ONE総里見八猫伝大蛇の章 第十幕 投稿者: ニュー偽善者R
第十幕「かまいたちの刃 後編」


かまいたちの流と吹を止めるため、再び戦いに向かった浩平と凪。しかし、流は自分の妹、吹を身代わりとして逃走した。そして、流は人の首を斬るため市に向かった。


バサ!ザザ!
浩平は林の中を懸命に走っていた。流を止めるために。しかし、闇雲の力を借りて全力で走るものの、かまいたちの速さにはほど遠い。
『遅いぞ!』
「こっちは全力で走ってんだ!」
先を行く、凪がたまりかねたように立ち止まった。
『仕方ない・・・わたしの背に乗れ』
「大丈夫か?」
『人一人ぐらいならな』
浩平は自分よりも一回り小さいぐらいの凪の背にまたがる。不安定だが乗れないこともない。
『行くぞ!』
「ああ!」
彼らは流を追い、夜の風となった・・・・・。


ズササササササササササササッッッ!
一方、流は市目指して街道を走っていた。その瞳は狂気に燃えている。
『殺すぞ・・・人間共!その首を切り、その腹をえぐり、その手足をばらばらにしてやる!』
すでに夜明けは近づこうととしていた。流は人目に姿をさらそうとも、構ってはいなかった。見たもの全て殺せば良いのだから。
『いた・・・!』
流にとっては運よく、行商人には運悪く、市での最初の犠牲者が現れた。多分、これから家へ帰るところだったのだろう。
「な、何だ!?」
シュッ!
商人は流の姿を確認することもなく、頭を割られ絶命した。
シュパッ!ザシュッ!
流は戸板や東屋の柱等、お構いなくぶった切る。
『出てこい、人間共!そのあさましき姿をさらすがいい!』
流は咆哮した。そして、騒ぎに顔を覗かせた人間に、浩平との戦いで失った右腕の鎌の代わりに、もう一方の鎌を光らせた。
ザザザッ!・・・バシュッ!
「うぎゃあ!」
また一人、人が倒れた。それを見もせず、流は次の獲物を探す。そして、見つけた。道端に立ち尽くす幼子。その表情には恐怖すら現れていない。周りの状況が掴めていないのだ。流はにやりと笑い、子供に近づく。
「やめろぉぉぉぉぉーーーーーーーっっっ!!!」
『来たか!小僧!凪!』
山の方角から凪にまたがった浩平が向かってくる。浩平は闇雲を抜き、凪から飛び降りた。そして、そのまま流に飛びかかる。
「いい加減に・・・しろ!」
バキィィィン!
浩平の振りおろした斬撃を、流が鎌で受け止める。凪はその間に、倒れた人間の手当てに向かう。
「これ以上人を殺すな・・・!」
『貴様に俺の気持ちがわかるか!』
シュアッ!
「ちぃっ!」
流の弾いた鎌が浩平の頬をかすめた。
ザザザッ!
流は得意の速さで浩平の周りを回って撹乱する。
「同じ手は・・・食わない!」
ドグッ!
『ぐあっ!』
後ろから斬り掛かった流の前足に、振り向きざまに繰り出した浩平の突きが突き刺さる。流は後ろによろめいて倒れた。浩平はその首に剣を突きつける。
「もう止めろ・・・」
『くっ、くっ、くっ・・・笑わせる』
追い込まれたはずなのに、流はかしそうに笑った。
「何がおかしい?」
『まだ世の中の状況がどうなっているのかわからんようだな。剣の継承者のくせに』
「何だと・・・?この剣のことを知っているのか?」
流の言葉を聞いて、浩平は眉間に皺を寄せた。その時、凪も駆けつけた。
『兄さん!』
『凪はまだ百数十年しか生きてないからな。その剣のことは知るまい』
浩平は流の言葉の意味がわからなかった。何故、妖怪の流が闇雲のことを知っているのか。
『小僧・・・その剣のいわれを知っているか?』
「少しはな・・・」
『その剣の復活が、大妖の復活を意味するのは知っているだろう?』
「ああ」
『なら、なぜ我ら妖怪が狂暴化するかわかるか?』
「まさか・・・」
浩平は流の言わんとすることが見えてきた。今まで大人しかった流や吹が人を殺すようになったり、浩平が頻繁に妖怪と出くわす理由だ。
『大妖は邪悪の意志の固まり、それから発せられる妖気は我ら妖怪を狂わすのだ・・・』
『兄さんそれじゃ・・・』
『くっ、くっ、くっ・・・今も俺の頭でうずまいているぞ!狂気の蛇がなぁ!それには逆らうことができんのだ・・・!』
流は泣いていた。自分の意志が狂わされ、人を殺した悲しみに。そして、今も彼を支配しようとする狂気に耐える苦しさに。
『凪よ・・・、お前は希望だ!俺や吹のことは忘れろ・・・!お前は使命を持っているのだ!』
『兄さん!』
『小僧・・・!凪を頼むぞ!』
それが流の最後の言葉であった。
「!?」
ブシュッ!
『に、兄さーーーん!!!』
流は自ら首もとに闇雲の刃を押し当てた。吹き出す鮮血。がっくりと崩れ落ちる流の体。
「そ、そんな・・・」
浩平は闇雲を手から離し、がっくりと膝をついた。凪はすでに抜け殻と化した流を抱きかかえる。
『ううっ・・・どうして!どうして!』
涙を落とす凪であったが、流の体はわずかな時で風に消えた・・・・・・・。


「いいの?浩平」
「ああ・・・」
流との戦いから一夜明け、ゆっくりする間もなく浩平は旅立った。凪は涙を枯らして言った。『もう少し、心を落ち着かせたい』と、浩平は反対しなかった。一度に大切な家族を失ったのだ。心の傷は深いだろう。そして、続けて凪は『必ず助けになる』とも、凪は大妖を倒すことに協力をしてくれるらしい。
『暗い顔しちゃ駄目なの』
「わかってる・・・」
澪に対して、ぎこちなく笑う浩平。そして、今更ながらに自分の運命を呪った。浩平はこれからも妖怪の命を奪い続けるであろう。そして、深い悲しみを覚えるのだ。だが、そうしなければもっと多くの人の命が消える。それを防ぐには妖怪を殺さなければならない。それはつらいことである。
「さ、先を急ごうか・・・」
浩平が促すと、後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「浩平、あれ!」
「ん・・・」
瑞佳の差す方向から繭が走ってきた。その手には何か包みを持っている。
「はあっ!はあっ!・・・」
繭は全力で走ってきたのか、荒い息をついて浩平達の前で止まった。
「どうしたの?繭」
「み、みゅ〜・・・これ、お母さんから」
そう言って、瑞佳に包みを手渡す。
「何だこれ?」
「おにぎり」
「ありがとうね、繭」
瑞佳は繭の頭を撫でてやる。
「おにいちゃんたち・・・またあえるよね?」
「もちろんだ」
浩平は笑顔で答える。
「みゅ〜、よかった!」
「繭も元気でね」
「みゅ〜!」
『また遊ぼうなの』
「みゅ〜!」
「凪に・・・よろしくな」
「みゅ〜!」
そして、再び浩平達は歩き出した。繭はその背中を寂しそうに眺める。
「みゅ〜!元気でね〜!」
「ああ!」
浩平は手を振って答える。繭は彼らが見えなくなるまで、そこに立っていた・・・・・・・・。




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なぜなにONE猫!
あれ!?今回はすんなりかけたぞ!?
ちびみずか「じぶんでおどろかないでよ」
さて、解説は後にするとして・・・何かドラマっぽくなったかまいたち編!いかがでしたでしょうか?はっきり言ってONEのムードゼロ(^^;前からないけど・・・。さらにうしとら・・・話はやっと十分の一まで来た所でしょうか。ちなみに現在倒した妖怪は九匹。まだまだじゃ〜ん!
ちびみずか「こまってるでしょ」
うう・・・自分でやってて辛い・・・。しかも幕数間違えるわ、時代設定間違えるし・・・西暦と世紀は一つ違いだったの忘れてた(TーT)
ちびみずか「いいんちょさんにつっこまれたしね」
訂正とおわび送ったら後に、感想読んだらそのものズバリ(^^;訂正すらおそし(TーT)
ちびみずか「なきまくりだね」
泣くよ・・・ほんと、最近ネタ切れだし。みずか「ほんとないている」
えーい!泣いていていてもしょうがない!頑張るぞ〜!それでは!
ちびみずか「さよなら〜!」


次回ONE総里見八猫伝 大蛇の章 第十一幕「呪いの炎」ご期待下さい!

解説

大妖の妖気・・・これが流やその他の妖気を狂わせた原因である。この妖気は邪悪の意志で、妖怪達を狂気で支配してしまう。これにより、人間に対する殺戮衝動、性格の暴力化、さらには同族すら殺してしまうという残虐性を与えてしまう。だが何故、澪や凪が支配されないかというと、座敷童は元々家の神が具現化したもので、つまり妖怪ではない。それで妖気の影響を受けないのだ。それでは妖怪の凪についてはどうか、これには繭が関係する。凪は長く繭とつきあっていた。ここがポイントである。しかし、これ以上はまだ公表できない。(今後の展開に関係するため)だいぶ後(ほんとまじで後)の話になるであろうが、心に留めておいて欲しい。