ONE総里見八猫伝大蛇の章 第七幕 投稿者: ニュー偽善者R
第六幕「地蔵通り」


陸前の妖怪退治を終え、浩平は新たに座敷童の澪を仲間に加えた。そして彼らは三番目の国、磐城の国に入った。


「どうするかな〜」
「どうしよう〜」
『どうしようなの』
道中彼らは休憩も兼ね、地図を広げていた。地図と言っても、この近辺の様子が書かれているだけで正確ではない。それでも土地勘のない彼らには、他に頼るものはない。
「ここを通ればすぐ岩代に入れるんだけどな〜」
「でも・・・」
『お化けがでるの』
妖怪の澪が怖がるのも変だが、彼らはこの先の道を通るか通らないかで悩んでいた。この道は地蔵通りと呼ばれていて、その名の通り地蔵が並んでいる。そして周辺の村人にはもののけが出る坂として恐れられていた。
「東海道に入ったら遠回りすぎる。ここを通ろう」
「うーん・・・」
『怖いの』
「だーめ」
浩平に押し切られて、結局地蔵通りを通ることになる一行。彼らを不可思議な世界が待っていた。


「何か気味悪いね・・・」
地蔵通りは昼間なのに、うっそうと生い茂った木々に日光がはばまれ薄暗い。人気もあるはずがなくかなり不気味だ。
「大丈夫だって、こいつも何も感じてないし」
浩平は闇雲を指していった。浩平は自分で言った言葉にあることに気付いた。
(あれ?澪も妖怪だよな・・・?)
澪も妖気があるはずなのに、闇雲は何も反応しない。どうやら善悪を判断しているらしい。浩平がそう割り切った時、噂の地蔵達が見えてきた。
「うわ〜、すごいね〜」
瑞佳が感嘆の声を上げる。無理もない、道の両脇には大小さまざまな地蔵達が、十数体が無表情に並んでいる。かなり不気味だ。
「こんなとこさっさと抜けちまおうぜ」
『そうなの』
一行は足早に地蔵通りを抜けた。


「おかしい・・・」
それから小一時間ほど歩いて、浩平達に疑問が覆いかぶさった。
「ここ・・・さっき来たよね」
『来たの』
どうも風景が同じに見えるのだ。しかし、そんなことはありえない。なぜなら彼らは一本道を進んでいたからだ。脇道もない。
「もう少し歩いてみよう。きっと似た風景なんだよ」
そうはいいつも、浩平も首をかしげた。そして、彼らの目の前にがく然とした事実が見せつけられた。
「嘘だろ・・・」
「こ、これって・・・」
『怖いの』
そこには先ほどの地蔵達が並んでいた。浩平達に恐怖が走る。
「走るぞ!」
浩平はそう叫び、全力で走り始めた。瑞佳と澪も続く。浩平は後ろも見ずに走っていたが、瑞佳の声がかかった。
「こ、浩平!う、後ろ!」
「?」
浩平が後ろを振り向くと、信じられないものがあった。地蔵達が追ってきているのだ。表情を変えずに、跳びはねるように。しかも早い。
「うわああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」
浩平の血の気が一瞬引いた。
「瑞佳!澪!もっと早く走れ!追いつかれるぞ!」
「無理だよ!」
『息があがってるの』
「しゃあねえっ!」
浩平は足を止め柄に手をかけた。
「まとめてやってやる・・・」
闇雲を抜き放ち構える。そうしている内に地蔵達は追いつく。浩平は先頭の一体に狙いを定めた。
「この・・・!」
浩平は地を飛び、突きを繰り出した。
ガキッ!
堅いものがぶつかる音がして、地蔵の頭が落ちる。しかし、胴体の動きは止まらない。
ドカッ!
「うわ!」
浩平は先頭の体当たりを食らう。続けて、数十体の地蔵が襲ってきた。
ドカッ!ドカッ!ドカッ!
地蔵達が通った後のには、ところどころ出血した浩平が倒れていた。
浩平は剣を杖にして立ち上がる。
「くそ・・・ふざけやがって・・・!」
浩平の瞳は怒りに燃えていた。だが、浩平はある盲点に気付いた。
(闇雲が何も感じていない・・・?)
闇雲は地蔵達に対して何も反応していない。つまり、地蔵達は妖怪ではない。だとしたら?
「そうか!」
浩平は真相をつかみ走り出した。


「はあ、はあ、はあ・・・もう駄目・・・」
『もう疲れたの』
二人の体力は限界を迎え、ついにへたり込んでしまう。その二人に地蔵達が襲いかかろうとしていた。
「きゃあああぁぁぁっっっーーー!!!」
『食べられるのなの!』
地蔵に口がるのだろうか?と、疑問を抱かせる澪だが、後ろから浩平も追いついた。
「だあーーーーーーっっっ!」
鬼神のごとき速さで、地蔵達を駆け抜ける。七、八体の地蔵が崩れ落ちた。
「浩平!」
「お前等、後ろに下がってろ・・・」
浩平は静かに言うと闇雲を地面に突き立てた。
「妖の源を示せ・・・俺はそれを討つ・・・!」
闇雲が地蔵に反応しない理由。それはただ一つ、地蔵を操る黒幕の存在である。これだけの数の地蔵を操っているのだ、呪源は近くに違いない。そして、ゆっくりと闇雲は倒れる。地蔵は今まさに浩平の目の前に達していた。
「そこかぁっ!」
浩平は闇雲を拾い、剣の指し示す方向、木々に隠れた一本の樹木に投げつけた。
ギー!
そんな叫び声と共に、地蔵も動きを止めた。
「ど、どうなったの?」
「もう大丈夫だ」
『危なかったの』
ギュ
澪は浩平の首に抱きついてきた。浩平は澪の頭を撫でてやる。それから闇雲の回収に向かった。そこには闇雲が突き刺さり、樹木の幹に縫い付けられた狸がいた。あしまがりだ。
「何?これ」
「地蔵を操って人を襲ってたんだろう」
浩平は闇雲を引き抜き鞘に納めた。
『見てなの!』
澪が道の方を差した。つられて見ると、道は直線ではなく大きな曲線を描いている。回り道だったのだ。そして、今までみえなかった道もあった。
「なるほどあやかしか」
草むらを抜け、三人は今までとは違う道を進んだ。四番目の国、岩城はもうすぐであった・・・・・・・。



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なぜなにONE猫!
ちょっと異色。
ちびみずか「おじぞうさまをこわしたらばちあたりだよ」
ふん、そんなものがあるわけがなかろう。
ちびみずか「さっきのんでたバナナ・オレしょうみきげんきれてたよ」
何〜!あっ!?ほんどだ、一カ月も切れてる!て、天罰だ・・・・・。
ちびみずか「ふちゅういでしょ・・・」
ぐああああぁぁぁっっっ!!!腹が〜〜〜〜!!!
ちびみずか「え〜、だれもいなくなったのでさよなら〜!」

次回ONE総里見八猫伝 大蛇の章 第七幕「狐払い」ご期待下さい!

解説

あしまがり・・・正体を見せず、綿を旅人の足にまきつけて苦しめていた。狸の仕業だと言われているが、確証はない。本編では設定を変えて、地蔵をあやつるというものにした。参考資料、柳田國男著「妖怪談議」