遠い蛍火-1- 投稿者: 偽善者Z
ガタン・・・ガタン・・・ガタン・・・
規則正しく列車が揺れるたびに、窓の外を眺める俺の視界もぶれる。外を眺めていると言っても、決してそれを楽しんでいるわけではない。それどころか、俺の目に写る風景は全て素通りだ。
「はあ・・・」
俺は今、寝台列車に乗っている。たった一人で。俺はこうして何時間も列車の外を眺め、何度もため息をついている。
ガタン・・・ガタン・・・ガタン・・・
列車の揺れはいつ終わることもなく続いている。いや、終着駅につけば止まるであろう。俺達の関係もそんなものだったのだろうか?永遠に続くと思われた二人の時間。しかし、それは単なる妄想に過ぎず、時がくれば崩れ去るものだったのだろうか?少なくともあいつはそう思っていたに違いない。無論、俺もだ。しかし、永遠は俺が崩してしまった・・・・・・。



きっかけは、大学のサークルの打ち上げだった。俺は先輩達に進められるまま、酒を飲んでいた。あいつはそんな俺を身体に悪いと止めたのだが、俺は悪酔いしていた。そして、調子に乗ってサークルの他の女の子と仲良くしていると、嫉妬でもしたのか、あいつは俺に家に帰ろうと言ってきたんだ。俺はその時、あいつを一番傷つけることを言ってしまった。
「彼女でもないのに、いちいちうるせんだよ!幼なじみだからって、つきまとうな!」
もちろんそれは本心ではない。今考えると、俺は最悪に馬鹿だった。あいつのことだから冗談だと思ってくれると思っていた。俺が後悔と絶望を感じたのは、それからあいつが起こしにこなくなってからだった。大学では、俺が一年遅れで入ったので、あいつは一年先輩に当たる。そのため講義の時間や場所も違うので会えなかった。いや、俺はさけられていたのだが。家に電話をしても、あまり出ることはなく、応じてもその会話はどこかぎこちなかった。そんな生活が数週間続いたある日、あいつに呼び出された。
「浩平にとってわたしは必要じゃなくなったんだね」
「なにいってるんだ。いきなり」
「浩平もてるしね。それにわたしが一年先輩だと気まずいでしょ」
あいつは泣きそうなのをこらえ笑顔でそんなことを言った。
「ちょっとまてよ、俺はお前のことを・・・」
「わたし留学しようと思ってるんだ」
「えっ?」
「2、3年は帰ってこないつもり」
「そんな話、聞いてないぞ!」
「今言ったよ。話はそれだけだよ。それじゃあね浩平、さよなら・・・」
「おい!みず・・・・・」
俺は走り去るあいつを追えなかった。そして自分の間違いにやっと気付いた。
『さよなら・・・』
この言葉が俺の頭を離れなくなった。あいつはもう出発したのか、学校にも家にもいなくなってしまった。そして俺は傷心を抱え、ここにいたる。
「次は〜・・・」
車内放送が次の到着駅をつげる。そこが俺の目的地だ。昔、あいつと二人で行ったところ。そして永遠を願った場所だ。俺は荷物を整理し、下車の準備に入った・・・・・・・。




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ふい〜・・・やっぱなれないな〜。シリアスは難しいわ。なにせ犯科帳以外を書くのってどれくらい久しぶりだろう?ハムスターもけっこう前だよな。さて、新しく書き始めた『蛍火』ですが、もう少しつづきます。今回は軽い冒頭みたいなもんかな?次回はあの人がでます。あの人とは一体?(^^)