浩平犯科帳 番外編 第五話 投稿者: 偽善者Z
浩平犯科帳 番外編 第五話「深山座の危機」

「どうしようかしら・・・」
ここは深山座の座長室。ここでお雪が一人悩んでいる。
「こまったわね〜」
トントン
軽く床を叩く音。
「上月さんね。はいりなさい」
その言葉に澪が障子を開け、中に入ってくる。声を出せない澪のための合図なのだ。澪はお雪に呼ばれ、ここに来ている。
「実はね、話しっていうのは次の芝居なんだけど・・・主役の余衛役の子が怪我をしちゃったのよ」
『芝居はどうなるの』
木炭で紙に字を書いて、澪は質問する。
「それなのよ問題は。うちは役者がぎりぎりだから、配役をかえるわけにもいかないし、ましてや公演を中止にもできないのよね・・・」
『困ったの』
お雪の顔が暗くなると、澪もそれにともない暗くなる。
「でも方法が一つあるのよ」
『ほんと?』
澪の顔が明るくなる。次の芝居では主役ではないものの、澪はかなり重要な見せ場をもっている。
「余衛は岡っ引きでしょ?だから実際の岡っ引きを使えば稽古に時間がかからないわよね?だから、その岡っ引きに・・・」
『お願いするの』
「そう。あなたがお願いすれば彼も承諾するわ」
『いってくるの』
澪は一目散に部屋を飛び出した。澪が向かった先とは・・・・・?



「いや〜、やっぱり秋はさんまの塩焼きだねぇ〜」
「浩平こがしちゃだめだよ」
お瑞の実家、長森屋の庭先で(猫の額ほどの大きさであるが)七輪を出してさんまを焼いていた。今日はお瑞の家族に呼ばれ、夕食を食べにきたのだ。
「そろそろかな〜」
浩平はうれしそうにさんまをひっくり返し、片面の焼き具合を見る。さんまは四尾ある。どれも焼けているようだ。
「浩平お皿にのせてよ」
「はいよ」
浩平は箸で、それぞれさんまを皿に盛る。
「おお〜浩ちゃん、さんま焼き上がったかい?」
お瑞の父が家から出てきた。
「はい。全部焼けてます」
「そうか。んじゃ、お前等はここで二人で食べてな」
「えっ?一緒に食べないの?」
お瑞の問いに、にやけながら答える父。
「何言ってんだ。未来の夫婦にやぼは入れられねえだろ
「誰が夫婦なの!?」
「へっ、へっ、へっ、それじゃ浩ちゃん、お瑞を任せたぜ」
「・・・・・」
さんまをのせた皿をもって、お瑞の父は奥に消えた。二人は少し気まずい雰囲気が二人に流れる。
「さて・・・食べるとするか」
「そ、そうだね」
二人はなぜかぎこちない。前だったらあんなことを言われても、浩平は軽く流していた。しかし、最近はどうも意識してしまうのだ。
(う〜ん・・・何でこいつは俺のことばかりかまうんだろう?まさか・・・俺のことを・・・・ま、そんなことあるわけないか)
「どうしたの浩平?」
お瑞の顔をじっと見ていた浩平の視線に気付き、お瑞が恥ずかしそうにうつむく。
「い、いや!何でもない」
「そう、ほら早くたべないと冷えちゃうよ!」
「おお、そうだな」
浩平がさんまを口に運ぼうとしたその時・・・。
ドガッ!
「ぐあ・・・」
「きゃっ!垣根の向こうから漬物石が!浩平大丈夫!?」
「くっ、く〜・・・だれだ!?こんなもん投げたのは!?」
垣根の外から飛んできた漬物石は、見事浩平の後頭部に直撃した。浩平は頭を押さえながら、垣根の外に向かう。
「お前か〜!?」
浩平は垣根の前の小さな人影を見つけ、大きく怒鳴る。顔は暗くてよく見えない。
「いたずらにもほどがあるぞ!もうすこし・・・あれ?澪じゃないか?」
『こんばんわなの』
「なにやってんだ?こんなとこで、ってそんなことじゃな〜い!お前は俺を殺す気か!?」
浩平の怒りに澪は身を縮める。
『よぼうと思ったの』
「それでどうして漬物石を投げるんだ・・・?」
「あれ?澪ちゃんじゃない」
その時、お瑞が駆けつける。
「どうしたの?一体」
『お願いがあるの』
「お願い?」
『一緒に来て欲しいの』
そのまま澪は浩平の袖を掴み、走りだす。
「おいおい!一体なんだってんだ!?」
「あっ、まってよ〜」
浩平はひかれるまま深山座に向かった。



深山座の座長室。浩平は今回の事情をお雪から説明されていた。
「ふ〜ん、つまり主役の岡っ引きをやれってことか・・・」
「お願い!旦那!」
『お願いなの』
「浩平やってあげなよ」
「う〜ん・・・」
(こう頼まれると弱るな〜)
「わかったよ!やるよ!」
そして根負けしたのか、ついに浩平は承諾した。
「ありがとう!旦那!」
『ありがとうなの』
「それじゃあ、早速稽古よ!舞台にいくわよ!」
「えっ!?もう?」
「ほらさっさとする!」
「うわ〜〜〜〜っ!」
浩平はまたも引きずられていった・・・。



「ほら!もっと気持ちをこめて!」
「は、はい・・・」
「返事は大きく」
「はい!」
(く〜、なんで俺がしごかれなきゃならないんだ?)
舞台の上では浩平が演技の指導を受けている。
『がんばるの』
「へいへい・・・」
「よそ見しない!」
「はい・・・」
数日後。浩平の出演した『番屋余衛』は好評をはくしたと言う・・・・・・・。



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〜澪の愚痴〜
澪『中途半端なの』
いや、最近時間がなくてな。舞台の話もかきたかったんだけど・・・。
澪『いいわけなの』
バシ!バシ!
いて!角でたたくな!ふう・・・なんか最近調子いまいちなんだよな・・・。まあ書ける機会があったら書くかな。
澪『いつものことなの』
なんか辛口だな・・・・。さて次回は詩子の話でいきます。暴れまくりますよ(^^)
澪『楽しみにしててなの』
それじゃさよなら〜


次回浩平犯科帳 番外編 第六話「狂宴の夜」ご期待下さい!