遠い蛍火-3- 投稿者: 偽善者Z
夕日が全てのものを赤く染めている。もう夕暮れだ。俺はずっと、こうして旅館の窓辺から外を眺めていた。ここから見える風景は何のこともない、山合いの小さな村の様子が見える。特に目につくものはない。しかし、そののどかさは俺の心を落ち着けてくれた。だが、その静まりが俺の心に空虚な寂しさを作り出していた。
「ふう・・・」
俺はまるで癖のようにため息をついた。一体何度ため息をついただろうか?
(だるいな・・・)
俺が考えるのはそんなとりとめのないことばかりだった。あいつのことは考えなかった。いや、考えれないのだ。あいつのことを考えると、悲しみが湧いてくるから・・・・・・だから俺のどこかでそれを拒否しているのだ。
(もう秋か・・・)
俺は今更のようにそんなことを考える。俺は虚脱感で体を動かす気がなかった。いざこうして一人になると、なぜかこうなる。だが、明日からは散歩にでも出ようかと思っている。そしてあの場所に行くんだ。俺とあいつの願いの場所へ・・・・・・。



夜7時頃。夕食の準備ができたので俺は一階の食堂へ降りた。この旅館は名前こそ旅館と名乗っているが、実質の規模は民宿である。そのためかどうかは定かではないが、食事は部屋に運ばれないのだ。
「お客様同士が交流できますように」
これが女将の言い分だ。まあ、別にどこで飯を食おうが大して構わない。早速食べることにしよう。俺がそう思い箸を手にした時である。俺の前の座布団に一人の少女が座った。
「よお、貧乳」
「貧乳じゃありません!由衣です!名倉由衣!」
「何だ貧乳じゃないのか」
「当たり前です!」
何が当たり前なのかよくわからんが、とりあえずこの娘の名前は分った。名倉由衣か・・・・。
「で、あなたは?」
「俺?俺は胸囲は普通だぞ。あっ、ブラジャーはつけてないからな」
「胸のことじゃないです!名前です、名前!」
「何だ先に言え」
「どうしてそんな考え方できるんですか・・・?」
由衣という娘はあきれたような顔をする。
「俺は折原浩平だ」
「浩平・・・」
「どうした?」
名倉は何か考え込むような表情を見せた。俺の名前に何かあるのだろうか?
「普通の名前ですね」
あっさりと言う今の間はなんなんだ?
「ところでさ。え〜と・・・」
「由衣でいいです」
俺が呼び方に困っていると由衣が助け舟を出してくれた。
「じゃあ、由衣。お前学校はいいのか?」
「は?学校?」
「そうだ。高校生は平日だろ。この村に高校はないし」
「わたし、高校生じゃないです」
由衣は少しむくれた顔を見せた。どうやら気にしているらしい。
「わたし20です」
「なにっ!?俺と一つ違いじゃないか!」
「浩平さんは21ですか?」
「ああ、そうだけど・・・」
由衣の方は俺をさんづけにしてきた。それなりに年上の俺に気を使っているらしい。
「俺は大学生だけど、そっちは何してるんだ?」
「普通のOLです」
「ふ〜ん」
俺たちは食事を取りながら、お互いのことで盛り上がった。たまに俺の顔には笑顔も出た。久しぶりだな・・・笑うのは・・・・・。



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ちわ!!!三河屋です!(うそ)。さてと、3話か・・・やばいな。実はこの話には全くストックがなかったりします。つまり、犯科帳のようにペースが保てません。と言うわけで4話はいつになることやら・・・。内容の方ですが、何故だ!?何故、由衣を使うと明るくなるんだ!?う〜む・・・配役を間違えたかもしれん。次回以降はシリアスに突っ走る予定(あくまで予定です。計画性のなさは俺は天下一品!)。ではさよなら〜。