誰にだって幸せな時間があると俺は思う。その時がちょうど今だ。すぐ側にある温もり。それがとても愛しく思えた。
「・・・・・うん」
小さい声だが、かわいい声で鳴く愛しい人。多分寝言だろう。夢でも見ているのだろうか?
すぐそばに大切な人の寝顔がある。体をこちらに向けて眠りに身を委ねている姿は、とても感動的に思われた。まさか、長森とこういうことになるなんて誰が予想しただろう?
(住井にはさんざん叩かれたけどな・・・)
俺と長森がつき合っていることを知った時の住井は笑えた。前々から何かとうるさかったが、いざこうなるとぽかんと口を開けて驚いていた。でも、最初に言った言葉が「やっぱりな」という所は住井らしい。
それにしても・・・ここまで長森の側にいて、安らぎを感じたことがあるだろうか?一緒のベッドの中にいる現状、もちろん事を済ませた後なのだが、もっとドキドキしてもいい気がする。まあ、だから長森と俺なのかもしれない。
まどろみに半ば支配されながらも、俺は長森の体に手を伸ばし温もりを確かめようとした。理由があるわけではないが、急にそんな衝動に襲われたんだ。
「・・・んん・・・あ、こうへい・・・」
「あ・・・起こしたか」
体をこちらに引き寄せた時に、長森が目を覚ましこちらに目線を送ってきた。髪の毛のシャンプーの匂いが鼻孔をくすぐる。
「・・・・・あ」
「どうした?」
「だ、だって今わたし何も・・・」
寝起きながらもその事実に気づき、長森は顔を赤らめて布団に顔を半分うずめた。な、何か互いに視線を交わすと恥ずかしくなってきた。長森の態度に急に意識してしまう。
「・・・浩平」
「何だ?」
「わたし・・・今、とても幸せだよ」
そう言って、さらに顔を赤くして長森は完全に顔を隠してしまった。そんな恋人に俺は伝える言葉があった。
「・・・・・俺も幸せだぞ」
でも、ぼくは知っている。
幸せな時間には終わりが訪れることを。
(そうだね)
永遠なんかなかったんだ。
でも、ぼくはこの幸せが続くことを求めた。
(だから、わたしはそばにいるんだよ)
このままぼくは消えるのだろうか?
全てに終わりを告げて。
(滅びはすぐそこにあるよ)
季節は流れる。時が流れるのを止められないように。そして、人の変化も必ず訪れるのだ。望もうとも望まなくとも。でも、俺達の気持ちは変わらない。
初詣。
「浩平どんなお願いしたの?」
「・・・長森が進級できますように」
「それは浩平だよ!」
バレンタイン。
「はい、浩平だけのためのチョコだよ」
「だーーーっ!みんなの前で渡すなーーーっ!」
「熱いわねぇ・・・あんた達」
卒業式。
「来年は私達の番だね・・・」
「・・・ああ」
「あれ?どうしたの浩平」
「いや・・・何でもない」
全ては定まっていたことだ。こんな結末になるとは思ってもいなかった。永遠に続くと思っていた二人の時間。でも、終わりはもうすぐそこに来ている。
俺は・・・間違いなく消える。
(会いたい・・・)
カーテンを閉め切った暗い部屋の天井を眺めながら、心の底からそう思った。希薄な存在にしがみつき俺は今まで何とか存在している。だが、もう限界だ。
俺はベッドから立つと静かに部屋を後にした。行き先なんてない。長森の所へは行ってはいけない。そうすれば悲しみを残してしまうから。最も、あいつの記憶にも俺は存在しないのだが。そう、俺は自分が傷つきたくないだけなんだ。
外は雨だった。細い雨がしとしとと俺の体に降り注ぐ。傘等は必要がないんだ。俺はただひたすらに最後の場所を求めていた。
どこをどう歩いたのかわからないが、気がつくと裏山に来ていた。ぬかるんだ泥が足にからみついてくる。
「ふぅ・・・」
俺はそばにそびえる樹木によりかかり地に座った。今更汚れても構いはしない。
(まだ、時間があるようだな・・・)
ぼーっとしながらそんなことを考える。不思議と恐怖はない。ただ、ちょっと心残りなだけだ。
(もう一度、あいつの顔が見たい・・・・・・)
俺は長森の笑顔を思い浮かべながら目を閉じた。このまま眠りに落ちて、次に起きた時は俺は存在しないのだろう・・・・・・。
「・・・浩平」
聞こえるはずのないあいつの声。幻聴?にしては随分はっきりした声だ。
俺はまぶたを強引に押し開いた。その視界に映ったもの。今にも泣きそうな長森の顔。どう
「馬鹿・・・・・泣くなよ」
「まだ泣いてないもん!」
そう言って長森は俺の胸へ飛び込んできた。くっつき合う頬と頬。その肌に濡れたものを感じたのは雨のせいではない。
馬鹿だこいつは。どうしてここに来てしまったんだ。残るのは悲しみだけなのに。
でも・・・俺はそんな長森を・・・・・・。
「探したんだよ・・・一生懸命」
何も言えない俺は長森の髪を撫でてやる。それから腕を背中に回して強く抱きしめる。
「ずっと・・・ずっとそばにいるって約束したのに!」
「・・・・・約束だからな」
「・・・え?」
「ずっとそばにいるんだ、だって俺は・・・・・・・」
「浩平?・・・・・・浩平ぇぇぇーーーーっっっ!!!」
全ては定められていたこと。だから、彼女は泣いた。
―浩平。
ああ、いつものあいつの声だ。なのにとても懐かしく聞こえる。
―起きなさいよぉー!
もう少し寝かせろよ・・・。
―学校に遅れるよー!
どうでもいい、全ては終わったんだから。
「後一日で単位落としちゃうよ!」
ガバァ!
いやに現実的な台詞。俺ははっとして飛び起きた。
「時間は!?」
そうだ、俺は帰って来たんだ。そんな俺に現実は厳しい。
「ぎりぎりだよ!一時間目から危ないよ!」
「まずい!」
長森から制服と鞄を受け取り、慌だたしい一日が始まる。
外に飛び出すと清々しい朝の空気が俺達を包む。それを味わう余裕は・・・。
「走れ長森!」
「はう〜〜〜ん!卒業までもうすぐなのに〜〜〜!」
あるわけない。
でも、こんな生活が俺にはとてもかけがえのないことなんだ。いつものように過ぎていく時間。それは2度と来ることのない一瞬。でも、変わらないことが一つだけある。
「長森」
「はぁ、はぁ・・・、な、何?」
「愛してるぞ」
「い、い、いきなり何言い出すんだよ!」
変わらないこと。それはいつも愛しい人がそばにいてくれること。季節は二人をゆっくりと包んでいく。
「留年してもそばにいてくれよーーー!」
「冗談に聞こえないよーーー!」
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えへへ・・・しょっぱなからあれかい(^^;これはDNMLにはしません。面倒だから(笑)
ちなみに浩平が消える寸前に言おうとした言葉は・・・ご想像下さい(笑)
ふー・・・・・ひざ枕で消そうかとも思ったんですけど、普通なんでやめました。
だからこんな感じ。ネタなかったんですけどね(^^;たまにこういうのをかくのもいいな(^^)
それでは〜〜〜!
追伸:感想かけなくてごめんなさい。追いつきません(^^;
追伸2:HPで掲載されてるおね猫番外編およろしく〜!作者違うけど(笑)http://www2.odn.ne.jp/~cap13010/