ONE総里見八猫伝大蛇の章 第五幕 投稿者: ニュー偽善者R
第四幕「鬼の屋敷 前編」


水神との戦いを終え、浩平と瑞佳は二つ目の国境を越え、陸前に入っていた。


「どうしよ〜、もうお金なくなってきてるよ?」
「う〜ん・・・」
陸前に入ってすでに三日、由起子からもらったわずかな餞別も、すでに残り少なくなってきていた。都までの旅費は足りなくなったら、自分で調達するように言われていたが、いざこういう状況になるとつらい。
「そうだ、お前を身売りして金を稼ごう」
浩平が冗談とも本気ともつかない口調で提案した。
「ええ〜!?わたしだよ、わたし!わたしなんか、売れるわけないよ〜!?」
「いや、わからんぞ。世の中は広いからな」
「でも、浩平はどうするんだよ?一人で旅をするの?」
「いや、どこか貴族の娘と恋に落ちて、そのまま・・・」
「はあ・・・そんな馬鹿なこと言ってないで、早く対策練ろうよ・・・」
「そうだな」
浩平は現実に戻り金の工面を考え始める。一方で、こんなことを考えていた。
(う〜ん・・・どうも瑞佳と話しているとこうなる・・・)
いろいろ提案が出るが、どれもぱっとしないまま二人は次の村に着いた。大蛇の戦闘以来、野宿が続いていたので二人は早めに宿を決めることにした。しかし、村の雰囲気に二人は戸惑った。
「何だろう?」
「さあ・・・」
村の家々はかなり大きい家が多い。しかし、どこかひなびた雰囲気を漂わせていた。言ってみれば落ちぶれた感じなのだ。とりあえず二人は最初の家の戸を叩いた。
「すいませ〜ん!一晩の宿を借りたいんですけど〜!」
しばらくの間の後、家人の男が出てきた。
「はい・・・」
「すいません宿を・・・」
「おおっ!?これは、おぼうさま!噂を聞きつけて、わざわざおいでくさったのですか!?」
家の者は浩平の姿を見るなり、驚きの声を上げた。
「はっ、あ、あの?おぼうさま、てっ?」
「浩平のことだよ」
どうやら浩平の袈裟を見てそう判断したらしい。
「いや、俺剃髪してないし、大体僧でも何でも・・・」
「ささっ!すぐに中へ!今村の者に知らせます!」
そう言って、家人は外に飛び出した。
「一体、なんなんだ?」
「う〜ん、歓迎はしてくれているみたいだけど・・・」
こうして二人は村中のもてなしを受けることになった。


「さあ!折原様!どうぞ一杯!」
「あ、もうやばいんですけど・・・」
村人に酒をついでもらう浩平、すでに何杯飲んだことか。
「なあ瑞佳・・・どうするんだ・・・?」
「そ、そんなこと言われても・・・何か困ってるみたいだけど・・・」
二人は村人に聞こえないよう小声で話す。
「いや〜、もう駄目かと思いましたよ。あの屋敷の妖怪共のせいで、守り神様が怖がってしまって・・・」
村人の口から気になる言葉が出た。
「妖怪?守り神さま?」
「ええ、しかし、もう安心です!折原様が来てくれたんですから!ささ、もっと飲んで!」
「あ、ちょっと・・・」
浩平の願いはむなしく、浩平は酔いつぶれることになった。


翌日。二人は村の離れに位置する、古い屋敷の前に立っていた。
「あ〜、頭いてえ・・・」
「お酒なんかのんじゃ駄目だよ」
事情がつかめないまま流された二人だったが、何とか村人の希望はわかった。この村には行商から成り上がった商人の屋敷があるそうだ。この村はその屋敷のおかげでずいぶん繁栄したらしい。だが、その繁栄には秘密があった。その屋敷には座敷童がいたのだ。しかし、近年になって、その屋敷には他の邪悪な妖怪が住みつき始めたらしい。そのせいで、座敷童が怖がって姿を隠してしまったらしい。そして今の衰退にいたる。
「ちくしょ〜、断りきれなかった・・・」
「しょうがないよ。それに人助けはいことだよ」
瑞佳の説得で少しは浩平はやる気が出てきた。そして、門の前に立ち、ゆっくりと門を開く。
ギギギ・・・
木のきしむ音とともに、辛気くさい空気が流れてくる。中に入ると、昼間なのに真っ暗だ。いかにも妖怪が住みそうである。予想通り、闇雲が反応した。
「いるな・・・近くに、瑞佳お前は外にいろ」
「えっ、わたしもいくよ」
「駄目だ」
強い調子で浩平は止めた。
「・・・わかったよ。でも危険になったらすぐ戻ってきてね」
瑞佳は不満そうにしながら、浩平を笑顔で送り出した。
浩平は屋敷の中へ足を踏み入れた。妖怪がいるのは多分奥の部屋だ。闇雲がそう浩平に教えていた。それを何となく浩平は理解していた。一つ目の障子を開ける。二つ目、三つ目と奥に近づくたび妖気は濃くなる。
グイ
「うわわっ!?」
突然袖を引っ張られ、浩平は驚いて飛びのいた。そして無意識に柄に手をかける。
「よ、妖か!?」
えぐ、えぐ・・・
「?」
そこにいたのは不気味な妖魔でもなく、鬼でもなかった。瞳をうるませた泣き顔の少女であった。
「何だ、お前?何でこんなところに?」
ギュッ!
「うわっ!」
少女は何も言わず、浩平の首に抱きついてきた。
「なんなんだよ!」
浩平はとりあえず少女をひきはがした。浩平の思考には少女が妖怪であるという説はなかった。闇雲も反応していないし、何よりどう見てもこの憶病な少女が邪悪な妖魔に見えない。
「?・・・お前が噂の座敷童か?」
浩平の言葉に少女はうん、うんとうなずいた。
「なるほど・・・ここにいる理由はわかった」
『助けてなの』
それは聴覚ではなく、浩平の頭に響いた。どうやら思念を伝えることができるらしい。
「なあ、ここには一体何がいるんだ?」
『怖いお化けなの』
「お前も妖怪だろ・・・」
いまいち話しがつかめない。
「ところで名前はあんのか?」
『澪なの』
「そうか俺は浩平だ。とりあえず澪、ここは危険だ。外に出てろ」
だが、澪は首を振ると答えた。
『結界のせいで出れないの』
「結界?誰がそんなものを」
『前の家の人』
澪がそう答えた時、闇雲が鳴動を始めた。
「来る!」
浩平は咄嗟に身構えた。澪は浩平の背に隠れる。そしてわずかな間の後、
ケケケ!・・・シュッ!
笑い声とともに、黒い影が降ってきた。浩平は闇雲を抜きながら、後ろに下がった。
「てめえがここの妖怪か・・・」
浩平の目の前にいるのは、人間の子どもくらいの子鬼がいた。枕返しだ。
ケケケ!
枕返しは笑いながら爪を光らせた。
「なめるな・・・!」
浩平は突進し間合いを詰めると、剣を横になぎ払った。それを枕返しは軽々と跳躍しかわす。
「くっ、すばしこいやつめ!」
浩平の背を取った枕返しは、そのまま爪を振りおろした。
シュッ!
「ちっ!」
浩平の腕を爪がかすめた。赤い鮮血が飛び散る。
クケ!
枕返しは再び跳躍し、襲いかかる。
「てめえ・・・調子に乗るな!」
ズバッ!
目にも止まらぬ速さで浩平が剣を払う。
ボトッ
屋敷の畳に枕返しの首が胴体と離れて落ちた。浩平はそれを確認して闇雲を鞘に納めた。そして澪の方を向いて言った。
「退治したぞ。これで安心だろ」
だが澪は相変わらずおびえた表情だ。
『まだなの』
「まだ?」
その時、床下から地響きが鳴り始めた。
「な、何だ!?」
『ここの主なの!』
ドガアアアアアアッッッ!!!
浩平の真下から巨大な腕が、畳を突き破り現れた。それは浩平の足を握りしめると投げ飛ばした。
「ぐああああっ!!!」
ズガアアアアアアッッッ!!!
壁に叩き付けられた浩平は、痛みにうめきながらも意識を失った。意識を失う直前、浩平は誰かが呼ぶ声が聞こえた・・・・・・。



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なぜなにONE猫!
ONE猫初の二話編成!
ちびみずか「100わにはほどとおいね」
悟ったような顔をするな・・・こっちは妖怪考えるだけで大変なんだ。
ちびみずか「ねえ、やっとめいんきゃらがでてきたけど、なんでざしきわらしなの?」
ピッタリだろ(^^)
ちびみずか「そうかな〜、ファンにころされるよ」
そういうこといわない・・・怖いだろ。
ちびみずか「じかいは?」
後編もやはり戦闘ばっか(^^)(ただし、今のところは、そのうちネタがなくなるでしょう)それじゃ、次回までさよなら〜!
ちびみずか「さよなら〜!」

次回ONE総里見八猫伝 大蛇の章 第五幕「鬼の屋敷 後編」ご期待下さい!

解説

座敷童・・・家の神が子供の姿になったもの。家にすみつき、幸福をもたらす。ただし、でていくとその家は不幸になる。本編では澪を起用。会話は澪の思念が相手に流れるという設定。特技として壁抜けを使うようにもしている。リボンの代わりに紐。

枕返し・・・ゲゲゲの鬼〇郎のEDに出てくる妖怪。覚えている人も多いだろう。いたずら程度のことしかしないが、本編では狂暴化。原因は一体?