浩平犯科帳 第二部 第九話 投稿者: 偽善者Z
浩平犯科帳 第二部 第九話「終幕」



「うっ・・・」
浩平は気絶していた。しばらく状況がつかめずぼうとしていたが、すぐに腕に抱いた茜のことを思い出した。
「茜っ!目を覚ませ!」
「うん・・・・あ、浩平・・・どうやら助かったみたいですね・・・」
茜は力尽きたように、ぐったりしている。浩平が周りを見ると、自分達の所だけは落石せずに他は岩で埋もれていた。
「茜が助けてくれたんだな」
「はい・・・全身全霊だったのでもう動けません・・・・・・」
茜はわずかにほほ笑むが、すぐに友里のことを思い出し真面目な顔に戻った。
「友里さんは!?」
茜は重たい体を無理に起こす。そして、あたりを見回すが友里の姿はない。
「友里さん!返事をしてください!」
「茜・・・この有り様だ・・・」
浩平は必死に呼びかける茜を止めようとしたが、最後まで言葉を発せなかった。
「どうして!どうして友里さんが!」
茜はそのまま崩れ落ちる。浩平に慰めの言葉は思いつかなかった。
(そう言えば、お七や詩子は無事だろうか?)
浩平がそう思ったとき、前方の瓦礫が持ち上がった。
ガラッ・・・
「むっ!」
浩平は咄嗟に十手を構える。瓦礫から出てきたのは、久坂だった。
「く、久坂!生きてたのか!?」
「この程度で死ぬものか・・・・」
久坂の体は落盤により傷ついていた。そして、その血まみれの体で浩平に素手で襲いかかってきた。
「うおおおおおおおおーーーーーーーっ!」
「狂ったか!?」
久坂の速さは先ほどよりも、比べ物にならないほど落ち込んでいた。浩平は飛び込んできた久坂の懐にもぐり、心臓を狙って十手を突き出した。
ドグッ!
「ぐああああっ!」
久坂はそれでも動きを止めない。しかし、最後は突然やってきた。
「うっ!?・・・・・・うがああああああああああっ!」
久坂が突然のたうちまわり始める。
「な、何だ!?」
「ぐはあっ!」
久坂が血を大量に吐く。吐血はその後もしばらく続いたが、止んだと思うと久坂はそのまま動きを止めた。
「一体、何が起こったんだ・・・?」
その浩平の問いに答える者がいた。あの声である。
「・・・やはり耐えられなかったか・・・・強化体にはやはり限界がある・・・・・・」
「その声は!」
「・・・久しぶりだな・・・・・小僧・・・・だいぶ腕をあげたようだな・・・・・・」
「うるせえっ!姿を見せろ!」
その言葉に声は何がおかしいのか、高らかに笑い始めた。
「はっ!はっ!はっ!姿を見せろとか・・・!ふふ・・・おもしろいことを言う・・・・・だが・・・それはかなわぬ願いだな・・・・」
「何がおかしい!」
「お前達との戦いは本当にためになる・・・・おかげで発動体の欠点もわかった・・・・・」
「あの娘に何をしたんだ!?」
「お前と話す時間はもうない・・・・・しかし・・・いつの日か・・・また我は現れようぞ・・・・・・」
「待てっ!」
だが、その答えに答える者はなかった。辺りには静けさが戻る。
「くそ・・・・」
「浩平、詩子とお七さんは?」
「あっ、忘れてた」
その声に反応したように、向こうの比較的落石が少ない所で瓦礫が持ち上がった。
「ちょっとぉ!忘れないでよ!」
「そうだよ!」
お七と詩子だ。どうやら落盤にはあったものの、量がそれほどでもなく軽傷で済んだようだ。
「ふ〜、びっくりしたわよ。お七と合流したと思ったら、いきなり天井が崩れるんだもの」
「まあ無事でよかったぜ」
「ところで、目的の娘はどうなったの?」
「ああ・・・」
お七の言葉に浩平と茜の顔が暗くなった。
「友里さんは・・・瓦礫にのまれて・・・・」
「そんな友里さんが!?」
茜の言葉に詩子は取り乱すが、お七がおさえる。
「詩子・・・終わってしまったものはしょうがありません・・・・」
茜の言葉は自らに言い聞かせているようであった。茜の肩が震えているのに浩平は気付いた。
「そうだ・・・」
浩平は久坂の死体に歩み寄った。そして、見下ろすように立つ。
「久坂・・・てめえも婦亜瑠後に踊らされてたんだな・・・・・」
しばらく立ち尽くしていた浩平だが、振り向いて言った。
「江戸に帰るか!」

数日後・・・。浩平は江戸から少し離れた、とある墓地に来ていた。お瑞も一緒である。
「親父・・・みさお・・・まだ、敵はとれてねえみたいだ・・・・・・」
浩平はある一つの墓の前で、呟いた。
「えっ?浩平何か言った?」
「いや、何にも」
お瑞には聞こえなかったようだ。
「でも突然、一緒に来てくれって、言うからどこに行くのかと思ったらお墓参りなんだもん。びっくりしたよ」
「嫌だったか?」
「ううん・・・そんなことないよ。こうして浩平の家族に会えたんだもん」
「そうか」
浩平が墓参りに来たのは何年ぶりだろうか。今まで来る気すらしなかったものが、江戸に戻ってくると急に行ってみたくなったのだ。
「さて、そろそろ帰るか」
「えっ?もう帰るの?」
「ああ、また今度くればいいだろ」
「うん!そうだね」
先を行く浩平の後をお瑞が小走りに追う。六月のさわやかな風が、墓前の花達をゆらした・・・・・・。



第二部 終


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〜浩平の愚痴〜
やったぜ!ついに二部終了!
浩平「なげえよ・・・まだ続くのか・・・・・」
もちろん!三部は婦亜瑠後との対決だ!長くなるぞ〜!
浩平「うわ〜・・・乗ってるよこいつ」
このまま三部にいきたいところだが、ここで息抜きをしようと思う!
浩平「何する気だ・・・・」
かねてよりお知らせしていた番外編をやります!
浩平「いきなり敬語になんなよ」
話は短くソフトに行くので、軽いギャグも入ってます。一部本編につながるものもありますけど。
浩平「それじゃあ、近い内に!」


次回浩平犯科帳 番外編 第一話「みさきの選択」ご期待下さい!