来ない彼女とそばの君 投稿者: ニュー偽善者R【感想不要】
「雨・・・降りそうだな」
 重苦しい灰色の雲が厚く空を塗り固めていた。さっきまでは青が一面を覆っていたのに。湿気を含んだ風の匂いを感じ、俺はますます気分を重くした。
 全く嫌な天気だ。まるで、俺の感情そのものじゃないか。
 灰色に沈んだ俺の中にあるのは、挫折感と喪失感。こうなるのはわかっていたはずなのに・・・。ちょっとの期待で俺は待ち続けている。今でも幼なじみを待ち続ける茜を。
 今日、俺は茜をデートに誘った。一方的にこの公園で待っていると。茜は来ないと言った。それでも俺は待ち続ける。待ち合わせの時間もとっくに過ぎ、愚かな俺を笑うかのように天気までも崩れ始めてきた。
「言ってるそばからこれか・・・」
 ぽつりぽつりと細い滴が俺の頬を打った。見上げていると、幾筋もの雨はだんだんと強まり始める。
「風邪、引くよな・・・・・」
 時間を追うごとに雨は強くなり、着ていた衣服もびっしょりと体に張りついていた。だけど、ここを離れる気は起こらない。もちろん茜がやってくるとは思えなかった。ただ、こうしていれば泣かないで済むような気がして・・・・・・。
「なにをしているの?」
 水たまりを踏む音と共に、幼い声がかけられた。振り向いた俺に映ったのは、俺が期待していた色ではない黄色の傘。それも子供用の傘だ。
 傘を目深に下げて顔は見えないが、その少女はいつの間にかそこに立っていた。季節には全く合わない細い肩が露になった白い服が、鮮やかに風景となる。
「そんな格好で風邪ひくぞ」
「だったら君もひどい格好だよ」
「それもそうだな」
 びしょぬれで傘もささない男と、春が近いとはいえ冬場に夏服を着る不思議な少女。この奇妙な組み合わせに俺は苦笑した。
「ねえ、どうしてここにいるの?」
「待っているんだ」
「誰を?」
「・・・クラスメートを」
「クラスメートの誰?」
 鸚鵡返しに質問を繰り返す少女に二度目の苦笑をする。しかし、相手をするのも悪くない気がした。ちょっと体が冷えてきたけど。
「俺の好きな人、でもだめだな。来てくれそうにもない」
「ふられたんだ」
「鋭いな・・・」
 傘をくるくると回し、表情こそ見えないものの少女は笑っているような気がした。
 雨は止まない。茜は来ない。俺は待ち続け、そんな俺のそばにいるのは不思議な少女。でも、俺はこの少女にどこな懐かしいものを感じていた。幼い声、遠い昔に聞いたことがあるような音色、でも思い出せない。閉じた回路は閉ざされたまま、記憶をつなげることはない。それでも彼女はそばにいてくれる。
「いつまで待ち続けるの?」
「雨が止むまで・・・。もしかしたら永遠に止まないかもな」
 俺の冗談半分の言葉に、少女はわずかに顔を覗かせた。髪を飾る黄色のリボンもちらっと見える。
「うん、それだといいね」
「どうして?」
「雨が降ってる間はそばにいてあげるからだよ」
「ずっと?永遠に・・・・・?」
「そう、永遠だよ」
 雨が降る間は待ち続けるだろう。何気ない日常を思い返し、楽しかった日々を噛み締める。そして、知るんだ。僕が旅立つことに。
「・・・あ、雨が止んだな」
 見上げれば厚く覆っていた雲に切れ間ができ、そこから暖かい日差しが照らしてきた。それを浴びる内に、僕の中でつっかかりが溶けていく。視線を戻した時にはそこには誰もいない。黄色い傘も、季節外れの白い夏服も、少女の声も。
「帰るか・・・・・」
 俺はすっかり雨水を吸って重たくなった衣服で立ち上がった。
 帰る。何も起こらずただ平坦なぬるま湯の生活。いつものように長森に起こされ、退屈な授業を過ごし、寄り道なにかをして一日を終える。そんな生活に俺は帰ろうとしていた。
 誰かの視線を感じた気がして、先ほどまで座っていた方を見る。誰もいない。だけど、誰かがそこで俺を呼んでいるような気がした。






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どうもお久しぶりという言葉を言うことになる偽善者です(笑)
えー、何と言いましょうか・・・今回のは全く意味不明です(^^;;;そこかしこで置いてみたものはあるんですが・・・やっぱ、わかんないですよね。まあ、雰囲気作品なんで流して下さい。
もちろん感想はいりません。
いや、実はHPで連載しているおね猫がスランプなもので、ちょっと気分転換にと(^^;;;混乱させてごめんなさい。それでは今日はこのへんで。


追伸:投稿中止しちゃった”ONE総里見八猫伝”略して”ONE猫”さらに略して”おね猫”は90の大台に達しようとしています(^^)よーし、100話いっちゃうぞ!(笑)
http://www2.odn.ne.jp/~cap13010/
追伸2:めずらしく後記何かをかいてみました。刑事番ね。
http://cgi-space.to/~sin/bbs4/gagaga/denju.html 
追伸3我が安らぎの宿・・・目隠し団へGO!(爆)
http://www.i-chubu.ne.jp/~nanase/index.htm

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