あるいはこれもONE 〜学校はいつも七瀬のち繭〜 その3 投稿者: 加龍魔
「………くしゅん」
「どうした茜。風邪か?」
 久しぶりにみんな揃っての昼食での出来事。
「………大丈夫です」
 そうは言ってるけど、里村さんの顔は赤い。
「無理しないで、保健室行ったほうがいいわよ」
 あたしと長森さんで保健室へ連れて行く。

キーンコーンカーンコーン

「ああっ、チャイム鳴っちゃった」
「里村さん。午後の授業ちゃんとノート取っておくからゆっくり休んでてね」
 あたしたちは保健室の前で里村さんと別れ、教室へと急いだ。

   あるいはこれもONE 〜学校はいつも七瀬のち繭〜 その3

「そう言えば、産休で代わりの保険医が来ているらしいな」
 授業中、折原が話し掛けてきた。
「ええ、あたしは繭を連れていったときに一回しか見ていないけど」
 あの時の事は…やめよう。もう思い出したくない
「こないだ南が腹が痛いと言ったら、薬を出してくれたらしい」
 神妙な顔つきで話を続ける。
 ………それって普通じゃない。
「それがどうかしたの?」
「なんでもその薬。かなり強力な下剤だったらしく3日間トイレから出られなかったらしい」
「おかげであの通りだ」折原に言われて南君の席を見る。
 机には…仏壇が備え付けてあった。傍らにはパチンコ屋でよく見る花輪が立てかけてある。
「・・・・・」折原に聞き返す。
「脱水症状を起こして入院中だ。仏壇は俺が立てておいた」
「花輪はサービスだ」繭が突然割り込んでくる。
 縁起でもない事するなぁ!!

「まぁこの話はおいといて。少なくとも保険医がまともじゃないってのは確かだ」
 折原が話を戻す。
 そう言えば、繭がおかしくなったのはあの日保健室に連れていってから。
 その保険医が原因だとすれば、すべてつじつまが合う…かも。
 だとしたら………
「………里村さんが心配ね………」
「………茜が心配だな………」
「…新たな犠牲者か…」
 ・・・・・
「縁起でもない事言うなぁ!!」
 あたしと折原の声が授業中の教室にこだました。

キーンコーンカーンコーン

 6時限目終了のチャイムが鳴る。
 あたしと折原は里村さんの所へ向かおうとしたのだが………
「浩平大変だよぉ!!」
 あわただしくやってきた長森さんが折原を連れていってしまう。
 結局、保健室へはあたしと繭だけで行くことになってしまった。

「………大変大変って、一体なんだよ長森」
「ほら、あの人あの人!」
 長森に言われて校庭を覗く。木陰にヒトカゲ…もとい人影………
「あれ?…繭の………」
「そうだよ! 繭のお母さんが来てるんだよ!!」
「なにいっ!!」
 ようやく事態が掴めたのか、慌てて走りだす折原であった。

「ああっ、なんだか嫌な予感がする」
 保健室へ向かう足取りが重い。半分くらいは横にいる繭のせいだが。
「まぁそう暗くなるな。いざという時にはなんとかしてやるから」
 ………いざという時って何よ………
 とかなんとかいってるうちに、保健室に着いてしまった。
「失礼しまーす」
 保健室のドアを開く。
「○▼□×!!!!!!!!」ジタバタジタバタ
 澪ちゃんが宙に浮いてる………
 いや、首に巻きついている何かに持ち上げられている。
 彼女はそれを必死に外そうとしているがとてもかなわない様子。
「澪ちゃん!?」
 慌てて駆け出そうとするあたしのおさげを繭が引っ張る。

ぐきいっ!!

「ぐぁ!!」ガコン!!
 勢いがついていたもんだから、後ろへ倒れて後頭部を思いっきりぶつけてしまった。
「ぐ…ぐあぁ……な…何すんのよぉ」
 目の前を星が飛んでいる。あたしは立ち上がる事ができず、その場でうずくまってしまう。
「あれを見んかうつけ」
 繭に言われて首に巻きついているモノを観察する。
 あれは…あの特徴的な三つ編みは………
「まさか…里村さん!?」
 あたしの声が聞こえたのか、澪ちゃんの首に巻きついていたモノがゆるんだ。
 そして、その後ろにいたのは………
「うーふーふーふーふー」キュピーン!!
 髪がうねうねと動き、目を怪しく光らせているが…間違いなく里村さん。
「い…一体どうなってるのよぉ!!」

「どうしたんですか華穂さん?」
「実は………」
 話を聞くと、繭の事が気になって学校まで様子を見に来てしまったというらしい。
「心配ないですよ。俺達がちゃんと見てますから」
「すいません。なんだかお世話になってばかりで…」
 華穂さんの言葉がそこでピタリと止まった。視線は2階を向いている。
「?、どうしたんですか」
 瑞佳と浩平もつられて2階を見る。そこには、白衣の男が歩いていた。
「………先生!?」
 産休代理の保険医だった。
 保険医も見られているのを感じたのだろう、立ち止まり辺りを見回す。
 そして華穂さんと目が合った。

 1秒…2秒…3秒…
 ダダダダダ!!

 突然保険医が血相を変えて逃げ出した。
「ああっ! 先生!!」
 それを見た華穂さんも保険医を追って校舎へと走り出す。
「え? ちょっと華穂さん!?」
 浩平と瑞佳も慌てて華穂さんを追うのであった。

 <続く!!>

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加龍魔「なんと今回前後編です!」
秋穂「ネタだけはためてたもんね」
加龍魔「それはさておき、加龍魔の今までの作品を読みたい方はwww.biwa.ne.jp/~karuma/」
秋穂「強引な宣伝だね」
加龍魔「うるさい」

http://www.biwa.ne.jp/~karuma/