幸せ(?)な風邪−後編− 投稿者: かっぺえ
−−−後編です−−−


ゆさゆさ、ゆさゆさ。
「浩平、浩平、起きてよ。」
「んんーっ、もう朝か?」
「もうっ!寝ぼけてないでよ。お昼だよ、お・ひ・る。」
「もう、そんな時間か。」
「うん。大丈夫?・・・熱・・・下がった?」
聞きながら俺の額に乗っている冷たいタオルをどけて額に触れる。
いつのまにタオルなんか・・・よく気がつく奴だ。
「あっ、ちょっと下がってるね。」
「そうか?」
「うん、でもちゃんと測ってね。はい。」
体温計を受け取る。
「お粥作ったから持ってくるね。ちゃんと測るんだよ。」
「はい、はい。」
俺は、体温計を脇に挟みながら適当に答える。

ぱたぱたぱた・・・。
お粥か。・・・お粥って言うと・・・やっぱり『あれ』だな。
彼女が風邪で苦しんでいる彼にお粥を食べさせてくれる・・・
くうぅっ。男名利に尽きるぜ・・・ぜひやってもらわねば。
そんな事を考えていると。
ぴぴぴっ!ぴぴぴっ!っと体温計が鳴る。
何度だ?・・・38度5分か。まぁまぁだな。

ぱたぱたぱた・・・。
おっ、瑞佳が戻ってきか。
がちゃ。
「持ってきたよ。」
そう言って、今度はお粥の載ったお盆を俺に見せる。
「何度だった?」
「38度5分。」
「うん、良くなってるね。でも油断したら駄目だよ。」
「わかってる。それより腹減った。」
熱の事など、どうでもいい。瑞佳に『あれ』をやってもらわなくては・・・
「もーっ、いつでもお腹空くんだね、浩平は。」
「食欲が無いよりよっぽど良いだろう。」
「まぁね。それでさ・・・自分で食べれる?」
「無理だな。」
「やっぱりー。そう言うと思ったよ。」
そう言いながらも、やはり嬉しそうに俺の側までくる。くっくっく、俺の計算通りだな。
なんだかんだ言っても結局、世話を焼くのが好きな奴なのだ。
・・・・・・いや、ここまで良くしてくれるのは俺と猫に対してだけかもな。
やっぱ俺って幸せ者だな。
「じゃ、体起こして。」
「なっなんか恥ずかしいなぁー。」
瑞佳がお粥をレンゲですくって、口でふーっ、ふーっと冷ましてくれる。
「はっはい、アーンっして。」
こっこれだぁぁぁぁぁーーーーー。これがしてもらいたかったんだぁぁぁぁぁーーーーー。
俺は嬉しさのあまり、思わず叫びそうになった。
お粥を口でふーっ、ふーっと冷ましてくれて、アーンッしてって言ってくれる。たまらんぞ、これは。
「ほっほら、アーンってしてよ。」
瑞佳が恥ずかしそうに催促する。
「あっああ。」
幸せに包まれながらお粥を頬張る。
頬張った瞬間に口の中に広がる牛乳の豊潤な甘みと香り。なかなかウマイ・・・って牛乳!?
「おいしい?」
「おまえ何入れたんだ?・・・牛乳の味がするぞ。」
「そりゃそうだよ。牛乳で炊いたんだもん。」
「牛乳で?」
「うん、・・・おいしくなかった?」
不安げに聞いてくる。
「いや、ウマイぞ。甘くて。」
「えへへっ、良かった。」
照れてる。可愛いな。そこで、俺はもう一回言ってやる事にした。
「いや、ウマイぞ。甘くて。」
「えへへっ、良かった。」
・・・そのまま返すなよ。
それから俺は、至福に包まれたままお粥を食べ終えた。

そのあと・・・
「あれっ?浩平、もう寝ないの?」
食器を片づけてきた瑞佳が聞く。
「さすがにもう寝れん。」
「そっか。・・・じゃあお話でもしてようよ。」
「その前に小便。」
「えっええっ。どっどうすればいいの?」
何慌ててるんだ?こいつは。
「トイレに行くのに肩、貸してくれりゃあいいんだよ。」
「あっ。うっうん。そっそうだよね。あははははっ。」
何考えてたんだ?・・・瑞佳。

階段・・・
「気をつけてね。」
「お前こそな。」
瑞佳に肩を貸してもらって階段をゆっくりと降りる。
残り三段・・・しかし、そこでお約束が待っていた。
「わっ。」
不意に瑞佳が足を滑らした。そのまま階段から落ちる。もちろん俺も。
どさっ!!
「痛ぁい。ううっ・・・浩平、大丈夫?」
「俺は別に・・・」
クッションがあったから別に・・・。クッション・・・そう、瑞佳だ。
俺は瑞佳の上に倒れ込んでいた。うーっ、気持ち良いな。
「だったら早くどいてよっ。もうっ、なんでそんなに『にやにや』してるんだよっ。」
「気持ちが良いからだ。」
「もうっ、何頬擦りしてるんだよっ。」
「もう少しこのままで・・・」
言いかけたとき、いきなり玄関のドアが開く。
がちゃっ!
「折原くーん。居るのー、駄目だよ学校サボっちゃ・・・」
そういって固まる人物。
「ゆっ柚木・・・」
「しっ詩子さんっ・・・!?」
「あっあれ、二人ともお取り込み中?ごっごめんね、私ったら野暮で・・・」
「えっええっと、そっそれじゃあ、二人とも続きをどうぞ。邪魔物は消えるから・・・」
がちゃっ!
そう言い残して柚木は外に消えて行った。

「どっどうしよう。詩子さん、なんか誤解してるよ。止めなきゃ。」
確かに。あのまま柚木をほっておいたら・・・おしゃべりな柚木の事だ・・・凄い事になる。
でも、この体じゃ追いつけないし。追いついたとしても誰かに喋るのを止めるとも思えないし・・・
どうする?・・・おっ、そうか!そうすればいいんだ。俺の頭にスバラシイ案が浮かんだ。
「よし。良い方法がある。」
「えっ?何?何なの?」
「誤解じゃなくすればいいんだ。」
「まさか・・・。浩平・・・」
「そうだ。えっちしよう。そうしたら誤解じゃなくなる。」
俺は完全に壊れていた。
「なっ、何考えてんだよ。浩平っ。それじゃあ根本的解決になんないよ。」
「いや、俺は構わないぞ。」
「私が構うよっ!」
「優しくするから・・・」
「とっとにかく、ここでするのはやめようよ。玄関前なんだよっ。」
「じゃあ、部屋でだったら良いんだな。」
「そういう訳じゃないけど・・・大体っ、何もしないって約束したじゃん。」
「寝たら忘れたっ。」
「思い出してるじゃないっ。」
くそっ。なかなかしぶとい、作戦変更だ。
「瑞佳。俺と・・・するの・・・嫌か?」
俺は、今までに無いほど真剣な顔で聞く。
「えっ?・・・嫌じゃ・・・ないけど・・・」
びっくりした声で赤くなりながら答える。
ここで嫌と言えるほど、瑞佳は冷たい奴じゃない。そこを突いた作戦だった。って俺は外道か?
「じゃ、しよう。部屋でなら良いんだろ?」
「でっでもぉ。」
「瑞佳の事を愛してるからしたいんだよ。この傷ついた体で瑞佳を愛する事が俺の愛の証明なんだ。」
無茶苦茶恥ずかしい台詞をならべる。・・・でも本心だった。
こんな事を言われて瑞佳が『NO』と言えるはずが無い。・・・やっぱり俺って外道?
「・・・わかったよ・・・部屋でなら・・・いいよ・・・。でもまた風邪悪くなるよ・・・」
瑞佳は消え入りそうな声でつぶやいた。
「瑞佳のためなら風邪の一つや二つ、なんて事無いさ。」
くっくっく。よっしゃあ!俺は心の中でガッツポーズをする。
がっしかし、俺の野望(?)は打ち砕かれた。

がちゃっ!
不意に玄関が開く。そこに立っていたのは・・・
「由起子さん・・・なっなんで!?」
「ゆっ由起子さん・・・!?」
由起子さんだった。
「あのさ、二人とも。そういう事するのも良いと思うけど部屋でやってよね。さっきの会話、全部外に聞こえてたわよ。」
瑞佳の顔が真っ赤になる。多分、俺の顔も・・・
「いや、これから部屋に行ってしようかと・・・」
俺は気が動転して変な事を口走ってた。
「こっ浩平の、ばかぁぁぁぁーーー。」
瑞佳が叫んで、上に乗っていた俺を跳ね飛ばした。

ずごんっ!
俺は後ろの階段に思いっきり頭をぶつけて気を失った。
俺が最後に見たものは、走って家の外に飛び出していく瑞佳の姿と、妙に『にやにや』している由起子さんの顔だった。

次の日。長森さんちの家の前で、朝も早よから。
「浩平なんて、知らないもん!!」とぷんすか怒る、長森さんちの瑞佳ちゃんと。
「だから、俺が悪かったって。」と米搗きバッタのごとくペコペコ謝る、折原さんちの浩平君の姿が近所のオバサンに目撃されたそうな。


−−−おしまい−−−



−−−あとがき−−−

僕「どうも、かっぺえです。」
詩子「あとがきアシの詩子ちゃんです。」
僕「前編の方に感想をくれた皆さん、本当にありがとうございます。おかげで後編を書く事が出来ました。」
詩子「あんなもんでも、感想くれるなんて有り難いよね。」
僕「だから『あんなもん』とか言うなっ。」
詩子「まぁ、それはさて置いて。無理矢理な感じがするね。この終わりかた。」
詩子「私の登場まではまぁ良いとして、由起子さんはなんで帰ってきたの?(自分が出てきたのは嬉しいらしい)」
僕「忘れ物でも取りに来た。と言う事で・・。」
詩子「やっぱり無理矢理だね。お約束ばっかりだし。」
僕「すいません。全て僕の発想力の貧困さと、文章力の無さのせいです。」
詩子「それに牛乳お粥・・・。葉っぱのゲームでこんな話無かった?」
僕「そっそれはっ。ほら、長森も牛乳好きだし。」
詩子「苦しい言い訳だね。」
僕「でっでもその代わりに、本当に牛乳お粥を作ってみたんだ。」
詩子「どうだったの?」
僕「味は結構良いと思うんだけどすごく甘い。半分ぐらいしか食べられ無かった。」
詩子「折原君は甘党だから食べれたんだ。」
僕「そういう事。さぁ。もうこんな話はもう止めようじゃないか。」
詩子「仕方ないなぁ。じゃあ次回作の話は?」
僕「全然考えてない。次があるのかどうか・・・でも感想用に小ネタSSなんて物を考えているんだけど。」
詩子「何なの、それは?」
僕「ふと思い付いたネタだけど、お話に入れるのは難しいってネタを感想用のSSに書こうかと。」
詩子「それで、その小ネタのストックはいくつあるの?」
僕「二つ。」
詩子「たったそれだけ?」
僕「ふと思い付くネタだから・・・」
詩子「だんだん情けなくなってきた・・・」
僕「そうだよ。こんな話より感想に行こう。」
詩子「そうしよっか。」

もももさん
・浩平無用!第二話
僕「うーっ、全然予想と違った・・・」
詩子「予想じゃなくて、希望じゃなかったの?希望通り瑞佳が出てきてるよ。魎皇鬼役だったけど。」
僕「魎皇鬼はみゅーだと思ってたんだけど・・・でも、よく考えると猫瑞佳。可愛いかも」
詩子「どうせ『にゃ〜〜〜』って鳴いてる猫瑞佳・・・ほっ欲しい。とか思ったんでしょ。」
僕「そのとおりっ!」
詩子「まったく・・・(もの凄く呆れてる)」
僕「まあ、良いじゃないか。そんな事よりキャラ予想に行こう。」
詩子「今回はちゃんと予想です。って言っても配役、大体出ちゃってるけど・・・」

鷲羽ちゃんは詩子。『ごーいんぐまいうぇい』な所が。って思ってたら・・・出番無しなんですね。詩子ちゃん。
だから鷲羽ちゃんは確か結構、背が低かったから繭じゃないかと。髪の色も赤ですし。
この予想は結構自信があるんですが・・・。雫さんも、繭=鷲羽って書いてますし。

津名魅は繭ママ。髪をまとめているというところで。色は全然違うけど・・・

神我人はシュン。理由はなんとなく。根拠は無しって事です。

温泉宿のおばちゃんは由起子さん。確か、温泉宿のおばちゃんと天地は親戚の間柄だったような・・・良く覚えてないんですけど。
本編で由起子さんは、浩平ののおばさんですから。

僕「・・・どうだろ。当たってるかな?」
詩子「私にはなんとも。」

僕「予想が長くなってしまったので感想は一言。茜の「・・・今何か心惹かれるものが」って台詞。すごく好きです。」
詩子「茜らしい台詞だよね。」
僕「最後にパロのネタですが。『ス○イヤーズ』なんてどうでしょうか?でもアニメの方は良く知らないので、小説の方を・・・」
詩子「ワガママ言わないの。」

スライムさん
・Moonな日々−4−(後編)
僕「とりあえず、長森が無事で良かった。浩平(浩美?)カッコ良いぞ。女装してるけど・・・」
詩子「危なかったね。瑞佳。」
僕「あと、浩平のギャグに反応してくれない晴香。冷たいなあ。」
詩子「七瀬さんは律義だったんだね。」

・隠れた想い 3
僕「同一人物ですよね?スライムさんと、スライムベスさんと、メタルスライムさんは。」
詩子「違ったらどうするの?」
僕「平謝り。」
僕「そんな事より感想。こういうオチか。・・・と思ったら。」
詩子「あの二人らしい最後になってたね。」
僕「ケンカなんかしながらも、幸せになってるだろうな。あの二人。」

偽善者Zさん
・浩平犯科帳 番外編 第二話
僕「住井、弱すぎ。さいころをかみ砕く所まではカッコ良かったのに。」
詩子「浩平は強くてカッコ良いのにね。しかも、遅れた理由がお瑞とご飯食べてたって。余裕だね。」
僕「可哀相だな。住井。」
詩子「それにしても、この浩平犯科帳はすごいよね。」
僕「凝ってる話だからすごく面白い。こんな話、僕には書けないな。」
詩子「心配ないよ。誰も期待してないから。」

雫さん
・白い記憶 〜第二章〜
僕「自分を責める雪ちゃん。二人の前から逃げ出す雪ちゃん。そして・・・」
詩子「続きが気になるね。」
僕「期待して待ってよう。」

天王寺澪さん
・彼女のいる風景
僕「無駄だとおもいながらも待ち続ける七瀬。切ないですね。しかも、これがこの先一年も続くんですから。」
詩子「信じて待ち続ける・・・大変な事だよね。」

E−Lincさん
・母親(1)
僕「始めまして。僕と同時期で初投稿ですか。」
詩子「かっぺえ君と一緒にしたら、E−Lincさんに失礼だよ。」
僕「えぇい、黙れ。感想に行くぞ。」
僕「浩平ママの話ですか。この後由起子さんと、どう絡んでくるのか・・・。続き書いてくださいねっ。」
詩子「くださいねっ。」

GOMIMUSIさん
・○○○エターナル
僕「○○○に入るのはイースですよね?スイマセン、良く知らないんです。」
僕「でもキャラの名前の当てかたとかウマイですね。底知れない英知と食欲を秘めた未来視(さきみ)の少女、ミスティ・アークケープ。って所がお気に入りです。」
詩子「ねえ、かっぺえ君。GOMIMUSIさん、感想で質問みたいなものを書かれてるよ。」
僕「あれはですね、ゲーム中の風邪の、少し後のつもりなんですが・・・。皆に忘れられてないのか?って質問は無しです。」
詩子「詳しい設定なんて全然無いんです。」
僕「あと、『瑞佳なら絶対浩平を見捨てたりはしないでしょう。』そのとおりです。結局、何言ってても瑞佳は浩平を見捨てる事なんて出来ないでしょうね。」
詩子「でも最後に走って逃げちゃってるよ。」
僕「あれは見捨てたんじゃないの。あの後、ちゃんと浩平の様子を由起子さんに聞いたんだよ。そしたら由起子さんに『しばらくほっときなさい。良い薬になるだろうから』って言われるんだ。」
詩子「それで次の日の朝につながるんだ。」
僕「そう。浩平も由起子さんには勝てないって事。」

僕「ふう。感想終わり。」
詩子「相変わらず感想になってなかったりするね。」
僕「まぁ、それでも『楽しんで読ませてもらってます』っていうのぐらいは伝わるんじゃないかと・・・」
詩子「それが大切なのかもね。」
僕「じゃあこのへんで。皆さん、さよーならー。」
詩子「さよーならー。」


僕「あっ、浩平無用!がもうのってる。」