Dissapair Memory 投稿者: ニュー偽善者R
いいかげん自分が嫌になる。

(どうして?)

自分の気持ちに嘘をつく世界。

それで何が報われるというのだろう?

(悲しむことはなくなるよ)

誰かを傷つけても?

(でも、あなたは悲しむことを恐れた。だから、ここにいるんだよ)

そう、わかってる。

だけど、できることならばあの世界にもう少し留まっていたい。

(いまさらそんなこといわれても困るよ)

キミも、誰も悪いわけじゃないと思う。

ただ、ぼくが泣くことをやめたから・・・・・・。



「・・・・・・・」
カーテンの閉めきられ、薄暗い部屋。
まだ長森は来ていない。
だが、めずらしく俺は目を覚ましていた。
(多分、今日は雨だな)
予感といったものだろうか、なぜかこの予想には自信がある。
ベッドを抜け出してカーテンを開くと、案の定外は重たい雲がかかり雨が降っている。
(また、待っているな)
何を?それはわからないけど、一つだけ確かなことはあそこに茜がいるということ。
俺はすっきりしない気分のままリビングへと降りた。



冷え込む朝の空気。
長森が来るより先に家を出て、あの場所を目指す。
重苦しい雲は誰かの気持ちと同じように思えた。
茜の?違う、俺のだ。
前方を見ると、すっかり見慣れたピンクの傘が見えた。
俺は無言で近づいていった。
「よぉ・・・何してるんだ?」
「・・・・・今日ははやいんですね」
「まあな、多分お前がここにいると思ったから」
「・・・それでどうしてここに来るんです?」
うつむいたままの茜だったが、その時はしっかりと俺を見据える。
「風邪・・・・・ひいたら大変だろ」
「・・・・・・・・・・」
口を閉ざす茜。
雨の音だけが世界を包む。
「大丈夫です・・・わたしは馬鹿ですから」
「・・・・・・」
何もいえない。
ここから茜を離すことができない。
どうしてか、俺は無力感を感じた。
「行こう、本当に風邪ひくから」
茜の返事を待たずに俺は背を向けて歩き出した。
茜は無言でついてくる。
その事実だけが少しは俺をなぐさめてくれていた。



「どうして、黙っていっちゃうんだよ!」
長森がものすごい剣幕で俺に迫ってきたのは下駄箱であった。
きっと、走ったのであろうスカートの裾が少し濡れている。
何をそんなに慌てるのか・・・。
「ちゃんと手紙を張っておいただろう?」
「どこに置いたんだよ!お風呂場にもなかったんだよ!」
「惜しい、風呂桶の裏にラップで包んで置いたのに」
「はぁー・・・そんなくだらないことに手をかけないでよ」
「いや、俺の研究家のお前ならわかると思って」
「・・・先、行きますよ」
俺達の会話の中に茜が静かな声で割り込んだ。
長森は茜の存在に初めて気づいたのか、確認した瞬間黙り込んだ。
そんな長森にはお構いなく茜はスタスタと去ってしまう。
「里村さんと一緒だったの?」
「ああ、途中でな」
「前も・・・こんなことあったよね」
感情を殺した長森の静かな声。
それはまるでつぶやくようだ。
「行くぞ」
「う、うん」
そんな長森を見るのが嫌になり、俺は短く、だけど、力強く長森に言い放った。
戸惑いながらもついてくる長森。
何に俺は苦しんでいるんだ・・・・・・。



昼休み。
俺は今日も購買に行こうと席を立った。
教室を出ようとした時に、後ろから袖をひかれた。
振り向くとそこには長森が笑顔で立っている。
「何だ?」
「えへへ」
何もいわず手の中のものを見せてくる長森。
そこにあるのはピンクの青と白のチェックで包まれた正方形の物体だ。
「お弁当だよ」
頬をほころばせる長森、そうかあの時の約束か。
「一緒に食べようよ」
長森と一緒にか・・・・・。
雨はもう止んで太陽も見えているが、中庭の芝生は濡れているだろう。
茜の方を見ると、茜は机で弁当を広げている。
「よし、じゃあ屋上だな」
「うん!」



屋上への重たい扉を開くと、冷たい風が身を切らんばかりに通り過ぎていった。
「う・・・」
「さ、寒いね」
長森は俺の背に隠れるようにして、寒さに耐えている。
「どうしよう、戻る?」
「いや、絶対にここで食うぞ」
なぜかはわからんが、こう逆境に立たされると逆に乗り越えたくなる。
寒い思いするだけだけどな・・・・。
コンクリートの地面は少し湿っぽいが、芝生に比べればはるかにましだ。
俺と長森はフェンス越しに座った。
「はい、一生懸命作ったんだよ」
「どれどれ」
包みがほどかれ、蓋が開けるとそこには俺のイメージに近い「お弁当」が姿を現した。
「浩平の好物を入れてみたんだよ」
なるほど、さすがは俺の研究家を自称するだけあって、俺の食指を進ませるものが満載である。
と、いっても普段こうした弁当を食べない俺にはめずらしい卵焼きとかがメインだけど。

もぐもぐ

がつがつ

「ふふ」
俺のたべっぷりを見て長森は嬉しそうに笑う。
この場合、「おいしい?」という問いは必要ないのだ。
おかずをほおばりながらも、時折熱い烏竜茶を口にする。
この「お茶に合う弁当」というのもポイントが高い。
いや、お茶の方が弁当に合ってるのか?
「ねえ、何点?」
「何が?」
「お弁当の点数」
まるで茜のようなことを聞いてくる。
俺はちょっと考える。
「10点」
「何点満点?」
「10点満点」
「うれしいなー、浩平が素直に褒めてくれるなんて」
「何だよ、そんなにめずらしいのかよ」
「うん、とても」
何がうれしいのかよくわからんが、満面の笑顔で喜んでいるのを見るとこっちも嬉しくなる。
多分錯覚だろうけどな・・・。
「ねえ、浩平」
「ん?」
俺がすっかり弁当を平らげ、長森の食事が終わる待つ。
・・・暇だ。この寒空の下、俺達は何をしているんだろう?
「ふあ〜・・・う!」
「きゃ!」
俺が欠伸をした時、ちょうど冷たい突風が襲いかかった。
長森の髪が風にたなびき頬をそよいだ。
目をつぶって突風に耐える長森。
最近の俺はどこか変だ。どうして長森のちょっとした動作が気になるんだろう?
「ふう、急に吹くんだもん、びっくりしたよ」
「ほれ、そんなこといってないでさっさと食べろ。風邪ひいちまう」
「うん」



「はぁー・・・今日も寒いねぇ」
朝の登校時間。長森の息が白く視界を染める。
確かに今日は冷え込む。
「こんな日はキムチラーメンだな」
「ラーメン?」
「そう」
ラーメンと聞いて長森は眉をしかめた。
そうだ、こいつはにんにくが駄目だったんだ。
「食べにいく?」
「うーん、お前は苦手なんだろ?だったらいいよ」
「わたしはいいよ。一緒にいこうよ。あ、でも今日約束があるんだ」
「夜にか?」
「うん、佐織達とクリスマスパーティー」
クリスマス、そうか今日は12月24日だったのか。
忘れていた・・・いや、忘れようとしていたというべきか。
「途中で抜け出すから校門で待ってるね。時間はー・・・7時半でいい?」
「ああ」


俺は今修羅場にいる。時刻は午後7時。
そろそろ長森との約束の時間だ。
そして、台所でケーキの制作に入っている。
「えーと、生クリームは・・・」
『こげてるの!』
「何!?うわっ!」
ここは俺の家のはずである。だが、なぜか茜、柚木、澪が上がり込んでいる。
しかも、由起子さんが買い込んだビールまで飲んでいる。
俺もだけど。
どうしてこうなったか?
それは簡単だ、柚木が例のごとく教室に潜り込みただ一言。
『パーティーの会場は折原君の家ね』
間が悪すぎたのか、澪までも巻き込んでこうなってしまった。
そして、ケーキを作ろうという事になり、俺と澪で作ることになった。
が、もちろんまともにできるはずがない。
「・・・手伝いましょうか?」
「た、頼む」
見るに見かねて茜が助けてくれた。
それからの作業は流れるように進み、ついにちゃんとしたケーキが完成した。
『できたの〜!』
完成したケーキを口にしながら、ビールを流し込む。
そんなことしている内に時間は流れていった。
「あ、ビールもうないや」
「え〜、折原君買ってきてよ〜」
「何で俺が・・・」
時間はすでに午後9時。
買いにいくのは面倒だが、すでにふらふらの詩子や澪に任せればとんでもないことが起こる気がする。
「しょうがない、行ってきてやるよ」
俺は財布を確認して玄関へと向かった。
「わたしも行きます」
意外なことに茜も同行を申し出てきた。断る理由もないので俺達は外へ出た。
夜の風が火照った頬に心地よい。月明かりの中、二人はとぼとぼと歩いていた。
言葉もないままに商店街の自販機が見えてきた。
茜の制服はまずいが、この時間だったら大丈夫だろう。
「・・・・・本当は来る気はなかったんです」
「?」
突然茜が口を開いた。来る気がなかった、確かに学校では行かないと言っていたな。
「楽しくなかったのか?」
「いえ・・・楽しいです」
「それはよかった」
自販機に千円札を押し込み、ボタンを何度か押す。
ガシャン、ガシャンという音が辺りの静寂に響いた。
「・・・・・・楽しいから、逆に辛いんです」
「・・・・・・」
俺は気づいていた、茜の心を占める存在を。そして、それは俺でないことに。
茜は自分の心に素直になろうとしている。
俺も自分の心を開かなくてはならないのだろう。
もう手遅れかもしれないけど、これ以上大切な存在を傷つけないために。
「悪い・・・先に帰っててくれ」
「・・・・はい」
「ごめんな」
「いえ」
俺は背を向けて走り出そうとした、そんな俺に向けて茜の声が一言だけかけられた。
「クリスマスは・・・特別なんですよ」
わずかに視界に入った茜の表情はかすかに笑っていた。



俺は走っていた。もう時間はとっくの昔に過ぎている。
でも、俺は走っていた。
待っているかもどうかもわからない大切な存在を。
近すぎて気づかなかったかけがえのない存在を。
(頼む・・・!いてくれ!)
祈るような思いで俺はそこへやって来た。
約束の場所、校門前。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・、長森」
俺はその名を呼んだ。
月明かりの中、たたずむ人影。
「遅いよ浩平、大遅刻なんだから」
「・・・ごめん」
ゆっくりと近づき長森を間近に捉える。
長森はいつもようにほほ笑みかけてくれる。
そんな切ない笑顔を見ているうちに、俺は沸き起こる衝動を抑え切れなくなる。
「長森・・・」
「あ・・・」
長森の肩をつかんで優しく胸の中に抱き入れる。
その体は冷たい空気にさらされ冷えきっていた。
「お前も馬鹿だな、どうして待っていたんだ・・・」
「どうしてだろうね、自分でもわからないんだ。でも・・・来て欲しかった」
俺の胸の中でじっと目をつむる幼なじみ。
その白い指が俺の肩にかかる。
俺は今、一線を越えようとしている。二人の長すぎた関係を終えるために。
「長森・・・・ずっと好きだった」
それだけ告げて、彼女の背中に腕を回す。
長森がそれに応えるかのように顔を上げた。
潤んだ瞳。頬はわずかに赤く染まっている。
月明かりに照らされ、長森はとても美しく映る。
いや、これが俺の本当の気持ちなんだ。
俺達は見つめ合い、そして、その柔らかな唇に俺は顔を近づけた。
「わたしも、好きだよ・・・」
触れる寸前、微かであるがその言葉はしっかりと俺の耳に残った。
クリスマスの聖夜。
幻想的な月光に浮かぶ恋人達。
そう、俺達の絆は確かに存在していた。





@@@@@@@@@@@@@@@@@
やばい、長くなった(^^;DNML版はもっとけずろう。
未完成SS第2弾ですが・・・お分かりの通り、ラスト以外手抜いてます(汗)
だって〜、いまいちまとまらなかったのよ(TT)
さて、もちろんこれにはどっかで分岐が入ります。
それはどこかって?地味〜なとこです。
うーん、今回は特に後記なし。なんでかって?ラスト以外ゲームのパクリだから(^^;
そしてぇ!実はこれまだ続くの!でも、DNMLにはならん可能性が高い部分なんだけどね。
次回はもちろ〜〜〜ん・・・・・ネタばれ防止(^^)それでは〜。