Disappear Memory 投稿者: ニュー偽善者R
とても優しい風が吹いている。

ぼくの頬を優しく撫でる。

そして、同じくらい優しく手がぼくの頬に触れた。

ひざのぬくもりがとても心地いい。

(いたいだけここにればいいんだよ)

「でも、それはできない」

(どうして?)

「ぼくにはまだやり残したことがあるんだ」

そう、やり残したことはまだあるんだ。

消え始める二つの絆が。

(無駄だよ。あなたはすでに旅立ったんだから)


このえいえんのせかいに。



カシャア!


いつものようにカーテンを開く音と共に、目の奥を焼くような陽光。
「ほらぁっ!おきなさいよぉーっ!」
そして、いつもの幼なじみの声。
「・・・・・ぐー」
「今日は手加減しないんだもん!」
そう意気込んで長森は布団ごと引っ張り、見事俺はベッドから転がり落ちた。
天地が逆転したかのような感覚を覚え、俺の脳はやっと回転し始める。
「おはよう、浩平。お布団ほしちゃうよ」
「お前なぁ・・・もう少しまともな起こし方できないのか?」
「どんなだよ」
「ほら、目覚めのキスだとか・・・」
自分でいってて馬鹿らしくなる。
長森相手に何をいってるんだ俺は。
「いいよ」
「はぁ?」
長森の予想外、というか想像すらできなかった言葉に、俺は間抜けな声を出してしまった。
「冗談だよ。あはは、本気にした?」
「こ、この〜!」
「わっ!浩平からいいだしたんだよ!」
おのれ、長森のくせに俺をおちょくるとは。
今日は徹底的にいじめてやることにしょう。
そうだな。スカート下ろしならぬパンツ下ろしはもうやったから、ブラジャー・・・・・やめよう。
高校生になってこんなことやるのもがきだしな。
というかやったら犯罪だな。
これがもとで「責任をとれ!」なんてことになって、長森とめでたくゴールインなんてことに・・・・・ほんとになったら怖いぞ。
「浩平、時間時間!」
「あ、やばい!」
くだらない妄想に時間をかけてしまった。
長森から制服と鞄を受け取り、部屋を飛び出す。
今日もあわだたしく一日が始まった。
外に飛び出すと、冬の空気が身を包む。
目に見えなくとも確実な季節の変化が実感できた。



4時間目を終了を告げるチャイムが鳴り、昼休みが始まる。
俺は茜の席へと向かう。
「悪い茜、購買いってくるから先に中庭に行っててくれ」
「・・・・・・」
茜の口から否定も承諾の言葉も出てこない。
俺は茜の返答を待つことなく教室を出た。



「あ、浩平」
「お、長森か」
購買でパンを買って靴箱に向かう途中長森と出会った。
多分自動販売機で牛乳でも買いに行くのだろう。
「今日も中庭に行くの?」
「どうしてお前がそれを知ってるんだ?」
「当たり前だよ。里村さんと一緒なんでしょ」
「ああ」
うーん、鈍感な長森が知っているということは学年全体、下手したら全校にまで知られているかもな。
「浩平も隅に置けないよね。いつの間に里村さんと仲良くなったんだよ」
「あのなぁ・・・」
「うん、これでわたしも心配いらないよ」
また、保護者気取りかよ。
いつも彼女が必要だとかうるさいが、よし、ここは長森を安心させてやろうではないか。
「まあ、そのうちお前の世話もいらなくなるかもな」
「・・・え?」
長森のはっとしたような表情。
「浩平・・・本気なの?」
「え、あ、・・・」
冗談で言ったのにまずい、こいつは本気にしている。
長森の信じられないという顔。
何だよ、彼女を作れっ、ていったのはそっちじゃないか。
それなのにどうしてそんな悲しそうな表情をするんだ。
「それじゃあ・・・」
「あ・・・こうへ・・・・・」
なぜか長森の態度が気に入らなくて俺は脇を通り抜けた。
後ろからの長森の視線がとても痛く感じた。



中庭では茜はいつものように座っていた。
こんな冬の風に身をさらしているのだ、きっと寒いに違いない。
それでも俺を待っていてくれたのか、弁当には手をつけていない。
と、いっても待っていたのか?何て聞いても「違います」と答えるんだろうな。
「・・・・・時間かかったんですね」
「ん、ああちょっとあってな」
どうも長森の何かいいたげな表情が気になる。
帰りに一緒に帰ってみるか。
「浩平?」
「何だ?」
「話聞いてましたか?」
「あ、ごめん考え事してた」
どうやら茜は何か話しかけてきたらしい。
「で、何だ?」
「・・・もうすぐクリスマスですね」
「クリスマス・・・・・」
その言葉を聞いた瞬間、俺の胸にずしりと重みがかかった。
どうして?自分でも理由はわからない。
ただ、不快な響きがその言葉にふくまれていた。
「浩平はどうするんですか・・・・・・?」
「普通さ。何もすることなく家で寝る」
「さびしいですね」
なぜか気分が乗らず、今日はあまり茜に話しかけることはなかった。
なぜだろう?こんな気持ちになるのは?
でも、ただ一つだけわかっていることがある。
それは・・・。


クリスマスは嫌いなんだ。

(どうして?プレゼントがもらえるのに)

一人で過ごすクリスマスなんて嫌いなんだ。

孤独で、寂しくて、悲しくて、だからぼくには必要ないんだ。

でも、だれかと一緒にいたいとは思うよ。

(なら、わたしがいてあげる)


えいえんに。


夕陽が全てを包む帰り道。
俺は長森と一緒に家路についていた。
今日は部活は休みらしい。
夕陽に照らされ、長森の姿が赤く鮮やかに彩られている。
なぜか俺の目に映るのが長森でないような気がした。
何ていったらいのだろう、俺の知らない長森がそこにいる気がしたのだ。
心の中、奥底で綺麗だなとも思ってしまう。
「どうしたの、浩平?」
「なんでもない」
俺の顔を見て長森が不思議そうな目を向けてくる。
そうだ、何を馬鹿なことを考えてるんだ俺は。
長森は長森じゃないか。
いつも一緒にいて、困らせてる幼なじみ。
こんな変な気分になったのはきっと夕陽のせいだ。
見ていると悲しい気分になる夕陽の・・・・・。
「何か久しぶりだね、二人で帰るの」
「別にいつも朝は一緒だろ」
「うーん、でも何か新鮮に感じるよ」
長森はなぜか嬉しそうに歩いている。
そういえばこいつは俺と一緒に遊びたがることが多いな。
それなのに不思議なことに「デート」という言葉を持ち出すと慌てふためくのだ。
まあ、俺達の場合彼氏彼女の関係なんて程遠いけどな。
そうだ、ずっと俺達の関係は変わることがない。
「ねえ、どうせなら商店街の寄っていこうよ」
「まあ、たまにはいいか」
商店街に入ると、いい匂いが俺の鼻をついた。
見ると、パタポ屋の看板が目に入る。
うーん、飯時前だけど食べていこうかな?
一人だと抵抗を受けるが、長森と一緒だしちょうどいい。
「浩平、パタポ屋よってく?」
俺の気持ちを見透かしたかのようにいってきた。
そのことにちょっと驚いた顔を見せると、長森は誇らしげな笑みを見せた。
「えへへ、わたしは浩平研究家だもん」
「何わけわかんないことを・・・」
長森の言葉を聞き流しながら、俺はクレープを頼んだ。
それからクレープを片手に商店街を歩く。
ショーケースを眺めていると、その装飾からクリスマスを基調としているのがわかる。
どうして人はこう、イベントに敏感なんだろうか?
「もうすぐクリスマスなんだねぇ」
「ふーん」
「浩平は今年はどうするの?」
「そんなのお前が一番わかってるだろ」
毎年長森は友達とクリスマスパーティーを開く。
その時に料理なんてものもこいつは作るのだが、その余り物を俺に届けてくれるのだ。
もちろん俺は家で寝るか、テレビでも見ているのだ。
「里村さんとは・・・一緒じゃないの?」
突然、長森の声が低くなった。
まだ昼間の言葉を信じているらしい。
その時俺は、長森のどこか切なげな表情を見るのがいらだたしかった。
止めて欲しい、そんな目で俺を見るのは。
「昼間のは冗談だ・・・、茜が俺とつきあうわけないだろ」
「な、何だ。これでやっとわたしの苦労も減ると思ったのに」
長森の声がどこかわざとらしい。
長く一緒にいる俺にはそれがわかる。
どうして・・・、どうしてそんな・・・・・・。
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
二人に沈黙が訪れる。
俺はそれに耐えれなくなり、大口を開けて長森に襲いかかった。
正確には長森のクレープに。
「ああっ!何するんだよ!」
「もごもご・・・・・ふるはい!ふきをみひぇたほうがわるいんだ!」
「何いってるのかわかんないよ!えーい、わたしも!」
「ああっ!俺のクレープ!」
俺の非難も長森には届かず、仕返しばかりにとかじりついてきた。
おのれ・・・、生クリームがたっぷりの所をもっていかれた。
「ちくしょー・・・これじゃあ食い足りない」
「浩平のお昼は少なすぎるんだよ」
「そうかな?」
「そうだよ」
確かにパンが一個や二個じゃあ少ない気もするが、ちゃんとした弁当なんて作る気もないし、作ってくれる人もいない。
「ねえ、今度お弁当作ってあげようか?」
「弁当ぉ〜〜〜?」
「うん、特製のお弁当だよ」
弁当か・・・考えてみれば、みんなのイメージにある「弁当」といったものを俺はほとんど食べたことがない。
仕事の忙しい由起子さんだからしょうがないんだけど。
しかし、長森の提案も悪くないな。
最近購買と学食のメニューには飽きてるし、何よりも昼食代が浮くのが魅力的だ。
「まあ、期待しないで待ってるよ」
「えへへ、じゃあ期待してない浩平をびっくりさせてみようかな」
「納豆だけはいれるなよ」
「わかってるよ」
霞む夕暮れの中、俺達はどちらともなく笑い合った。





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この作品は実はDNML用の話だったりします。
投稿してみんなの反応を見ようという作者の意図がちらほら(^^;
未完成品なんで、描写は適当です。
て、いうかここで全てネタばれするわけにもいかないんで(^^;
後、1、2話続く予定ですけど、もちろん未完成(笑)
DNML版では完璧・・・なはず(^^;
ちなみにDNML版ではストーリーは分岐するので、これはストーリーの一部だったりします。
さあ、いつ完成するんだろ?(^^;;
さて、中身の解説をすると、ヒロイン二人の好感度を半々上げたぐらいだと思って下さい。
多少の矛盾は放っておいてね(^^;
浩平の心理の変化(シリアスになったり普段通りになるところ)も突っ込みなしね(^^;一応、わざとなんで(本当の気持ちを押さえ込もうとする浩平を表現しようとしているつもりらしい)。それではいつかくかわかんない次回まで〜。


変身動物ポン太(代理:つっこみ茜)さん
>激突!! 春の特別編 (後編)
一発ネタも含めた感じでした(^^)なかなか、作戦の一つ一つにインパクトあり。一部シュールっぽいのがありましたけど、それが特に好きだったり(^^;座談会・・・猫?  

いけだものさん
>罪と罰
なるほど(^^)タイトルはこういう意味だったんですね。
しかし、前半のシリアスはほんとすごかったです。
いやー、これはレベル高いわ。

神凪 了さん
>アルテミス
うーん、何か一気に大詰めな感じ。
追いつめられたけど、まーだ、何かやってくれそうな・・・。
良祐の死に様(笑)は盛り上がりますね。

PELSONAさん
>嘘ってなんなのかな
んー、後からじわじわとくるこのおもしろさ(^^)
気づいた時には「あっ!」な展開。
怖いぞ澪(^^;
>嘘は身を滅ぼす
評価最悪じゃん、浩平(TT)
>嘘という名の駆け引き
ひ、ひどいよ詩子さん(TT)
>innocent world  【episode T】
まだまだ序盤ですか・・・当たり前ですけど(^^;
とりあえず続きを楽しみにしますです。
だって、伏線なんだもん(^^;

スライムさん
>春風のメモリー  第三話
あああぁぁぁーーーっ!澪の恋の行方がきになるぅぅぅ〜〜〜。
腹ならしてる場合なのか七瀬ぇ!(意味なし)
なんか、ほんと続きが気になったり(^^;

http://www2.odn.ne.jp/~cap13010/