ONE総里見八猫伝大蛇の章 第十四幕 投稿者: ニュー偽善者R
第十四幕「薬の原」


越後でもさまざまな妖怪と出くわした浩平達は、五番目の国越中に入った。


浩平達はのどかな田園地帯を歩いていた。天気もよく、何となく気分もよくなる日である。だが、彼らにはそんなものは関係がなかった。
「腹減った〜・・・」
理由はただ一つ、旅費がなくなり食料もわずかと言う危機的状況に陥ったのだ。
「乾飯食べる?」
「いい・・・」
瑞佳が旅食用の乾飯を出すが、浩平は拒否した。今や乾飯も残り少ない。ここは我慢をしようと思ったのだ。
「何とかして金集めないとな・・・」
「妖怪退治でもする?」
一度、鬼を退治した時に村人からお礼をもらったことがある。しかし、妖怪に困っている人がいなければしょうがない。
「澪〜、お前座敷童なんだから福を呼んでくれよ」
自信が妖怪のため、食事はとるものの食べなくてもすむ唯一元気な澪に浩平は愚痴た。
『自由に呼べるわけじゃないの』
「つまり向こうから来るわけだな・・・」
しかし、浩平にしてみれば今来て欲しいのだ。餓死してから来ては遅い。
「ふ〜・・・とりあえず次の村で、何か恵んでもらうか・・
托鉢は僧の特権である。


「すしいません、お恵みを・・・」
慣れない浩平だが、背に腹は代えられない。村に着くとすぐに人家を訪ね、托鉢を続けていた。ある程度の食料も集まり、わずかな心ばかりも受け取った。浩平達はそれらで腹拵えをしようと木陰に入った時、三人の村人がやって来た。
「お坊様、お頼みしたいことがあるのですが・・・」
真ん中のうち、年老いた男が恭しく現れた。その身なりから村長だと判断できる。
「頼みって・・・?」
「ここでは何ですからどうぞ我が屋敷へ、粗末ですが歓迎致します」
浩平は迷ったが、今の状況で言えばいい機会かもしれない。そう判断しついていくことにした。そして三人は、とりたて大きな屋敷に連れていかれた。
「なあ、この展開はあの時と同じような・・・」
「いいじゃない困ってるみたいだから」
屋敷で浩平達は村人のもてなしを受けた。食事を平らげ、浩平達の腹も満たされた。しかし、こうなると頼みを無下に断るわけにはいかなくなってしまった。
「実はお頼みしたいこととは、妖怪を退治していきたいのです」
(やっぱり・・・)
最初から予想していただけあって、浩平は驚きもしない。
「この村では薬を作って、それを売り歩いて食いつないでいます」
越中と言えば薬処で有名である。
「数々の薬草は全て近くの野原で、採っておるのですが・・・そこに妖怪がすみつき始めたのです」
「どんな妖怪なんですか?」
「姿はわかりません。ただ、草場から石が飛んでくるのです。それもいくつもの、これでは近づくのが危険なのです」
横から瑞佳が小声で話しかけてきた。
「浩平・・・引き受けてあげなよ・・・」
「わかってるよ・・・」
浩平は村長に向き合った。
「わかりましたお引き受けします」
「おおっ!それはありがたい!」
こうして浩平は自ら戦いに赴くことになった。


早速、浩平は村人の案内で薬の採集場に向かった。瑞佳と澪は浩平が強く止めたので、村に残った。時は夜分を迎えていた。夜の方が出現しやすいからである。
「ここか・・・」
「はい。ここを越えた先に薬草の群集した平地があります。その辺りに現れるんです」
「わかった」
浩平は村人をその場に残して歩き出した。雑草は浩平の膝まで伸び、浩平の袈裟の裾を擦っていた。そして目的の採集場に近づいた時、声が聞こえ始めていた。
『来るな・・・来るな・・・ここは我が巣・・・』
「来たか・・・」
闇雲はすでに鳴動していた。浩平は鞘から抜き放つ。
『来るな・・・』

ビュッ!ビュッ!ビュッ!

暗い草陰からいくつもの飛礫が飛んできた。浩平は軽い身のこなしでかわし、かわしきれないものを剣で打ち払った。
「ちっ・・・面倒だ」
浩平は飛礫を防ぐのを止め、構わず草場に突っ込んだ。
「姿を現せ・・・!」

タン!

浩平は姿勢をかがめ、天高く飛び上がった。月光を浴び、悠然と夜空に舞う浩平。それは舞踊の神かと見紛うほどの美しさである。だが、彼は戦いの神と言った方がいいだろう。
「くらえ・・・!」

ドンッ!

上空から急降下し、浩平は草場の中心に剣を突き立てた。上空からは妖怪の姿は見えなかった。ならば正体はただ一つ。
『ぐあああああああーーーっっっ!!!』
草場全体から断末魔の声が響く。妖魔を断ち切ったのだ。


「ありがとうございました。これで変わらず薬を作っていけます」
村長は大喜びであった。その後、確認のために草場に近づいたが何も起こらなかった。
「これはお礼です。それとわずかですが村の薬をお持ち下さい」
「ありがとうございます!」
浩平達は満面の笑みで包みを受け取った。
「よかったね〜」
「ああ」
村を後にした浩平は薬の包みを開けてみた。
「あっ、いい匂いだね」
「売れるかな?」
『食べれるの?』
「駄目だよ二人共、変なこと考えちゃ」
意気揚々に道中を歩く一行を、物陰から冷たく見すえる者がいた。狐である。
「戦いには慣れつつあるか・・・」
浩平達の旅先のは数々の試練が待ち構えることであろう・・・・・・・・。




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なぜなにONE猫!
最初に一言。やばいです!ネタ切れです!主軸になる話は大丈夫ですが・・・間に挟む数稼ぎの話が尽きてます!今回は特にきつい(^^;地方の妖怪を取り上げてるものだから、制限されています。越中は・・・使えそうなのがいない!(戦闘には使えない)と、言うわけで特に分布のない妖怪を取り上げました。詳しくは解説を。
ちびみずか「ひとりでしゃべらないでよ〜」
すまん、すまん。ただ、作者の愚痴を聞いてもらおうと・・・
ちびみずか「じつりょくつけなよ」
ごもっともで(^^;えーと、すでに投稿しましたが「ONE猫大幅削減計画」を発動し、これ以降今回のような数稼ぎSSは投稿しないのでご安心を。次回は狐が絡んでくるのでお楽しみを!それでは!
ちびみずか「さよなら〜!」


次回ONE総里見八猫伝 大蛇の章 第十五幕「狐の嫁入り」ご期待下さい!


解説

シバカキ・・・今回登場した妖怪。姿については触れられてなかったので、地神主の一種とさせてもらった。資料によれば夜分に路傍で石を投げる怪物だという。参考資料柳國邦男著妖怪談義(お世話になってます)