初投稿・・・か 投稿者: 神野龍牙
とりあえず・・・一個載せて置こう・・・

茜のSS


降り続く雨の中、私は待ち続けてきた
あの人をずっと待ち続けてきた

ここに戻ってきてくれるわけがないと解っていても、心のどこかで
もしかしたら戻ってきてくれるかもしれない
そう思ってしまうから、私はいつもここに来て待ち続ける

あの人の存在が消えた日も、こんな雨の日だった

きっかけは、詩子だった
突然の詩子の質問
あの人に向けられた言葉
「あなた誰?」

そう、全てはこの詩子の一言から始まった・・・・
ううん、もしかしたらもっと以前から始まっていたのかもしれない
私が気付かなかっただけで・・・・・

私は、いつもの詩子の冗談だろうと思ってた
でも、詩子は不思議そうにあの人を見つめていた
本当に誰だから解らないような目をして

そう聞かれても、あの人は苦笑いを浮かべているだけだった
「詩子?本気で言ってるの?」
そう、私が詩子に尋ねると、
詩子は何かを思いだしたような顔をして
「えっ?冗談に決まってるじゃない」
とだけ答えた

その詩子の一言が、何かの合図であったかのように
あの人の存在は、どんどん稀薄になっていった

クラスメート、教師、両親そして詩子
みんなが次々とあの人の存在を忘れてゆく中で
どうして私は忘れないのだろうか、と不思議だった

私が気付いていないだけで、
私もあの人のことを、忘れているのかもしれない
そう思ったとき、私は怖くなった
そうして、その時になって初めて、自分のあの人に対する想いに気が付く

私は、あの人が好きなのだという事実に・・・
気付くのが遅すぎたのかもしれない
だからこそ、私はあの人との時間を大切にしたかった

私という存在で、あの人をつなぎ止めておきたかった

あの人が言った言葉
今でも良く覚えています
そして、その言葉を聞いたとき
私には、あの人をつなぎ止めておくことは出来ないと言うことに
気付きました・・・

それからのあの人の何気ない一言や仕草
それが私の全てだった・・・・

私達には残された時間が少ない
その事実が何より悲しかった

でも、あの人に辛い顔、悲しい顔は見せたくなかった
あの人が好きだから・・・
私の笑顔を覚えていて欲しかった
たとえそれが、私の自己満足だったとしても・・・

そして・・・・
微笑みながら、あの人はいなくなってしまった
私の見ている前で・・・・

あの人のがいなくなっても、
私は忘れなかった
忘れたくなかった

忘れてしまった方が、楽だったかもしれない
でも、それだけは出来なかった
好きな人を忘れてしまう、そのことの方が怖かった

だから、私は今日も待ち続ける
無駄だと解っていてもあの人のことを待ち続ける


そろそろ学校に行かないといけないかな?
ふと、時計に目を向ける、7時45分・・・
まだ時間がある
もう少しここで待っていようかな

「里村・・・だよな・・・確か?こんなところでなにやってるんだ?」

                          おしまい

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