ONE総里見八猫伝大蛇の章 第二一幕 投稿者: ニュー偽善者R
第二一幕「川底への誘い」


近江の地で琵琶湖の龍神、みずちとの戦闘を浩平を狙う謎の人狐、飛主の協力も得て、辛くも切り抜けた浩平。戦いの傷も癒えぬまま出発した彼らだが、その強行軍が災いすることになる・・・・・・・。


「くそ・・・この程度の傷で・・・」
「駄目だよ。浩平は怪我人なんだから安静にしてなきゃ」
『じっとしてるの』
山道のとある小屋で静養していた。原因はただ一つ、みずちとの戦いで負った傷である。表面的な外傷もさることながら、一番重いのは肋骨のひびである。闇雲を持っていると、ある程度の傷は自然と治るのだがやはりここまでくると完全ではない。さらに日頃の疲れも合わさって浩平は道中で倒れてしまったのだ。浩平は瑞佳に強く止められて、空き小屋を借りて布団で寝ている。
「わたし近くの川で水汲んでくるから、澪ちゃんしっかり浩平を見ててね」
『わかったの』
瑞佳は水を取り替えるために小屋を出た。川は山道のゆるやかな斜面を降りたところにあった。
さらさらさら・・・・・・・
山間に小さな渓流が形成され、穏やかな水の流れをたたえている。瑞佳はその流れに手を軽くひたしてみた。
チャプ・・・
(冷たくて気持ちいいな。そうだ、浩平が動けないんだから後で澪ちゃんと水浴びしよっと)
瑞佳はそんなことを考えながらも、浩平のために手ぬぐいを川にひたしてしぼる。ついでに水筒の水も取り替えた。
「さ、早く戻ろうっと」
渓流を後にする瑞佳だが、背後に奇妙な視線を感じた。
「・・・?」
後ろを振り返っても、ただ川がゆるやかに流れるのみ。
「何だろ・・・?」
不思議に思いながらも、瑞佳はたいして気にすることもなくその場を去った。しかし、彼女を見つめる者は確かに存在した。冷たい川底から生気のない死者の目で。

・・・うらやましや
・・・我らと同じ思いを
・・・この冷たい水の冷たさを
・・・ひきこめばよいのだ

瑞佳は自分に降りかかる危険をまだ察知していなかった。


「ほら、浩平。早く着物脱いでよ」
「待て!何をする気だ!?」
「決まってるじゃない。体を拭くんだよ」
『早く脱ぐの』
澪はすでに浩平の袈裟に手をかけている。浩平は重たい体で必死に抵抗する。
「いいって、それぐらいは自分でする」
「そう?」
「いや、待て。もちろん下も拭いてくれるんだよな?」
「やだよ」
当然のことだが拒否する瑞佳。浩平も冗談で言っただけである。
「面倒だからいいよ。俺はもう少し寝る」
「仕方ないなー、それじゃあ澪ちゃん。私達は水浴びに行こう」
『行くの!』
「それじゃあ浩平、じっとしててよ」
喜びの声を上げる澪と連れ立って、瑞佳は戸口に向かった。そして去り際に浩平に言った。
「覗いちゃ駄目だよ」
「・・・」
戸が閉められ瑞佳は行ってしまった。残された浩平だが、眠りに落ちることもなくまたも煩悩と戦っていた。
(水浴び・・・ということは着物は脱ぐわけで・・・・・・・何を考えているんだ俺は。相手は瑞佳と澪だぞ)
必死に考えを振り払い眠ろうとするが、そう簡単に湧き起こる欲情は抑えれない。
(止めろ!それ以上考えるな俺!眠るんだ!とにかく眠るんだ!)
浩平はそれから考えとは裏腹に、眠りに入ることはなかった・・・・・・。


一方、再び渓流に来た瑞佳は澪と共に着物を脱ぎはじめていた。

パサ…

帯がほどけ、旅装束が地に落ちた。さすがに青空のもと、裸にはなれないので薄い長襦袢をまとう。それから澪の脱衣を手伝いにかかった。
『自分でできるの』
子供扱いされることは嫌なのか、澪は不満気な表情を見せた。瑞佳は苦笑して川の水を手ですくった。
『できたの』
瑞佳と同じように長襦袢姿になった澪に、瑞佳はいたずら気な笑いをして澪に水をかけた。
「えい!」

パシャ!

『冷たいの!』
「あはは!」
『仕返しなの!』

チャパ!

「きゃっ!やったなー!」

パシャ!

それから二人は互いに仕返しばかりにと、水を掛け合った。彼女達の姿は健康的で何か心を落ち着かせるものを感じさせた。しかし、その余りある生気を感じさせる二人をおびやかす者達がいた。

・・・いまだ
・・・ひきこめ
・・・冷たい川底に

グイ!

『!?』
突然何かに足を引っ張られ、澪は体勢を崩し水の中に倒れ込んだ。

バシャア!

「澪ちゃん?」
澪が倒れ込んだのが、渓流の流れが速く深めの所だったので瑞佳は心配の声を上げた。
『何かに引っ張られてるの!』
澪の返事が危険なものを感じさせたので、瑞佳は澪に手を差し伸べ流れに逆らい近づいた。

・・・この娘、人間じゃないぞ
・・・ひきこむのは
・・・あの娘にしよう

グイ!

「きゃあ!?」

バシャア!

瑞佳も澪と同じように何かに足を捕まれた。倒れ込みながらも、瑞佳は自分を足元を見た。そこには自分を冷たい川底へと引き込む無数の青白い手が両足を掴んでいた。
「きゃあああーーー!」
山林に瑞佳の悲鳴が響く。そして瑞佳の耳に、死者達のさそいの声が轟いた。

・・・お前もおいで
・・・この川底に
・・・冷たく、暗いこの世界に

水中へと引き込まれ、水面はすでに瑞佳の鼻の位置まで達していた。もがく瑞佳の心中には浩平への助けが響いていた。
(浩平!助けて!)


「瑞佳!?」
小屋の布団の中、浩平は瑞佳の悲鳴が聞こえたような気がして跳ね起きた。

キィィィーーーン・・・

「やはり!」
浩平は瑞佳の危機を確信して、痛む体にむちを打って外に飛び出した。剣に導かれるまま、浩平はただ走る。そして斜面を下った渓流に水中でもがく瑞佳と、引き込まれる瑞佳の手を必死に掴み助けようとする澪の姿が見えた。
「澪ー!離れろ!」

ダン!

闇雲を引き抜き浩平は地を蹴った。

ザバア!

川の中に飛び込んだ浩平は、瑞佳の腕を掴みこっちに寄せた。しかし、水中の手は全く離そうとしない。
「この・・・!」
苛立った浩平は瑞佳を捕らえる手に、剣を突き刺した。

・・・うああ!
・・・痛い!

そんな低い悲鳴が響き、手の力が弱まった。浩平は一気に瑞佳の体を抱き引き寄せた。
「大丈夫か・・・!?」
「ごほ!ごほ!・・・う、うん」
気管に水が入ったのかせき込みながらも瑞佳は笑顔を見せた。
「早く逃げろ・・・。まだ敵はあきらめていない」
浩平の言葉通り、無数の手と思念は一点に集結していた。どす黒い思念が集まり、さらに邪悪さを増している。そして、手だけだったものは形を成して、人の姿となっていた。しかし、それは真っ白な煙のようなもので実体がない。

・・・ひきこんでやる
・・・うらんでやる
・・・貴様もこの川底で暮らすがいい

怨念のこもった声を響かせる白い影だが、浩平は億することなく言い放った。
「往生際の悪い奴等だな・・・」

・・・ここは冷たすぎる
・・・嫌なんだ

「今度は泣き言か・・・?そんなに嫌なら・・・消えてしまえ・・・!」

バシャ!

浩平はゆっくり近づく影に向かって、一歩勢いよく踏み込んだ。そして闇雲を大きくなぎ払う。

・・・うあああああああ
・・・消える
・・・でもやっとここから解放される

胴を真っ二つに斬られた影は、最後に安心したかのような声を発し消滅した。
「・・・・・・」
浩平は闇雲を鞘に収めた。
「浩平!」

バシャ!バシャ!

岸から瑞佳が水音を立てて浩平に駆け寄った。
「ありがとう・・・もう少しで溺れちゃうところだったよ」
「お前はどんくさいからな、ところで瑞佳」
「何?」
浩平はいつもと違う視線で瑞佳を見た。正確には濡れた長襦袢が張り付き、その肢体がくっきりと浮かび上がった瑞佳の体を。
「お前・・・けっこう胸あんだな」
「馬鹿っ!!!」

パチン!

山林に瑞佳が浩平の頬を叩く音が響いた。瑞佳の顔が真っ赤だったことはいうまでもない・・・・・・・。



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なぜないONE猫!
ちびみずか「わたしが読む前に終わってる?それにぎぜんしゃもいないし」
こ、ここだ・・・
ちびみずか「きゃっ!?血まみれでぎぜんしゃがたおれてる!どうしたの!?」
いや・・・あまりの衝撃に鼻血が止まらなくて・・・
ちびみずか「はなぢ・・・?」
そう・・・想像に走った瞬間俺の脳裏に革命が起こったんだ・・・そうそれはまるで吹き上がるマグマのように・・・
ちびみずか「どんな作品かいたのかな?」
ああっ!?見てはいけない!
ちびみずか「・・・・・・・」
見ちゃだめだ〜〜〜〜!!!!!
ちびみずか「・・・・・・・・えいえんは・・・・・・・・・・あるよーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっっっっっっっっ!!!!!!!!!」
うわあああああああああああああああああああああああああああああああああーーーーーーーーーーーーーーっっっっっ!!!!!!予告なしかい〜〜〜〜!!!


次回ONE総里見八猫伝 大蛇の章 第二二幕「追われ身の天女 前編」ご期待下さい!


解説

地縛霊…今回は妖怪ではない。詳しい説明は本編ではできなかったが、今回の敵は何十体もの死者の霊が集まったもの。元は川で溺れたものが地縛霊となり、それに引き込まれた人々が続出し、強力になっていった。現実でもこの例はよく見られる。自殺の名所とされる所には特にこの傾向が強い(遊び半分で近づくと引き込まれるので注意)また、海やいわくつきの家でもよく出没する。地縛霊は執念が強く、お払いをしても成仏することは難しい。