遠い蛍火-5- 投稿者: 偽善者Z
さらさらさら・・・・・・・
川の流れは絶え間なく続く。永遠に続くようなこの流れに俺は、俺達は一つの願いを望んだ。この川に伝わる伝説を信じて・・・・・。



「ねえ、何をお願いするの?」
「う〜ん・・・睡眠時間があと4時間はのびるようにってとこかな?」
「も〜、大学生にもなって子供みたいなこといわないでよ」
去年、俺はあいつとここに来た。この川の伝説・・・。それは蛍の飛び交う夏の夜、この川で恋人同士で願いごとを願い、二人の願いが一緒だとその願いはかなうと言うものだ。そこらへんに転がっているような伝説だが、この話にはもう一つおまけがあった。
「願いがかなう時はたくさんの蛍が二人を祝福してくれるんだよ」
「ふ〜ん・・・でも、蛍って、夏にしかいないよな」
「でも、願いがかなう時は季節はいつでもいいんだって」
「まあ、そこが伝説ってところだな」
「ふふ、そうかもね」
軽い調子で笑う二人、俺達はもう戻れないのか?あいつの笑顔をそばで見ることはないのだろうか・・・・・?
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
それから俺達は無言で願いごとをした。
「かなうといいね」
「そうだな」
俺達の願い、それは同じであったのだろうか?俺の願いは・・・・・・。



「浩平さん!こんなところで何してるんですか?」
「!?」
俺は突然かけられた声に、驚いて振り向いた。そこには同じ宿の客、名倉由依が立っていた。
「姿が見えないと思ったらこんなところにいたんですね」
由依は笑顔で俺に近づいてくる。なぜか俺にはその笑顔が乾いているように見えた。
「そっちこそ、どうしたんだ?」
「散歩ですよ」
そう言って、由依は川岸にしゃがみこみ手を水の中に浸した。
「わっ!つめた〜い!」
パシャパシャ!
由依はその小さな手で俺に水をひっかけてくる。
「うわっ!?なにすんだ!」
「えへへ、昨日のお返しです」
「くそ〜!こっちも負けないぞ!」
俺はズボンのすそをまくり、川の中に飛び込む。川の水は思ったより冷たく。俺は一瞬体を震わせた。
「この〜!」
俺は水の中に手を突っ込み、大きく水をはね上げた。
「きゃっ!手加減してくださいよ〜」
俺達はしばらく水をかけあい、遊び続けた・・・・・・。



「ハックション!・・・う〜、さみ〜」
「大丈夫ですか?」
俺達は宿に戻っていた。はしゃぎすぎたせいか、俺は冷たい水に思いっきり当たってしまった。もしかしたら風邪をひいたのかもしれない。今、俺の部屋には由依がいる。そして布団にくるまる俺を心配そうにのぞき込む。
「お前は大丈夫なのか?」
「はい!体は丈夫ですから!」
由依は元気一杯に返す。俺は少し自分が情けなくなった。
「なあ、夕飯は何時からだ?」
「7時ぐらいらしいですよ。まだ1時間はありますね」
「そうか。しばらく暇だな」
俺は少し休むことにした。どうも体がだるい。俺は目をつぶった。
「・・・・・・」
「浩平さん?」
「・・・・・・」
「・・・・寝ちゃった」
薄れていく意識の中で由依が立ち上がり、部屋を出ていくのを気配で感じた。一人残された俺は、そのまま自然に眠りへと落ちていった・・・・・・。



@@@@@@@@@@
5話目だ〜!短くきってきたこの蛍火ですけど、次回からそろそろ急展開です!浩平と由依の関係は?そして出番どころか、一度も名前の出ていないけど、見抜かれている長森の登場は?全ては作者が知っている・・・・・。(当たり前だ)

追伸 最近感想が全然かけないです・・・。すいません、忙しいですよ。