浩平犯科帳 第三部 第七話 投稿者: 偽善者Z
浩平犯科帳 第二部 第七話「追走」


「久坂が死んだ!?」
仁義屋の集合がかかり、浩平はいつものあばら屋に来ていた。てっきり、神隠しのことについての指令かと思っていたのだが、氷上の言葉は京都で浩平の敵である久坂玄瑞の死であった。三日前の六月五日、京都では新選組による池田屋事変が起きていた。
「どういうことですか!?」
「今言った通りだよ」
浩平はにわかには信じられなかった。命を奪うとまではいかないまでも、浩平は次に出会ったら絶対に殴ってやろうと思っていた。その久坂が死んだと聞いて、浩平は冷静ではいられなかった。
「落ち着きなよ。一時の感情に流されて、大切なことを見失ってはいけないよ」
氷上が浩平の心情を察したのかなだめる。
「久坂が死んだのは重要な意味がある。僕らの知る限りでは、久坂は婦亜瑠後と接触していた。そして、新選組の一部にも婦亜瑠後は関与していて、久坂はそいつらともつながりがあった。それなのに、久坂が襲撃に合ったということは・・・・・」
「久坂と婦亜瑠後の間に何かあったと?」
「そういう可能性もある。でも、久坂が本当に死んだともかぎらない」
「どういうことですか?」
「まあ、今の僕達に知り得ることはわずかだ。今は神隠しのことについて追うことだね」
「わかりました」
浩平は氷上に一礼してから、あばら屋を出た。
(久坂玄瑞・・・てめえは俺がしょっぴくはずだったのにな・・・・・)
浩平はそんなことを考えた。

翌日。お瑞に起こされ、いつもように番屋に向かった浩平だが、
「おはよーすっ・・・てっ!何だぁ!?」
「旦那ーっ!」
中に入った浩平に南が駆け寄ってきた。
「おい!おい!何だよ!一体!?」
「旦那!茜さんのことを教えて下さい!」
「またかよ・・・」
二日前、茜が番屋に訪れた時、どうやら南は茜に一目ぼれしたらしい。そのため、南は浩平に茜のことでつきまとうのだ。
「教えて下さいよ〜!」
「知らねえって、言ってるだろ。大体、お前お瑞に気があったんじゃなかったけ?」
「過去のことは忘れてください!」
(やれやれ・・・気が多い奴だなぁ・・・・)
その時、番屋の戸を開いて入って来た者がいた。
「お邪魔しまーす!」
「お邪魔します」
詩子と茜だ。茜の姿を見て、南が感激の声を上げた。
「茜さん!会いに来てくれたんですね!」
「違います」
即座に否定され、いじけるたように南は落胆した。
「ところで二人とも、何しにきたんだ?」
「これよ、これ!」
そう言って、詩子が懐から手紙らしき物を出した。浩平はそれに見覚えがあった。
「あっ!それ、友里さんのかき・・・」
「しーっ!部外者がいるんだから!」
自分がみせびらしているのに、詩子は浩平を非難した。
「あっ、そうだった。南悪い。ちょっと、見回りに行ってきてくれないか」
「ええー・・・」
南が茜と一緒にいたいのか、不服の声をもらす。
「お願いします」
「わかりましたーっ!」
茜の言葉に、南は外に飛び出した。
「何なんだ?あいつは?」
「さあ?病気じゃないの?」
浩平と詩子は南を見ながら、勝手なことを言っている。
「邪魔者がいなくなったところで・・・さっきの友里さんの書き置きは?」
「ああ、これね」
詩子はもう一度、書き置きを取り出した。これは、先日浩平が名倉家で見た物である。
「どっからもってきたんだ?」
「昨日の夜忍び込んだのよ」
「でも、こんなもの何の役に立つんだよ」
「これは最後に友里さんが残した物でしょ?つまり、それだけ友里さんの残存思念が強いってことよ」
「どういうことだ?」
浩平はいまいち理解できていなかった。そんな浩平に茜が口添えする。
「つまり、その残存思念を読み取って、友里さんの向かった所をさぐるんです」
「できんのか、そんなこと?」
「はい」
茜はうなずく。確かに記憶の操作や不思議な力を持つ茜ならできそうである。
「じゃあ、早速頼むは」
「はい」
茜は書き置きに手を添え、深呼吸をする。そして、目を閉じ念じ始めた。
ポオォォーー・・・・・
茜の指先が光り始める。最初は無表情だった茜だが、しだいに苦しそうに顔を歪ませた。
「うっ・・・こ、これは!」
「茜!」
「茜!しっかりしろ!」
浩平と詩子が茜に駆け寄る。それと同時に茜の指先の光りも消え、茜は精魂尽き果てたかのように、浩平の胸によりかかった。
「茜!大丈夫か!?」
浩平は茜を腕におさめながら、心配そうに顔をのぞき込んだ。
「だ、大丈夫です・・・思念が思ったより強かったから・・・・・」
茜は額にうっすらと汗をかいていた。茜はふらつきながらも自力で立ち上がった。
「ふう・・・友里さんの行き先はわかりました」
「ほんとか!?」
「はい、それと友里さんはかなり思い詰めていたようです・・・・・・」
「どんなことを感じたんだ?」
「読み取れたことは『絆を取り戻したい』ということと、『大月大社にいく』の二つだけです。でもその思いは強かったです」
「大月大社?何だそれ?」
浩平は首をかしげるが、詩子が声を上げた。
「わたし知ってるよ!確か箱根の方にある社だよ。何か、最近怪しげな教団が建てたらしいけど」
「箱根か・・・遠いな」
「悩んでるひまはありません。婦亜瑠後がからんでいるなら、迅速に進まなくては」
「よし!箱根に行くぞ!」
茜の言葉に浩平は決心した・・・・・・。



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〜浩平の愚痴〜
浩平「今回は短いな」
今までで最短だな。何かこう短いと物足りない気がするんだが。
浩平「これぐらいがちょうどいいだろ。読むの面倒だから」
まあ、そうだな。さて、作品の方だが、いよいよ二部も大詰め!
浩平「おっ、ほんとか?」
ああ。今回は三部への伏線を張りながらも、きりよく終わらせるつもりだ。
浩平「ほう。そう言えば、MOONも絡んできたな」
そうなのだよ。そこがポイントかな?次回は最終回直前だけあって、けっこう戦闘もあるぞ。
浩平「よ〜し!俺の活躍があるな!」
あっ、もちろんお七も出るよ。


次回浩平犯科帳 第二部 第八話「潜入」ご期待下さい!