吾が輩はハムスターである6 投稿者: 偽善者Z
だるい・・・。体の調子が悪いのである・・・。吾が輩は最近、外に出ることが少なくなってしまった。原因はただ一つ・・・・・・。寿命である。吾が輩達ハムスターの寿命は二年ほどで、吾が輩がこの家に来てちょうど二年半が過ぎようとしていた。主人の結婚式から数えて一年ほどである。多分吾が輩はもうすぐ天に召されるであろう。それにしても死期が近づいても、こんなに落ち着いていられるのは何故だろう?・・・確かに我がハムスター生に悔いはない。だが、それだけで死の恐怖や不安が消えるのだろうか?・・・。
「浩平・・・お前元気ないな・・・・・・」
男が吾が輩を見下ろしている。主人の結婚相手である。しかも吾が輩と同じ浩平という名である。男は吾が輩を心配そうに見ている。ふっ・・・まさかこの男に最後を見取ってもらうとは・・・・・・。まあよい、一時期吾が輩は主人と仲の良いこの男に嫉妬していた。と言っても人間に嫉妬するなどと、当時の吾が輩は認めてなかったが。しかし、この男が主人と結婚してからは吾が輩の評価も変わった。主人はこの男と一緒に居るときには、心から楽しそうであった。喧嘩した時等の寂しそうな姿も忘れていない。吾が輩は主人を幸せにできるのはこの男しかいないと思う。
「お前死ぬのか?・・・」
男は吾が輩に言葉をかける。
「死んだらどうなるんだろうな・・・存在が消えることよりもつらいのかな?・・・でも俺や茜はお前のことを忘れないからな・・・・・・」
男は何を言ってるのだろうか。存在が消える?一体どういうことだろうか?吾が輩がそう思った時、電話が鳴った。
プルルルルル・・・・・・ガチャ!
男は慌てて電話に飛びついた。
「はい!もしもし!・・・えっ!生まれそう!?わかりました!すぐ行きます!」
主人は今この家にいない。出産のため病院にいるのだ。
「浩平。今から病院に行くけど、俺達の子供を見るまで死んだりするなよ!」
男はそう言って、慌ただしく家を出ていった。ふう・・・誰もいなくなったか・・・・・・。その時吾が輩は強烈な眠気を感じた。いや、眠気なんてものじゃない。意識が遠のくような感じだ。吾が輩は誰にも見取られず、一匹旅立つのか・・・いや、見取る者が一匹だけいた。向こうに鎮座している主である。この巨大ハムスターは吾が輩の方をじっと見ている。もうだめなようだ・・・。しかし、気分はいい・・・・もし生まれ変わったなら、男のような人間になりたいものだ・・・・・・・・・吾が輩はゆっくりと目をつぶった・・・・・・・・・。



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なんか暗くなっちゃいました。それにしても学生で結婚・出産とは早いなあ(自分が書いたんだけど)茜の出番がなかったのは痛かったな・・・・・。