変わり行く『いつも』−中編− 投稿者: かっぺえ
ぺしぺし。
何かで叩かれる。
「うぅ……眠い。あと3光年、寝かせてくれぇ〜」

がすっ!
……角を使うな。
がすがすっ!!

「痛い……痛いって、おい」
何か…オレの頭を容赦無く叩きまくる、スケッチブックを払いのける。
『やっと起きたの』
(にこにこ)
寝ぼけ眼で隣に立つ少女を……スケッチブックを見る。
「……澪か」
『おはようなの』
(にこにこ)
「ああ。おはよう。……って、澪。人様を起こす時、スケッチブックで叩くのはいかんぞ」
「つねっても、蹴っても、しっぺしても。起きなかった方が悪いよね」
そんな事をされてたのか……。オレは。
「……人の憩いの眠りの時間を妨げて何の用だ?」
『お誕生日なの』
(にこにこ)
……オレの頭が思い出してはいけない事を、思い出そうとしている事に警鐘を鳴らす。
「澪。まだ煙草は吸えないが、誕生日おめでとう」
「……詩子の誕生日です」
「……茜。いつからそこにいた?」
オレの真後ろに突っ立ってる、茜。全く気配と言うものを感じなかった……正直。びびったぞ、今のは。
「さっきからいました」
「そ、そうか……。で、誰の誕生日だって?」
「詩子の誕生日です」
「……しいこ?それは、そこに立ってる御気楽道楽極楽トンボな『柚木詩子』の事か?」
「その通りです」
今のは……一応。冗談のつもりだったのだが。結構、酷い事言ってるぞ、茜。
あ……柚木。ちょっぴり悲しそうな顔してる。
「で。何故それと、オレがスケッチブックの角で叩き起こされるのと関係があるんだ?」
「折原君って、物覚え悪いよね。パーティするって今朝、言ったよ」
パーティ、パーティ、パーティ。うむ……なるほど。
「をい。それはひょっとして、ひょっとするとオレも参加する事になるワケか?」
「そだよ。折原君の家でパーティするのに、折原君を除け者にするワケにはいかないもんね」
ぱーてぃ、ぱーてぃ、ぱーてぃ。ウム……ナルホド。
「……我が家は貸さないと、言わなかったか?」
「『解った』って言わなかったっけ?」
そんな事を言うワケが……

――「もういい。解った。とにかくオレは学校行く」

……言ったな。って、違うだろう。
「いや、それはそう言う意味じゃなくてな……」
「えぇ〜。予定、狂っちゃうんだけどぉ〜」
すぐさま、眉をひそめ非難の声を上げる柚木。
「人の同意も取らずに勝手な予定を立てるなっ」
「だからぁ。解ったって言ったでしょ、折原君。それアテにしてたのに……」
『ぱーてぃ出来ないの』
(…えぐえぐ)

これでもかっ!! と言うほどに、わざとらしく肩を落す柚木に、本気で半泣き入ってる澪。
……何故だ?これではオレが悪いみたいじゃないか。
「……浩平。諦めが悪いです。犬にでも噛まれたと思って、観念して下さい」
そうか。オレは犬に噛まれてたんだな。……朝6時の時点で。

……折れざるを得なかったのはオレだった。

メンバーはいつぞやの、クリスマスの時と同じ。
柚木は、オレが待ちにまった昼飯を食べてから、放課後にタイムスリップしてる間に、澪や茜を誘い出したらしい。
学校帰り。喧騒に包まれる商店街に寄って。ポテトチップスやら、なにやら買い込んだあと。我が家に向かった。
……このメンバーで、何処かをうろつくのもお馴染みになってきたな。

「ささ。まあ、狭いとこだけど、遠慮せずに上がって上がって」
我が家に先に上がり、てきぱきとスリッパを出しながら、柚木がオレ達に言う。
「……お邪魔します」
『お邪魔しますの』
……何も言うまい。何も。今日の主役は柚木なんだからな。
たまにはこういう事があっても……たまに?……たま?……うぅ〜ん。
「どしたの?折原君。玄関先で頭なんか抱えちゃって」
「……いや、日本語って難しいと思ってな」
「折原君って勉強家だねえ……」
感心したようにうんうん、頷く柚木。
はぁ……。
「ま、とにかく。上がって上がって」
「お邪魔しまぁ〜す……」



そして……
「……そろそろ帰ります。もう、遅いですから」
一人、全く素面のままの茜が(って、言っても一番飲んでるんだが)時計を見ながら、お開きの言葉を切り出した。
つられて、時計を見ると。何時の間にか9時を廻っていた。
……あっと言う間だったと言う事は、それなりに楽しかったんだろう。

「ん…そうだな…」
適当に相づちを打ち、何気なく辺りを見回す。
……結局。クリスマスの時と大差の無い、パーティだったな。
柚木と澪が『ケーキ』と称する謎の物体、作りかけた挙げ句、やはりと言うか何と言うか。茜がちゃんと『ケーキ』を作ってくれたり。
ケーキを食べ終え、一頻り盛り上がった頃。柚木が『家の冷蔵庫から』ビールを持ってきて、飲みまくり今にいたる訳だ。
(すぅすぅ)
今朝のオレより。より賑やかなペイントを顔に施されてる澪が寝こけてる。
「あれ?もう、おひまい?」
赤い顔で、ろれつの回らない柚木。
「ああ、おしまいだ。良い子は寝る時間だ」
「ふぅ〜ん……じゃ、おやすみぃ〜」
手をぱたぱた振りながら、ころりとソファに倒れ込む柚木。
「おいこら。誰がここで寝ろと言った」
「あり?違うのぉ〜?」
「違うっ。自分の家に帰って寝ろっ」
「うぅ〜、仕方ないらぁ……茜〜。澪ちゃ〜ん。帰ろ〜」
ソファに寝転んだまま手招きしてる柚木。……放っておこう。
「茜。……澪。どうする?」
「私が送って行きます」
「大丈夫か?」
「大丈夫だよぉ〜?」
ソファにくてっと転がった、柚木が五月蝿い。
「……大丈夫です。浩平は詩子を送っていって上げて下さい」

1.澪を家まで送り届ける。 2.柚木を家まで送り届ける。

……答えは決まってる。
「……1を選びたいんだが」
「上月さんの家。知ってますか?」
……知らないな。……って言うか。何故、茜にオレの内部で浮かんだ選択肢の番号が解るんだ?
「な、ならな。まず澪を、みんなで送っていくんだ。そ、それから茜と柚木で帰れば良い。うむ、それが良いぞ」
「……家の方向が逆です」
「じゃ、じゃあ……」
「浩平。……詩子の事。嫌いですか?」
非難の混じった声、非難の視線。
「い、いや。そう言う訳じゃないんだが……」
実際。柚木とあのノリやっているのは嫌じゃない。……疲れはするが。
今日だって、楽しく無かったと言えば、嘘になるしな。
「なら、送っていってあげて下さい。詩子だって『一応』女の子なんですから」
一応、の部分を強調しながら言う茜。……またしても茜は失礼な事を言ってる気がする。
「……はいはい。解った解った。……で、茜。お前こそ大丈夫か」
「大丈夫です。私の家と上月さんの家は、ここから近いですから」
茜は喋りながら立ち上がり、玄関まで移動する。
オレも酔いの抜けない体で澪を背負って、玄関へ……って、結構重いぞ、こいつ。
「茜……大丈夫か? 結構。重いぞ、こいつ」
靴を履き終えて、背中を向ける茜に聞く。
「……大丈夫です」
「んじゃあ……」

どさっ。

澪を茜の背中に移動させる。
……いきなりよろける茜……本当に大丈夫か?
「おい…茜。無理するな」
「……大丈夫です」
頼りなさげに、よろよろと立ち上がる茜。

ずごんっ。

いま……。凄い音が……。
立ち上がり、よろけた拍子に、思いっきり壁に頭をぶつけた。……澪が。
「……今日は楽しかったです。ありがとうございました」
澪の目の端から涙がちょちょ切れてる事など、全く気にせず茜は礼を述べる。
「あ…ああ」
オレは先に立ち玄関を開けてやる。
「それでは。詩子の事、宜しくお願いします」
「……ああ。茜こそ、気をつけてな」
茜と澪はよろよろと、夜道に消えていった。……本当に大丈夫か?



「ふぅ……」

ばたんっ。

よろけてた茜の姿を思い出し、心配しつつも家に戻る。
「……ぎりぎり及第点だよね」
何時の間にか、素面に戻った柚木が、玄関で腕組みしながら聞いてきた。
「何がだ?」
「茜の『さり気ない』気の使い方」
「……まあな」


−−−あとがき−−−
 うにゅ〜(^^; 内容、薄いよねえ?(^^;;;
詩子「感想を下さった皆様。読んで下さった皆様。ありがとうございます♪ かっぺえちゃん、バナナ与えた猿のように喜んでたよね(笑)」
 有難う御座います〜(^^) 猿……。ま、いいや(^^;
 ところでさ。次でちゃんと、纏まると思う?(^^;;;
詩子「いよいよ、次でラストだね♪ お暇な方はお付き合いください(笑) ではでは〜♪」
 無視か……(T_T) ではでは〜……(T_T)

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