0NE総里見八猫伝彷徨の章 第二十幕 投稿者: ニュー偽善者R【読み飛ばしOK】
第二十幕「夢追い人弐 前編」


浩平の行方を探す瑞佳達は一度総本山に戻っていた。しかし、そこでも得るものはなく、再び瑞佳達は旅立つことになる。だが、三度目の旅立ちは少し事情が違っていた。
「繭、久しぶりのふるさとはどう?」
「みゅー・・・・・なつかしい」
「そう。もうすぐお母さんにも会えるよ」
瑞佳達は繭の故郷へと向かっていた。数カ月も家を離れるのは悪いと瑞佳が判断したのだ。危険なこともたくさんあるだろうし、何よりも子と離れて暮らす繭の両親に申し訳ない。しかし、瑞佳は繭に家に帰すとは伝えていない。立ち寄るだけとしているのだ。
(きっと・・・・・嫌がるだろうな)
繭が楽しげに歩くのを見下ろしながら、瑞佳は少し寂しくなった。浩平の不在の中、共に旅をする繭や澪の存在は大きかった。一人ならばすぐに挫折していたに違いない。
「はあ・・・・・」
『どうした?浮かない顔をして』
横から凪の声がかかる。凪は繭を親元に帰すことに賛成していた。最も繭に近い場所にいる凪だが、瑞佳のように寂しさをおくびに出すことはなかった。本当は瑞佳よりつらいのだろう。しかし、それでも瑞佳と共に旅を続けると言ってくれている。
「ううん、なんでもないよ」
『そうか』
会話はそれで終わり、凪は前を進む繭や澪の元に近づいた。
(しっかりしないと・・・!)
瑞佳が気を持ち直し前方を見た時に、繭の歓声が響いた。
「みゅー♪おうちだよー♪」
山のふもとに位置する繭の村がしっかりとその視界に入っている。浩平と共に来た時と変わらないのが、瑞佳の心を痛めた。
「みゅー♪はやく、はやく!」
繭は故郷に着いたことがうれしいのか駆け出している。瑞佳はそんな元気な繭を見て、自分も元気づけられる気がした。


「おかあさ〜〜〜ん♪」
「!?・・・繭!」
家の戸を大きく繭が開けると、中で繕い物をしていた華穂は驚きに目を丸くしていた。
「どうも、お久しぶりです」
「あら、あなたは・・・」
繭に続いて瑞佳達も顔を出した。華穂が慌てて戸口まで出迎えに出ると、繭は華穂に飛びついた。
「ふふ」
「みゅ〜♪」
数ヶ月ぶりの親子の再会に、瑞佳は嬉しく思いながらもその表情はどこかせつなげであった。
浩平のことを考えてしまったのだ。澪がそれに気づいたのか、瑞佳の袖を引いた。
『どうしたの?』
「え?ううん・・・なんでもないよ」
瑞佳は気持ちを悟られないように微笑むしかなかった。


華穂との再会の後、繭は凪と共に遊び場であった山中に来ていた。
「みゅー♪こっち、こっちー!」
繭は楽しげに木々の間を走り回っている。凪もそれを追いかけるようにしていたが、ふと何かを感じて足を止めた。
(・・・・・何だ?この異質な感じは?)
久しぶりに来たせいではない、慣れ親しんだはずの場所のはずなのに空気が違うのだ。
それもどこか凶凶しいものをひめている。思い返してみれば獣の姿をこれまで見ていない。
(どこかおかしい・・・・・・)
凪の心に不安が生じていた。


闇が訪れる。闇の亡者達の時間がやってきたのだ。それに呼応するかのように、夜空には不穏な雲がかかり月を隠し、風も穏やかなものから凍てついたものに変わっている。


・・・・・・人の血が欲しい

・・・・・・肉を切り裂き、その裂け目から滴る赤い水を

(わかっている)

頭に響く声に、地に座り込んでいた男は答えた。暗闇のせいで顔はわからない。

・・・・・・血を得るのだ

・・・・・・そのためにお前に力を貸そうぞ

「・・・・・・・」
男は立ち上がった。そして、歩き出す。その眼下にはふもとの瑞佳達が滞在している村が広がっていた。


繭の家で瑞佳達は一晩泊めてもらうことになった。繭の父親、照八も我が子の顔を見て嬉しそうである。
そんな穏やかな夜に、戸口を叩く音がした。華穂が応対に出る。
「はい・・・どちら様でしょうか?」
「旅の者ですが、一晩の宿を貸していただけないでしょうか?」
華穂が戸を開けると、そこには言葉通りに旅衣装に身を包んでいるが、やたらと大きい荷物を背負った男が立っていた。
「あの、実はすでに宿をかしていまして・・・・・」
「あ、そうですか・・・」
落胆した声を発する男だが、奥から事情を察した照八の声が響く。
「いいじゃないか。これだけいれば一人増えたところで変わりはしない。まあ、寝床は覚悟してもらうけどな」
「いえ、全然構いませんよ」
「そうですか?なら、中へお上がり下さい」
華穂の通しで男は座敷へと上がり込んだ。
「こんばんわ」
『こんばんわなの』
瑞佳と澪は笑顔でそれを歓迎した。だが、男は瑞佳の笑顔を見た瞬間、動きを止めてしまった。
「あ、あのどうかしましたか?」
「え?い、いや!何でもないです!」
「どうぞお座り下さいな」
なぜか慌てふためく男を華穂が先導して席につかせる。男は瑞佳の隣に座ることになった。
「あの、お名前は?」
瑞佳が人当たりのよい笑みで男に話し掛ける。
「え、あ・・・浩樹と言います。ええと、職は武具を扱ってます」
「わたしは長森瑞佳といいます」
『澪なの』
瑞佳の隣の澪も自己紹介をするが、男、浩樹は瑞佳の笑顔に見とれていた。
一言で言うと瑞佳に一目惚れしたのである。だが、その名を聞いた時に浩樹は思い出したことがあった。
「長森瑞佳・・・って、もしかして幼なじみを探しているっていう?」
「え!?どうしてそのことを・・・」
浩樹は北村の知り合いであった。職を同じとし、その旅する目的を同じとしていたのである。
そのため、瑞佳達に出会ったら伝言を頼まれていたのである。最強の武器作りを目指している彼にしてみれば、最初はどうでもよいことだったのだが、今はそれが大きな意味を持つことになった。
(この人には恋人がいる・・・・・・)
そう決まったわけではないが、浩樹にはそう取ることしかできなかった。
「あの、どうして私達のことを知っているのですか?」
「実はわたしの知り合いが、七瀬という娘に出会い、もしもあなたに出会ったら言付けを伝えることを頼まれたのです」
「言付け?・・・・・もしかして浩平の行方が!?」
瑞佳の顔は期待の笑顔に包まれるが、浩樹にしてみればそれは辛い。
「それはわかりませんが、ただ一言、『淡路に行け』と」
「淡路・・・?どうしてそんな所に?」
瑞佳は言葉の意味は図りかねたが、新たな希望に心が踊っていた。そして、浩平との再会を胸の中で大きく膨らませていた。
しかし、瑞佳は知らなかった。死神の足音がすぐそこまで近づいていることに。




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なぜなにONE猫!
そんなわけで!これかいてる時、風邪ひいてダウン中でした!
ちびみずか「かんけないよ」
ちなみに浩樹とは天ノ月紘姫さんのことです!お待たせしました〜〜〜!
ちびみずか「おまたせしました〜〜〜!」
みなさん予測がつく通り、瑞佳様ラブラブ禁止なので展開は・・・・・・だよ(^^)
ちびみずか「ねえ、ねえ。こんかいのてきは?」
ふふふ・・・みなさんお忘れであったろう、あの脇・・・

ベキ!

ぐはっ!今何かが次元を越えて攻撃してきたぞ!?
ちびみずか「ねたばれはするなってことじゃない?」
いや、それは違うだろ・・・。と、まあ風邪ひきダウンでわけわからないですけど、それでは!
ちびみずか「さよなら〜〜〜!」


次回0NE総里見八猫伝 彷徨の章 第二一幕「夢追い人弐 後編」ご期待下さい!


解説
 
浩樹・・・天ノ月紘姫さん希望。職業を武器職人とし、最強の武器を自ら作るために旅をしている。
性格は基本的にはおおらか、細かいことは気にしないのだが、常々自分の作った武器の試し切りはしてみたいと思っているので、わざわざやっかいごとに関わったりする。試し切りに満足すると、(斬り合いの途中でも)止めて帰ってしまうこともある。どんな武器でも人並み以上に使いこなせるのだが、やっぱり極めた者にはかなわない。
ここまでが本人の希望だが、先のWTTSさんとかぶったため知り合いということにさせてもらっている。瑞佳との絡みも浩平が登場しない点で、多少の変更あり。