七海も異変に気付いたようだ。俺は視線の主を探す。
「ゆうちゃん、あの人羽根が付いてるよ。天使さんなんだよ」
 …はい?
 言われるままにそっちを見ると、強烈な視線。それと羽根。
「あいつか」
 間違いない。しかしなんで俺達を狙うんだ?
「あんた、なんか恨まれるような事でもしたんじゃないの?」
 …来て早々そんなことするか。
「天使さんもたいやきが欲しいのかな」
 すずが手に持っているたいやきを見つめながら呟くと、
 ぐーーーっ
 ……俺達じゃないぞ。
「…すず、持っていってやれ」
 五個のたいやきを買い、すずに持たせてやる。
「すずは物資の救援に行って来るんだよ」
 そう言ってすずは駆けていった。

「天使さん、どうぞなんだよ」
 屈託のない笑顔でたいやきを差し出すすず。
 突然の出来事にその子は少し戸惑っているようだが、
 ぐーーーっ
「うぐぅ、ありがとう」
 腹の虫には勝てなかったようで、すぐにたいやきを受け取った。
「おいしいね」
「うん」
 言葉もなくもくもくとたいやきを食べる二人。
 見ている方にはおかしな風景だが、どこか心和むものがある。
「天使さんはどこから来たの?」
「あたしは天使さんじゃないよ。月宮あゆって言うんだよ」
「すずはすずなんだよ」
 どちらも精神年齢が低いのか、すぐに打ち解けたようだ。
 というよりは…なにか同じ世界の人間というか。
 奇妙な同一感というものを二人に感じてしまう。
「…桑原、桑原ってば!」
 ガン!
 二人のことを見ていたせいで、七海の鉄拳を食らってしまった。
「いきなり殴ることないだろうが!」
「あんたがぼーっとよそ見してるからでしょう。そろそろホテルに戻るわよ」
 時計を見ると、そろそろ夕食の時間。
「おーいすず帰るぞー……あれ?」
 そこにはすずの姿はなかった。あの羽根の子の姿もない。
「七海、すずはどこいった?」
「え?、あたし知らないわよ」
 …しまった!
 すずのことだ。さっきの子と一緒にどこかへ行ってしまったのだろう。
「大変だ! すずがいなくなった!!」
 俺はみんなに手っ取り早く状況と羽根の子の事を話すと、七海とともに走り出した。

 <続く>

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どもです。
今回は初のリンクSSということで少し謎が多いかも。
リンクSSというのは、KeyのSSボードの方にKanonキャラサイドのストーリーが書かれているからです。
Keyサイドでのタイトルは「秋子さんのジャム」「ジャム(kanonside)」です。
下のリンクから「加龍魔」でor検索をかけると出てきます
それでは、両方お楽しみ下さい
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http://key.product.co.jp/cgi-bin/minibbs4.cgi