浩平犯科帳 第三部 第九話 投稿者: 偽善者Z
浩平犯科帳 第三部 第九話「激戦」 


ツカツカツカ・・・・・・
足音と共に近づいてくる金色の瞳。灯火の元にその身をさらした時、お七と詩子はその正体を知った。
「まさか・・・晴香さん!?」
詩子は晴香の姿を見て声を上げた。自分達を助けてくれるはずの晴香が、今こうして殺気をみなぎらせて近づいてくる。
「詩子・・・手加減はできないわよ・・・」
「でも・・・」
お七の刀を握る手に汗が生じている。二人は晴香の強さを肌で感じていた。
「我らに刃向かう仁義屋・・・その存在価値がないわ・・・・・・」
晴香は二人の前で立ち止まると、口を開いてそう言った。
「晴香さん!?一体どうしたんですか!?」
「価値のないものは消え行くさだめなの・・・」
晴香の髪が自然と浮き上がる。
「詩子!やるわよ!」
お七は晴香に敵意しかないことを悟り、刀を構える。本気だ。
「吹き飛びなさい・・・」
「!?」
晴香が呟くと同時に、お七は周りの空気の変動に気付いていた。直感でその場を飛びすさった。
ボゴオオオッ!
お七のいた地面が、突然うめりこむ。一瞬遅れたら、お七の頭は潰れていただろう。
「くっ!やるわね!」
「次で死んでもらう・・・」



壱棟内の郁未の部屋。床についていた郁未と少年だが棟内の異変に気付いていた。
「この感じは・・・・」
「何が起こっているの?」
郁未は聞きながらもわかっていた。不可視の力が解放されているのだ。
「不安定な力だ・・・。このままでは暴走する危険がある・・・・・・」
「まさか・・・晴香!?」
郁未の予感は当たっていた。郁未はすぐに部屋を飛び出した。
「郁未!待つんだ!」
しかし、郁未は少年の制止を聞いていなかった。追おうとするその少年。しかし、その足はピタリと止まった。
「この感じ・・・?あの人が来るのか・・・・・・?」
少年は一人、そう呟いた。



お七達と晴香の戦いは続いていた。しかし一方的に二人はやられている。
「ふっ!」
詩子が跳躍し、晴香に斬り掛かる。
バシ!
しかし、その攻撃も晴香の張る障壁に弾かれた。だが、そこにお七が突っ込んだ。
「やーーーーーーーーーーー!!!」
間合いを詰め、一気に踏み込み、全力で突きを繰り出す。
バシーン!
刀の刃先は晴香の手前でピタリと止まる。二人はそのままこう着状態に入った。
「くうううううううう!!!」
「・・・・・」
お七は全体重をかけて、刀を押し込む。対する晴香も障壁に神経を集中していた。
「やるわね・・・」
「そっちこそ!」
「でも・・・この程度では・・・・・・・」
「!?」
ドウッ!
「きゃっ!?」
晴香が障壁を最大に発生させたため、お七はその反発に負け、壁に叩き付けられた。
「消えなさい・・・」
「うっ・・・」
「お七!」
晴香の右手が振りおろされようとした時、それを止める声が聞こえてきた。
「やめなさい!晴香!」
郁未である。間一髪駆けつけた郁未であるが、晴香の変わりようにがく然としていた。
「心を喰われたね・・・晴香・・・」
「あなたも邪魔するのね・・・」
晴香は郁未の方を振り返った。その瞳は仲間を見る目ではない。獲物を狙う獅子の目だ。
「その存在・・・消滅させるわ・・・・・・」
「晴香・・・!」
郁未は迷っていた。自分の力は晴香に勝てる。しかし、操られているとはいえ仲間を傷つけるのは心がためらった。
しかし、晴香の方はそんなこと構っていない。
ブワッ!
晴香の周りに旋風が巻き起こる。
「・・・やるしかない!」
郁未も力を解放した。同じく髪が浮き上がり、体の奥底から力が湧き上がってくる。
「・・・死になさい・・・!」
「・・・晴香!」
シュウウウウウウウウウウ・・・・・・・!!!ドフッ!
両者から発せられた衝撃波がぶつかり合う。辺りを烈風が荒れ狂う。二人は互いに間合いを詰め、さらに力を発した。
ズガガガガガガ!
晴香から発せられた烈風が、地面を削り郁未を襲う。
「はっ!」
郁未はそれを横に飛びかわす。そして、意識を集中して力を収束する。郁未は水晶球を作り出した。
「いけっ!」
晴香も力を全開にし、衝撃波で対抗する。二つの力がぶつかり合う。
ズバババババババ!!!ドガガガガガガガガ!!!
その衝撃で周りの壁が耐え切れなくなり、崩れ落ちる。
「うわあっ!?」
「きゃあああ!!!」
両者の対決を見ていたお七と詩子は巻き添えを喰った。そして、郁未と晴香の戦いは・・・。
「はあ・・・はあ・・・はあ・・・」
郁未は紛煙が舞い立つ中、息をつかせて立っていた。その前方には、晴香が倒れている。
「郁見さん・・・晴香さんは・・・?」
「大丈夫・・・気を失ってるだけ・・・・・・」
そう言うと、郁未は力尽きたのか意識を失ってその場に倒れた。
「郁未さん!?」
詩子とお七が駆け寄る。
「まずいわね・・・今の騒ぎは・・・・・・」
「折原と茜を呼ぶね」
詩子は懐から火種と小型の信号弾を取り出した。幸い壁が崩れたおかげでその場で打てる。
「いくわよ・・・」
シュウ〜・・・・・・・・・ヒュ〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン・・・!パン!
乾いた音が夜空に鳴り響く。
「さっ、早くこの場を去るわよ」
「うん」
お七と詩子は郁未と晴香をどこか安全な場所へ運ぶことにした。



一方、浩平と茜は林の中で合図を待っていた。
「なあ、茜。お前や詩子はどうして仁義屋やってるんだ?」
浩平には疑問が残っていた。茜の出生を聞きはしたもの、仁義屋に加担する経緯は聞いていない。
「大きな力は人を傷つけるものです・・・・・・たとえそれが大切な人であろうとも・・・・・・」
茜はぽつりと答えた。その表情はどこか寂しげである。
「大切な人・・・か」
浩平はふとお瑞のことを考えた。もし、自分が死んだらどうなるのだろう?お瑞は泣いて暮らすに違いない。
(縁起でもねえ・・・)
浩平はすぐにそんな考えを振り払った。その時、林の向こうで破裂音が響いた。
「!?」
「浩平!」
「ああ!」
二人はすぐさま走り出した。遅れをとるわけにはいかない。
ザザザザザ!!!
藪を揺らしながら、全力で走り抜ける。そして、眼下に広がる坂を一気に滑り落ちる。茜は浩平よりも遅れるが、構っていない。どうせ切り込むのが浩平の役目だ。そして、操練所の門目指して走る。
「うおおおおおおおお!!!」
門番が二人いる。浩平は十手を抜くと、一気に突っ込んだ。
「何者だ!」
ガン!
手前の男を槍を構える暇も与えずに、十手を打ちつける。次に突然のことに驚く二人目の、その隙だらけの胴に十手を突き立てた。
ズフッ!
「おうっ!」
男はうめき声をあげて崩れ落ちた。
「よし、いくぜ!」
門には錠がかかっていない。浩平はそれを迷わず開け放った。その時、茜が追いついた。
「はあ・・・はあ・・・はあ・・・速いです・・・浩平」
少しうらめしげな表情を見せる茜。
「わりい」
「ふう・・・さっ、いきましょうか・・・」
「ああ」
二人は施設内への一歩を踏みだす。だが、彼らに刺客を送る者がいた。



「鼠がもう二匹・・・忍び込んだようだ・・・・・・」
声だけが響く。その声を聞くのは、すすけた着物と刀を腰に差した若い男である。
「お葉は・・・ここではつかえん・・・・奴等を止めるのは・・・・・お前だけだ・・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・斬れ・・・・・」
「はい」
声は短く命令した。それに応ずる男は立ち上がると出口に向かった。その時わずかににやりと笑った・・・・・・・・。




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〜浩平の愚痴〜
やべ、もう一つの戦闘入れなかった。
浩平「あいつとの戦いか?」
うむ。かなり気合いれてかくから長くなるんだよね。
浩平「ほお」
次回も戦闘中心になっちゃうな〜。
浩平「ところでさ。茜の台詞が気になるんだけど」
ああ、あれね。みなさんは気にしないほうがいいです(^^)本編じゃ触れませんから。
浩平「じゃあどうするんだ?」
どうしようか?(^^)実は本編じゃかききれてないことが他にもあるんだよね。
浩平「お前まさか・・・」
それ以上いっちゃだめだよ(^^)まあこのことは後ほどということで・・・・それじゃ!みなさんさようなら〜!
浩平「嫌な予感がする・・・」


次回浩平犯科帳 第三部 第十話「死闘」ご期待下さい!

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