ONE総里見八猫伝大蛇の章 第一幕 投稿者: ニュー偽善者R
第一幕「古代の剣」


時は七世紀初頭・・・京を都とし、仏教文化が栄えていた頃。朝廷の力が全国に及んでいても、争いは絶えることはない・・・・・・。しかし、人の力は弱いものだ。大自然にあがらうこともできず、所詮は神頼みである。そして・・・未知の妖魔にも・・・・・・・。


ここは東山道の奥、陸奥の国。その山奥にある山寺がある。山寺と言っても、大規模なもので都の僧院に等しい大きさである。ここでは十数人以上の僧が寝泊まりし、日夜修業していた。ここにある一人の少年がいた。名は折原浩平と言う。
「ふあ〜あ・・・あ〜、だり〜・・・修業かったり〜な」
彼、折原浩平はあくびをして、寺の屋根で寝転がり日なたぼっこしている。春の日差しが眠気を誘う。浩平はこの山寺、駄世門宗乙音寺に預けられている修業僧である。しかし、剃髪をせず袈裟すら着ていない。浩平は幼い頃から、伯母が住職を務めるここで過ごしているが、別に仏門に入ったわけではない。それでも、伯母の由起子の命じで体術や法力を学んでいた。しかし、体術は得意なのだが法力はからっきし駄目であった。
「こうへ〜い!そこにいるんでしょ〜?」
下から声が聞こえてくる。
「ちっ・・・あいつか」
浩平はうんざりした顔を見せた。ここは誰も知らないさぼり場所であった。浩平の居場所を知ることができるのは、一人しかいない。
「浩平!いるんでしょ!修業の時間だよ!」
「うるさいな〜・・・何だよ!瑞佳!」
浩平は相手の名を呼びながら、屋根から顔を出した。
「も〜、またさぼってるぅ〜」
呆れ声の彼女は、浩平の幼なじみの少女である。このこの乙音寺の近くの村の娘であるが、よくここに遊びに来て浩平と過ごしていた。そして、体術はやっていないが法力を学んでいた。穏やかな性格のせいか、治癒等の攻撃以外の法力が得意であった。
「俺には法力はむいてないよ」
「浩平はたださぼりたいだけでしょ。そうそう、上僧様が呼んでたよ」
「髭か・・・」
浩平はめんどくさそうに立ち上がり、地へ降り立った。髭とはここの上僧の愛称で、修業僧に武術全般を教えていた。浩平は説教を予想し、髭のいる部屋に向かった。


「んあ〜、きたか」
いつもの間延びした声。これから怒りは感じられない。
「何でしょうか?」
「んあ〜、わたしはあんまり強制する気はないんだがな、あんまりお前がなまけているので、他の僧のしめしがつかんのだ。そこで・・・」
「そこで?」
「蔵の掃除をしろ」
きっぱりと言い放つ髭。
「えっ・・・」
髭の言葉に絶句する浩平。浩平は掃除が大嫌いであった。そしてここの蔵は・・・


「ぐあ〜〜〜〜!!!なんなんだ!この蔵の広さは!」
乙音寺の蔵はそこらの蔵の広さを、はるかに凌駕する。ここの寺は歴史は古く、蔵にもたくさんの古物が埋もれている。
「くそっ・・・瑞佳め、村に戻りやがって!」
浩平は悪態をつくが、状況は変わらない。仕方なく書物等を運ぶがその量は半端じゃない。そして、疲れが見え始めた時・・・
グラッ・・・ドドドドド!!!
「おわあああああああ!!!!!!」
バランスを崩し、浩平は山積みの本を崩した。そして骨董品の山に突っ込む。
「いててて・・・ん?何だ?この扉」
浩平は蔵の床に、戸があるのを発見した。浩平はそれを開いた。
「階段だ・・・」
そこは地下に繋がっていた。どうやら地が掘られてできているらしい。
「何かありそうだな」
浩平は暗い地下へと降りた。もちろん暗くて何も見えない。しかし、しだいに目も慣れ視界も見えるようになってきた。
「壺だ・・・」
地下は正方形に掘られていて、その中心に陣が敷かれ壺が置かれていた。それには札が張られている。いかにも何か出てきそうである。さらに浩平は奥に神棚があるのを発見した。
「何でこんな所に?」
浩平は不思議に思って近づいた。神棚には一振りの刀が納められていた。
「うわぁ〜、この剣古そう〜」
浩平の言うとおり、剣はかなり古く形も見かけないものであった。鞘は大陸製であろうか?浩平はそれを手に取ってみる。
ゾク!
その瞬間、浩平の背筋に悪寒が走った。
「うっ!?」
浩平は咄嗟に剣を放した。
「気味わり〜・・・」
浩平は後ずさりをするが、後ろを確認していなかった。そして、その先にあったものは・・・
ゴン!
「うわっ!」
浩平は壺にぶつかり、転倒したそして壺の上に覆いかぶさる。
ガチャン!
「やべっ!」
見事に壺は割れる。そして慌てて飛びのく浩平が見たものは・・・
シュウウウウウウウウ・・・・・・・・
壺から黒い影が吹き出し、やがてそれは一つの形となった。
「な、何だこいつはーーーー!?」
浩平の目の前に現れたのは、天井につくほどの巨大な蜘蛛であった。
キシャアアア!!!
奇声を発し、大蜘蛛の前足の爪がきらめく。
シュパッ!
「ぐあっ!」
浩平は吹き飛ばされ、胸元がザックリと裂けた。血がどっと吹き出す。
キーーー!!!
大蜘蛛は光を求めて、階段を登る。もちろん床をつきやぶり、地下は崩れた。
「な、何だ!?この妖(ばけもの)は!」
外では大騒ぎとなる。突然の妖怪の出現に、修業僧達は慌てふためく。
キシャアアア!!!
「うわっ!」
「ぎゃっ!」
次々と大蜘蛛の餌食となる僧達、そこに髭や他の法僧が駆けつけた。
「むうっ!?まさか壺の封印が解けたのか!?」
「しかし、あの封印は後三百年はもつはず!」
「今はそんなことを言っている暇はない!」
そんな僧達にも大蜘蛛は迫る。髭達は術の行使に入るが、それは遅い。
キーーーーーー!!!
大蜘蛛が口から糸を吐き出した。それはもちろん強力である。
「ぬうっ!」
髭達はその餌食にかかった。大蜘蛛は男共に興味はないのか、新たな獲物を探し始めた。その標的になったのは・・・
「な、何?これ・・・」
瑞佳である。再び寺に来た瑞佳であるが、運が悪い。
キシャア!
「きゃーーーーーー!!!」


(くっ・・・いてえぜ・・・・・・)
浩平は痛みで気絶することも、動くこともできなかった。
(最悪だな・・・)
キーーーーーン・・・
その時、何かが鳴る音が響き始めた。
(な、何だ・・・?
『我を掴め・・・我を振るい妖魔を討つのだ・・・』
それは浩平の頭に響いた。
(剣か・・・)
浩平は無意識の内に剣に手を伸ばした。その瞬間。
『我は闇雲・・・妖魔の血を吸い闇を討つ剣・・・・・我の守護を受け我を導け・・・』
浩平の体に力が湧いてきた。


一方、大蜘蛛の魔の手は瑞佳に迫っていた。
キイィィ!
ゆっくりと近づく大蜘蛛の爪。
「こうへーーーい!助けてーーー!」
勢いよく振りおろされる前足、あわや瑞佳を捕らえるかと思われた瞬間。
ギーーーー!!!
大蜘蛛の今までと違う奇声をあげた。それは悲鳴のようである。そして切り落とされた前足が落ちた。緑色の体液が飛び散る。
「浩平!」
瑞佳の喜び声、その声の先にいたのは浩平である。その手にはあの剣が抜き身で持たれている。
「妖(バケモノ)が、そいつには手を出させないぞ・・・」
浩平は剣を構えた。
キシャアアア!
それに答えるかのように、大蜘蛛も奇声を発する。
「はあっ!」
先にしかけたのは浩平であった。地を駆け間合いを詰める。そして剣を目の高さから突きを入れる。
キイ! シュッ!
しかし、浩平よりも一瞬早く大蜘蛛の爪が襲った。
「うわっ!」
浩平は剣の横腹で受けるが、力負けをしてふっとんだ。
キーーーーー!!!
「いかん!糸がくるぞ!」
髭の声が飛び、同時に糸が吐き出される。浩平はそれに呑み込まれるかと思われたが・・・
シュパッ!
「この程度!」
浩平は刀を振り回し、糸を断ち切る。それを見て髭はつぶやいた。
「ま、まさか・・・闇雲の封印が・・・復活したのか?」
一方、浩平と大蜘蛛の戦いは大詰めを迎えていた。
「ふううううぅぅぅぅぅぅぅ!!!」
ギッ!
大蜘蛛の爪が浩平の心臓に迫る。
ダッ!
浩平は跳躍、いや翔んでかわした。八メートルは飛んだであろう。
「死ね・・・」
ザンッ!
キイイイイイイイ!!!!!
浩平は剣を大蜘蛛の眉間に突き立てた。大蜘蛛は苦しみ、暴れ回る。
「・・・・」
皆がその様子を見守る中、大蜘蛛はどんどんしぼんでいった。そして、煙を立てながら溶解しついには地面に溶け込む。
「化生め・・・」
残っていたのは大量の針だけであった。
「瑞佳!」
浩平は瑞佳に駆け寄り、その体を抱えた。
「大丈夫か?」
「うん。でも、浩平一体どうしたの?」
「いや、俺にもよくわからないんだが・・・・」
「折原」
後ろから糸の呪縛から解かれた髭が声をかけた。その声はいつになく真剣だ。
「あの剣を抜いたのか・・・?」
「え、ええ・・・まずかったですか?」
「すぐに住職の御前に来い!」
「ちょ、ちょっと!?」
髭は浩平の手を取り、強引に引っ張る。浩平は引きずられながらも無意識に剣を拾っていた・・・・・・・。



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〜SS放送室〜
ぴーん、ぽーん、ぱーん、ぽーん!
ちびみずか「おしらせしまーす!ことしからぎぜんしゃZのHNがかわりました〜!ほんにんいわく、『ニュー偽善者は伊達じゃない!』だそうでーす!Rのいみはよくわかりませんでした〜。でも、わたしにとってきけんだということはよくわかりました。それではことしもぎぜんしゃともどもよろしくおねがいしまーす!それではなぜなにONEねこ!いってみましょう〜!いじょう、えいえいんはあるよのちびみずかからでした〜」
ぴん、ぽん、ぱん、ぽん・・・

注・・・正月特別SSではZのままですが、あれはリーフ図書館のことを考慮したためです。

〜なぜなにONE猫!〜
あけまして!
ちびみずか「おめでとうございま〜す!」
新年とともに、一番乗りを狙って投稿(成功するといいな〜)して始まりました!ONE総里見八猫伝!タイトルはきにしないでね(^^)
ちびみずか「このコ〜ナ〜ではかんそうとかいせつをするよ!」
まずはこの作品の主題!
ちびみずか「なになに?」
この作品の始まりは、犯科帳のあまりの不出来さに俺が暴走、納得のいくものをつくるんだ〜!と、かなり真剣です!
ちびみずか「いつまでつづくんだか・・・」
前作のようにハイペースにいかず、かなり計画を練っています
ちびみずか「さくひんのせっていは?」
時代は平安、舞台は日本全国(^^)
ちびみずか「すごい・・・」
敵は妖怪と、深く考えないように倒しまくっていきます
ちびみずか「テーマは?」
妖怪と殺陣と愛(^^)
ちびみずか「あい?」
そう!愛だ!あのことあんなことや、こんなことを・・・
ちびみずか「するわけないでしょ!」
ふっ、愛は一つとはかぎらないのさ・・・
ちびみずか「かってにいってなさい・・・さて、そんなこんなではじまりましたONEねこ!」
かなり長くなるでしょうが、ごつきあいください!
ちびみずか「それじゃ〜ね〜!」

次回ONE総里見八猫伝 大蛇の章 第二幕「旅立ち」

追伸・・・『うしお〇とら』の影響が見られますが、大目に見てください(^^)

解説・・・作品中の妖怪等を解説します。

>大蜘蛛
大陸の妖怪で、最初はただの蜘蛛であったが、ある時針を食べて大きくなった。さらに針を食べ続け、いつしか人を襲うようになる。本編では、昔壺に封印されて寺に納められていた。

>駄世門宗(だよもんしゅう)
全国で妖怪退治を専門とする密教。一般にはその存在は知られていないが、その根は深い。乙音寺は法僧の教育、鍛錬を主とし、闇雲を守ってきた。