ONE総里見八猫伝大蛇の章 第十六幕 投稿者: ニュー偽善者R
第十六幕「天狗の里」


狐の嫁入りを覗いた少年を救うため、天狗の魂を集めることになった浩平。しかしそれは人狐の罠であった・・・・・・。


「くそーっ!本当に天狗なんかいるのかよ?」
浩平は文句を言いながら道なき道を進む。天狗の棲むこの山道は、人が誰も来ないので鬱蒼とした木々や雑草が生い茂っている。浩平はそれらをなぎ払いながら歩くのみである。
「ちっ・・・もう日が暮れるじゃないか・・・」
浩平は木立の合間からわずかに見える空を見上げた。ここからでも空が夕暮れに染まっているのがわかる。こんな山中ではすぐに真っ暗になるだろう。
「ついてねえ・・・」
時間を追うごとに空腹と疲れが浩平を襲ってきた。


「浩平どうしたんだろう・・・?」
一方、浩平とはぐれ近隣の村で瑞佳と澪は帰りを待っていた。二人の表情には不安と心配がありありと浮かんでいる。
「まあ、そんな心配なさんな。明日の朝一番に村のもの総出で探すから」
二人が泊めてもらった家のじいさんが、食事の用意をしながらやんわりと諭した。
「そういえば不思議なことがあるんじゃが・・・その若者は子供を助けたと言ったな?」
「はい・・・それが何か?」
「この村に男の子供はおらんぞ」
「えっ!?」
瑞佳は衝撃を受けた。そして同時に不安は抑え切れないものになっていった。


「くそ・・・腹減った・・・」
浩平は疲れきり手ごろな岩に背を預けた。
「引き受けるんじゃなかったなー・・・」
浩平がそう愚痴た時、闇雲が鳴動を始めた。
「ついに来たか・・・?」
が、その可能性はすぐに違うものだと浩平は直感した。剣の反応は弱い。低級な弱妖だ。

・・・こそこそ
・・・ひそひそ

辺り一帯から話し声のような、そんな声が響き始めた。浩平は岩から跳ね起きた。
「どこだ!?出てこい!」

・・・こそこそ
・・・ひそひそ

囁きはすぐ近くのようで遠くのようにも感じる。しびれの切らした浩平は闇雲を鞘から引き抜いた。
「いい加減にしろよ・・・!」

・・・こそこそ
・・・ひそひそ
・・・人だ
・・・剣をもってるぞ
・・・からす様に知らせよう

「からす様・・・?」
しかし浩平の疑問に答えぬまま囁きは消えうせた。
「何だったんだ・・・?」
狐につつまれた思いで立ち尽くす浩平であったが、その表情にすぐ緊張が走った。

キィィィーーーン・・・・・・

闇雲が強く反応している。浩平はしっかりと柄を握った。
「本命のご到着か・・・」
浩平はにやりと笑う。

バササッ!バサッ!バサササッッッ!!!

暗闇の向こうから羽音のような、木々の葉をこする音が聞こえてくる。それも一つじゃない。

バサッ!バササッ!

黒い影が三つ、浩平の頭上を飛び囲むようにして地に降り立った。
「何用だ!人の子よ!」
浩平の中心に降り立ったそれは、山伏のような服装で人面にくちばしを持っていた。からす天狗である。
「お前が音に聞く天狗か・・・」
「質問に答えよ!何用だ!」
正面のからす天狗は言葉を変えない。
「近隣の人々に悪さを働いてるそうじゃないか・・・それとがきの命が関わってるんでな・・・お前等の魂をもらいにきた・・・・・」
浩平の言葉に正面のからす天狗は小首をかしげた。
「人々に悪さ・・・?我らは掟に従っているだけだぞ」
「己!我らに濡れ衣を着せるつもりか!兄者!食ってしまおうぞ!」
右に位置するからす天狗が吠える。それに呼応したかのように、左のからす天狗が浩平に飛びかかってきた。その手には錫杖が握られている。
「死ぬがよい!」

ブゥン!・・・ガキィン!

からす天狗の錫杖が振りおろされる。浩平は軽くそれを剣の横腹で受け止めた。
「鳥風情がいきがるなよ・・・」
「何だと!」

キィン!・・・ビュッ!ビュッ!ビュッ!

錫杖を弾き、そこから無数の斬撃を繰り出す。手足をかすめ、羽根を切り刻む。
「ぐおおおーーーっ!」
「とどめ・・・」

グサッ!

「ぐぎゃあああーーーーーーっっっ!!!」
闇雲の刀身がからす天狗の心臓を捕らえた。崩れ落ちるからす天狗。それを見て残りのからす天狗が黙っているわけではない。
「貴様ーっ!よくもーっ!」
「兄者!やってしまいましょう!」

バサッ!バサッ!

二匹の天狗は羽根を広げ飛び立つ。悠然と浩平の頭上に達した二匹は一気に急降下をかける。
「これがかわせるかーっ!」
「仲間の敵!」
勢いよく浩平に襲いかかる二匹。浩平はそれを見てせせら笑うと、膝を曲げ跳躍した。

ダンッ!

「何っ!?」
「まさかっ!?」
二匹は降下をやめ急停止し、頭上を見上げた。そこには闇雲を振り上げからす天狗達を見下ろす浩平がいた。
「甘いんだよ・・・・・・」

ズバッ!ビシュッ!

「うぎゃっ!」
「ぐわっ!」

ドサッ!ズシャアッ!

羽根を切り落とされた二匹は地に叩き付けられる。着地した浩平は闇雲を構えた。
「強い・・・お前は何者だ・・・?」
正面にいたからす天狗が苦しまぎれに問いかけた。
「伝説の破邪刀、闇雲を受け継ぎし者。そうだな若いの?」
「誰だ!?」
問いに答えたのは浩平ではなかった。

バササッ!

またも影が浩平の前に降り立った。からす天狗と同じ格好をしているものの羽根はなく、その顔は赤く鼻が長い。まさに伝承でよく聞く大天狗だ。
「何者だ・・・?」
「長!?どうしてここに!?」
からす天狗達が驚きの声を上げる。
「岩達が騒ぐのでな、覗いてみたらお前さん等が戦っていたというわけじゃ」
「長!こいつは強い!どうかあなたの力で・・・」
「待つがよい」
大天狗はからす天狗をい制して口を開いた。
「若いの、そなたはまとめし者のはず。無闇に妖怪を殺すとは思えないが・・・?」
「事情があってな・・・それに人に害をなすんじゃ黙ってられない」
浩平は大天狗のまとめし者という言葉に疑問を持ったが、それどころではないので聞きはしなかった。
「それは違うぞ。我ら天狗はこの山を守りし者。我らが制裁は掟を破った者にのみ下る。若い者はいたずらもするが命はとらん」
「どういうことだ・・・?」
話が違う。浩平はそう思った。
「我が屋敷に来い。事情とやらを申してみよ」
「長!仲間を殺されたのですぞ!」
「この者は人間にとっても、我ら妖怪にとっても大切な存在じゃ」
大天狗はからす天狗達にそう諭す。
「・・・わかった。ついていこう・・・」
浩平はちょっと迷いながらも大天狗に従うことにした。闇雲を収めると同時に、からす天狗達の視線が痛くなった・・・・・・。



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なぜなにONE猫!
何か一話分が最近短いぞ!という方。その通りです(^^;数稼ぎに入ってます
ちびみずか「ひきょうものだね」
偽善者だからね
ちびみずか「なるほど」
我ながら正論だね(^0^)
ちびみずか「へりくつだよ」
その通りで・・・さて、作品の方ですが特になし
ちびみずか「なんだよそれー!」
仕方ないだろぉー!別にたいした工夫ないんだから!戦闘もマンネリ化してるしー!
ちびみずか「つまりそれは・・・」
駄作です(^^;はうー、浩平のキャラが違うー(^^;澪出番少ないしー
ちびみずか「ぐちばっかだね」
そろそろ解説いくか。それでは!
ちびみずか「さよなら〜〜〜!」


次回ONE総里見八猫伝 大蛇の章 第十七幕「狐の奸計」ご期待下さい!


解説

からす天狗・・・天狗の一種で、鼻の代わりにくちばしをもつ。本編では大天狗より格下。

大天狗・・・本編では天狗達の長という設定。天狗自体は山の神とされたりすることが多く。中には天狗の祟りというものもある。天狗倒し等(山中に木が倒れる音がする現象)は、姿こそ出さないが天狗の仕業とされている。

こそこそ岩・・・序盤の囁きの正体。その名の通り、近くを通るとこそこそと音や声がする。本編では天狗達への連絡役のようなもの。参考資料柳國邦男「妖怪談義」