ONE総里見八猫伝彷徨の章 第六幕 投稿者: ニュー偽善者R
第六幕「一眼一足の怪 後編」


不意に迷い込んだ一本だたらの村で一夜を過ごすことになった浩平と茜。
しかし、謎の黒い影に浩平の目の前で、茜がさらわれてしまった・・・・・・。


一本だたらの長の屋敷。小渡名に連れられて、浩平は影の正体について聞きに来た。
中には村中の一本だたらが集まっている。
「浩平殿すまぬ。我ら一族の不祥事でこんなことに・・・!」
長は開口一番浩平に頭を下げた。大きな一目に謝罪の念が込められている。
「あいつが何者か知っているのか?」
浩平の問いに別の一本だたらが答える。
「あなたのお連れ様をさらったのは我らの仲間、東予(とうよ)でしょう・・・」
「東予はおいらの親友だったんだ・・・」
暗い声で浩平の隣の小渡名が言った。
「おいら達は争いは嫌いだし、人間を襲うこともない。東予は村一番も力持ちだったけど心も優しかった・・・」
「そんな奴がどうしてあんなことを?」
「大妖の邪悪な気のせいじゃ」
気を取り直した長が小渡名の後を続ける。
「大妖・・・?」
浩平はその言葉にどこかひっかかりを感じた。
自分の記憶に関係するのかもしれない。
「大妖の気にさらされた者は殺戮の衝動にかられ、人にも妖怪にも害をなす化け物となるのです。そして、東予も化け物に・・・東予は自我のある内にこの村から去ったのです」
「そうか・・・」
大体の事情は掴めた。そして、浩平がしなければならいこと、それは茜の救出であった。
「奴がどこにいるかわかるか?」
「東予はおいらの村と人間の村の境目にいるよ。おいらが案内するよ」
「頼む」
小渡名の進言を受け取り、浩平は立ち上がった。
ぐずぐずしている暇はない。


一方、東予にさらわれた茜は林の奥にある、粗末な竪穴住居にいた。
「何故わたしをさらったのですか・・・?」
「・・・・・・」
茜の目の前には普通の一本だたらよりも大きい東予がいる。
入り口の前に座り込み茜が逃げるのを防いではいるが、茜に危害を加えることはなかった。
「・・・答えてください」
「・・・・・・」
茜は何度にもわたり同じ質問を繰り返していた。
ずっと沈黙を続けていた東予だが、根負けしてぶっきらぼうに口を開いた。
「お前に用はない。ただ、あの小僧おびき出すための囮だ」
「・・・何故?」
「闇雲を持ってるからだ」
話がよくわからない。闇雲が浩平の持っている剣のことを指しているのだけはわかった。
(そういえば・・・司も何か名のついた物もってたっけ・・・)
茜はうずもれた記憶からそんなものを思い出した。
それから茜と東予は何を話すこともなく押し黙ったままであった。
「来たか・・・」
「え・・・?」
不意に東予が立ち上がり、茜の手を引いた。
そして、外から声が聞こえてきた。

・・・茜ーーーっ!

間違いない浩平の声だ。茜は喜びの顔を輝かせた。
東予はそんな茜の手を強引に引き外へと連れ出された。
「浩平!」
「茜!」
林の合間にこちらに向かってくる浩平と小渡名が見える。
茜の姿を見た浩平は走り出した。
「てめえ!茜を放せ!」
「いいだろう」
意外にも簡単に東予は茜を浩平の方に押しやった。
東予の行動に浩平は拍子抜けした。
「どういうつもりだ?」
「つもりも何もない。俺の目的はただ一つ、闇雲を破壊するのみ」
東予の目に殺気が漂う。それを感じた小渡名は必死に呼びかける。
「やめてくれよ!今なら間に合う!」
「小渡名か・・・無駄だ遅かれ早かれ皆俺のようになるのだ」
「東予・・・」
東予の言葉の悲痛な表情を浮かべる小渡名。
「おい、操られてるんだか何だか知らないが、ちっとは自分を取り戻す努力をしたらどうだ?」
「簡単に言ってくれる・・・それがどれだけの苦痛かも知らぬくせに」
「つまり逃げ出したってことだろ?」
「・・・ぬかせ!」
一瞬で東予の両腕の筋肉が盛り上がる。
そして、その発達した足で雪上を飛び上がった。
「てめえの根性をたたき直してやるぜ・・・」
迎える浩平も闇雲を抜き放つ。茜は小渡名に預け、この場を離れるように命じた。
そこに東予の拳が降りかかる。
浩平は後ろに飛んでかわすが、浩平のいた雪上を物凄い拳圧が大穴を開ける。
着地した東予は膝をばねにして、さらに連打をたたき込む。
「くっ・・・!」
するどい連打に浩平は押される。そして、下から突き出された強烈な一撃が鳩尾を捕らえた。
「かはっ!」
呼吸が止まり膝をつく浩平。
東予は妥協しまいと、両腕を組み浩平の頭上にかかげる。
「死ね・・・」
「浩平・・・!」
空を切り裂き東予の腕は振りおろされた。骨の砕ける嫌な音が辺りに響いた。
茜は悲鳴を上げ目を閉じた。
「な、何故だ・・・!?」
東予の愕然とした声が聞こえ、茜は恐る恐る目を開いた。
茜の目に写ったのは、自分の両手を信じられないと見つめる東予と、浩平に覆いかぶさりその頭部を割られた小渡名であった。
浩平は事態に気付き、起き上がると小渡名を抱えた。
「小渡名!しっかりしろ!」
「は、はは・・・痛いね。やっぱ・・・」
小渡名は霞む焦点を必死に東予の方に向けた。
「と、東予・・・おいらはお前にひ、人だけは殺して欲しくないんだ・・・」
「馬鹿野郎!だからってどうして俺をかばった!?」
浩平は叫ぶが小渡名はかすかにほほ笑むばかり。
そして、その瞳は力なく閉じられた。
「小渡名・・・!しっかり・・・ぐおおおおーーーっ!」
東予も小渡名に呼びかけようとするが、それは狂った本能が許さなかった。
地獄の苦痛に頭を押さえる東予。
「小僧・・・!そいつで俺を斬れ!」
「し、しかし・・・」
迷う浩平だが東予は檄を飛ばす。
「これ以上、俺に命を殺めさせないでくれ!お願いだ・・・!もう、小渡名のような犠牲は作りたくない!」
浩平の心を複雑な心理が交錯する。
東予を殺したくない。
しかし、化け物と化した妖怪は迷いなく斬ってきた。
彼らと東予がどう違うのだろうか?
(どうする・・・!?)
自分の矛盾に浩平は苦しむ。だが、その手にした闇雲は浩平の意志に反した。
「な・・・!?」
自分の右腕が闇雲に導かれ、勝手に東予の心臓へと伸びていく。
「あり・・・がとう・・・」
絶命いていく間際、東予は優しい笑顔を浮かべて倒れた。
「何故だ・・・何故だーーーーーーーーっっっ!!!」
「浩平・・・」
絶叫する浩平に茜は何も言えなかった・・・・・・・・・・。






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なぜなにONE猫!
暗いな・・・かまいたちと似通った感じだし。まあ、実はわざとなんだけどね(^^;
いや、ほんと。記憶の回復がテーマだし。
ちびみずか「え〜ん、かわいそうだよ〜!」
泣くなちびみずか!友の死に絶望する!悲しい友情じゃないか!(だからって殺すな)
ちびみずか「えぐえぐ・・・」
前からかこうとは思ってたが、こんなものになってしまうとは・・・うーむ、修業がたりん(見直しもたりん)ほれ、あんまり泣いてばかりじゃ、枯れてしまうぞ。
ちびみずか「うん・・・チーン!(鼻をかむ音)」
さて、次回はSS作家さんの出演!まねき猫さんの登場です!
ちびみずか「おまたせしましたーーー!」
いつもお世話になってます。それでは!
ちびみずか「さよなら〜〜〜!」


次回ONE総里見八猫伝 彷徨の章 第七幕「猫又との遭遇」ご期待下さい!


解説・・・ないです(tt)

http://www2.odn.ne.jp/~cap13010/